遺産相続コラム

婚外子がいたら相続の割合はどうなる? 相続税の計算と相続争い対策

2024年02月22日
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婚外子がいたら相続の割合はどうなる? 相続税の計算と相続争い対策

さまざまな事情から、婚姻関係にない(結婚していない)相手との間で子どもが生まれることがあるでしょう。

婚姻関係にない男女間に生まれた子どもは「婚外子(非嫡出子)」として扱われることになるため、「認知」という手続きを行わないままでいると、婚外子の父親が亡くなったときに遺産を相続させられない可能性があります。

婚外子に対しても父親の遺産を相続させたい場合には、生前にしっかりと準備をしておくことが大切です。

本コラムでは、婚外子の遺産相続における割合の考え方や相続税の計算方法、相続争いを避けるための対策方法について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。

1、婚外子とは? 父母との法的関係や相続権はどうなっている?

どのような子どもが婚外子(非嫡出子)といわれるのか、また、婚外子と父母との法律上の関係はどうなっているのかなど、以下で詳しく説明します。

  1. (1)婚外子(非嫡出子)とは

    婚外子とは、法律上の婚姻関係がない男女間に生まれた子どもを意味する言葉です。婚外子は、別称で「非嫡出子」と表現されることもあります。
    他方、婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことを、婚内子(嫡出子)といいます。

    このように、両親の婚姻関係の状況によって、子どもは必ず婚外子か婚内子のどちらかに区別されるのです。

  2. (2)婚外子と父母との法的関係

    婚内子とは異なり、婚外子と両親との法的関係に関しては、父と母で区別して考える必要があります。

    ① 婚外子と母との法的関係
    婚外子と母との母子関係は、出産という事実から明らかです。そのため、出生届の提出によって、母と婚外子との間には法的な親子関係が生じます。

    出生届以外の特別な手続きを行わずとも、婚内子と同様に、婚外子は母の遺産を受け取ることが可能です。

    ② 婚外子と父との法的関係
    婚外子と父との父子関係は、出産という事実だけでは明らかではなく、その子どもの父が誰であるかが明確になりません。

    そのため、原則として婚外子と父との間には、法律上の親子関係が生じないことになっています。つまり、出生後に何の手続きも行っていない状態のままでは、父が死亡したとしても婚外子は父の遺産の相続権がなく、遺産を受け取ることができません。

    婚外子にも父の遺産の相続権を与えたい場合には、「認知」と呼ばれる手続きが必要になります。

  3. (3)婚外子を認知する方法

    父が婚外子を認知する方法には、以下の3つがあります。

    ① 任意認知
    任意認知とは、父が生前、自らの意思により婚外子の認知を行う方法です。
    本籍地の市区町村役場に認知届を提出することで、認知の手続きを行うことができます。
    任意認知で認知される子が成年の場合、認知される子の承諾書が必要です。

    ② 遺言認知
    遺言認知とは、遺言書を活用することで婚外子を認知する方法です。
    生前に作成した自身の遺言書に婚外子を認知する旨を記載することで、死後、遺言執行者(遺言に記載した内容にもとづき、手続きを進める役割をもつ者)によって認知届が提出されます。何かしらの事情があり、生前にどうしても婚外子を認知することができないようなときには、遺言認知を行いましょう。
    届け出は、遺言者の本籍地、子どもの本籍地、遺言執行者の住所地のいずれかの市区町村役場で行い、認知届出書に遺言書など必要書類を添付して提出します。
    遺言認知で認知される子が成年の場合、認知される子の承諾書が必要です。

    ③ 強制認知(裁判認知)
    強制認知とは、父が認知を拒否している場合において、強制的に婚外子を認知させる方法です。
    強制認知を行う場合、まずは認知調停を申し立てなければいけないことになっており(調停前置主義)、調停が不成立となった場合には、認知の訴えを提起することになります。
    認知調停の申し立ては、原則として子ども自身が行いますが、子どもが未成年の場合には母親が法定代理人として申し立てることになります。

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2、婚外子の相続分はどのような割合になる?

親が死亡した場合に、婚外子はどのような割合で遺産を受け取ることになるのでしょうか。具体的な計算例とともに解説します。

  1. (1)婚外子の相続分

    認知により相続権をもつ婚外子は、婚内子と等しい割合で遺産を受け取ることが可能です。

    かつて、婚外子が受け取れる遺産(法定相続分)は、婚内子の半分(2分の1)と定められている時代がありました。しかし、平成25年の最高裁判所の判例によって、婚外子と婚内子で相続分に差を設ける民法の規定は「違憲」と判断されました(最高裁判所平成25年9月4日大法廷判決)。

    最高裁判所が違憲と判断した理由としては、主に以下の3点が挙げられます。

    • 日本における家族形態の多様化や国民意識の変化
    • 諸外国の立法の動向や日本が批准した条約の内容
    • 嫡出子と非嫡出子の区別に関わる法制などの変化


    最高裁判所は、このような認識の移り変わりに伴い、父母の婚姻関係の有無という、子どもにとって選択・修正する余地のない事柄を理由に、その子どもに不利益を及ぼすことは許されないとしました。

    最高裁判所のこの違憲判決から、婚外子の相続分に関して、「婚内子の相続分の半分(2分の1)に制限する」という規定の部分が削除され、婚外子と婚内子に定められる相続の割合は等しくなりました。

    婚外子・婚内子の法定相続分を等しくする改正民法が適用されるのは、平成25年9月5日以降に開始した相続が対象です。

    ただし、上記の最高裁判所の判決において、婚外子・婚内子の法定相続分を区別する規定は、遅くとも平成13年7月の時点で違憲の判断がなされたことから、遺産分割が未了の事案については、平成13年7月以降に発生した相続も、婚外子・婚内子の相続分は同割合で差分なく計算します。

  2. (2)認知の有無によって相続人の相続分が変化する

    父が死亡して、父の遺産1000万円を配偶者、婚内子、婚外子の3人で分ける場合を例に、相続分について見ていきましょう。

    まず、法定相続分は民法で以下のように定められており、通常、その割合に沿って遺産分割を行います。

    相続人 法定相続分
    配偶者と子ども 配偶者が2分の1、子どもが2分の1
    配偶者と直系尊属 配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1
    配偶者と兄弟姉妹 配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

    前述のとおり、父に認知された婚外子には相続権が認められるため、父の遺産の相続人になることができます。上記ケースでの婚外子の法定相続分は、婚内子の割合と差分なく計算するため、各人の具体的な相続分は以下のようになります。

    ■ 婚外子が父に認知されている場合
    配偶者(2分の1):500万円
    婚内子(子どもの相続分2分の1÷子ども2人=4分の1):250万円
    婚外子(子どもの相続分2分の1÷子ども2人=4分の1):250万円

    ※カッコ内は法定相続分

    一方、認知を受けていない婚外子は相続権がないことから、父の遺産は配偶者と婚内子の2人で、以下のように分けることになります。

    ■ 婚外子が父に認知されていない場合
    配偶者(2分の1):500万円
    婚内子(2分の1):500万円
    婚外子:相続権がないため、相続分はゼロ

    ※カッコ内は法定相続分

    このように、婚外子が父の認知を受けているかどうかによって、婚内子の相続分も変わってくるため、婚内子との間でトラブルが生じるケースがあるということに留意してください。

3、婚外子に相続させるときに、押さえておきたい相続税と計算方法

相続が発生した場合には、相続財産の総額に応じた相続税を負担する必要があります。
もっとも、相続税には基礎控除額があるため、相続財産の総額が基礎控除を下回る場合には、相続税の申告は不要となり、相続税の負担もありません。

相続税の基礎控除額については、以下のように計算します。

相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

このように、相続税の基礎控除額については、法定相続人の数に応じて変わってきます。婚外子を認知しているときには、法定相続人の数に含むことを念頭に置いておきましょう。

また、相続税の基礎控除額の計算以外にも、認知された婚外子が計算の人数として含まれるものは、以下のような項目が挙げられます。

  • 死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
  • 死亡退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

相続人に対する相続税の負担を少しでも抑えたい場合には、婚外子を認知するという方法も相続税対策として有効な手段といえるでしょう。

4、婚外子のことで相続争いを避けるための対策方法

婚外子への相続を考えている方は、相続人同士の争いを避けるためにも、生前にしっかりと対策を講じておくことが必要です。

  1. (1)婚外子がいることをあらかじめ家族に伝えておく

    実際に遺産分割の手続きを進める際には、まずは亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本(出生から死亡までの全ての戸籍)などを集めて、相続人の範囲を確定させる工程があります。そのため、たとえ被相続人が認知した婚外子の存在を生前のうちに家族に明かしていなかったとしても、取得した戸籍の記載から婚外子の存在が明らかになります。

    先に述べているように、認知された婚外子がいる場合は婚内子の相続分が減ってしまうことになるため、婚外子に対して相続放棄をせまるなど、遺産分割をめぐるトラブルが生じやすくなります。

    認知されている婚外子の存在は、遺産相続の手続きを進めるなかで必ず明らかになります。もし婚外子にも遺産を相続させようと考えている場合には、遺される家族のためにも、あらかじめ「認知した婚外子がいる」ということを伝えておいた方がよいでしょう。
    その際に、相続財産の分け方についての話し合いを進めておくこともおすすめです。

  2. (2)婚外子がいる場合は、遺言書を作成する

    婚外子と他の相続人との間のトラブルを避けるためのもっとも基本的な方法としては、生前の遺言書作成があります。

    遺言書の作成が必要不可欠な理由としては、主に以下の2つが挙げられます。

    • 婚外子に遺産を相続したくても、事情があって生前に認知できない場合は、遺言認知のために遺言書作成をする必要がある
    • 生前に認知した婚外子の存在を家族に明かしているかどうかにかかわらず、残す遺産をどのように、誰に分けるのかを遺言書に記して形に残しておくことで、トラブル発生の予防が期待できる


    被相続人に「婚外子に相続をさせたい」という意向があったとしても、生前に認知をしておらず、遺言書での認知も行わなかった場合、婚外子には法定相続人としての相続権を与えることができません。単に認知をしないまま遺言で遺産を相続させることは可能です。

    また、被相続人が生前に婚外子を認知している場合でも、遺言書がなければ、相続人全員による遺産分割協議を行うことになります。それまで他の相続人とまったく交流のなかった婚外子が遺産分割協議に参加し、肩身の狭い思いをすることにもなりかねません。それに加え、相続人同士で対立が生じてしまえば、遺産分割が長期化することもあります。

    なお、被相続人が生前に婚外子の認知をせず、遺言認知もしていなかったとき、婚外子自身が「強制認知」を求める場合もあります。強制認知はDNA鑑定の結果などをもとに認知を求める手続きのため、たとえ父親の死後であっても、子どもとの血縁関係が認められれば、強制認知されます。すると、認知された婚外子は相続権を得るため、遺産分割を求める権利を有することになり、婚内子や親族との遺産分割争いが起きるとも考えられるでしょう。

    このようなトラブルを避けるためにも、あらかじめ家族に婚外子の存在を打ち明ける、遺言認知を行う、などの対応を取っておく方がよいでしょう。

    生前に遺言書を作成しておけば、認知したい婚外子に対する遺言認知が実行されます。さらに、遺産分割協議が行われることなく、遺言書の内容に従って遺産分けを進めてもらうことが可能です。そうすれば、相続人同士で遺産をめぐって争うという事態を回避することができます。

    ただし、遺言書を作成する場合は、法的に有効なものにするというのはもちろんのこと、他の相続人の遺留分(相続人に保障されている最低限の相続分)にも配慮した内容としなければなりません。
    他の相続人の遺留分を侵害する遺言書であっても法律上有効ですが、侵害している相続人に対する遺留分侵害額請求が行われるなどのトラブルが生じる可能性があります。

    形式面と内容面で不備のない遺言書を作成するには、専門家である弁護士のサポートが必要不可欠といえるでしょう。
    相続でのトラブルを避けるためにも、遺言書の作成をお考えの方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

    参考:遺言とは

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5、まとめ

婚姻関係にない女性との間に子どもがいる男性は、認知という手続きをすることによって、婚外子にも遺産を相続させることが可能です。

ただし、認知をしただけでは、婚外子と婚内子との間で遺産をめぐるトラブルが生じる可能性があることに留意しなければなりません。相続争いに発展させないよう、トラブルを回避するための対策を講じておくことも必要です。

遺産相続に関してお悩みがある方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。スムーズな相続手続きの実現に向けて、経験豊富な弁護士が親身にサポートを行っていきます。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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