遺産相続コラム

遺産相続の寄与分に上限はある? 遺留分・遺贈との関係も解説

2022年02月22日
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遺産相続の寄与分に上限はある? 遺留分・遺贈との関係も解説

亡くなった被相続人の生前に貢献があった相続人に「寄与分」が認められると、他の相続人より多くの財産を相続することができる可能性があります。

寄与分の金額はさまざまな事情を考慮して決定されますが、上限はどのくらいまで認められるのか気になるところです。また、遺産相続では遺留分や遺贈など、さまざまな権利も絡んでくるため、これらと寄与分との優先劣後関係も問題になります。

本記事では、寄与分の上限や、寄与分と遺留分・遺贈の間の優先劣後関係などを中心に、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、遺産相続の寄与分と特別寄与料

まずは、寄与分とはどういうものかについて解説します。次に、民法改正により、寄与分と類似の制度として「特別寄与料」というものが新たに制定されましたので、寄与分と特別寄与料の違いについても押さえておきましょう。

  1. (1)そもそも寄与分とは?

    寄与分とは、生前の被相続人に対する相続人の貢献に報いるため、当該相続人に上乗せで相続分を認める制度です。

    寄与分が認められるのは、相続人の中で「被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者」です(民法第904条の2第1項)。

    「特別の寄与」とは、被相続人と相続人の身分関係の中で通常期待されるような程度を超える貢献でなければなりません。すなわち、単に相続人が被相続人に対して通常想定されるような貢献をしても、寄与分とは認められないのです。
    なお、「特別の寄与」の方法に特段の規定はありませんが、民法では以下の例が挙げられています。

    • 被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付
    • 被相続人の療養看護

    共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした者がいるとき、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、その者に相続財産のうちから相当額の財産を取得させて、共同相続人間の公平を図る制度が寄与分の制度です。

    参考:特別受益者・相続分と寄与分

  2. (2)寄与分と特別寄与料の違い

    特別寄与料は、2019年の相続法の改正によって導入された制度です。

    寄与分が法定相続人(配偶者、子など)にしか認められないのに対して、特別寄与料は、被相続人に対する“特別の寄与”があった、相続人などを除く被相続人の親族に認められます(民法第1050条第1項)。

    なお、ここでいう「親族」とは、六親等内の血族、三親等内の姻族をいいます(民法第725条)。
    また、寄与分は寄与する方法に制限がありませんが、特別寄与料の場合は、その方法が無償での労務の提供に限られます。たとえば、被相続人の介護や生活の援助を、近所に住む従妹(いとこ)が金銭をもらわずに行っていたケースなどです。

    なお、特別寄与料が認められる場合、各相続人が相続分で按分した金額を負担し、特別寄与者に対してそれぞれ支払うことになります(同条第5項)。

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2、遺産相続の寄与分の算出方法と上限

遺産相続における寄与分の算出方法は、特別の寄与の内容によって異なりますので、パターンごとに解説します。

寄与分は、相続人の行為によって被相続人の財産が維持または増加しなければ認められません。そのため、たとえ相続人による寄与が認められたとしても、被相続人の財産が減少または散逸してしまった場合には寄与分は認められません。
また、遺産相続における寄与分は無制限に認められるわけではなく、一定の上限が設けられているので注意しましょう。

  1. (1)寄与分の算出方法

    遺産相続における寄与分の金額は、遺産分割協議で適宜決定するか、または家庭裁判所が「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」定めるとされています(民法第904条の2第2項)。

    一般的に、「特別の寄与」の内容は以下の5パターンに分類されます。
    それぞれについて、遺産相続における寄与分の大まかな算出方法を見ていきましょう。

    ① 家事従事型(事業を無償で手伝った場合など)
    寄与分額=年間報酬相当額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

    ② 金銭等出資型(資産取得や借金返済の資金を提供した場合など)
    • 不動産取得費用を支出した場合
      寄与分額=相続開始時の不動産の価額×出資割合
    • 不動産を贈与した場合
      寄与分額=相続開始時の不動産の価額×裁量的割合
    • 不動産を無償で貸していた場合
      寄与分額=相続開始時の賃料相当額×使用年数×裁量的割合
    • 借金返済などの資金を提供した場合
      寄与分額=贈与金額×貨幣価値の変動率×裁量的割合

    ③ 療養看護型(無償で介護をして介護費用の支出を免れさせた場合など)
    • 自ら療養看護をした場合
      寄与分額=日当相当額×療養看護日数×裁量的割合
    • 療養看護の費用を負担した場合
      寄与分額=支出費用額×貨幣変動率×裁量的割合

    ④ 扶養型(生活費を出してあげた場合など)
    寄与分額=現実に負担した生活費などの額×裁量的割合

    ⑤ 財産管理型(不動産などを管理して管理費用の支出を免れさせた場合など)
    • 自ら財産を管理していた場合
      寄与分額=第三者に管理を委託した場合の報酬相当額×裁量的割合
    • 管理費用を負担した場合
      寄与分額=現実に負担した管理費用額
  2. (2)寄与分の上限は「相続財産マイナス遺贈」の金額

    遺産相続における寄与分の上限は、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額」です(民法第904条の2第3項)。

    簡単にいえば、寄与分は残っている相続財産の中から支出されるので、それ以上の請求はできないということです。
    なお、遺贈の価額を控除するとされている点は、寄与分と遺贈の優先順位にも関係するので、次の項目で解説します。

3、遺産相続における寄与分と遺贈・遺留分の間の優先順位

遺産相続における寄与分を有する相続人に対して、遺贈を受けた人や、遺留分侵害を主張する相続人が権利を主張してきた場合、どちらが優先されるのでしょうか。

  1. (1)寄与分と遺贈はどちらが優先される?

    寄与分と遺贈の間では、遺贈の方が優先されます。
    これは、寄与分の上限が「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額」とされていることによります(民法第904条の2第3項)。

    つまり、遺贈を受けた人が財産をもらった後、残った相続財産からのみ寄与分を受け取れるので、遺贈の方が寄与分よりも優先です。

  2. (2)寄与分と遺留分はどちらが優先される?

    一方、寄与分と遺留分の間では、法律上は寄与分の方が優先です。寄与分の上限として、“他の相続人の遺留分を侵害しない限度で”という制限が設けられていないためです。
    したがって法律上は、他の相続人の遺留分を侵害するような寄与分が認められることもあり得ます。

    ただし、遺留分侵害に相当するほどの多額の寄与分が認められるケースは、実際にはほとんどないと考えられます。

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4、遺産相続で寄与分を主張する際の手続き・注意点

遺産相続において寄与分を主張したい場合には、遺産分割協議または調停・審判の中で主張を行うことになります。調停手続きでは、寄与分を定める処分の調停(または遺産分割調停)において寄与分の主張することができます。寄与分を主張したい相続人が寄与分を求めることを主張と立証をする必要があります。

この点、昭和55年改正民法の施行日である昭和56年1月1日以降に相続が開始した事件については、裁判所は、遺産分割事件とは別に寄与分を定める処分の申立がない限り寄与分の審判をすることができません。したがって、話し合いだけで解決できない場合、寄与分を主張する者は、遺産分割事件とは別に寄与分を定める処分の申立を別途しておく必要があります。

  1. (1)寄与分を基礎づける証拠収集

    遺産相続において寄与分を主張する場合、いずれの手続きによるとしても、他の相続人や調停委員等を説得するために、寄与分を基礎づける証拠を集めておかなければなりません。
    寄与分の証拠の例としては、以下のようなものがあります。

    • ① 家事従事型
      勤怠状況がわかるもの(タイムカード、メールのやり取りなど)
    • ② 金銭等出資型
      出資の事実がわかるもの(通帳の写し、登記簿など)
    • ③ 療養看護型
      療養看護や看護費支出の事実がわかるもの(診断書、介護日誌、通帳の写し、領収書など)
    • ④ 扶養型
      同居や仕送りの事実がわかるもの(住民票、銀行の送金履歴など)
    • ⑤ 財産管理型
      管理業務への従事や管理費支出の事実がわかるもの(メールのやり取り、通帳の写しなど)
  2. (2)遺産分割協議の中で寄与分を主張する

    遺産分割協議が進行している場合は、寄与分を主張する意思を話し合いの中で伝えておきましょう。どのように主張していくかは、先んじて弁護士に相談しておくとスムーズでしょう。

    なお、まだ十分に証拠が固まっていないとしても、遺産分割協議の早い段階で寄与分の主張をする意思を表明しておく方が、円滑に協議を進められる可能性が高くなるでしょう。遺産分割協議はあくまでも交渉の問題なので、他の相続人が納得さえすれば、十分な証拠がなくても寄与分を考慮して遺産分割協議ができるかもしれません。

    ただし、遺産分割協議がまとまらなければ調停や審判に移行するので、証拠の準備は周到に進めておきましょう。

    参考:遺産分割協議とは

  3. (3)家庭裁判所に調停・審判を申し立てる

    遺産分割協議が不調に終われば、家庭裁判所に対して遺産分割調停と共に寄与分を定める処分の調停を申し立てましょう。

    寄与分を定める処分の調停では、相続人の範囲、相続財産の範囲及び評価が確定した後、寄与分に関する審理に移ることになります。

    遺産分割調停では、調停委員が各相続人の言い分を個別に聞きながら、落としどころを探りつつ、寄与分の有無及び程度を決定して遺産相続に関する調停案を作成します。調停案に全相続人が同意すれば、遺産分割調停は成立です。
    遺産分割調停で寄与分を主張したい場合、客観的な証拠を調停委員に提示できれば、寄与分を認める方向での調停案が作成される可能性が高くなります。なお、調停が不成立となる場合には、家庭裁判所の職権で審判が行われます。

5、寄与分の主張について弁護士に依頼するメリット

遺産相続について寄与分を主張したい場合、弁護士に依頼することをおすすめいたします。

  1. (1)有効な証拠を効率よく収集できる

    遺産相続において寄与分が認められるケースにはさまざまなパターンがありますので、事案に合わせて適切な証拠を収集する必要があります。弁護士は、さまざまな状況や背景を考慮し、証明すべき事実をしっかりと見定めて、立証に必要な証拠は何か、どのように集めればよいかについてアドバイスをしてくれます。

  2. (2)遺産分割協議のストレスが軽減される

    遺産分割協議では、親族関係にある他の相続人とお金の話をしなければならないので、精神的な負担が大きくかかります。弁護士に依頼をすれば、他の相続人との交渉を全面的に代行してくれるため、精神的な負担は大きく軽減されるでしょう。

  3. (3)調停や審判手続きへの移行もスムーズ

    万が一遺産分割協議が不調に終わり、調停手続きへ、もしくは調停から審判手続きへ移行しなければならなくなったとしても、弁護士に依頼をしておけば安心です。弁護士は、遺産分割調停や審判において、寄与分についての主張整理表やそれぞれの証拠を出していき、専門的な手続きを日常的に取り扱っていますので、調停の準備や当日の進行を一任できます。

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6、まとめ

遺産相続で寄与分が認められると、相続できる財産の金額が大きく変わる可能性がありますが、それは遺贈を除いた相続財産が上限となります。
寄与分の主張をしたい場合には、証拠の収集などの準備を周到に行ったうえで、遺産分割協議や調停に臨むことが大切です。

ベリーベスト法律事務所では、遺産の状況や依頼者のご希望などを踏まえて、主張の組み立てや証拠の収集などを全面的にサポートいたします。寄与分など遺産相続にお悩みの際は、相続トラブルの相談実績が豊富なベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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