遺産相続コラム
生涯未婚率が上昇している現在では、配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの相続も珍しくありません。
この場合、原則として兄弟姉妹が遺産を相続しますが、遺言書や生前贈与などによって他の人に財産を与えることも可能です。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な形で相続対策を行いましょう。
本記事では配偶者なし・子なし・親なし・兄弟ありの相続について、相続人の決定ルールや相続対策の方法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
家族が亡くなった際の相続順位は、民法によって定められています(下図参照)。
亡くなった方(被相続人)に兄弟姉妹がいる一方で、配偶者・子ども・親がおらず、被相続人の孫による代襲相続も発生していない場合は、法定相続人となるのは被相続人の兄弟姉妹です。
したがって、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合や、遺言書が作成されている場合などを除き、すべての遺産を兄弟姉妹が相続することになります。
兄弟姉妹が複数人いる場合、原則として各相続人の法定相続分は均等です(民法第900条第4号)。
たとえば、兄弟姉妹が2人であれば2分の1ずつ、3人であれば3分の1ずつの遺産を相続します。
ただし、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(=異父兄弟姉妹、異母兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(=同父母兄弟姉妹)の2分の1です(民法第900条4号ただし書)。
たとえば、被相続人の同父母兄が2人、異母兄が1人いる場合には、同父母兄の相続分は各5分の2、異母兄の相続分は5分の1となります。
被相続人の兄弟姉妹が相続発生前に亡くなっている場合や、相続人である被相続人の兄弟姉妹が行方不明の場合は、相続に関して特殊な取り扱いが必要です。弁護士のアドバイスを受けながら、適切な対応を行いましょう。
被相続人が亡くなった時点で、その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、代襲相続が発生することがあります。
代襲相続とは、死亡等によって相続権を失った相続人(=被代襲者)の代わりに、被代襲者の子どもが相続人になることをいいます。
被相続人の兄弟姉妹が死亡により相続権を失った場合は、その子どもである被相続人の甥・姪による代襲相続が認められています(民法第889条第2項、第887条第2項)。
代襲相続人である甥・姪は、親である兄弟姉妹と同等の相続分を取得します。代襲相続人が複数いる場合には、各代襲相続人へ均等に相続分が割り当てられます(民法第901条第1項、同条第2項)。
たとえば、Aさんが死亡し、相続人がAさんの兄と姉、弟しかいなかったとしましょう。そのうち、Aさんの兄はすでに亡くなっており、Aさんの兄には子どもが2人(Aさんの甥・姪)いたとします。
この場合、Aさんの兄は本来、Aさんの相続財産の3分の1を相続できたため、Aさんの兄の子ども2人は、3分の1を半分に分けてそれぞれ相続することになります。
なお、Aさん(被相続人)の甥・姪が相続発生時点で死亡していた場合、さらにその甥・姪の子どもが、Aさんの遺産を代襲相続することはできません(民法第889条2項は、民法第887条2項を準用するだけで、同条3項を準用していない。)。
相続人となる被相続人の兄弟姉妹のうち誰かが行方不明の場合、そのままでは遺産分割を行うことができません。遺産分割は、相続人全員で行う必要があるためです。
遺産分割を進めるためには、行方不明の兄弟姉妹について不在者財産管理人の選任を申し立てることが考えられます(民法第25条第1項)。不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得れば、行方不明の兄弟姉妹の代わりに遺産分割へ参加させることができます。
また、7年間にわたり生死不明の兄弟姉妹がいる場合は、失踪宣告(民法第30条)の手続きを行うことも考えられます。失踪宣告が認められた場合、当該兄弟姉妹につき死亡したものとみなします(民法第31条)。
兄弟姉妹が相続人となるケースにおいて、被相続人となる人が兄弟姉妹以外の人に財産を与えたいと考えている場合には、以下のような方法を検討しましょう。
遺言書を作成すると、民法とは異なる相続割合を定め、または相続人以外の者に対して財産を遺贈することができます(民法第902条、第964条)。
遺贈をする相手(=受遺者)は自由に選ぶことができます。たとえば、お世話になった人、内縁の夫・妻、慈善団体など、財産を与えたい人を選んだ上で、どの財産を遺贈するかを遺言書に明記しましょう。
ただし、遺贈は放棄されてしまうこともあるので(民法第986条)、受遺者に対してあらかじめ遺贈をする旨を伝えておくことが望ましいです。
なお、遺言書は民法で定められた方式に従って作成しなければ無効となってしまいます(民法第960条)。特に自筆証書遺言(民法第968条)を自分で作成すると、方式の不備によって無効となってしまうケースが多いので注意が必要です。
遺言書の効力を確実なものとしたい場合は、弁護士のサポートを受けながら公正証書遺言を作成することをおすすめします。
参考:公正証書遺言作成の流れ
早い段階で財産を活用してもらうためには、生前贈与を行うことが有力な選択肢です。
生前贈与は、贈与者(与える側)と受贈者(受け取る側)の合意に基づいて行います。贈与する財産の内容を明記した贈与契約書を締結しましょう。
ただし、生前贈与に対しては贈与税が課されることがあります。贈与の金額が高ければ高いほど、高額の贈与税が課されるのでご注意ください。
自分の意思に沿った形で財産を活用してもらうためには、家族信託も有力な選択肢のひとつです。
家族信託では、信頼できる親族など(=受託者)に財産の管理を任せます。受託者は、信託契約で定められた受益者のために財産を管理します。
家族信託の特徴は、受託者が信託契約上のルールに従った財産を管理する義務を負う点です。信託契約において使途や運用方法などを定めておけば、ご自身の意思に沿った形で財産を活用してもらうことができます。
家族信託を設定する際には、信託契約の条文を適切に作成する必要があるので、弁護士への相談をおすすめします。
参考:家族信託
相続トラブルを避けるためには、生前から相続対策を行うことが大切です。
ご自身の意思に沿った形で、かつトラブルを防げるような相続対策を行うために、弁護士への相談をおすすめします。相続対策について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
弁護士は、依頼者から丁寧にヒアリングを行った上で、ご希望に添った相続対策の方法をご提案いたします。遺言書の作成など、さまざまな選択肢をご提示した上で、ご納得いただける形で相続対策ができるようにサポートいたします。
相続対策の重要な役割は、相続発生後のトラブルを予防することです。どのような相続トラブルが懸念されるのかは、ご家庭によって異なります。
弁護士は、相続人の構成や関係性、相続財産の状況などを分析した上で、懸念されるリスクへの対処方法をご提案いたします。
相続案件を豊富に経験している弁護士にアドバイスを受けながら、ご家庭の状況に合わせた相続対策を行うことにより、相続トラブルのリスクを抑えることが可能です。
相続財産が多額に及ぶ場合は、相続税の課税についても注意しなければなりません。
生前贈与などを活用すれば、納付すべき相続税額を抑えられることがあります。また、不動産などを処分せずに保有し続ける場合は、納税資金対策も行っておくべきでしょう。
税理士と連携している弁護士に相談すれば、相続税対策についてもワンストップでアドバイスを受けられます。
ベリーベストグループには税理士も在籍しており、弁護士と税理士が連携して遺産相続をサポートいたします。相続トラブルの予防と相続税対策を両方行いたい方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
配偶者・子ども・親がいずれもいない一方で、兄弟姉妹がいる方が亡くなった場合は、原則として兄弟姉妹が相続人となります。遺産分割は相続人全員で行う必要があるので、他の相続人と連絡を取り合いながら相続手続きを進めましょう。
ご自身が亡くなった後に、兄弟姉妹に遺産を相続させたくない、または自身の死後の相続トラブルを予防したいと考えている場合は、生前の相続対策を行いましょう。適切な相続対策の内容はご家庭の状況によって異なるので、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、相続手続きや生前の相続対策に関するご相談を随時受け付けております。すでに発生した相続への対応や、生前の相続対策についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
自分以外の相続人による「遺産隠し(財産隠し)」が疑われるときは、被相続人(亡くなった方)の隠されたすべての財産を調査し、発見したいと考えるでしょう。
また、遺産分割協議が終わったあとに特定の相続人による遺産隠しが発覚した場合、遺産分割協議のやり直しができるのかも気になるところです。
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本コラムでは、遺産を隠された疑いがあるときの調査方法や、遺産隠し発覚後の対応方法、時効などの注意点について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
遺言無効確認訴訟とは、被相続人(亡くなった方)による遺言が無効であることについて、裁判所に確認を求める訴訟です。
遺言書の内容に納得できず、遺言書が作成された経緯に不適切な点や疑問点がある場合には、遺言無効確認訴訟の提起を検討しましょう。
本記事では遺言無効確認訴訟について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が詳しく解説します。
不動産に関する相続手続きのなかでも、特に問題となりやすいものが「未登記建物」です。未登記建物を相続する場合、遺産分割協議書の作成には、十分に注意しましょう。
本コラムでは、未登記建物の相続に関わる問題点や遺産分割協議書の作成方法など、一連の相続手続きにおける未登記建物の取り扱いについて、相続業務を幅広く取り扱っているベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
なお、表題部の記載のみで、所有権保存登記などの権利部の記載がない建物は、多数存在しているのが実情です。そして、そのような建物も未登記建物と呼ばれることもありますが、本コラムでは、表題部すらない未登記建物に限定して説明します。