遺産相続コラム
相続人が死亡するなど、一定の理由により相続権を失った場合は、その子どもが亡くなった相続人に代わって遺産を相続するケースがあります。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼び、代襲相続により相続することになった方を代襲相続人といいます。また、代襲相続とは、民法で詳細に規定されている遺産相続の制度です。
具体的に代襲相続とはどういった制度なのか、代襲相続人となれる範囲や要件、相続割合などについて、代襲相続による注意点を含めて、べリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
代襲相続は理解が難しい点もありますが、基本的なポイントをおさえることから理解を深めていきましょう。
まずは、代襲相続の概要および原因について解説します。代襲相続とは何か、基本的なポイントを理解しておきましょう。
代襲相続とは、民法所定の事由によって相続権を失った相続人に代わり、その子どもが相続人になることをいいます。
相続人の子どもは、本来であれば二次相続(相続人が死亡した場合の相続)で遺産を相続できるはずであり、その合理的な期待を保護する必要があります。代襲相続はかかる期待を保護するために設けられた制度です。
代襲相続の原因は、民法第887条第2項により、以下の3つに限定されています。
民法上、代襲相続の発生原因は「死亡」「相続欠格事由該当」「廃除」の3つに限定されています。
これに対して「相続放棄」(民法第939条)をした場合には、相続人が相続権を失うという結果は上記の3つと同様であるものの、代襲相続は発生しません。
相続放棄すると、その人は始めから相続人ではなかったことになるので、相続権が発生せず代襲相続人となる資格も失います。
相続人に死亡・相続欠格事由該当・廃除のいずれかの代襲相続事由が発生したとしても、その相続人の子どもが代襲相続人になれるかどうかは、別途検討を必要とします。
具体的には、以下のいずれかの条件に該当する場合に限り、相続人の子どもが代襲相続人となります。
被相続人の子どもに代襲相続事由が発生した場合、さらにその子ども(被相続人の孫)が代襲相続人となります(民法第887条第2項)。
被相続人の孫が代襲相続人となるのは、代襲相続のもっとも基本的なケースといえるでしょう。
たとえば被相続人が死亡するよりも前に、被相続人の子ども・孫がともに死亡しているようなケースも考えられます。
このとき、被相続人の孫のさらに子ども(被相続人のひ孫)がいる場合には、ひ孫も代襲相続人となることが可能です(民法第887条第3項)。これを「再代襲相続」といいます。
再代襲相続は、民法上は何代先までも成立するので、ひ孫以降の玄孫(やしゃご)、来孫……についても、代襲相続人となることが可能です。
被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケース(子ども・直系尊属がない場合)で、その兄弟姉妹に代襲相続事由が発生した場合には、兄弟姉妹の子ども(甥・姪)が代襲相続人となります(民法第889条第2項)。
なお、甥・姪についても代襲相続事由が発生した場合、「再代襲相続は認められない」ことに注意が必要です。つまり、兄弟姉妹の代襲相続は一代限り(甥・姪まで)であり、被相続人の甥・姪の子どもは、代襲相続人となることができません。
代襲相続が発生した場合、代襲相続人および他の相続人の相続分・遺留分はどのように決まるのでしょうか。計算方法についての基本的な考え方を理解しておきましょう。
代襲相続人の相続分は、もともと相続人だった「被代襲者」の相続分と同じです。ただし、代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者の相続分を人数割りで承継することになります。
たとえば、被相続人である父Aとその配偶者である母B、長男C(死亡)と次男Bがいて、さらに長男C(死亡)の子たちである孫Dと孫Eがいる家族の場合で検討してみます。
被相続人父Aよりも先に、長男C(法定相続分=1/4)が死亡して、長男Cの子ども(被相続人父Aの孫)である孫Dと孫Eが代襲相続人となったケースです。
この場合、孫Dと孫Eは長男Cの法定相続分である1/4を均等に引き継ぐので、孫Dと孫Eの相続分は1/8ずつ(1/4×1/2)です。
代襲相続人は、あくまでも被代襲者の相続分の範囲で相続分を引き継ぐに過ぎません。
したがって、他の相続人の相続分に対して、代襲相続の発生が影響を与えることはありません。
遺留分についても、相続分と同様に、代襲相続人は被代襲者の権利をそのまま承継します。
ただし遺留分は、「兄弟姉妹以外の相続人」について認められる権利とされています(民法第1042条第1項)。
つまり、被相続人の子どもを代襲相続した「被相続人の孫」には遺留分が認められますが、被相続人の兄弟姉妹を代襲相続した「被相続人の甥・姪」には遺留分が認められないことに注意が必要です。
なお遺留分の金額は各相続人の相続分の金額に、以下の割合をかけることによって求められます。
最後に、代襲相続に関してよく問題となる法律上・税務上・手続き上の論点について補足します。
養親である相続人が死亡した場合に、養子の子どもが代襲相続人となることができるかどうかは養子縁組の時期によって異なります。
養子縁組前に養子の子どもがすでに生まれていた場合、その養子の子どもは養親とは血縁関係がないものとして扱われます。この場合、養子の子どもは代襲相続人となることができません。
これに対して、養子縁組後に養子の子どもが生まれた場合、その養子の子どもは養親である被相続人との間で血族関係となります。この場合、養子の子どもは代襲相続人になれます。
相続税申告上、全相続人に対して課税される相続税の総額は、遺産(相続財産)総額に応じて決定されます。
このとき、以下の金額を基礎控除として、相続税の算定基礎となる遺産総額から控除することが認められています。
相続人に代襲相続事由が発生し、複数の子が代襲相続人となった場合、上記の「法定相続人の人数」は増えます。
この場合、相続税の基礎控除についても、代襲相続後の代襲相続人も含めた法定相続人の人数に応じて決定される(増額される)ことになります。
法務局での相続登記や、銀行などの金融機関における相続手続きなどでは、相続人の全容を証明するため、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)等を提出する必要があります。
代襲相続が発生している場合には、代襲相続の事実を証明するため、以下の戸籍が必要となります。
必要書類に漏れがないか不安な場合には、弁護士にご確認ください。
代襲相続に関する民法上のルールには複雑な部分があるため、相続人の確定作業の段階から、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめいたします。
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たとえ大勢いる相続人のひとりと連絡が取れない場合であっても、勝手に相続手続きを進めてしまうと、遺産分割協議は無効となってしまいます。
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