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遺産相続コラム

生前に相続放棄は可能? 遺留分放棄や相続分放棄との違いを弁護士が解説

2023年01月10日
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生前に相続放棄は可能? 遺留分放棄や相続分放棄との違いを弁護士が解説

何らかの理由で、生前に相続放棄をしておきたい、または相続人に相続放棄を求めたい、と考える方もいるでしょう。

たとえば、後の相続トラブルに巻き込まれないように事前に相続放棄をしておきたい、と思ったり、高齢になって再婚するときに、自分の子どもに財産を残せるよう再婚相手に相続放棄をしてほしいと思ったりすることもあるかもしれません。

しかし、被相続人(亡くなった方)の生前に相続放棄をすることは認められていません。この場合、被相続人に遺言書を作成してもらうだけでなく、遺留分の放棄も行うことによって対応する必要があります。

この記事では相続放棄と遺留分放棄との違い、そして勘違いされやすい相続分放棄との違いについて、注意点を交えながらベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

1、生前に相続放棄はできない

「将来相続しないためには、生前に相続放棄すればよい」と考えている方がいるかもしれません。しかし法律的に、被相続人の生前の相続放棄は認められていません。

相続放棄とは、相続人となった方が、資産も債務も含めて一切の相続をしないと表明することです。単に口頭で「相続を放棄します」と言えばよいものではなく、家庭裁判所に「申述」をして、受理される必要があります。申述は相続開始後にしかできないので、被相続人の生前に相続放棄の手続きをすることはできません。

このように「生前に相続放棄する方法」は一切存在しないので、まずはこの点をしっかり押さえておきましょう。

2、相続放棄の代わりに生前のうちにできる対策、遺留分放棄とは?

生前に相続放棄をすることはできませんが、生前に遺留分放棄をすることは可能です。

詳しく見ていきましょう。

  1. (1)遺留分とは?

    遺留分とは、一定の範囲の相続人に対して法律上保障されている最低限度の遺産の取得割合のことをいいます。法定相続人には、遺産を取得することへの期待がありますので、そのような期待を保護して、相続人の生活保障を図るために遺留分が認められています。

    たとえば、被相続人が「長男にすべての遺産を相続させる」という内容の遺言書を作成していた場合には、他の相続人の遺留分を侵害することになりますが、このような内容の遺言書も法律上は有効です。

    遺留分侵害を受けた相続人は、遺留分侵害額請求を行うことによって、侵害された遺留分に相当するお金を取り戻すことができます。

  2. (2)遺留分が認められる人

    遺留分は、すべての法定相続人に認められているわけではありません。遺留分が遺産取得への期待の保護や相続人の生活保障を図るという趣旨であることから、被相続人の兄弟姉妹にまで遺留分という手厚い保護を及ぼす必要はないと考えられています。そのため、遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人です。

    また、遺留分として保障されている相続割合は、以下のようになります。


    お使いの機種によって横にスクロールが可能です。

    遺留分の割合について

    相続人の構成 ①相続人全員の
    遺留分割合
    ②相続人それぞれの遺留分割合
    配偶者 子ども 父母 兄弟
    配偶者のみ 1/2 1/2 × × ×
    配偶者と子ども 1/2 1/4 1/4 × ×
    配偶者と父母 1/2 1/3 × 1/6 ×
    配偶者と兄弟 1/2 1/2 × × ×
    子どものみ 1/2 × 1/2 × ×
    父母のみ 1/3 × × 1/3 ×
    兄弟のみ × × × × ×
  3. (3)遺留分放棄とは?

    遺留分放棄とは、遺留分を有する相続人が自己の遺留分を放棄することをいいます。相続放棄とは異なり、遺留分放棄は、被相続人の生前であっても行うことができます。ただし、遺留分を失うという重大な効果を伴うものであることから、被相続人の生前の遺留分放棄は、厳格な要件のもとでのみ認められています。

    被相続人が遺留分権利者に対して一切の財産を残さない内容で遺言書の作成をし、遺留分権利者が遺留分放棄を行うことによって、相続放棄をした場合と同様の効果を得ることが可能です。

    このように、遺留分放棄は遺留分権利者自身が行う手続きであるため、被相続人が勝手に行うことはできません。

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3、生前に遺留分を放棄する際の手続きの流れ

遺留分放棄をするためには、家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。手続き方法と注意点を見ていきましょう。

  1. (1)遺留分放棄の許可申し立てを行う方法

    被相続人の生前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所に「遺留分放棄の許可の申立」をする必要があります。具体的な手続きとしては、以下のようになります。

    ① 申立人
    遺留分放棄の許可の申し立てをすることができるのは、遺留分を有する相続人に限られます。

    ② 申立先
    遺留分放棄の許可の申し立ては、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。

    ③ 申し立てに必要な費用
    ・申立手数料 800円(収入印紙)
    ・連絡用郵便切手
    連絡用郵便切手の金額および組み合わせは、申し立てをする裁判所によって異なってきますので、詳しくは管轄の家庭裁判所にお尋ねください。

    ④ 申し立てに必要な書類
    ・遺留分放棄の許可の申立書
    ・被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
    ・申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)

    ⑤ 申し立て後の流れ
    家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申し立てをした後は、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
    ・裁判所から審問期日の通知
    ・審問期日に家庭裁判所に出頭
    ・遺留分放棄の許可または不許可の通知
    家庭裁判所の審問期日では、裁判官が申立人と面談を行い、遺留分放棄の申し立てに至った事情や相続財産の状況などについて口頭での説明を求められます。裁判官は、申立書の内容および審問期日での説目を踏まえて、遺留分放棄の申し立てが申立人の真意によるものであるかどうか、遺留分放棄の要件を満たすかどうかなどを判断します。

  2. (2)生前に遺留分放棄する際の注意点

    遺留分は重要な権利ですので、遺留分放棄の許可申し立てを行いさえすれば、簡単に許可してもらえるというものではありません。生前に遺留分放棄をする場合には、いくつか注意点があります。

    ● 常に遺留分放棄が認められるとは限らない
    前述のとおり、遺留分放棄は、遺留分権利者の自由意思に基づくことが必要です。被相続人や他の親族による不当な干渉によって遺留分放棄の申し立てが行われた場合には、申立人の自由意思に基づくものではないとして却下されてしまうでしょう。

    ● 遺留分権利者に相応の補償が行われている必要がある
    遺留分権利者に相応の補償が行われていることも、裁判所が遺留分放棄の許可審判を出すうえで重要なポイントです。すなわち遺留分放棄の代償として、相当な財産の生前贈与が行われたり特別受益に該当する贈与が行われたりされていると、家庭裁判所が、この遺留分放棄申し立ては許可相当であると判断して許可の審判をする可能性は高まります。

    ● 遺留分放棄の必要性、合理性
    たとえば財産の散逸を防ぐ目的や不動産の細分化を防ぐ目的、遺産紛争を避けるためなど、合理的な理由が認められる申し立てであれば、遺留分放棄が認められる可能性は高いでしょう。何らかの理由がないと、遺留分放棄が認められない可能性が高いです。

    ● 遺留分放棄に債務免除(債権放棄)の効果はない
    遺留分放棄に、債務免除の効果はありません。被相続人に借金がある場合、遺留分放棄をした相続人は、最低限の遺産の取り分を手放したにもかかわらず、被相続人の借金は負担しなければならないという事態にもなりかねません。

    そのため、被相続人に借金がある場合には生前に遺留分を放棄するのではなく、相続放棄を検討するようにしましょう

4、相続放棄と相続分放棄との違い

次に、相続放棄と間違えやすい「相続分放棄」についても知っておきましょう。

  1. (1)相続分放棄とは?

    相続分放棄とは、遺産相続をした方が、自分の相続分を放棄することです。

    相続放棄のように家庭裁判所に正式に申述して受理してもらうのではなく、相続分を放棄するという、相続人単独の意思表示で行うものです。たとえば、被相続人の死後、相続人らが遺産分割協議をするときに、ある相続人が「私は一切相続財産を受け取りません。相続分を放棄します。」と表明することにより、相続分を放棄します。

    相続分放棄をすると、その相続人はプラスの相続財産を受け継ぎません。

  2. (2)相続放棄と相続分放棄との違い

    相続放棄と相続分放棄にはどのような違いがあるのでしょうか?

    ● 方法の違い
    相続放棄と相続分放棄では、手続きや方法がまったく違います。相続放棄するときには、相続放棄を希望する者が家庭裁判所に「相続放棄の申述」をして受理してもらう必要があります。
    これに対し相続分放棄の場合には、方式は定められておらず、相続分を放棄する相続人が意思表示することで行うことができます。

    ● 効果の違い
    相続放棄と相続分放棄は効果も大きく異なります。
    相続放棄の場合には、相続放棄をした者は、はじめから相続人ではなかったことになるので、資産も債務も一切承継しません。

    これに対し相続分放棄の場合には、相続人ではなかったことにはならず、いったん相続した者が相続分を放棄するという形なので、相続債権者には対抗できません。つまり、相続分を放棄しても、負債については法定相続分に対応する部分を相続してしまいます。

    負債を相続したくないのであれば、相続分放棄ではなく相続放棄をする必要があります。そうしないとプラスの資産は相続できないのに負債だけ相続する形になってしまいますので、注意が必要です。

    ● 法定相続分の計算方法の違い
    相続放棄の場合には、放棄をした者が、はじめから相続人ではなかった前提で法定相続分を計算します。一方、相続分放棄の場合には、相続分を放棄した方の相続分を、他の法定相続人にその相続分で割り振ります。そのため、どちらの方法を使うかによって、他の相続人の法定相続分も変わってくる可能性があります

    たとえば、配偶者と子ども2人(A、B)が相続人のとき、本来の法定相続分は以下のとおりです。
    ・配偶者……2分の1
    ・子ども2人(A、B)……4分の1ずつ(2人×2分の1=4分の1)
    この状況で、子どもAが相続放棄または相続分放棄を行うとしましょう。

    <相続放棄の場合>
    ・配偶者の相続分……2分の1
    ・子どもBの相続分……2分の1
    ・子どもAの相続分……なし

    <相続分放棄の場合>
    相続分放棄では、相続分を放棄した子どもAの相続分4分の1を、配偶者と、子どもBが、分け合います。
    ・配偶者と子どもBの法定相続分の対比……2対1(配偶者は2分の1:子どもBは4分の1)
    ・配偶者の相続分……2分の1+(4分の1×3分の2)=3分の2
    ・子どもBの相続分……4分の1+(4分の1×3分の1)=3分の1
    ・子どもAの相続分……なし

    ● 期限の違い
    相続放棄には、「自分のために相続があったことを知ってから3か月」という期限があります。基本的には、相続開始後3か月以内に相続放棄の手続きをとる必要があります。

    これに対して相続分の放棄には期限はありません。

    ● 相続手続きにおける違い
    不動産の名義書き換えなどの相続手続きにおける必要書類にも違いがあります。
    相続放棄の場合には、家庭裁判所から受け取った「相続放棄の受理通知書」または「受理証明書」が必要です。

    一方、相続分の放棄の場合には、遺産分割協議書のほかに、実印を押捺して印鑑証明書を添付した、放棄者が相続分を放棄したことを示す「相続分の無きことの証明書」などの書類が用いられることもあります。

5、遺留分を放棄した相続人に財産を残す方法

遺留分を放棄した相続人に対して、被相続人としては何らかの財産を残したいと考えることもあるでしょう。

遺留分を放棄した相続人に対してどのように財産を渡せるのか、その方法をいくつかご紹介します。

  1. (1)遺言書を活用して別に財産を残す

    ひとつは、遺言書によって財産を残しておく方法です。遺留分を放棄した相続人に対しても、遺言によって財産を残すことは認められますので、遺言で、遺留分を放棄した相続人にも最低限残してあげたい財産を渡すよう、指定しておくことが考えられます。

    なお、遺言書を残すときには、必ず「公正証書遺言」にしておくことをおすすめします。
    遺言書の方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」がありますが、中でももっとも確実で事後に無効になりにくい形式が公正証書遺言です。

    特に、家族が反対する中で再婚するケースなどでは、ご本人の死後に親族同士で遺産争いが発生する可能性があります。遺留分まで放棄してくれた再婚相手に、ささやかな財産を残そうと思っていても、そのささやかな財産に対してまで、自筆遺言証書だと、「偽造だ」と難癖をつけられる恐れがないとはいえません。

    公正証書遺言は公証役場で公証人が、遺言者の意思を確認して作成するものであるため、偽造や捏造(ねつぞう)といった疑惑を持たれることはないでしょう。

  2. (2)生命保険のお金を残す

    次に、生命保険を活用する方法があります。生命保険の死亡保険金は、原則的に相続財産に入らないことになっています。つまり指定された受取人が全額受け取ることができますので、他の相続人と遺産分割協議によって分け合う必要がありません。

    そして、遺留分を放棄した相続人に、生命保険を受け取らせることも可能です。そのため、遺留分を放棄した相続人を生命保険の受取人に指定しておけば、財産を渡すことができるでしょう。

  3. (3)生前贈与する

    もうひとつの方法が生前贈与です。生前贈与とは、被相続人が亡くなる前に、相続人へ財産を贈与しておくことをいいます。

    生前贈与すると贈与税がかかりますが、贈与税には、毎年110万円までの贈与であれば基礎控除の範囲内に収まるため納税が不要となるなど、さまざまな控除制度があります。亡くなるまでの間、現金などを少しずつ贈与することが可能です。

    なお、20年以上連れ添った配偶者であれば、2000万円までの居住用不動産そのものや不動産購入・建築費用の贈与が無税になる制度もあります。

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6、まとめ

何らかの理由で、被相続人の生前に相続放棄をしたい、あるいは、相続放棄をしてほしい場合、財産状況を確認して、適切に対応することが大切です。

将来の遺産相続をスムーズに進めていくには弁護士によるアドバイスを受けることをおすすめします。

相続放棄や遺留分放棄に関してお悩みがありましたら、ぜひとも一度、ベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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