遺産相続コラム
相続において、土地などの不動産をどのように分割するかは、後の紛争を回避するうえで重要なポイントとなります。
遺言書が存在せず、土地の分け方をめぐって兄弟間などで意見が食い違ってしまった場合、「土地を共有のままにしておく」などの方法で決着を先延ばししてしまうことには、後々のトラブルの火種となってしまうおそれがあります。
そのため、遺産分割協議の時点で、不動産の分割方法も定めておくことが重要となるのです。
この記事では、相続の場面で土地などの不動産を遺産分割する方法や、分割時の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
相続では、「兄弟などの相続人同士の間で、土地などの不動産をどう分けるか」ということは厄介な問題になります。
まず、土地などの不動産を分割する際の注意点について、確認しましょう。
遺産分割を行う際には、分割対象となる資産の価値を正しく把握する必要があります。
特に土地などの不動産は、現金や有価証券のように客観的な価値が固定されているものではありません。そのため、不動産業者や不動産鑑定士に依頼して、資産評価を行う必要があるのです。
土地などの不動産については、「どのように分割すれば、公平になるか」ということの判断が難しくなります。
たとえば、兄弟2人がどちらも土地全部を相続したいと主張した場合、「土地を真っ二つにして、分ければいい」というわけにはいかないのです。
不動産の公平な分割方法については、後述する「代償分割」や「換価分割」の方法も含めて、個々の状況に合わせて検討する必要があるのです。
分割方法が難しいからといって、土地などの不動産をとりあえず法定相続分の割合で共有名義のままにしておくと、トラブルにつながる可能性があります。
遺産分割協議の時点では相続人の間における揉め事を回避できたとしても、後で事情が変わった際に、トラブルが再燃する可能性が高いためです。
トラブルの具体的な内容は、次の項目にて解説いたします。
遺産分割協議の段階で土地の取り扱いをはっきり決めることなく、共有のままにした場合に起こる可能性が高いトラブルについて、解説いたします。
たとえば、遺産分割協議の結果、「兄弟2人で土地を共有する」ことを決めたとします。
土地の共有を始めた当初は、2人で協力して土地を使うことができるでしょう。しかし、その後の結婚や引越しなどによって事情が変化し、兄弟のどちらか一方が土地を使用しなくなることは、よくあることです。
兄弟のどちらかが土地を使用しなくなった場合、残された方だけが土地を使い続けることになります。
しかし、共有状態のままでは、土地を使用しようとするたびに、もうひとりの兄弟の事実上の同意を得る必要が生じるのです。
また、土地を使用しなくなった兄弟は、土地の共有持分を残された方に買い取ってもらうことを希望する可能性があります。
このような場合には共有関係を清算する必要が生じますが、そのことが兄弟間の紛争の原因となるおそれがあるのです。
共有状態の土地を売却したり、賃貸したりする場合には、民法で定められたルールに従って行う必要があります。
たとえば、兄弟2人が土地を持分各2分の1で共有している場合、土地を売却するなどの変更をするためには、兄弟双方の同意が必要となります(民法第251条)。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
(引用:民法第251条)
また、状況により、土地を賃貸することは「管理行為」にあたるため、各共有者の持分の過半数の同意が必要となります(民法第252条)。兄弟2人が土地を持分各2分の1で共有している場合にも、兄弟双方の同意が必要とされるのです。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
(引用:民法第252条)
つまり、売却にせよ賃貸にせよ、持分各2分の1ずつの共有者間で意見が食い違った場合、不動産の運用に対する大きな障害が発生してしまうのです。
遺産分割協議のなかで土地を分割する方法には、複数の種類が存在します。
それぞれの方法の特徴について、解説いたします。
土地を分筆することにより相続人間で物理的に分けてしまう「現物分割」は、分割という言葉からイメージされるものにもっとも近い方法といえます。
しかし、現物分割の方法が土地の分割に適している事例は、なかなかないのです。
まず、土地の形や状態は様々ですので相続人らの満足する割合で分離することができる場合が多くありません。
さらに、物理的に土地を分割するということは、所有者が使える面積を小さくしてしまう、ということです。そのため、土地の用途が限定されることになってしまったり、経済的価値が下がったりしてしまいます。
また、たとえば兄弟間で土地を現物分割する場合にも、兄弟のどちらもが「田舎にある親の土地を所有して、運用していきたい」という希望を持っているとは限りません。代償金をもらった上で、「自分が住んでいる都会で土地を買ってそれを運用したい」と考えている場合もあるでしょう。
上記の理由により、土地や不動産を分割する際には、現物分割以外の方法を採用することの方が現実的である場合が多いのです。
「代償分割」は、相続人の一部が土地などの現物を取得する代わりに、現物を取得した人が他の相続人に対して代償金を支払うという分割方法です。
兄弟のどちらか一方のみが「親の遺した土地を使い続けたい」と希望している場合には、代償分割の方法が適しているといえるでしょう。
ただし、代償金の金額を決定するためには、土地の価値を正しく評価する必要があります。
また、土地を使用し続ける側の相続人は、代償金を支払うために何らかの方法で金銭を工面する必要があるのです。
兄弟のどちらも土地を使用しない場合や、土地の分割方法について話し合いがまとまらない場合には、土地を処分してしまって売却代金を分けるという方法を採用することができます。この方法を「換価分割」といいます。
換価分割では、土地を資産として運用することができなくなる代わりに、代金を分割した時点で土地に関する相続が終わるので、トラブルが発生したり相続に関する交渉が長引いたりすることを防げるというメリットがあります。しかし、分割方法としては明確ですが、相続人らが土地の取得を希望していた場合には納得のいく分割方法とはなりません。
相続が発生した場合に、後に起こる可能性のある不動産トラブルを回避するために注意すべきポイントについて、解説します。
先述したように、不動産を共有のままにしておくと、紛争のリスクが残ることになります。
そのため、遺産分割協議書作成の時点で不動産の取り扱いを定めておくことが重要になるのです。
できれば兄弟などの相続人同士で協議したうえで、不動産を誰かひとりの単独所有とすることが理想です。やむを得ず共有とする場合には、その後の不動産の運用方法について、遺産分割協議の時点でルールを定めておくことで紛争のリスクを減らすことができるでしょう。
不動産は高い価値を持つことが多いため、兄弟などの相続人の間で、不動産分割方法について意見や利害が一致せずに揉めてしまうこともしばしばあります。
たとえば、以下のような事例が考えられます。
相続人の間で争いが生じた場合には、当事者同士で話し合いをしても互いに感情的になってしまい、協議がまとまらないおそれがあります。また、互いの心象や関係が悪化して、遺産分割協議が終わった後にも悪影響が続く可能性もあるのです。
そのため、相続人同士の間で争いが発生した場合には、家庭裁判所における「調停」や「審判」などの手続きを利用することが有効です。
これらの手続きを利用すると、調停委員や裁判官などの第三者が、当事者同士の争いを客観的な立場から仲介します。これにより、話し合いを冷静に進めて、結論をまとめることができるのです。
特に不動産が関係する遺産分割協議では、法律の専門家である弁護士に相談することには様々なメリットがあります。
メリットの具体的な内容については、次の項目で説明いたします。
不動産の処理について難しい問題のある遺産分割協議では、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあるためです。
不動産の相続では、資産評価が重要なポイントになります。評価方法にも種類がありますので、弁護士は、適切な評価方法を選択することができます。
また、「代償分割」や「換価分割」などの分割方法のうち、どの方法がもっとも依頼者にとっての利益になるのか、個別の事情を考慮しつつ専門的な観点から判断することができます。
弁護士であれば、遺産分割協議などの相続手続きにおいて依頼者の法的な権利が侵害されていないか、注意して確認することができます。
遺産分割協議が必要なもの、不要なものを選別したり、将来発見された遺産の分割方法や適切に相続登記をするために必要な文言を選択したりするなど、依頼者にとって有利な形での相続を実現するために、専門的な知識を活かしながら尽力いたします。
遺産分割協議などでは、親族間での感情的な話し合いになってしまうことも多いです。その場合、相続人は精神的に消耗してしまいます。また、本来であれば仲の良かった家族が、相続を経て険悪な関係になり疎遠になってしまう可能性もあります。
弁護士に依頼をすれば、第三者としての冷静な視点に基づいて、交渉をサポートすることができます。そのため、依頼者の方の精神的負担は大きく軽減されて、親族の関係を守ることも可能になるのです。
ベリーベスト法律事務所は、税理士・司法書士も数多く在籍しています。
相続の場面では、相続税については税理士に相談する必要があり、相続登記の関係では弁護士や司法書士のサポートが受けられると手続きが容易です。
弁護士・税理士・司法書士などが連携してお客様の相談に対応する、ワンストップ・サービスを提供しております。
ベリーベスト法律事務所では、原則的に、初回のご相談は無料となっております。
相続に関して、すこしでも不安なところや気にかかるところがありましたら、ベリーベスト法律事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。
相続において不動産を分割する際には、後の紛争を回避するために、慎重な対応が求められます。兄弟の間における土地の相続が問題となっている場合には、まずはべリーベスト法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
兄弟のうち、ひとりだけが生前贈与を受けて、土地などの不動産や現金を取得していることがあります。生前贈与を内緒にしていたことに対して、他の相続人は「自分の取り分が少なくなることに納得できない」と、憤りや不公平に感じるケースがあるでしょう。
一定の相続人は、「遺留分」と呼ばれる相続財産の最低限の取り分が民法上、認められています(民法1024条)。
したがって、自分の最低限の相続財産を侵害された場合には、遺留分を主張することで適切な相続分の支払いを請求することが可能です。
本コラムでは、遺留分や生前贈与の基本的な知識をはじめ、特別受益や遺留分侵害額請求の具体的な手続きの流れになどついて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
自分以外の相続人による「遺産隠し(財産隠し)」が疑われるときは、被相続人(亡くなった方)の隠されたすべての財産を調査し、発見したいと考えるでしょう。
また、遺産分割協議が終わったあとに特定の相続人による遺産隠しが発覚した場合、遺産分割協議のやり直しができるのかも気になるところです。
相続人による遺産隠しが行われたとき、一気にすべての相続財産を探すことができる特別な方法はありません。預貯金、土地建物などの不動産、株式などの有価証券など個別の相続財産を相続人が根気よくコツコツ探していくことが必要です。
本コラムでは、遺産を隠された疑いがあるときの調査方法や、遺産隠し発覚後の対応方法、時効などの注意点について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
遺言無効確認訴訟とは、被相続人(亡くなった方)による遺言が無効であることについて、裁判所に確認を求める訴訟です。
遺言書の内容に納得できず、遺言書が作成された経緯に不適切な点や疑問点がある場合には、遺言無効確認訴訟の提起を検討しましょう。
本記事では遺言無効確認訴訟について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が詳しく解説します。