遺産相続コラム

相続財産管理人が必要なケースとは? 選任の流れや費用について解説

2020年08月25日
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相続財産管理人が必要なケースとは? 選任の流れや費用について解説

被相続人が独身で子どもも親兄弟もおらず相続人がいない場合や、相続人がいても全員が相続放棄をするような場合、相続財産はどうなるのでしょうか。また、相続人がいない場合に、被相続人に債権を持つ債権者は誰に請求したらよいのでしょうか。

このように相続人がいないことに伴う不都合があるときには、利害関係人から申立を行い、裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらい、相続財産管理人が相続財産を管理し清算するという職務を行うことになります。相続財産管理人を選任するにはどうしたらいいのか、費用はどれくらいかかるのかなどについて知りたいという人もいると思います。

そこで、今回は、相続財産管理人制度の概要、相続財産管理人が必要になるケース、申し立ての方法や費用について解説していきたいと思います。

1、相続財産管理人とは?

  1. (1)相続財産管理人の概要

    相続財産管理人とは、遺産を管理して遺産を清算する職務を行う人のことです。相続開始後、遺産の管理は、通常、相続人や包括受遺者(遺言によって包括的に財産を受け取った人)が行いますが、包括遺贈者がおらず、相続人がいることが明らかでないときや相続人全員が相続放棄をした場合には相続財産を適切に管理する人がいなくなります。そこで、そのような場合に、相続財産を管理して清算する役割を担う者として「相続財産管理人」が選任されます。

    ただ、遺言が存在し、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者によって、遺言が執行されるため、相続人がいなくても、遺贈を受けるために、受遺者が相続財産管理人を選任する必要はありません(ただし、遺言に、相続債務の支払についての記載がされておらず、相続債務の支払をすべき相続人も包括受遺者もいないときには、相続債権者は相続債務の支払をしてもらうためには、相続財産管理人の選任申立をして、相続債権の請求の申出を行って支払を受ける必要があります)。

    また、遺言が存在し、遺言執行者が選任されていない場合、受遺者は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることで遺贈を受けることができるので、遺言執行者の選任を申し立てれば良く、相続財産管理人選任の申立てをする必要はありません。相続債務について、遺言に記載がなく、相続人も包括受遺者もいない場合には、相続債権者が支払を受けるためには、相続財産管理人の申立をする必要があることは、遺言執行者がいないときと同じです。

    相続財産管理人は、家庭裁判所が、申立人からの申し立てに応じて選任します(民法952条1項)。家庭裁判所は、申し立て内容を審査し、相続財産管理人の選任の必要があると判断したときは、相続財産にどのような財産があるか、第三者の専門家に任せるべき事案か等を考慮し、専門家に任せるべき事案であれば、弁護士や司法書士などを選任するなど、相続財産管理人として最適な者を相続財産管理人に選任します

    民法は、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」(民法951条)としており、相続財産管理人は、この相続財産法人の法定代理人ということになります。
    相続財産管理人の権限には、まず、相続財産の保存行為と、相続財産である物または権利の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為を行う権限があります。権限外の行為を行うときには裁判所の許可を得て行います。

  2. (2)選任公告

    家庭裁判所は、相続財産管理人を選任したときは、選任公告を行います(民法952条2項)。

  3. (3)相続財産の管理

    選任公告の後、相続財産管理人は、相続財産を調査し、財産目録を作成すると共に、相続財産の管理や、賃借されていた相続財産賃料の取り立てなどの、相続財産の管理、保存行為や、裁判所の許可を得て早急に処分が必要な相続財産の換価処分を行うなどの職務を行います。

  4. (4)請求申出の公告

    選任公告後、2か月の間に相続人が現れない場合、相続財産管理人は、相続債権者、受遺者に対して、2か月以上の期間を定めて、請求の申出をするように公告を行います(民法957条)。

  5. (5)弁済

    請求申出期間満了後、相続財産管理人は相続債権者に対して弁済を行います(民法957条2項、929条)。債権額より相続財産が多い場合には全額弁済されますが、債権額より相続財産額が少ない場合には債権額に応じて案分して支払われます。債権者に対する弁済が完了して、残余がある場合には、受遺者に対して分配が行われます(民法957条2項、931条)。さらに残余がある場合には、債権届け出をしていない債権者も権利行使をすることができます(民法957条2項、935条)。

  6. (6)相続人捜索の公告

    相続債権者に対する公告後においても、なお相続人の有無が不明のときは、家庭裁判所は、相続財産管理人または検察官の請求によって、相続人があるならば申し出る旨を公告しなければなりません。この公告における申し出期間は6か月を下ることはできません(民法958条の2)。この期間内に申し出がなければ、相続人の権利は消滅します。

  7. (7)特別縁故者への分与、国庫への帰属

    期間内に相続人としての権利を主張する者が出現しなかったときには、被相続人の療養看護に努めたなど、被相続人と特別の縁故があった者から請求があったときには、家庭裁判所が残余財産の全部または一部を分与することができます(民法958条の3)。
    そして、特別縁故者にも分与されなかった財産は最終的に国庫に帰属します(民法959条)。

  8. (8)管理終了の報告を行う

    相続財産管理人の業務が終了したら、家庭裁判所へ管理終了報告書を提出します(民法959条)。これで、相続財産管理人の任務は終了します。

2、相続財産管理人の選任が必要になるケース

  1. (1)相続人がいないケース

    すでに説明したとおり、相続財産があって、相続人がいないか、相続人がいても全員が相続放棄した場合には、相続財産を管理する人がいなくなってしまいます。このような時、被相続人に対して債権を持っている人は、債権の回収ができなくなってしまいます。

    そこで、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうわけです。家庭裁判所に相続財産管理人の選任を請求するには、次の3要件を満たすことが必要です。

    ①利害関係人であること
    債権者がいる場合や、受遺者に対して履行をする必要がある場合など、具体的に相続財産管理人を選任して清算手続きを行ってもらう法律上の利害関係が必要です。

    ②遺産があること
    遺産がほとんどない場合、費用倒れになって清算をする意味がないので、そのような場合には、相続財産管理人を選任する必要がないからです。(費用倒れになるような場合でも、申立人が費用を予納すれば家庭裁判所は相続財産管理人を選任してくれるとは思いますが、実際問題としてそこまでやる人も少ないでしょう。)

    ③相続人の有無が明らかでないこと
    相続人がいることがわかった場合には相続財産管理人を選任する必要はないからです。

  2. (2)相続人全員が相続放棄したケース

    相続人がいる場合であっても、相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産を管理する人がいなくなってしまいます。そのため、相続債権者が相続財産から弁済を受けるなどするためには、相続財産管理人の選任が必要になります。

    また、民法上、相続を放棄しても「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条1項)とされています。そして、仮に相続放棄によって次に相続人となる者がいない場合には、相続財産管理人が管理を始めるまでは、法定相続人が、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければなりません。
    もし、相続財産管理人が選任される前に、建物の倒壊などで他人に損害を負わせた場合には損害賠償請求される可能性がありますし、財産の価値を毀損されたとして、債権者から損害賠償請求されることも考えられます。

    そのため、最後に相続放棄を行い、その後相続財産の管理を行っている者は、利害関係人として相続財産選任の申し立てができると解されているようです。

    参考:相続放棄について詳しくはこちら

3、相続財産管理人の申し立てから選任までの流れ

  1. (1)申し立ての流れ

    相続財産管理人を家庭裁判所に選任してもらうためには、相続財産管理人選任審判の申し立てが必要です。相続財産管理人の選任を申し立てることができるのは、「利害関係人」と「検察官」です。

    利害関係人としては、被相続人の債権者、特定遺贈の受遺者、特別縁故者などです。特別縁故者とは、相続人ではないものの、被相続人と特別な縁故がある人のことです。たとえば、内縁の妻や療養看護をしてきた人などです。特別縁故者は、相続人や包括受遺者がおらず、相続財産管理人が相続財産を清算した後に初めて残余財産からの分与を受けることができるため、利害関係人になります。

    検察官が申し立て権者になっているのは、国が相続財産管理人を必要とすることがあるからです。被相続人の債権者と特定受遺者に弁済してもなお、積極財産が残っている場合は、その残余分は国庫に帰属することになります。相続財産を国庫に帰属させる手続きをするために相続財産管理人を選任するということです。

    申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する「家庭裁判所」に行います。

  2. (2)必要書類

    1. ①申立書
    2. ②財産目録
    3. ③被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    4. ④被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    5. ⑤被相続人の子ども(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    6. ⑥被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    7. ⑦被相続人の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    8. ⑧代襲者としての甥姪で死亡している人がいる場合、その甥または姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    9. ⑨被相続人の住民票除票または戸籍付票
    10. ⑩財産目録記載の財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金および有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
    11. ⑪利害関係人からの申し立ての場合、利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)、金銭消費貸借契約書き写し等)
  3. (3)相続財産管理人の選任

    利害関係人または検察官から相続財産管理人選任の申し立てがなされると、家庭裁判所は審理を行い、被相続人との関係や利害関係の有無、相続財産の内容などを考慮して、相続財産を管理するのに最も適任と認められる人を選びます。候補者がある場合には候補者がそのまま選ばれる場合もありますが、公平な第三者であり、精算に適格性を有する者として弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

    一方、申立人の利害関係が認められないと判断されたような場合や、家庭裁判所が選任の必要がないと判断した場合には、相続財産管理人の選任を行わずに申し立てを却下する場合もあります。

    相続財産管理人の報酬は、原則として、相続財産から支払われることになりますが、相続財産が少なくて、相続財産から相続財産管理人の報酬を支払うことができないと思われる場合には、家庭裁判所は申立人に対して予納金の納付を求める場合があります

4、相続財産管理人を選任するための費用は?

  1. (1)申し立ての費用

    相続財産管理人選任の申し立てを行うための費用としては、申立書に貼付する800円の収入印紙、連絡用の郵便切手、官報公告料等があります。連絡用の郵便切手は1,000円程度ですが、各裁判所により異なりますので、事前に申立てを予定している裁判所に確認してください。また、予納金の納付を求められることもあります。

  2. (2)予納金とは?

    予納金とは、相続財産管理人の経費や報酬に充てるため申立人があらかじめ納めるお金のことです。相続財産管理人は、相続財産を管理したり、債権者に支払いをしたりするため、経費が発生します。また、これら作業を専門家に依頼する場合報酬も発生します。相続財産が少ない場合、費用や報酬が不足することも考えられるため、予納金が必要になります。予納金の金額は、事案に応じて裁判所が決めます。100万円などという金額になることもあります。

    相続の処理が終わり、費用の精算と報酬の支払いが終わりそれでも予納金に残りがある場合には、返金されます

5、まとめ

今回は、相続財産管理人制度について解説してきました。相続人がいない、あるいは相続人がいても相続放棄するという場合、相続債権者が弁済を受けるなどのためには、相続財産管理人の選任が必要になります。

ただ、相続財産管理人の申し立てには、多数の提出書類が必要であり、手続きも複雑なので非常に手間が掛かります。費用は掛かりますが、時間や手間を考えると弁護士、司法書士などの専門家に依頼するのが合理的と言えます

ベリーベスト法律事務所では、税理士も在籍しており、相続全般についてワンストップサービスを提供しております。相続について相談がある場合には、お気軽にご相談ください。

この記事の監修
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〒 106-0032 東京都 港区六本木1-8-7 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
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2010年12月16日
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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