遺産相続コラム

子どもがいない夫婦は配偶者のみが相続人? 遺産相続の注意点

2022年08月30日
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子どもがいない夫婦は配偶者のみが相続人? 遺産相続の注意点

子どもがいない夫婦の遺産相続はどのような流れになるかご存じでしょうか。夫が先に亡くなった場合、何も対策をしなくても遺産は全て妻に相続されると思っていると、後々、妻が思わぬ相続争いに巻き込まれる可能性もあります。

残された配偶者がきちんと財産を相続できるよう、あらかじめ、対策をしておくことが重要です。

本コラムでは、子どもがいない夫婦の遺産相続において注意しておくべき点を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

1、財産は全て配偶者が相続できる?

子どもがいる夫婦の場合、どちらか一方が亡くなると、その遺産は配偶者と子どもに相続されます。子どもがいる場合の遺産相続は、比較的シンプルです。

これに対し、子どものいない夫婦の場合、一方が先に亡くなると、その遺産が全て、残された配偶者のものになるとは限りません。子どもなし夫婦の遺産相続では、亡くなった方の親や兄弟、さらにはおい(甥)・めい(姪)といった、ほとんど面識のない人が相続人として現れることもあるのです。

何の対策もとらないでいると、残された配偶者の取り分が少なくなるだけでなく、思わぬ遺産相続争いに巻き込まれるリスクもあります。

2、子どもなし夫婦の財産を相続する法定相続人とは?

子どもがいない夫婦の財産を相続する権利を有する人は誰なのでしょうか。法定相続人の範囲と受け取ることができる相続割合について、確認していきましょう。

  1. (1)法定相続人の範囲

    法定相続人の範囲は、民法で、配偶者と一定の血族と決まっています。ここでいう一定の血族とは、子ども、親(直系尊属)、兄弟姉妹を指します。

    なお、本人よりも子どもが先に亡くなっている場合、子どもの子ども(本人から見ると孫)が相続人となります。これを代襲相続といいます。

    同様に、子どもも直系尊属もいない場合で、さらに兄弟姉妹が本人より先に死亡していれば、兄弟姉妹の子ども(本人から見ると、おい・めい)が相続人となります。
    代襲相続ではありませんが、直系尊属が相続人となる場合で、父母が死亡しており、祖父母が存命であれば、祖父母が相続人となります。

    ところで、ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。内縁関係や事実婚の妻は、配偶者としての相続権がありませんのでご注意ください。

  2. (2)法定相続人の順位

    次に問題になるのは、遺産相続の順番です。これも民法により、以下の通り決まっています。亡くなった方の配偶者は、常に相続人となります。したがって、配偶者については、順位をつけずに考え、配偶者以外の親族は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

    逆に言えば、以下の親族が1人でも存在していれば、残された配偶者はその人と一緒に相続することになるわけです。

    第1順位
    亡くなった方の子どもです。
    子どもがすでに亡くなっているときは、その子どもの直系卑属(ちょっけいひぞく)が相続人となります。直系卑属とは、子どもや孫などです。子どもなし夫婦の場合、第1順位の相続人は存在しません。

    第2順位
    亡くなった方の父母(直系尊属)です。父母が先に死亡している場合は、祖父母など上にさかのぼります。
    第2順位の人は、第1順位の人がいないときに限り相続人になります。そのため、子どもなし夫婦の場合、配偶者とともに相続人となりやすいといえるでしょう。

    第3順位
    亡くなった方の兄弟姉妹です。
    兄弟姉妹がすでに死亡しているときは、その人の子どもが相続人となります。
    第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないときに限り相続人になります。


    なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。

  3. (3)法定相続分

    法定相続分とは、相続人ごとの取り分の目安として法律で定められている相続割合のことをいいます。具体的には、次の通りです。

    配偶者のみ 配偶者に全て
    配偶者と子ども 配偶者に2分の1、子どもに2分の1
    配偶者と親 配偶者に3分の2、親(親が死亡、祖父母が生存なら祖父母)に3分の1
    配偶者と兄弟姉妹 配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1
    子どものみ 子どもに全て(人数に応じて等分)
    親のみ 親に全て(人数に応じて等分)
    兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹に全て(人数に応じて等分)
  4. (4)法定相続分をケース別に確認しよう!

    子どもなし夫婦で夫が先に亡くなった場合の、ケース別の法定相続分は以下の通りです。

    ① 夫の親が健在の場合
    妻に3分の2、夫の親に3分の1
    (両親ともに健在なら父と母は6分の1ずつ)

    ② 夫の親が死亡、夫の兄弟姉妹が健在の場合
    妻に4分の3、夫の兄弟姉妹に4分の1
    (兄弟姉妹が複数人いれば、頭数で等分。兄1人妹1人ならば、兄と妹が8分の1ずつ)

    ③ 夫の親が死亡、夫の兄弟姉妹も死亡、おい・めいがいる場合
    妻に4分の3、おい・めいに4分の1
    (おい・めいが複数人いれば等分に分ける。おい1人めい2人なら、それぞれ12分の1ずつ)

    ④ 夫の親も兄弟姉も死亡、おい・めいもがいない場合
    妻に全て

    ⑤ 妻との間に子どもはいないが、以前の妻との間に子どもがいる場合や愛人との間に認知した子どもがいる場合
    妻に2分の1、子どもに2分の1
    (子どもが複数人いれば頭数で等分。子どもが2人ならば4分の1ずつ)
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3、配偶者に全財産を残したい場合にできること

それでは、残される配偶者に全財産を渡したい場合、生前からどのような対策をしておくべきなのでしょうか。

  1. (1)遺言書の作成

    上記の通り、子どもなし夫婦の場合、遺産相続の法定割合に従えば、夫の親(直系尊属)や兄弟姉妹またはその子ども(おい・めい)が1人でも顕在である限り、全ての財産を配偶者に残すことはできません。

    しかし、どうしても配偶者にもっと多くの財産を残したい場合もあるでしょう。たとえば、妻はずっと専業主婦で、妻名義の資産が少なく、夫の死後の生活に不安がある場合や、妻以外の相続人とは疎遠で財産を残すことに抵抗があるような場合を考えてみましょう。

    配偶者により多くの財産を残したいと考える場合に使えるのが、「遺言」です。遺言がある場合には、法定相続分の規定より優先されます。
    したがって、遺言書に「全ての遺産を妻に相続させる」と記載することによって、全ての財産を妻に相続させることができます。ただし、後述する遺留分制度があることにより、妻はほかの相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があり、金銭の支払いが必要になる場合があるので、その点には注意が必要です。

    参考:遺言書について詳しく知りたい方はこちら

  2. (2)遺言書の方式

    遺言には、さまざまな方式がありますが、おすすめは公正証書遺言です。

    手軽さでいえば、自分一人で作成できる自筆証書遺言が一番ですが、自筆証書遺言には形式の面でさまざまな制約があり、万が一、効力が認められなければ無意味になってしまいます。また、自筆証書遺言は紛失や改ざんされる恐れもあり、公正証書の方が確実性の点で勝ります。

    公正証書遺言は、公証役場で作成しなければならないので、手続きの手間と費用がかかる点がデメリットではありますが、形式面も内容面でも無効となるリスクは低く、また、作成後は公証役場で保管してくれるため、紛失や改ざんの恐れがない点が大きなメリットです。
    死後の相続人の使いやすさという点でも、全国どこの公証役場からでも、公正証書遺言があるかどうかを検索することができるため、遺言書が残されているのかわからない状況であっても、相続人が遺言書の有無を確認しやすいといえるでしょう。

    参考:公正証書遺言作成の流れ

  3. (3)親がいる場合は遺留分に注意

    ただし、子どもなし夫婦の遺産相続は、「遺言を作れば全て安心」というわけでもありません。法定相続分よりも遺言が優先されますが、より「遺留分」の制度が優先されます。
    遺留分とは相続人に最低限保障された遺産の取り分のことで、これは遺言であっても奪うことはできません。

    遺留分は直系尊属である親(親が亡くなっていた場合は祖父母)のみが相続人の場合は全体の遺産の3分の1、それ以外の場合は2分の1と決まっています。これにそれぞれの法定相続分をかけて計算します。

    たとえば、子どもなし夫婦で夫は一人っ子、夫の母親は顕在という場合、全体の遺留分は2分の1です。それぞれの法定相続分は、妻が3分の2、母が3分の1です。この状態で、夫が妻に全財産を残すという遺言をすると、母には全体の遺留分である2分の1×法定相続分3分の1で、6分の1を遺留分として保障されます。母は、遺留分侵害額請求として、6分の1の金額について妻に請求することができます。

  4. (4)遺留分は兄弟姉妹には認められていない

    なお、相続人のうち、兄弟姉妹は遺留分が認められていません。おい・めいが代襲相続する場合は、おい・めいにも遺留分はありません。したがって、相続人が妻と兄弟姉妹(おい・めいが代襲相続人である場合はそのおい・めい)だけの場合は、遺言で全ての遺産を妻に相続させるとした場合にも、遺留分侵害額請求を受けることはありません。

  5. (5)遺留分侵害額請求権は、請求されなければ消滅する

    たとえ遺留分がある場合でも、相続の開始および遺留分が侵害されている贈与・遺贈があった事実を知ってから1年以内に、遺留分権利者が遺留分の請求(遺留分侵害額請求)をしなければ、請求権は消滅します。

    また、相続開始時から10年が経過した場合にも、遺留分侵害額請求権は消滅することになります。

4、自宅不動産を配偶者へ残したい場合

遺言書で配偶者に全財産を渡すよう指定していたとしても、親が存命で遺留分を主張した場合、夫婦の自宅不動産を売却しないと、遺留分を渡すことができないこともあるでしょう。

このような場合の解決方法としては、配偶者居住権の設定が挙げられます。

配偶者居住権とは、夫婦の一方が死亡したとき、残された配偶者が自宅不動産に住み続けることができる権利のことです。令和2年4月1日の民法改正により、誕生しました。

以下の3つの要件全てを満たせば、配偶者居住権が成立します。

  • ① 亡くなった被相続人の法律上の配偶者であること
  • ② 被相続人が死亡した際、配偶者が被相続人の所有(または配偶者と共有)している建物に居住していること
  • ③ 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判、のいずれかによって、配偶者居住権を取得していること


配偶者居住権が成立し、登記をしていれば、当該住宅を他の相続人の所有にしなければならなかったり、第三者に売却しなければならなくなったりした場合でも、配偶者は自宅不動産に住み続けることが可能です。ただし、配偶者居住権を取得した結果、他の相続人(子どもがいない夫婦の場合、親)の遺留分を侵害していれば、遺留分侵害額請求の対象とはなります。

配偶者居住権の計算は複雑なものとなりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、配偶者居住権の成立に必要な遺贈や死因贈与などの方法についてもアドバイスを受けられますし、生前からできる対策についても相談することが可能です。

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5、まとめ

子どもなし夫婦の遺産相続の場合、残される配偶者に全財産を残したいと考える夫婦も多いでしょう。しかし、本コラムで解説してきた通り、亡くなった配偶者に親(直系尊属)や兄弟姉妹(おい・めい)がいる場合は、遺言がなければ配偶者に全ての財産を残すことができません。何の手だてもせずに夫婦の一方が亡くなると、残された側は配偶者の遺産の預金もひとりで出金できなくなり、大変な状態になってしまいます。

こうした事態を防ぐためも、遺言の作成は不可欠です。また、場合によっては配偶者居住権を設定するなど、適切な対応をしておくことも必要です。

残される配偶者のために最適な相続対策をお考えの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-666-694

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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