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養子縁組を解消する場合の手続きや注意点、相続関係について弁護士が解説

2019年11月12日
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養子縁組を解消する場合の手続きや注意点、相続関係について弁護士が解説

あなたの結婚相手に連れ子がいる場合、結婚の際にその子と養子縁組をするかもしれません。

あなたが連れ子と養子縁組をした場合には、あなたとその子との間で親子関係を生じますが、その後、配偶者と離婚した場合でも、連れ子との親子関係は継続するので注意が必要です。そのままにしておくと、死後、あなたの遺産が離婚した元配偶者の連れ子に相続されることになります。

本コラムでは、養子縁組を解消する方法や注意点、法律の定める相続関係について、弁護士が解説いたします。

1、養子縁組を解消することの意味や効果は?

  1. (1)養子縁組を解消するとは?

    養子縁組の解消とは、養子縁組によって成立した法的な親子関係を消滅させることです。結婚相手の連れ子を養子にした場合、その子どもと血縁関係がなくても法律上の「親子」になります。その関係を解消しない限り、互いに遺産相続権が発生するなど法的な権利義務関係が続きます。

  2. (2)養子縁組を解消しない場合に生じる義務や権利とは?

    養子縁組を解消しない場合、親として養子に扶養義務を負い続けます。たとえば、元配偶者が養育費を請求してきたら、収入状況に応じて養育費を払わねばなりません。
    成人後も、子どもが生活に困ったら、親として扶養料を負担しなければならない可能性もあります。

    一方、養子・養親(養子の親となる者をいいます。以下同じです。)はお互いに相続権を持つので、あなたが死亡したら養子が子どもとして遺産を相続します。死亡時にあなたに実子(血縁関係上の子をいいます。以下同じです。)ができていたら、実子と養子との間で大きなトラブルが発生する可能性もあります。

  3. (3)養子縁組を解消できないケースとは?

    養子縁組を解消するためには、基本的に養子と養親が話し合いをして「離縁届」を役所に提出する必要があります。この手続きを「協議離縁」といいます。
    相手が協議での養子縁組解消に応じない場合、離縁調停や離縁訴訟(裁判)が必要となりますが、調停でも最終的には相手が同意しないと離縁できませんし、訴訟では「法律が認める離縁理由」を証明できないと離縁できません。

    なお、離縁前に養子または養親が亡くなってしまったら、家庭裁判所の許可を得て離縁をすることができます(民法811条6項)が、離縁前に養子または養親が亡くなっている以上、相続は発生します。結局、あなたが離婚した元配偶者の連れ子を養子にしたものの、事情があってその子への相続を避けたい場合、あなたが亡くなる前に養子縁組の解消をしておかなければならないのです。

2、養子縁組を解消すると、戸籍や名字はどうなる?

  1. (1)養子の名字はどうなる

    養子縁組を解消した場合、養子の名字は基本的に養子縁組前の姓に戻ります。ただし、養子縁組から7年が経過していれば、離縁から3か月以内の届出によって、養子縁組時の姓を名乗ることが可能です。

  2. (2)養子の戸籍はどうなる

    養子縁組中、養子は養親の戸籍に入っています。養子縁組が解消されると、養子は養親の戸籍からは抜けるので、元の戸籍に戻るか、新しい養子のみの戸籍を編成するかを選択します。この取り扱いは、夫婦が離婚したときの妻の戸籍の扱いと同じです。

  3. (3)養親の戸籍はどうなる

    養子縁組を解消した場合、養親の戸籍は大きく変わりません。ただし、中に入っていた養子が抜けるので、「○月○日養子縁組解消」と書かれて養子が戸籍から出ていったことが明記されます。

3、養子縁組解消の手続きの流れや注意点

養子縁組を解消したい場合、以下のように手続きを進めていきましょう。

  1. (1)養子縁組解消の手続きや流れ

    ●協議離縁
    まずは養子と話し合いをして、協議離縁による養子縁組解消を目指します。相手が養子縁組解消に同意すれば「協議離縁届」を作成し、役所に届出をしましょう。不備なく受け付けてもらえたら、離縁が成立して戸籍を書き換えてもらえます。

    ●調停離縁
    話し合いをしても相手が離縁に応じてくれない場合や、相手と話し合いができない状態であれば、家庭裁判所に「離縁調停」を申し立てましょう。
    離縁調停をすると、調停委員が間に入って離縁のための話し合いを仲介してくれます。
    既にあなたと配偶者の離婚が成立しており、各事情を考慮しても養子縁組を継続する必要性がないのであれば、調停委員からも養子に対し養子縁組解消に応じるよう説得してもらえるでしょう。
    結果として、養子が養子縁組の解消に応じたら、調停によって親子関係を終了させることが可能です。

    調停が成立すると、調停調書が作成されますが、その謄本の交付を家庭裁判所に申請して取得したうえ、これを役所に持参して離縁届を提出すると、戸籍を書き換えてもらえます。離縁届は調停成立の日から10日以内に出さないといけないので、急いで提出しましょう。

    ●審判離縁
    調停でおおむね離縁することに合意できているのに、相手が突然裁判所に来られなくなったなど、離縁を認めるのが相当と判断されるケースでは、「審判」によって離縁が認められるケースもあります。審判が成立したら、自宅宛てに「審判書」が届きます。その後2週間経つと審判が確定するので、裁判所に申請をして確定証明書を入手します。そして審判書と確定証明書を役所に持参すれば離縁届を提出できます。

    ●裁判離縁
    調停でも養子が養子縁組解消に同意しない場合には、基本的には離縁裁判によって離縁するしかありません。ただし、裁判で離縁が認められるには、以下の「法律上の離縁理由」が必要です。

    • 相手から悪意で遺棄された
    • 相手が3年以上生死不明
    • その他縁組を継続しがたい重大な事由がある


    単に「親同士が離婚した」「養子に相続させたくない」という理由だけでは必ずしも裁判離縁を認めてもらえない場合もあります。できれば訴訟前の話し合いの段階で縁組を解消しておくことが望ましいといえるでしょう。

    訴訟で離縁が認められた場合には、自宅宛に「判決書」が送られてきます。当事者のどちらかが控訴しない限り2週間後に確定するので、裁判所に「確定証明書」の申請をして、判決書と確定証明書を役所に持参して離縁届を提出しましょう。

  2. (2)養子縁組を解消できるタイミングは?

    養子か養親のどちらかが養子縁組の解消の前に死亡してしまったら、その者の相続が生じてしまいます。すでにご紹介したように死後離縁という手続きもありますが、これによって相続をなかったことにはできません。したがって、養子への相続を事情があって避けたい場合、お互いに生きている間に養子縁組を解消しておく必要があります。

  3. (3)養子縁組解消の注意点

    相手が養子縁組の解消に応じてくれないからといって、勝手に離縁届を作成して役所に提出してはなりません。
    無断で相手の分の署名押印をすると「文書偽造罪」が成立する可能性がありますし、そういった離縁届を提出すると「公正証書原本不実記載罪」という罪が成立してしまう可能性があります。
    当然、そのような形で届け出られた離縁届は無効です。
    離縁したい場合は、きちんと相手と話し合いをして正しい方法で進めましょう。

4、養子縁組の解消を拒まれた場合にできることとは?

  1. (1)養子が拒む場合の対応方法や手続きの流れ

    養子が15歳に達していれば、養子本人に養子縁組の解消を申し入れます。拒絶されたら家庭裁判所に離縁調停の申立てをしましょう。それでも同意しない場合には離縁訴訟を提起します。 養子が15歳未満の場合、離縁後に法定代理人となる養子の実父母と話し合いをします。調停や訴訟も実父母が相手方となります。

  2. (2)実父母が拒む場合の対応法や手続きの流れ

    養子が15歳に達している場合、実父母が縁組解消を拒んでも影響はありません。養子本人に養子縁組解消の申入れをして、協議で離縁しましょう。 養子が15歳未満の場合、実父母が縁組解消を拒んでいると協議離縁できないので、離縁調停を申し立てます。調停でも離縁できなければ裁判で離縁を目指すかどうか、検討する必要があります。

5、養子縁組を解消する場合、しない場合の相続関係

  1. (1)養子縁組を解消した場合、相続はどうなる?

    養子縁組を解消したら、養子との親子関係がなくなるので、お互いに相続することはありません。親が亡くなっても子どもは相続しませんし、反対に子どもが先に死亡しても親は相続しません。

  2. (2)養子縁組を解消しない場合の相続関係は?

    養子縁組を解消しない場合には、「親子」としての相続関係が続きます。したがって、あなたの死亡時に配偶者がおらず、養子にした連れ子以外に子どももいない場合には、連れ子がすべての遺産を相続することとなります。あなたが再婚し、再婚相手との間に子どもができた場合には、その結婚相手、子どもたちと連れ子で法定相続分を分け合うことになります。連れ子や養子だからといって相続分を減らされることはなく、実子とまったく同等の相続分が認められます。
    亡くなった養親の相続人が複数いる場合の遺産分割では、養親の配偶者と養親の実子、連れ子が全員「法定相続人」として、共同で「遺産分割協議」をしなければなりません。養親の配偶者や実子と連れ子の意見が合わずに大きなトラブルになる可能性があるので注意が必要です。
    遺言書を作成すれば配偶者や実子にすべての遺産を相続させることも可能ですが、それでも養子には「遺留分」(いわば相続人の最低保障分)が認められるので、遺留分侵害額請求をされてトラブルになる可能性があります。

    反対に子どもが先に死亡し、その子どもにさらに子どもがいなければ、親であるあなたが子どもの遺産を相続します。この場合には、元配偶者(親として相続人になる)や子どもの配偶者と遺産分割協議をしなければならないので、それはそれで面倒ですしトラブルの種になります。

    もしもこのような結果になりたくない事情があるなら、事前に養子縁組を解消しておくべきといえるでしょう。

    もっとも、事前に養子縁組を解消していなかった場合でも、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄をすれば、相続に関する問題に関与しなくてよくなります。

6、まとめ

連れ子のいる相手と結婚し、連れ子と養子縁組をしたものの離婚することになったという場合、もし養子に相続をさせたくない事情があるのであれば、養子縁組を解消する必要があります。手続きを忘れていると、将来大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
自分たちで話し合いをしてもうまく解決できない場合には、専門家がサポートいたします。弁護士は、あなたの代理人として相手と話し合いをすすめたり、調停、訴訟の代理を務めたりすることもできます。
当事務所では、離婚や相続問題に力を入れて取り組んでいます。養子縁組を解消したい、将来の遺産相続が心配、という方は、まずは一度ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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