お悩み相談室(コラム)

未登記建物を相続する場合に知っておくべき、遺産分割協議書の書き方

2019年12月24日
  • 遺産分割協議
  • 未登記建物
  • 相続
  • 遺産分割協議書

未登記建物を相続する場合に知っておくべき、遺産分割協議書の書き方

不動産の相続手続きは色々と手間がかかるものですが、そのなかでも特に問題となりやすい不動産が「未登記建物」です。未登記建物とは、登記されていない建物のことです。より厳密にいえば、登記簿には不動産の物理的な情報を記載している「表題部」と、不動産の権利に関する事項を記載している「権利部」に分かれており、表題部の情報が記載されていない(表題登記がない)建物が未登記建物ということになります。なお、不動産登記法第2条1項20号は、表題登記について「表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初に登記される登記をいう。」と定めています。

表題登記がなされない限り、権利に関する登記はできないので、表題部の記載があっても権利部の記載がない登記は存在しますが、表題部の記載がなく権利部の記載だけがある登記は存在しません。

(なお、表題部の記載があるだけで、所有権保存登記などの権利部の記載がない登記は、建物についてはかなりの数が存在しており、こうした建物も未登記建物と呼ばれることもありますが、このコラムでは、表題部すらない未登記建物に限定して述べます。)

まず、不動産登記法第47条1項は、未登記建物の所有権を取得した者に対し、1ヶ月以内に登記申請をしなければならないという義務を定めています。また、不動産登記法第164条は、登記申請を怠った者に対して罰則を定めています。

未登記建物であっても、相続の対象になります。従って、未登記建物の所有者が死亡して相続が発生した場合には、未登記建物を相続した相続人は、不動産登記法の規定に従い、その建物の表題登記の登記申請義務を負担することになります。

また、未登記建物を相続する場合、遺産分割協議書の作成には注意が必要です。本コラムでは、未登記建物の相続に関わる問題点や遺産分割協議書の作成方法など、一連の相続手続における未登記建物の取り扱いについて、相続業務を幅広く取り扱っているベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、未登記建物は、そのまま未登記でも良い?

  1. (1)不動産登記法上、未登記建物を取得した者には表題登記申請義務がある

    不動産の権利関係や現況などを登記簿に記録して公示する不動産登記制度に基づき、不動産登記法は、土地や建物といった不動産の所有権を取得した場合等に、不動産の所有権取得者に表題登記申請をすべき義務を定めています。

    例えば、不動産登記法第47条は、表題登記がない建物(未登記建物)を取得したときは、1ヶ月以内に法務局へ表題登記を申請しなければならないと定めています。建物の表題登記をすると、これで初めてその建物についての登記記録ができることになり、登記記録が記載される登記簿には、所在・家屋番号・建物の種類・構造・床面積・所有者の氏名住所等といった事項が、まず表題部に記載されることになります。
    この表題登記の記録に基づき、市区町村役場や税務署は都市計画の立案や固定資産税の課税を行います。土地だけではなく建物についても表題登記が原則義務化されている背景は、このように行政が適切に課税することができるようにとの目的があります。(もっとも、建物は、自治体の調査による現況判断で納税義務者に課税しますので、未登記建物であろうと課税されているのが通例です。)
    このような背景から、未登記建物の所有権取得者には、表題登記申請義務が課されることになっているのです。

  2. (2)建物を登記しないと過料に処される

    不動産登記法第164条は、土地や建物について上記の表題登記の申請を怠った者に対し、「10万円以下の過料に処する」と定めています。
    しかし、現実には未登記建物は非常に多く、実際に未登記建物のままにしている人が過料に処された事例はほとんどないと思われます。

  3. (3)未登記建物を登記しないデメリット

    未登記建物を表題登記するときは、あわせて所有権保存登記を行うことが一般的です。この所有権保存登記を行うときには登録免許税を負担する必要がありますので、この負担を避けるために、表題登記も所有権保存登記も行わないという選択をされる方もあります。これも、未登記建物が発生する原因のひとつです。
    しかし、未登記建物をそのままにしておくことで、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

    まず、所有権保存登記という権利の登記を行わないと、自分がこの建物の所有者であるということを第三者に対抗できません。そして、所有権保存登記をするためには、その前提として、表題登記の申請をして、登記を作らなければなりません。つまり、建物の表示登記がなく、建物が未登記のままだと、自分の所有権を登記することができず、自分が所有者であることを第三者に対抗できないのです。
    そうなると、仮に未登記建物の所有権者が誰なのかという争いが生じたときに、自分が未登記建物の所有者であることを第三者に示すことができません。つまり、未登記建物を売却したいときであっても、買主からすると、売主が本当にこの建物の所有者なのかも確認できないし、売主が別の人に売ってしまっているかもしれません。買った後でも、買主が、買い受けた未登記建物が自分の物だと主張するためには、表題登記と所有権保存登記を行わなければならないのです。したがって、未登記建物を売買するときには、まず売主において表題登記と所有権保存登記を行うことを求められたり、買主において表題登記と所有権保存登記を行うときには、それに協力する必要があったりなど、通常の期登記建物の売買よりも煩瑣な手続が必要になってきます。
    また、未登記建物は、表題登記もなく所有権保存登記もないので、抵当権の設定登記をすることもできません。抵当権が表示できない未登記建物を担保に金融機関から融資を受けるは、まず不可能でしょう。
    こうした点を考えると、不動産登記法が表題登記の義務を課しているからというだけでなく、自分の所有権を守るために、きちんと表題登記と所有権の登記を行っておくことが不可欠なのです。

2、未登記建物を相続する場合の手順

通常、すでに所有権保存登記など、権利の登記がなされている不動産について、相続が発生すると、登記簿上の所有権者の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人に変更する、相続を原因とする所有権移転登記手続の申請を行います。これが、いわゆる「相続登記」の手続きです。
令和元年12月現在、相続人に対して相続登記は法的に義務付けられているわけではありません。しかし、法務省は平成31年2月8日に、相続人に相続登記を義務付ける内容を含む民法及び不動産登記法の改正を視野に入れていると発表していますので、法改正により、相続登記が義務化される可能性があります。

では、相続する建物が未登記建物の場合はどうなのでしょうか。
前記のとおり、不動産登記法第47条1項は「表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と定めています。したがって、不動産登記法により、表題登記がない未登記建物の所有権者が死亡し、所有権者の相続人が、相続により当該未登記建物を取得した場合には、表題登記を行う義務が発生します。(所有権保存登記については、現在義務化はされていません。)
未登記建物の表題登記に必要な書類は各種ありますが、主なものは次のとおりです。下記の書類等を揃えて、未登記建物が所在する地域を管轄する法務局に申請します。

  • 登記申請書
  • 建物図面・各階平面図
  • 建築確認通知書(検査済証)
  • 工事人の工事完了引渡証明書・印鑑証明書・資格証明書
  • 建物の評価証明書
  • 相続証明書(戸籍謄本など)


なお、未登記建物を使用せずに直ちに取り壊す場合は、不動産の状況を正確に反映するという不動産登記法の趣旨からいえば、表題登記を行ってから滅失登記を申請するということになりますが、実際には、そこまで厳密な手続を取らず、市区町村役場の資産税課などに「家屋滅失届出書」を提出して、取り壊し以降の固定資産税の負担をしないようにしておくことで済ませてしまうのが、ほとんどではないでしょうか。

3、未登記建物の遺産分割協議書の記載方法

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の財産(遺産)について、誰が・何を・どれだけ取得するのかを話し合って決めることであり、その合意の結果を書面化したものを遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書には、その遺産分割の対象となる相続財産をすべて記載しますが、相続財産を記載するときには、財産を特定して記載することが重要です。
登記されている建物であれば、登記されている項目(所在・家屋番号・種類・構造・床面積)を、そのとおり記載すれば、充分な特定になります。しかし、未登記建物は、登記簿が存在しないため、登記簿から建物を特定する情報を転記することはできません。したがって、固定資産評価証明書や名寄帳に記載されている事項を転記して未登記建物を特定することになります。さらに、未登記建物の表示の中に(未登記)と記載して、その建物が未登記建物であることを明確にしておくとよいでしょう。

4、遺産分割協議書を作成する際の注意点

  1. (1)未登記建物もきちんと調査する

    遺産分割協議書を作成する際は、どの相続財産(遺産)を遺産分割するのか明らかにするために、相続財産(遺産)を一覧化した「財産目録」(「遺産目録」ということもあります。)を作成することが一般的です。財産目録は、遺産分割の対象となる相続財産(遺産)を明確にするものですから、未登記建物も記載しておかなくてはなりません。
    財産目録を作成するためには、被相続人(亡くなった人)が所有していた財産の調査が必要ですが、未登記建物は登記されていないため、法務局で調査することができません。未登記建物の調査の重要な手掛かりが、納税通知書です。未登記建物であっても、自治体により課税されていることがほとんどなので、納税通知書には、未登記建物も記載されていることが通常です。調査の手掛かりである固定資産納税通知書が残されていない場合は、名寄帳により調査することになります。
    名寄帳には、固定資産税を課税する市区町村役場が管轄する地域内で被相続人(亡くなった人)が所有していた不動産が一覧化されており、未登記建物も記載されています。
    また、納税通知書がある場合でも、非課税物件は記載されない、共有物件の場合には代表者にしか納税通知書が送られないなどの例外もあるので、名寄帳の確認は必須です。

  2. (2)未登記建物についても遺産分割協議の対象とする

    未登記建物であっても遺産であることに変わりはありませんので、きちんと調査をして、適正な相続税の申告を行わなければなりません。建物が建っているかどうかで、税務上の扱いが変わってくる場合もあります。
    また、未登記建物については、表題登記や所有権保存登記をこれから行っていく必要がありますが、誰が未登記建物を相続するかを、遺産分割協議書を作成する段階で決めて明記しておくことは、その後の手続きを円滑に行うために役立ちます。

5、まとめ

相続手続きにおいて未登記建物の取り扱いにお困りのことがあれば、ぜひベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。相続について豊富な知見と実績のある弁護士であれば、遺産に未登記建物が存在するかどうかの調査や、未登記建物が存在するときの適切な遺産分割協議書の作成やなどの相続に関するサポートはもちろんのこと、万が一他の相続人とトラブルが発生したときも、あなたの代理人として解決に向けた対応を依頼することができます。
ベリーベスト法律事務所では、相続業務に豊富な知見と実績のある弁護士を多数擁しております。ぜひお気軽にご連絡ください。

同じカテゴリのコラム(遺産分割協議)

  • 2019年12月24日
    • 遺産分割協議
    • 未登記建物
    • 相続
    • 遺産分割協議書
    未登記建物を相続する場合に知っておくべき、遺産分割協議書の書き方

    不動産の相続手続きは色々と手間がかかるものですが、そのなかでも特に問題となりやすい不動産が「未登記建物」です。未登記建物とは、登記されていない建物のことです。より厳密にいえば、登記簿には不動産の物理的な情報を記載している「表題部」と、不動産の権利に関する事項を記載している「権利部」に分かれており、表題部の情報が記載されていない(表題登記がない)建物が未登記建物ということになります。なお、不動産登記法第2条1項20号は、表題登記について「表示に関する登記のうち、当該不動産について表題部に最初に登記される登記をいう。」と定めています。
    表題登記がなされない限り、権利に関する登記はできないので、表題部の記載があっても権利部の記載がない登記は存在しますが、表題部の記載がなく権利部の記載だけがある登記は存在しません。
    (なお、表題部の記載があるだけで、所有権保存登記などの権利部の記載がない登記は、建物についてはかなりの数が存在しており、こうした建物も未登記建物と呼ばれることもありますが、このコラムでは、表題部すらない未登記建物に限定して述べます。)
    まず、不動産登記法第47条1項は、未登記建物の所有権を取得した者に対し、1ヶ月以内に登記申請をしなければならないという義務を定めています。また、不動産登記法第164条は、登記申請を怠った者に対して罰則を定めています。
    未登記建物であっても、相続の対象になります。従って、未登記建物の所有者が死亡して相続が発生した場合には、未登記建物を相続した相続人は、不動産登記法の規定に従い、その建物の表題登記の登記申請義務を負担することになります。
    また、未登記建物を相続する場合、遺産分割協議書の作成には注意が必要です。本コラムでは、未登記建物の相続に関わる問題点や遺産分割協議書の作成方法など、一連の相続手続における未登記建物の取り扱いについて、相続業務を幅広く取り扱っているベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

  • 2019年07月29日
    • 遺産分割協議
    • 遺産隠し
    • 相続
    • 調査
    • 対処
    兄が遺産隠しをしている!? 相続財産を隠された場合の調査方法や対処法

    兄などの相続人が「遺産隠し」をしていることが疑われる場合、隠された財産を調査したり、発見する方法はあるのでしょうか。また遺産分割協議が終わった後に特定の相続人による財産隠しが発覚した場合に遺産分割協議のやり直しができるのでしょうか。 弁護士が解説します。

  • 2019年06月05日
    • 遺産分割協議
    • 遺産
    • 相続
    • 長男
    • 独り占め
    遺産はすべて長男が独り占め。そんな主張は通用するのか? 相続問題を弁護士が解説

    父親が亡くなると「母の面倒は僕が全部みるから」などと言い出して、実家の不動産や現金・預金などのすべての遺産を長男が独り占めにしようとするケースがあります。このように特定の相続人が遺産を独占する主張は法的に通用するのでしょうか?
    今回は、長男がすべての遺産を独り占めしようとするとき、将来的に想定されるリスクや注意点、対処方法などを弁護士が解説します。

閉じる
PAGE TOP