遺産相続コラム

遺留分と法定相続分の違いとは? 弁護士が解説

2021年07月05日
  • 遺留分侵害額請求
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遺留分と法定相続分の違いとは? 弁護士が解説

被相続人が亡くなったときに、遺言が残されていた場合には、原則としてその遺言に従って遺産を分けることになります。
しかし、遺言の内容が「一部の相続人にすべての遺産を相続させる」といったものであった場合には、遺産を相続することができない他の相続人から不満が出てくることが予想されます。

他の相続人は、上記のような遺言があったときには、一切遺産をもらえないかというとそうではありません。相続人には、遺留分という法律上保障されている、最低限の遺産の取り分がありますので、遺言の内容に不満のある相続人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し、又は相続分の指定を受けた相続人を含みます)等に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。

今回は、遺言の内容に不満があったときの対応や遺留分と法定相続分の違いなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、法定相続分と遺留分の違いとは?

法定相続分と遺留分についてはどのような違いがあるのでしょうか。以下ではそれぞれの基本的事項について説明します。

  1. (1)法定相続人の範囲

    法定相続人とは、遺産を相続できると法定された相続人のことをいいます。被相続人が遺言を残すことなく亡くなったときに、民法に定める法定相続人の規定に従って相続手続きを進めていくことになります。
    民法が規定する法定相続人の範囲は、以下のとおりです。

    ① 配偶者
    被相続人が死亡時に婚姻しており、配偶者がいる場合には、その配偶者は常に相続人になります(民法890条)。

    後述する直系尊属や兄弟姉妹は、先順位の相続人がいないときに限り相続人となることができます。しかし、配偶者は、被相続人に子、直系尊属、兄弟姉妹がいる場合であっても、常に相続人になることができます。

    ② 被相続人の子(第1順位)
    被相続人の子は、第1順位の相続人になります(民法887条1項)。被相続人に子がいるときは、後順位である直系尊属や兄弟姉妹は、相続人にはなれません。

    なお、被相続人の子が被相続人よりも前に亡くなった場合、又は欠格や廃除で相続権を失った場合に、被相続人の子にさらに子(被相続人の孫)がいた場合には、孫が相続人になります(民法887条2項)。これを代襲(だいしゅう)相続と言います。

    さらに、被相続人の孫もすでに亡くなったが、被相続人にひ孫がいるときには、そのひ孫が相続することになります。これを再代襲(さいだいしゅう)相続といいます(民法887条3項)。

    ③ 被相続人の直系尊属(第2順位)
    被相続人に第1順位の相続人がいない場合は、被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)が相続人になります。

    直系尊属が複数いる場合には、被相続人と親等が近い地位にある方が相続人となります。たとえば、父母、祖父母がともに健在の場合には、被相続人により親等の近い父母のみが相続人になります。父母がすでに他界している場合には、祖父母が相続人となります(以上、民法889条1項1号)。

    ④ 被相続人の兄弟姉妹(第3順位)
    被相続人に第1、第2順位の相続人がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(889条1項2号)。

    兄弟姉妹が相続するときにも代襲相続が生じますので、被相続人の甥(おい)・姪(めい)が相続することがあります。しかし、第1順位の子のときのような再代襲相続は認められません(同条2項)。

    参考:相続人の範囲についてもっと詳しく知りたい方はこちら

  2. (2)法定相続分とは

    民法は、遺言がない場合に備えて、法定相続人が相続できる割合を予め定めています。これを「法定相続分」といいます(民法900条)。もっとも、実際の遺産分割協議等においては、この法定相続分とは異なる割合による遺産分割案が合意されることも多くあります。
    具体的な法定相続分は、法定相続人が誰であるかによって異なってきますので、以下では、いくつか場合を分けて説明します。

    ① 相続人が配偶者だけで子や親兄弟姉妹がいないケース、被相続人に配偶者がおらず子のみのケース、被相続人に配偶者と子がおらず相続人が親のみのケース、被相続人に配偶者・子・親がおらず相続人が兄弟姉妹のみのケース
    この場合には、各相続人がすべての遺産を取得することになります。子、親、兄弟姉妹が複数いる場合には、原則としてその人数で均等に割って遺産を分けることになります(900条条4号本文)。

    ② 相続人が配偶者と子ども(第1順位)のケース
    この場合には、

    • 配偶者2分の1
    • 子2分の1


    という割合で遺産を取得します(900条1号)。

    子が複数いる場合には、

    • 2分の1の割合を子の人数で均等に分けた割合


    となります(民法900条4号)。

    ③ 相続人が配偶者と親(第2順位)のケース
    この場合には、

    • 配偶者3分の2
    • 親3分の1


    という割合で遺産を取得します(900条2号)。
    父母がともに存命の場合には、3分の1の割合を父母で均等に分けた割合となります(同条4号)。

    ④ 相続人が配偶者と兄弟姉妹(第3順位)のケース
    この場合には、

    • 配偶者4分の3
    • 兄弟姉妹4分の1


    という割合で遺産を取得します(900条3号)。

    兄弟姉妹が複数いる場合には、遺産の4分の1を兄弟姉妹の人数で均等割します(同条4号)。

  3. (3)遺留分とは

    被相続人は、生前同様死後においても、遺言によって自己の財産を自由に処分できるというのが原則です。しかし、被相続人が遺言によって特定の個人に対し遺産の全てを与えてしまうと、相続人の生活が脅かされるなどの不都合が生じえます。

    そこで、この遺産の自由な処分を制限して、一定範囲の相続人に対して一定の財産を取得する権利を付与するのが、遺留分制度です。たとえば、被相続人が遺言書で特定の個人(相続人に限りません。以下、「受遺者」といいます。)にすべての遺産を相続させる旨の遺言書を残していたとしても、それによって、相続人の遺留分がなくなることはありません。

    遺留分が認められる相続人の範囲と請求できる財産の割合については、民法1042条によって以下のように定められています。

    (遺留分の帰属及びその割合)
    第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
    一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
    二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
    2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。


    上記のとおり、遺留分が認められている相続人は、「兄弟姉妹以外の相続人」です。

    遺留分として保障されている相続割合としては、父母などの直系尊属だけが相続人の場合には、「法定相続分×3分の1」、それ以外の者が相続人の場合には、「法定相続分×2分の1」となります。

    参考:遺留分についてもっと詳しく知りたい方はこちら

2、相続分、遺留分の算定に含まれる財産と含まれない財産

ところで、遺産分割をするにあたっては、まず、相続財産の範囲を確定しなければならず、そのために被相続人の財産をすべて調べる必要があります。その際には、どの財産が遺産分割の対象となる相続財産に含まれるかが問題になることがあります。
以下では、相続分の計算に算入される財産と遺留分の算定のために算入される財産の違いについて説明します。

  1. (1)相続分の算定時に含まれる財産

    相続の一般的効力として「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(民法896条)ことになります。そのため、相続財産には、被相続人に帰属したプラスの財産(以下、「積極財産」といいます)のみならず、負債等のマイナスの財産(以下、「消極財産」といいます)も含まれることになります。消極財産の方が多いような場合には、相続放棄を検討するとよいでしょう。

    具体的には、以下のような財産が相続分の計算に含まれる代表的なものになりますが、これらに限られるわけではありません。

    ① 積極財産

    • 現金、預貯金
    • 不動産(土地、建物、農地、借地権など)
    • 有価証券(国債、株式、投資信託など)
    • 動産(自動車、美術品、貴金属など)
    • その他の債権や権利(貸付金、売掛金、損害賠償請求権など)


    ② 消極財産

    • 負債(借金、買掛金、住宅ローンなど)
    • 税金(固定資産税、所得税、住民税などのうち未払いのもの)
    • その他の債務(損害賠償債務、未払いの医療費など)
  2. (2)相続財産に含まれない財産

    被相続人に属していた権利義務であっても、相続財産に含まれないものがあります。相続財産に含まれない財産としては、以下のようなものがあります。

    ① 被相続人の一身専属権
    一身専属権とは、権利の性質上特定の人にしか帰属しない権利のことをいいます。財産上の権利であっても、一身専属権については、相続財産には含まれません。このようなものとしては、年金請求権、生活保護受給権などがあります。

    財産権ではない、被相続人の身分上の権利や地位も、相続財産には含まれません。このような権利としては、親権、扶養請求権、認知請求権、夫婦の同居義務などがあります。

    ② 祭祀(さいし)に関する権利
    祭祀に関する権利とは、祭祀のための祭具(仏壇・位牌(いはい)など)、系譜(家系図)、墳墓(墓地・墓石)などの財産をいいます。これらの祭祀に関する権利については、相続手続きとは別に、祭祀承継者に承継されることになりますので、相続財産には含まれない財産となります(民法897条)。

    ③ その他相続財産に算入されない財産
    死亡保険金については、特定の相続人を受取人として指定し、また「相続人」を受取人として指定していても、被相続人の死亡時に被相続人の財産に属しない財産であるため、相続財産には含まれません。

  3. (3)遺留分の算定時に含まれる財産

    他方で、遺留分を算定するための財産については、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」(民法1043条1項)と定められています。これをわかりやすく説明すると以下のような計算式になります。

    遺留分算定基礎財産の価格=被相続人が相続開始時に有していた積極財産の価格+贈与した財産の価格-消極財産の額

    「積極財産」と「消極財産」については、上記で説明した内容と同じになりますが、遺留分算定においては「贈与した財産」の扱いが通常の相続財産の算定と異なってきます。

    相続財産の計算において、被相続人から相続人に対する贈与については、特別受益をとして加算されます。しかし、遺留分算定の際には、相続人に対する贈与だけでなく第三者に贈与した財産についても加算されるという点が異なりますので、注意が必要です。ただし、第三者への贈与については、遺留分権利者に損害を与えると知って贈与したものを除き、相続開始前の1年にされた贈与だけが加算の対象になります(民法1044条1項)が、相続人に対する贈与は、相続開始前10年になされたものが対象になります(同条4項)。

    参考:【無料計算ツール】 法定相続分・遺留分、あなたはいくら受け取れる?

3、遺産相続に関連する時効の注意点

遺産相続に関しては、時効についても注意しなければならないことがあります。

  1. (1)遺産分割協議が始まっていなかった場合

    遺産分割請求権自体には、時効はありません。何十年も前に相続が発生したものの、そのまま放置してしまっていたという場合であっても、遺産分割を他の相続人に対して請求する権利がなくなることはありません。

    ただし、相続を放棄しようとするのであれば、原則として、相続が始まったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続きをしなければなりません。そのため、相続放棄をする可能性がある方は、まずは、この3か月の期限を意識して行動するようにしましょう。

  2. (2)遺留分が侵害されているとわかった場合

    被相続人の遺言書によって、自己の遺留分が侵害されていることがわかったときには、時効の問題が生じます。

    遺留分が侵害されたこに不満のある相続人は、遺留分を侵害している者(受遺者及び受贈者)に対して、遺留分侵害額請求(以前は遺留分減殺請求と呼ばれていたもの)をすることになります(民法1046条1項)。

    遺留分侵害額請求権については、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年で時効になります。また、相続開始から10年が経過した時も権利行使できなくなります。遺留分を侵害する内容の遺言書を発見したときには、1年以内に権利行使をする必要がありますので、権利行使を考えている方は忘れないようにしましょう。

4、相続問題でお困りなら、経験豊富な弁護士への相談がおすすめ

相続問題でお困りのときは、ひとりで悩むのではなく経験豊富な弁護士に相談することがおすすめです。

  1. (1)相続財産の調査から任せられる

    相続が発生したときには、遺産分割をする前提として、相続財産調査を行う必要があります。相続財産に漏れがあったときには、再度遺産分割協議を行わなければならないこともありますので、正確に被相続人の財産を調べる必要があります。特に、被相続人に負債があるときには、相続放棄をするかどうかを判断するためにも早期に調査を行わなければなりません。

    相続人であったとしても、被相続人がどのような財産を有していたかについて正確に把握をしていないこともありますので、可能性のある機関に対して広く照会をかけていく必要があります。弁護士であれば、弁護士会照会などの専門的な照会手続きを利用することによって、広く相続財産の調査を行うことが可能です。

    相続財産調査に慣れていない方だと調査が完了するまでに相当時間がかかりますので、相続財産調査は経験のある弁護士に任せるのが安心です。

  2. (2)親族ともめた場合でも、法的根拠に基づき冷静に交渉を進められる

    遺産分割や遺留分の問題は、相続人同士でもめることが多い事項です。当事者同士での話し合いでは、法律上の問題ではなくお互いの感情的な問題が前面に出てきてしまうので、冷静に話し合って解決することが難しいです。

    弁護士であれば、依頼者の代理人として冷静な立場に立って交渉を進めることができますので、感情的な理由で話し合いができないという事態は回避できます。また、依頼者の言い分についても、法律上の根拠に基づき構成することによって、説得力を持って交渉を進めることが可能となります。また仮に、遺産分割調停や審判、遺留分侵害額請求の調停や遺留分侵害額請求訴訟に発展したとしても、弁護士であればその対応を任せることができます。

    法律上の争点が多く含まれる相続問題をひとりで解決することは困難ですので、なるべく早めに弁護士へご相談ください

5、まとめ

今回は、法定相続分と遺留分について解説してきましたが、親族と遺産分割や遺留分などでもめている場合、それを自力で解決するのは至難の業でしょう。早めに弁護士への依頼をし、適正な相続分を求めていきましょう。

ベリーベスト法律事務所では、相続問題に悩む方のご相談を受け付けております。おひとりで悩むのではなく、なるべく早めに弁護士に相談し、解決のための道筋をつけることをおすすめします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒106-0032 東京都 港区六本木1-8-7 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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