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遺産相続コラム

法定単純承認とは? 財産から葬儀費用を出すと相続放棄できなくなる?

2022年05月26日
  • 相続放棄・限定承認
  • 法定単純承認

法定単純承認とは? 財産から葬儀費用を出すと相続放棄できなくなる?

被相続人が死亡し、相続が開始したとしてもすべての相続人が遺産の相続を希望するとは限りません。被相続人に多額の借金がある場合や相続争いに巻き込まれたくないなどの理由から相続放棄を検討しているという方もいるでしょう。

このような場合には、法定単純承認に該当する行為をしないように注意が必要です。法定単純承認に該当する行為をしてしまうと、相続放棄や限定承認ができなくなります。法定単純承認にあたる事由にはさまざまなものがありますので、後日、不利益を受けることのないようにきちんと理解しておくことが大切です。

今回は、どのような行為が法定単純承認に該当するのか、法定単純承認以外にどのような相続方法があるのかについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、法定単純承認とは

法定単純承認とは、民法で定められている一定の事由に該当する行為をした場合に、相続することを認めたとされ、相続放棄や限定承認ができなくなることです(民法921条)。

相続をするか(単純承認)、相続をしないか(相続放棄、限定承認)については、相続人が自由に決めることができますが、いつまでたっても相続するかどうかを決めない状態だと相続人の債権者や被相続人の債権者が著しく不安定な立場に置かれることになります。そのため、一定期間の経過や一定の事由が生じた場合には、相続人が相続したものとみなすことによって、権利を確定することが法定単純承認の目的です。

したがって、相続放棄や限定承認を検討している方は、相続開始後はこの法定単純承認に該当する行為をしないように注意する必要があります。

2、法定単純承認となってしまう行為とは

法定単純承認となってしまう行為にはどのようなものがあるのでしょうか。以下で詳しく説明します。

  1. (1)相続財産の全部、または一部を処分したこと(民法921条1号)

    相続財産の処分とは、限定承認や相続放棄をする前に相続財産の現状や性質を変更する行為のことをいいます。具体的には、以下のような行為が処分にあたります。

    ① 被相続人の預貯金口座を解約した
    被相続人の預貯金口座を解約し、そのお金を使ってしまった場合や自分の預貯金口座に入金をしてしまった場合には、相続財産の処分とみなされ、法定単純承認となる可能性があります。

    預貯金口座を解約すること自体は、直ちに法定単純承認に該当するとはいえませんが、解約した口座から引き出したお金を使えば、当然それは処分に該当することになります。

    また、普段から引き落としなどで利用している預貯金口座に解約したお金を入金すると、自己の預貯金と混ざってしまい、日々の引き落としなどで消費してしまいますので、これも処分に該当する可能性が高くなります。

    うっかり預貯金口座を解約してしまった場合には、引き出した預貯金を封筒などに入れて現金として保管をしておくか、預貯金口座に入金するのであれば、自分の預貯金と区別することができるように、引き落としなどで利用をしていない口座に入金をしておくようにしましょう。

    ② 不動産を売却した
    相続財産に含まれる不動産を売却した場合には、法定単純承認事由である相続財産の処分に該当します。

    老朽化した建物を取り壊して、さら地として売却をするという場合でも、建物を取り壊すこと自体が相続財産の処分に該当しますので、土地を売却する前であっても法定単純承認に該当することになります。

    ③ 被相続人の借金を相続財産から返済した
    弁済期の到来した債務の弁済については、法定単純承認とならない行為(保存行為)に該当すると考えられていますので、被相続人の借金を返済すること自体は、相続財産の処分にはあたりません。

    しかし、亡くなった方の借金の返済資金をその相続財産から支出した場合には、相続財産の処分に該当してしまいますので注意が必要です。被相続人の借金を返済する場合には、相続財産からではなく、相続人固有の財産から支出するようにしましょう。

    ④ 受取人が定められていない死亡退職金や生命保険金を受け取った
    受取人が定められていない、または受取人が被相続人と指定されている死亡退職金や生命保険金は、相続財産に含まれると考えられています。そのため、相続財産に該当する死亡退職金や生命保険金を受け取ると法定単純承認に該当する可能性があります。受取人が指定されている死亡退職金や生命保険金は受取人の固有の財産となるため、例外はありますが、原則として相続の対象にはなりません。

  2. (2)熟慮期間内に限定承認や相続放棄をしなかったこと

    相続人は、自分が相続人となりうる相続手続きが始まったと知ったときから3か月以内に単純承認、限定承認、相続放棄をしなければなりません。この期間を「熟慮期間」といい、熟慮期間内に限定承認、相続放棄の手続きをとらなかった場合には、単純承認がなされたものとみなされます(民法921条2号)。

    そのため、限定承認や相続放棄を検討している方は、この熟慮期間内に手続きを行わなければなりません。

  3. (3)限定承認・相続放棄後の背信的行為があったこと

    相続人が限定承認または相続放棄をした後であっても、相続財産を隠したり、自分のために消費したり、わざと財産目録に相続財産を記載しなかった場合には、単純承認をしたとみなされます(民法921条3号)。

    このような背信的な行動をとった相続人には、相続債権者の犠牲のもとに限定承認や相続放棄といった利益を与えるのは相当ではないため、相続債務を承継させるという、一種の民事的制裁を科すものといえます。

    ① 相続財産を隠す
    相続財産の全部または一部について、所在を不明にする行為のことです。相続財産を隠したと判断される基準は、相続人がその行為によって被相続人の債権者などに損害を与えるおそれがある、と認識していることです。

    なお、相続放棄後に形見分けがなされたとしても、経済的価値が低く、社会通念上相当な範囲であれば相続財産を隠す行為にはあたりません。

    ② 相続財産を自分のために消費
    ほしいままに相続財産を処分し、原形の価値がなくなってしまう行為のことです。たとえば、被相続人の財産の存在を明らかにせず、存在することを示す客観的な証拠も提出しないということがあった場合には、この行為に該当したといえるでしょう。

    ③ わざと財産目録に相続財産を記載しない
    相続について限定承認をした場合に、その財産が相続財産に含まれることを知りながら財産目録に記載をしない行為です。借金などのマイナス財産の財産目録への不記載も、法定単純承認にあたります。

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3、法定単純承認とならない行為(保存行為)とは

以下のような行為であれば法定単純承認には該当しません。

  1. (1)被相続人の財産から葬儀費用を支払うこと

    被相続人の財産から葬儀費用を支払うことは、一見すると相続財産の処分となるように見えます。しかし、葬儀費用の支出については、社会的儀礼としての必要性が高く、支出時期の予測が困難であるため、被相続人の葬儀費用を相続財産から支出したとしても社会的見地からは不当とはいえないと考えられています。そのため、被相続人の財産から葬儀費用を支払ったとしても相続財産の処分にはあたりません。

    同様の理由から、仏壇や墓石を相続財産から購入することも、その額が社会的に不相当に高額でない限り相続財産の処分にはあたりません。

  2. (2)被相続人の自宅の冷蔵庫内の食品を処分すること

    被相続人の自宅の冷蔵庫内に食品などが残されている場合、そのまま放置していると腐敗して悪臭を発する可能性があります。この場合には、冷蔵庫内の食品を処分したとしても、それは処分行為ではなく保存行為となり、法定単純承認にはあたりません。

  3. (3)被相続人の家を修繕すること

    被相続人の家が老朽化したからといって、それを取り壊してしまうと相続財産の処分に該当してしまいます。しかし、老朽化した状態で放置すると、屋根や壁の崩落によって通行人や近隣住民に危害を加えるおそれがありますので、現状維持を目的とした修繕を行うことは、保存行為として法定単純承認には該当しません。

    このほかにも、相続手続きを行う前に相続人にどれだけの財産があるか調査をしたり、お金に変えようと思っても難しいような、価値が無いものを形見分けしたりすることは保存行為とみなされます。ただし、一般の方には判断が難しいこともありますので、不安に思われる方は弁護士へ問い合わせることをおすすめします。

4、法定単純承認以外の相続方法

単純承認以外にも以下の相続方法があります。相続財産に含まれる資産と負債の状況を踏まえて、どのような相続方法をとるのかを決めるようにしましょう。

  1. (1)相続放棄

    相続放棄とは、相続財産を一切相続したくない場合にとられる方法です。

    相続放棄をすることによって、最初から「相続人ではない」ことになるため、遺産を相続する権利を失うことになります。被相続人に多額の借金があり、借金を相続したくないという場合や相続人同士で遺産をめぐる争いが予想されるため、相続争いに巻き込まれるのを回避したいという場合に利用されます。

    相続放棄をすると、マイナスの財産だけでなくプラスの財産もすべて相続することができなくなりますので、相続放棄をするかどうかは、被相続人の相続財産をしっかりと調査してから判断することが大切です。
    なお、相続放棄をする場合には、自分が相続人となりうる相続手続きが始まったと知ったときから3か月以内に、家庭裁判所において「相続放棄の申述」という手続きをしなければなりません。

  2. (2)限定承認

    限定承認とは、相続財産からマイナスの財産を清算して、プラスが生じた場合に限り相続財産を引き継ぐという相続方法です。相続放棄がすべての遺産を相続する権利を放棄するものであるのに対して、限定承認は、一応相続はするものの、その範囲はプラスの財産の限度という留保付きの相続であるという違いがあります。

    限定承認も相続放棄と同様に、自分が相続人となりうる相続手続きが始まったと知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に限定承認の申述の手続きをしなければなりません。

    相続放棄は、各相続人が単独で行うことができる手続きですが、限定承認は、相続人全員で行わなければならないという違いもあります。

    参考:相続放棄と限定承認

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5、まとめ

法定単純承認事由には、悪意があってやっている行為から意図しないちょっとした行為までさまざまなものが含まれます。自分自身の判断で「これは大丈夫だろう」と安易に手続きを進めてしまったところ、法定単純承認に該当し、相続放棄をすることができなくなるリスクもあります。そのため、相続が開始した場合には、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、迅速かつ正確な相続財産調査を実施し、お客さまの事情やご希望に応じた適切な相続方法をご提案いたします。相続人同士で争いがある場合には、お客さまの代理人として遺産分割手続きを代行することもできますので、どうぞ安心してお任せください。

遺産相続に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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