遺産相続コラム
亡くなった方(被相続人)に相続人が誰もいない場合、その方の遺産はどうなってしまうのだろうかと疑問に思っている方もいるでしょう。ひとりも相続人がいない方の遺産は、最終的に国のものになります。
しかし、特別縁故者と認められれば、遺産の全部または一部をもらうことが可能です。相続人には含まれない内縁の配偶者、いとこ、介護人なども、特別縁故者として財産分与を受けられる可能性があります。
本コラムでは、特別縁故者の要件や財産分与を受けるときの流れなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まず、特別縁故者とはどのようなものなのか、その概要を解説します。
特別縁故者とは、相続人がいない場合に、被相続人と一定の関係にあったことを理由として、特別に被相続人の財産を取得できる人のことです。
被相続人の遺言があれば遺言で指定された人が、遺言がなければ法定相続人が、遺産を相続します。しかし、遺言がなく、法定相続人もいない場合、遺産を相続する人が誰もいない状態になってしまいます。
このようなケースは、最終的に国庫に財産が帰属することになりますが、「被相続人の財産は、被相続人と特別に親しかった人などによって取得されるのが望ましい」という考えから認められているものが、特別縁故者の制度です。
特別縁故者が被相続人の財産を受け取るとき、「遺贈」により取得されるものとみなされます。そのため、引き継いだ財産は相続税の課税対象となり、財産分与があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行わなければなりません。
また、通常の遺産相続であれば適用される控除などは適用外となり、相続税額の負担が増える可能性があります。注意点の詳細は、以下をご確認ください。
ここからは、特別縁故者と認められる要件と認められないケースを説明します。
特別縁故者と認められるためには、以下の3要件のいずれかを満たさなければなりません。
上記いずれの要件も満たさない人は、特別縁故者とは認められません。
特別縁故者として認められる要件のいずれかに該当していたとしても、以下のケースでは特別縁故者としての財産分与を受けることはできません。被相続人の財産は、相続債権者および受遺者への弁済にあてられた後、最終的に国庫に帰属することになります。
特別縁故者が財産分与を受けるためには、どのような手続きが必要になるのか、特別縁故者が財産分与を受けるための流れについて説明します。
特別縁故者が財産分与を受けるためには、まずは家庭裁判所に相続財産清算人の選任申し立てをしなければなりません。特別縁故者は、申し立て権者である利害関係人に含まれますので、自ら申し立てをすることができます。
相続財産清算人の選任申し立て後、裁判所は、相続財産清算人を選任します。そして、家庭裁判所が相続財産清算人を選任した場合、家庭裁判所が遅滞なく、選任した旨および相続人であることを主張するように公告をします。この公告期間は6か月です。
相続財産清算人は、法定相続人の捜索、相続財産の調査・管理、相続債権者・受遺者への弁済などの役割を担う立場にある人です。裁判所の管轄内に法律事務所を有する弁護士の中から選任されるのが一般的です。
相続財産清算人の選任後、相続財産清算人は、相続債権者および受遺者に対して一定期間内に請求の申し出(債権の届け出)をするように、官報に公告を出します。公告期間は2か月以上の期間とされています。
相続財産清算人は、申し出のあった債権者および受遺者に対して、被相続人の相続財産の中から弁済を行います。
弁済に必要な現金がないときは、不動産などの資産を売却するなどして、資金を捻出します。
相続人捜索の公告期間内に、相続人であることの申し出がない場合は、相続人不存在(相続人が誰もいないこと)が確定します。
相続人の不存在確定から3か月以内に、特別縁故者は、家庭裁判所に対して、財産分与の申し立てをすることができます。裁判所の審理の結果、特別縁故者であると認められれば、相続財産の全部または一部の分与を受けることが可能です。
特別縁故者への財産分与を行っても、まだ相続財産に余りがある場合には、最終的に相続財産清算人により国庫に帰属させる手続きがとられます。
特別縁故者への財産分与が認められた裁判例と、認められなかった裁判例をひとつずつ紹介します。
この事案は、被相続人のいとこから特別縁故者への財産分与の申し立てがなされたというものです。
被相続人といとことの間には、以下のような関係性があったとされています。
裁判所は、いとこが上記のような関係性にあったことから特別縁故者であると認定して、いとこへの財産分与を認めました。
ただし、被相続人といとこの関係は円滑な親族関係ではなく、訪問回数も多くはないことから、縁故の程度は濃密なものとはいえなかったとして、相続財産の一部(3億7000万円超の相続財産のうち300万円)の分与にとどまっています。
この事案は、生計を同じくしていた被相続人の内縁の夫から特別縁故者への財産分与の申し立てがなされたというものです。
原審では、申立人が被相続人の遺言書を偽造して、すべての財産を自身に遺贈する内容の遺言書を作成しようとしたことを認定しました。同居して生計を同じくしていたとしても、相続財産を不法に奪取しようとするものは特別縁故者とは認められないとして、申立人からの申し立てを却下しています。
申立人は、遺言書を偽造したとしても、被相続人には申立人に全部または相当額の遺産を遺贈する意思があったとして、抗告を行いました。
裁判所は、申立人が遺言書を偽造したということは、被相続人には申立人に財産を遺贈する意思がなかったことを推認させるものだとして、申立人への財産分与を否定しました。
特別縁故者としての財産分与をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
特別縁故者として財産分与を受けるには、家庭裁判所への相続財産清算人選任申し立てと特別縁故者への財産分与の申し立てが必要です。
初めての方では、どのような書類を準備して、どのような流れで手続きを進めればよいかわからないことも多いと思います。そのような不安を抱えている方は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。
弁護士に相談することで、必要な手続きや流れについてのアドバイスを受けることができるだけでなく、依頼をすればすべての手続きを弁護士に任せることも可能です。
特に、特別縁故者として財産分与を受けるには、ご自身が「特別縁故者」であることを裁判所に認めてもらわなければなりません。そのためには、弁護士のサポートが不可欠といえます。
弁護士に相談したいと思っても、経済的な不安から弁護士への依頼をためらってしまう方も少なくありません。ベリーベスト法律事務所では、そのような不安を少しでも解消したいという思いから、初回法律相談60分を無料で対応しています(ご相談内容によっては一部有料となる場合があります)。
相談したからといって、その場で依頼する必要はありません。少しでも手続きに不安や疑問がある場合には、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
実際に弁護士に依頼した場合の費用については、ケース・バイ・ケースですが、相談時に詳しくご説明しますので、お気軽にご相談にお越しください。
特別縁故者であると認められれば、相続人以外の人であっても、被相続人の財産の全部または一部を譲り受けることが可能です。もしくは、遺言書で指定があれば、特別縁故者や相続人でなくとも、遺産を受け取れるケースもあります。
特別縁故者と認められる要件に該当するのかとお悩みの方や、遺産相続でお困りごとがある際には、弁護士にご相談ください。
ベリーベストグループには、弁護士だけでなく、税理士などの士業も在籍しています。特別縁故者に関する問題は相続税などの税金も関わってきますので、税理士とも密に連携し、遺産相続に関するワンストップサービスを提供しているベリーベストグループまでお気軽にご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
令和6年4月1日の法改正により、相続登記の義務化が始まりました。義務が発生するのは4月1日以降の相続だけでなく、それ以前に発生した相続も対象になります。
そのため、期限までに相続登記を終えなければ過料の制裁を受けるリスクがあるため、注意が必要です。
こうした制裁リスクを回避できるように新しく創設された制度が、「相続人申告登記」です。
相続登記をするには、遺産分割協議で遺産の分配を決める必要がありますが、期限内に遺産分割に関する話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。そのようなときに、この相続人申告登記の制度を利用することで、より簡単に相続登記の申請義務を履行できるようになりました。
本コラムでは、相続登記の義務化に伴い、新たに導入された相続人申告登記の基礎知識について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
相続人と連絡が取れない場合、その人を除外して遺産分割協議を行うことはできません。遺産分割協議には、すべての法定相続人が参加しなければならないからです。
たとえ大勢いる相続人のひとりと連絡が取れない場合であっても、勝手に相続手続きを進めてしまうと、遺産分割協議は無効となってしまいます。
行方不明者や連絡が取れない相続人がいる場合には「不在者財産管理人」を選任したり「失踪宣告」をしたりして、法的に適切な対応を進めなくてはなりません。
また、連絡は取れる状態で無視されているようなケースでは、遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることが必要です。
本コラムでは、連絡が取れない相続人がいる場合の遺産相続の流れや注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
民法・不動産登記法が改正され、令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。対象となる相続登記は、法改正以降に発生した相続だけでなく過去の相続も含まれるため、注意が必要です。
相続登記を行う期限は、「改正法の開始日(令和6年4月1日)」もしくは、「不動産を相続により取得したことを知った日」の、どちらか遅い日から3年以内、遺産分割協議で取得した場合は、別途、遺産分割協議成立日から3年以内となるため、ご自身の場合の期限がどこになるかを見極めて、早めに手続きを進めていくことをおすすめします。
今回は、相続登記義務化の概要と登記しなかった場合の罰則、すぐに相続登記ができない場合の救済措置(相続人申告登記)について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。