遺産相続コラム
相続財産に不動産が含まれる場合、亡くなった方(被相続人)の名義から相続人の名義へと名義変更が必要になります。これを「相続登記」といい、令和6年4月1日から、申請が義務化されました。
相続登記には、さまざまな書類が必要になり、準備すべき書類は、遺産相続のケースに応じて異なります。期限までに相続登記を終えるためにも、ご自身の状況でどのような書類が必要になるかをしっかりと押さえておくようにしましょう。
今回は、相続登記の必要書類や取得方法、注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
相続登記をする際にはどのような書類が必要になるのでしょうか。
以下では、相続登記の手続きにおいて共通して必要になる書類とその取得方法を説明します。
相続登記をする前提として、誰が相続人であるかを確定させなければなりません。相続人を確定させるには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。
まずは、被相続人の本籍地の市区町村役場において、取得可能な範囲の戸籍謄本、除籍謄本(戸籍に記載された人が全員除籍になった場合の、戸籍そのものをいいます。)、改製原戸籍謄本(様式が変更される前の、古い戸籍謄本のことをいいます。)を取得し、転籍などで本籍地が変わっている場合には、別の市区町村役場において取得します。
令和6年3月1日より、戸籍の広域交付制度が開始されました。これは、最寄りの市区町村役場に赴いて手続きをすることで、他の市区町村の戸籍謄本も一括して取得できるという制度です。これにより、本人、配偶者、父母、祖父母等の直系尊属、子や孫等の直系卑属の戸籍を一括で取得することができます。
ただし、兄弟姉妹の戸籍は取得できませんので注意が必要です。
相続人が誰であるか、被相続人の死亡時に相続人が生きているかを確認するために、相続人全員の戸籍謄本が必要です。
相続人全員の戸籍謄本は、各相続人の本籍地の市区町村役場で取得しましょう。
不動産の登記名義人と死亡した被相続人の同一性を証明するために、被相続人の住民票の除票の提出も必要です。住民票の除票には、戸籍謄本には記載のない被相続人の住所が記載されていますので、それにより同一性を確認することができます。
被相続人の住民票の除票は、被相続人が最後に住んでいた住所地の市区町村役場で取得することが可能です。
相続登記では、不動産を取得する人の住所も登記事項となりますので、それを確認するために不動産取得者の住民票が必要です。
不動産取得者の住民票は、不動産取得者の住所地の市区町村役場で取得することができます。
相続登記にあたっては、登録免許税を納付しなくてはなりません。登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を基準に算定しますので、相続する不動産の固定資産評価証明書が必要になります。
固定資産評価証明書は、不動産所在地の市区町村役場で取得することが可能です。
登録免許税は、収入印紙により納める必要があります。
収入印紙は、相続登記を申請する法務局や最寄りの郵便局などで購入することが可能です。
相続登記をする際には、登記申請書に必要事項を記入して、法務局に提出する必要があります。
登記申請書は、法務局に備え付けられており、法務局のホームページからもダウンロードすることもできます。
以下では、遺産相続のケースに応じた相続登記の必要書類を説明します。
法定相続による相続登記とは、法定相続分どおりに相続登記をする方法です。遺産分割協議が成立しなかったとしても、各相続人は、法定相続分にしたがって遺産を取得する権利があります。そのため、法定相続分での登記であれば、いつでも可能です。
被相続人が遺言を残して亡くなった場合、遺言内容にしたがって遺産を分けることになります。
なお、遺言書が法務局以外で保管されている自筆証書遺言であった場合には、相続登記の前提として、家庭裁判所における検認の手続きが必要になります。なお、検認とは、他の相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きをいいます。
そのため、遺言の有効・無効を判断する手続きではないことに、注意が必要です。
遺言を利用することで法定相続人以外の第三者に対して、不動産を遺贈することができます。
なお、法定相続人以外の第三者に不動産の遺贈があった場合の相続登記は、共同申請になりますので、相続人全員(義務者)と不動産の遺贈を受けた第三者(権利者)が共同で申請しなければなりません。
遺言において遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者と遺贈を受けた者の共同で申請します。
遺言執行者が指定されていない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立を行って指定してもらいます。
被相続人が遺言書を残さずに亡くなった場合、相続人による遺産分割協議を行い、遺産の分け方などを決めていきます。遺産分割協議により不動産を取得する相続人が決まったら、相続登記を行いましょう。
相続登記の申請をする際には、申請期限と以下のような注意点があります。
冒頭で述べたとおり、令和6年4月1日に相続登記が義務化され、相続登記の申請期限が設けられました。
相続登記の申請期限は、不動産を相続により取得したことを知った日から3年です。また、令和6年3月31日以前に不動産を相続し、相続登記が未了の場合、令和9年3月31日までに相続登記をしなければなりません。
正当な理由なく期限までに相続登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記の書類を用意する際には、以下の点に注意が必要です。
① 戸籍は新しいものから順に取得していく
被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得する際には、死亡時(新しいもの)から出生時(古いもの)にさかのぼって取得していきましょう。
死亡時の戸籍謄本であれば、現在の本籍地の市区町村役場で確実に取得することができますので、これを手掛かりにして一つ前の戸籍の取得を行っていきます。このように取得することで、出生から死亡までの連続した戸籍を取得することが可能です。
② 相続人が海外居住の日本人である場合は住民票と印鑑証明書の代わりとなる書類を用意する
相続人に海外居住の日本人が含まれている場合、住民票や印鑑証明書を取得することができません。このような場合には、以下の書類により住民票と印鑑証明書の代わりにすることができます。
これらの書類は、居住先の在外公館(領事館や大使館)で取得することができます。
実際に手続きをする場合には、司法書士に相談されることをおすすめします。
③ 数次相続の場合は元の相続と次に発生した相続両方の戸籍謄本が必要になる
数次相続とは、被相続人の相続(一次相続)開始後、遺産分割の手続きが終わる前に相続人が死亡して、次の相続(二次相続)が開始した状態をいいます。
数次相続は、一次相続と二次相続が重なっている状態ですので、相続登記をする場合には、一次相続と二次相続の双方に関する戸籍謄本が必要になります。用意すべき書類が複雑になりますので、不安な方は弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
遺産に不動産が含まれる場合の相続については、弁護士に相談することをおすすめします。
相続登記の必要書類は、遺産相続のケースごとに異なりますので、ご自身のケースがどのケースに該当するかをよく確認してから用意しなければなりません。
書類に不備があると、相続登記の申請期限までに相続登記の申請を終えることができず、過料のペナルティーを受けるリスクがありますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士であれば、相続登記に必要になる書類を迅速かつ正確に収集し、手続きを進めることが可能です。
また、手続きを進めるうえで不利にならないよう、適切なアドバイスをしてくれますので、初めての相続でも安心して任せることができます。
相続財産に不動産が含まれるケースでは、相続登記の前提となる遺産分割においてトラブルが生じるケースがあります。不動産は、評価が一律ではないため評価方法をめぐるトラブルや誰が不動産を相続するかといった遺産分割方法に関するトラブルになりやすいといえます。
このようなトラブルを解決するには、弁護士のサポートが必要になりますので、相続トラブルが予想されるときは相続に詳しい弁護士に相談するようにしましょう。
相続財産に不動産が含まれている場合、相続登記が必要になります。相続登記の必要書類は、遺産分割のケースに応じて異なりますので、ご自身の状況に応じて適切な書類を用意することが大切です。
相続財産に不動産が含まれる相続は、通常の相続に比べてトラブルが生じる可能性が高くなっていますので、スムーズに遺産分割の手続きを進めるためにも、まずは弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。
ベリーベストグループには弁護士・司法書士・税理士等の士業が在籍しており、相続登記や遺産分割、相続税の申告までワンストップで対応することが可能です。
不動産を含む相続でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
相続財産に不動産が含まれる場合、亡くなった方(被相続人)の名義から相続人の名義へと名義変更が必要になります。これを「相続登記」といい、令和6年4月1日から、申請が義務化されました。
相続登記には、さまざまな書類が必要になり、準備すべき書類は、遺産相続のケースに応じて異なります。期限までに相続登記を終えるためにも、ご自身の状況でどのような書類が必要になるかをしっかりと押さえておくようにしましょう。
今回は、相続登記の必要書類や取得方法、注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
民法・不動産登記法が改正され、令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。対象となる相続登記は、法改正以降に発生した相続だけでなく過去の相続も含まれるため、注意が必要です。
相続登記を行う期限は、「改正法の開始日(令和6年4月1日)」もしくは「不動産を相続により取得したことを知った日」のどちらか遅い日から3年以内、遺産分割協議で取得した場合は、別途、「遺産分割協議が成立した日」から3年以内となるため、ご自身の場合は手続き期限がどこになるかを見極めて、早めに登記を進めていくことをおすすめします。
本コラムでは、相続登記義務化の概要と登記しなかった場合の罰則、すぐに相続登記ができない場合の救済措置(相続人申告登記)について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
令和6年4月1日の法改正により、相続登記の義務化が始まりました。義務が発生するのは4月1日以降の相続だけでなく、それ以前に発生した相続も対象になります。
そのため、期限までに相続登記を終えなければ過料の制裁を受けるリスクがあるため、注意が必要です。
こうした制裁リスクを回避できるように新しく創設された制度が、「相続人申告登記」です。
相続登記をするには、遺産分割協議で遺産の分配を決める必要がありますが、期限内に遺産分割に関する話し合いがまとまらないケースもあるでしょう。そのようなときに、この相続人申告登記の制度を利用することで、より簡単に相続登記の申請義務を履行できるようになりました。
本コラムでは、相続登記の義務化に伴い、新たに導入された相続人申告登記の基礎知識について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。