遺産分割の流れは、おおまかに、遺言書の有無の確認→相続人の確定→遺産分割協議→まとまらなければ遺産分割調停・審判です。
以下、遺産分割について争いがない場合、ある場合に分けて、手続きの流れを詳細に説明していきますので、ぜひ参考にされてください。
※ただし、相続人全員の合意により、遺言書の内容と異なる方法で分割することも可
遺産分割協議書を作成します。
遺産分割調停の申し立てに移ります。
調停調書を作成します。
遺産分割審判の申し立てに移ります。
審判書を作成します。
高等裁判所での審理となります。
遺産分割のトラブルは、何を遺産に含めるか・分割割合・分割方法など多岐にわたり、煩雑な手続きも多いため弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所には、経験豊富な担当弁護士を中心に構成された専門チームがあり、相続に精通した弁護士、税理士、司法書士が所属しています。ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。
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遺産分割について争いがない場合の流れは以下のとおりです。
①まず、被相続人が遺言書を残していないかを確認します。遺言書が出てきた場合には、公正証書遺言または法務局(遺言保管所)で保管された自筆証書遺言以外は家庭裁判所で検認手続きを経る必要がありますので、ご自身で開封することのないよう注意しましょう。検認手続きを経ずにご自身で開封してしまうと、法律上は5万円以下の科料が課される可能性があります。
②並行して、相続人調査および相続財産調査を行います。
被相続人の出生時まで戸籍を遡って取得し、相続人調査を行います。遺産分割協議は相続人が全員参加していることが必要であり、参加すべき相続人が参加せずに成立した遺産分割は無効となりますので、相続人の範囲に漏れがないように相続人調査は慎重に行いましょう。
また、不動産の登記簿謄本を取得したり、預金を有する可能性のある銀行の支店に問合せをしたりして相続財産調査を行います。相続財産に抜けがあると、遺産分割協議終了後に再度遺産分割協議の必要性が生じたり、遺産分割協議の効力を否定されたりする可能性がありますので、相続財産のリストを作成するなどして慎重に行いましょう。
③遺言書が残されており、その内容に問題がなければ、遺言書に従って遺産分割を行います。
④遺言書がない場合、または、遺言書はあるものの、その内容に不備がある場合、もしくは遺言書で指定された分割方法とは異なる方法で分割することに相続人全員が同意した場合には、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議には、相続人全員がすることが求められていますが、一堂に会する必要はありませんので、電話やメール、書面のやり取りでも問題ありません。
⑤協議が整ったら、合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書は、不動産について相続登記をする際や、預貯金や株式、自動車等の名義変更をする際に必要になりますので、必ず作成しましょう。また、遺産分割協議書は、後に相続人の誰かが合意内容を否定したり、争うような言動をしたりした際に、合意の存在や内容を証明するものにもなりますので、この意味でも作成しておくことが重要です。
遺産分割協議書を作成する際は、通常の契約書と同じ体裁としてもよいですが、その後の争いを防ぐという観点からは、公正証書で作成した方が強力な効果を持ちます。遺産分割協議の際には、公正証書にするかどうかも話しあうとよいでしょう。
遺産分割においては、相続人間に争いが生じることがあります。
相続人間に意見の対立があり、遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、第三者を交えて話し合いを継続します。その調停も成立しない場合には、裁判所から審判がされることになります。審判に不服がある場合には、即時抗告をして、高等裁判所の判断を求めることができます。
ただし、争いの内容によっては、遺産分割調停・審判に先立って民事訴訟を提起すべき場合がありますので、どのような順番でどのような手続きを取るべきかについては、弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
以下では、よくある争いのうち調停・審判だけでは解決できないものなどについて手続きを説明していますので、ご参照ください。
このような争いがあり、遺言の有効性について当事者での合意ができない場合には、遺言無効確認等の民事訴訟で有効性の判断を確定させる必要があります。この民事訴訟を提起せずに遺産分割調停を申し立てても、遺言の有効性に争いがあって話が進まない場合には、調停を取り下げないといけないので、民事訴訟を先行させるのが一般的です。
この場合も、話し合いで解決できないときは民事訴訟により確定する必要がありますので、遺産分割調停に先立って民事訴訟を提起します。
遺言書が相続人のうち1人にすべての遺産を相続させるものである場合や、相続人のうち1人にすべてではないものの、大半の遺産を相続させるものである場合など遺言書の内容に納得がいかないときは、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容とは異なる遺産分割を行うことができます。
相続人全員の合意がない場合、遺言の内容が遺留分を侵害するものであれば、自らの遺留分を取り戻すために、遺留分侵害額請求を行うことになります。必ずしも調停や訴訟にする必要はありませんが、遺留分侵害額請求に係る紛争は激化しやすく、調停や訴訟になる傾向にありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
相続人に含まれるかという争いは、
の4つに分類されます。
ア、イ、ウについては、争いが生じ、当事者間の協議で解決できない場合には、遺産分割調停に先立って、訴訟ないし審判を行う必要があります。
エについては、遺産分割審判において前提問題として判断をすることはできますが、訴訟等により審判と異なる判断がなされた場合には、家庭裁判所の審判は効力を失ってしまいますので、最終的な解決にならないおそれがあります。
そのため、遺産分割調停に先立って、合意に相当する審判(家事法277条)または人事訴訟によって確定しておくことをおすすめします。
遺産分割審判で判断ができますが、通常は、家庭裁判所から調停・審判に先立って民事訴訟で解決するよう指示されるはずですので、前もって民事訴訟(遺産確認請求訴訟)を提起することも検討します。
特定の相続人が被相続人の現金や預貯金を無断で取得し、消費した場合には、使途不明金の問題が生じます。仮に、調停において使途不明金が存在することが判明し、その相続人が使途不明金を自分のために使用したことを認めた場合には、調停の中で、その者が使途不明金を使ったことを踏まえて遺産分割の話合いをすることになると思われます。
一方で、使途不明金があると疑われる場合、使途不明金を誰のために使用したか争いがある場合には、調停ではなく、民事訴訟(不法行為に基づく損害賠償請求訴訟もしくは不当利得返還請求訴訟)で解決する必要があります。
なお、預貯金債権については平成30年民法改正により、各相続人は、その3分の1に自分の法定相続分を乗じた金額までは、遺産分割を行う前であっても、各金融機関に払戻しを請求できるようになりました(当面は、一つの金融機関につき払戻の上限は150万円と定められています)。
これは、葬儀費用や相続人の当面の生活費を相続財産から支出できるようにしたものです。各相続人が法律の範囲内で払い戻した金額については、当該相続人が相続したものとして扱われるので、損害賠償や不当利得の問題にはなりません。
相続税申告および相続税の納付は、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。
遺産分割協議が成立していない場合でも、相続税の申告は行う必要がありますが、その場合、一般的には法定相続分に基づいて相続したものとして税額を計算して、申告と納付をおこないます。
そして、遺産分割後に実際に分割した額に基づいて、修正申告や更生の請求を行うこととなります。
相続税の申告を行わなかったり、申告していても誤りがあったりなどすると、延滞税や加算税などが課されますので注意しましょう。