遺産相続コラム
亡くなった方(被相続人)が独身で、子どもや親兄弟がおらず法定相続人に該当する人がいない場合や、法定相続人がいても全員が相続放棄をするような場合は、相続財産(遺産)を管理する人がいないことになります。
相続人がいないことに伴う不都合があるときには、家庭裁判所に申し立てを行って、相続財産清算人(相続財産管理人)を選任してもらうことになります。
相続財産清算人(相続財産管理人)を選任するには具体的にどうしたらよいのか、費用はどれくらいかかるのかなどについて、知りたいという方もいるでしょう。
本コラムでは、相続財産清算人(相続財産管理人)制度の概要や、相続財産清算人(相続財産管理人)が必要になるケース、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申し立ての方法や流れ、費用について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
ご注意ください
「相続財産管理人」は民法改正(2023年4月1日)により「相続財産清算人」へ名称変更となりました。
相続財産清算人(相続財産管理人)とは、相続人がいない相続財産(遺産)を、最終的に国庫へ帰属させる役割を担う人のことです。
相続人がいない相続財産の国庫への帰属は、債権者や受遺者(遺贈を受け取る人)への弁済を経た後に行われます(民法第959条)。しかし、相続財産を管理する人がいない状態では、国庫へ帰属させることはできません。
そこで、家庭裁判所が相続財産清算人(相続財産管理人)を選任し、相続財産を国庫へ帰属させるまでの必要な職務を行わせることになっているのです。相続財産清算人(相続財産管理人)は、相続財産法人(相続人がいることが明らかでない場合に相続財産が法人化されること)の法定代理人としての立場で、以下の職務を行う権限を有します。
なお、後に判明した相続人が相続の承認をした場合、相続財産清算人(相続財産管理人)の代理権は消滅します(民法第956条第1項)。
家庭裁判所に相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を請求するためには、要件を満たさなければなりません。
具体的には、以下の3つの要件を満たすことが必要です。
最初から法定相続人が誰もいない場合には、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要になります。
具体的には、以下のいずれかに該当する人がひとりもいなければ、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要です。
相続放棄をした人は、最初から相続人にならなかったものとみなされます(民法第939条)。
もし相続権のある人全員が相続放棄をした場合、その時点で相続人はいなくなります。この場合、当初から相続人がいなかったケースと同様に、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要です。
たとえば、被相続人が多額の債務を負っていて、相続財産全体の価値がマイナスの場合は、相続人全員が相続放棄をするというようなケースが多くあります。
このような場合には、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を行わなければなりません。
被相続人が作成した遺言書により、相続人ではない人(受遺者)に対する遺贈が行われた場合、遺贈の目的物を受遺者に引き渡すことが必要です。
相続人がいるケースでは、相続人が遺贈義務者となり、受遺者に対して遺贈の目的物を引き渡します。これに対して相続人がいないケースでは、相続財産清算人(相続財産管理人)が選任された後、相続財産清算人(相続財産管理人)が受遺者に対して、遺贈の目的物を引き渡すことになります。
また、遺言書で指定されている遺言執行者が就任するケースもあるでしょう。そのようなときは、相続人の有無にかかわらず、遺言執行者が遺贈を履行する権限を有します(民法第1012条第1項、第2項)。
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任は、利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して請求します(民法第952条第1項)。利害関係人に当たるのは、相続債権者・受遺者・相続放棄をした人などです。
申し立ての際には、以下の書類をそろえて家庭裁判所に提出する必要があります。申立書の記載例は裁判所のウェブサイトに掲載されているので、併せてご参照ください。
なお、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を申し立てる際には、必ず相続人がいないことを確認しましょう。被相続人等の戸籍謄本を調べるほか、他の相続人によって相続放棄がなされたか否かを確認することも必要です。なお、確認自体は、裁判所に照会することによって行うことができます。
相続財産清算人(相続財産管理人)が選任された後は、以下の流れで手続きが進行します。
相続財産清算人(相続財産管理人)選任の申し立てを行うための費用としては、申立書に貼付する800円の収入印紙、連絡用の郵便切手、官報公告料等が必要となります。
連絡用の郵便切手は1000円程度ですが、各裁判所により異なりますので、事前に申し立てを予定している裁判所に確認してください。また、予納金の納付を求められることもあります。
予納金とは、相続財産清算人(相続財産管理人)の経費や報酬などに充てるため、申立人があらかじめ納めるお金のことです。
相続財産清算人(相続財産管理人)は、相続財産を管理したり、債権者に支払いをしたりするため、経費が発生します。また、これら作業を専門家に依頼する場合も報酬が発生します。相続財産が少ないときは費用や報酬が不足することも考えられるため、予納金が必要です。
予納金の金額は、事案に応じて裁判所が決めます。100万円などという金額になることもある点に留意してください。
相続の処理が終わり、その後に費用の精算と報酬の支払いが完了しても予納金に残りがある場合には、返金されます。
本コラムは、相続財産清算人(相続財産管理人)制度について解説してきました。
相続人がいない、あるいは相続人がいても相続放棄するという場合、相続債権者が弁済を受けるなどのためには、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が必要です。
ただ、相続財産清算人(相続財産管理人)の申し立てには、多数の提出書類が必要であり、手続きも複雑なので非常に手間が掛かります。費用は掛かりますが、時間や手間を考えると、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのが合理的といえるでしょう。
ベリーベストグループには、弁護士のほか、税理士や司法書士も在籍しており、相続全般について相談・依頼をすることが可能です。相続についてお悩みがある場合には、お気軽にご相談ください。
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東京証券取引所が令和5年(2023年)7月に発表した「2022年度株式分布状況調査の調査結果について」の資料によると、個人株主数は6982万人(前年度比521万人増)で9年連続で増加しており、株式投資を行う方が年々増えているようです。
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