遺産相続コラム
被相続人(亡くなった方)の遺産は、原則として、配偶者や子どもなど、財産を引き継ぐ権利を有する相続人に引き継がれることになります。具体的な遺産の分け方は、基本的に、相続人同士で話し合って決めなければなりません。
しかし、家族仲が悪かったり、連絡が取れない相続人がいたりすると、スムーズに遺産相続を進めることができず、家族で揉める原因となります。
本コラムでは、相続で揉める家族の特徴やトラブルの例、揉めないための対策法などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
遺産相続で揉める家族の特徴としては、以下の6つが挙げられます。
それぞれの要因について、具体的に見ていきましょう。
遺産相続は、基本的には相続人全員の話し合いで遺産の分け方を決めていくことになります。これを「遺産分割協議」といいます。
家族の仲が悪いケースでは、お互いに譲歩していくよりも、各自が自分の意見ばかり主張し合うことになってしまうでしょう。また、相手からの連絡を無視することもあるため、そもそも遺産分割協議を始めること自体ができない場合もあります。
そのため、遺産相続で揉める可能性が高くなります。
被相続人が離婚や再婚を繰り返しているケースでは、家族関係が複雑になることも少なくありません。婚姻関係にない女性との間に非嫡出子がいたり、前妻との間に生まれた子どもがいたりして、想定していない相続人があらわれることになると、一気に遺産相続の話し合いは複雑化してしまいます。
遺産相続は、互いによく知っている家族同士でもトラブルになりうる問題です。関係性の希薄な相続人同士では、より相続で揉める可能性が高くなるでしょう。
被相続人の財産について、複数いる相続人の内のひとりが管理していたというケースも、相続で揉める家族の特徴のひとつとして挙げられます。
たとえば、子どもが認知症の親と同居して介護などを行っていたケースが想定されますが、他の相続人の立場からすると、その子どもが勝手に財産を使い込んでいるのではないかとの疑いを抱くことがあります。
このとき、同居していた子どもが他の相続人から被相続人の財産の開示請求を受けたとき、それに応じなければ、相続人同士で対立が生じる原因となるでしょう。
生前に被相続人から多額の贈与を受けていた相続人がいる場合には、遺産相続の場面で「特別受益」として持ち戻しの対象になる可能性があります。すなわち、生前贈与を受けた相続人は、生前贈与が考慮される結果、実際に相続できる遺産が減るおそれがあるということです。
すべての生前贈与が特別受益の対象になるわけではないため、特別受益を主張する相続人とそれを否定した相続人との間で対立が生じ、トラブルになるケースがあります。
相続で揉める家族の特徴として、特定の相続人に介護の負担が偏っていたケースも挙げられます。
被相続人の介護に尽力した相続人は、「寄与分」として、他の相続人よりも多くの遺産を受け取る権利が認められる可能性があります。しかし、寄与分を認めるかどうか、寄与分としていくらを認めるかについては、基本的には相続人同士の話し合いで決めなければなりません。
介護の負担を評価してほしい相続人と、自分の取り分が減ってしまうために寄与分を認めたくない相続人との間で相続争いに発展するケースがあります。
遺産分割協議を成立させるためには、すべての相続人の同意が必要です。
一部の相続人を除いて遺産分割協議を成立させる、ということはできないため、連絡の取れない相続人や行方不明の相続人がいるケースでは、遺産分割協議を進めることができません。
このとき、不在者財産管理人の選任申し立てや失踪宣告の申し立てなどを行う必要がありますが、誰が手続きを行うのか、費用は誰が負担するのかなどで揉めてしまい、遺産相続の手続きが進まないケースもあります。
遺産相続で揉める家族には、以下のようなトラブルが生じる可能性があります。
遺産分割協議自体は終えるべき期限がないため、長期間経過したことのみをもって、遺産を相続する権利がなくなるということはありません。
しかし、遺産相続に関する各手続きには期限が設けられているものもあり、相続で揉めると話し合いがまとまらず、期限内に手続きできないこともあるでしょう。
たとえば相続放棄をする場合は、相続開始を知ったときから3か月以内に手続きをしなければなりません。相続人の協力が得られず相続財産調査が進まないと、相続放棄をするべきかどうかの判断がつかず、期限を徒過してしまうケースがあります。
また、相続税申告が必要なケースでは、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税申告を行うことが必要です。相続税申告の期限を徒過してしまうと、延滞税や無申告加算税というペナルティーが生じ、有利な特例の適用を受けることもできなくなってしまいます。
参考:遺産相続の流れ
相続財産が現金や預貯金など分けやすいものであれば、各相続人の法定相続分に応じて分割できるため、そこまで揉めることはありません。
しかし、このような金融資産ではなく不動産が主な相続財産だった場合には、不動産の分割方法をめぐって相続人同士でトラブルになることがあります。
特定の相続人が不動産を相続するケースでは、他の相続人と不平等を解消するために代償金というお金が支払われることになる場合が多いですが、不動産の評価額によっては代償金が高額になり、資力のない相続人では支払うことができないという事態が生じる可能性があります。
また、不動産を売却しようとしても、立地条件によっては簡単に売却できず、長期間遺産分割が進まない事態にもなりかねないため、注意が必要です。
遺産相続によるトラブルを回避するためには、以下の3つの対策が有効です
遺産相続でのトラブルは、相続人による遺産分割協議の時点で発生することが多いです。
これは、相続人同士の関係性や分割方法をめぐる対立などが原因で発生します。このようなトラブルを回避するには、あらかじめ被相続人の生前に遺言書を作成しておくことが有効です。
有効な遺言書がある場合には、基本的には遺言書の内容に従って遺産を分けることになり、相続人による遺産分割協議が必ずしも必要というわけではなくなります。遺産分割協議の必要がなければ相続人同士の対立が生じる可能性が低いので、遺産相続のトラブルを回避する有効な手段のひとつです。
ただし、遺言書の内容が他の相続人の遺留分を侵害するようなものだと遺留分に関する争いが生じてしまったり、遺言書の形式に不備があれば遺言書が無効になってしまったりする可能性があります。遺言書を作成する際には、弁護士に相談しながら作成するようにしましょう。
成年後見制度とは、認知症などにより判断能力が不十分になった人の財産を守るための制度です。親が高齢で認知症になってしまったという場合には、成年後見制度を利用して財産管理を行うことで、家族による財産の使い込みを防ぐことができます。
成年後見制度には、本人が元気なときから準備できる「任意後見制度」と、本人が認知症などになってしまったときに利用できる「法定後見制度」の2種類があります。
ご自身の財産を信頼できる第三者に管理してもらいたいのであれば、元気なうちから任意後見制度の利用を検討するとよいでしょう。
家族信託とは、将来認知症により財産管理ができなくなってしまうことに備えて、信頼できる家族に財産の管理や処分を任せることができる制度です。
遺言書では、自分が死亡したときの相続しか指定することができず、その次の代の相続には対応できません。
たとえば、遺言書で子どもに遺産を相続させることができても、子どもが亡くなったときに子どもから孫に遺産を引き継がせることまでは指定できません。
家族信託を利用すれば、孫の代までの相続が指定可能で、遺言書ではできないような柔軟な財産承継を実現することができる可能性があります。
参考:家族信託
遺産相続でトラブルが発生した場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
遺産相続で揉めたときに誤った対応をしてしまうと、トラブルが拡大し、より深刻な事態になってしまいます。遺産相続への対応には、法的知識と経験が必要になりますので、自分だけで対応するのではなく、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士に相談すれば、具体的な状況に応じた正しい対応方法をアドバイスしてもらうことが可能です。その内容に従って対応することで、遺産相続のトラブルを解決できる可能性が高くなるでしょう。
ご自身で遺産相続のトラブルに対応するのが難しいケースもあるでしょう。
弁護士は、相続人の代理人として遺産分割協議に参加することが可能です。そして、法的観点から適切な遺産分割方法を提案し、説明することで他の相続人の納得が得られる可能性が高くなります。
弁護士に依頼すれば、ご自身で対応する必要がなくなることも多いため、相続手続きに関与することで生じる負担が軽減されるでしょう。
相続人同士の話し合いで解決できない問題は、調停や裁判によって解決する必要があります。
調停や裁判にまで問題が発展すると、相続人個人では対応が難しくなるために、弁護士に対応を任せるのが安心です。
弁護士であれば、調停や裁判の手続きにおいて、相続人が有利な条件で遺産相続を受けられるよう、法的観点から主張立証を行うことができます。遺産の分配で、相手から不利な条件を押し付けられる心配もありません。
相続で揉める家族は、決して少ないわけではありません。だからこそ、相続で揉める家族の特徴を知っておき、事前にしっかりと対策することが大切です。
生前の相続対策をお考えの方や実際の相続トラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
ベリーベスト法律事務所は遺産相続専門チームを組成しており、経験・知見豊富な弁護士がベストなリーガルサービスを提供いたします。
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自分以外の相続人による「遺産隠し(財産隠し)」が疑われるときは、被相続人(亡くなった方)の隠されたすべての財産を調査し、発見したいと考えるでしょう。
また、遺産分割協議が終わったあとに特定の相続人による遺産隠しが発覚した場合、遺産分割協議のやり直しができるのかも気になるところです。
相続人による遺産隠しが行われたとき、一気にすべての相続財産を探すことができる特別な方法はありません。預貯金、土地建物などの不動産、株式などの有価証券など個別の相続財産を相続人が根気よくコツコツ探していくことが必要です。
本コラムでは、遺産を隠された疑いがあるときの調査方法や、遺産隠し発覚後の対応方法、時効などの注意点について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
遺言無効確認訴訟とは、被相続人(亡くなった方)による遺言が無効であることについて、裁判所に確認を求める訴訟です。
遺言書の内容に納得できず、遺言書が作成された経緯に不適切な点や疑問点がある場合には、遺言無効確認訴訟の提起を検討しましょう。
本記事では遺言無効確認訴訟について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が詳しく解説します。
不動産に関する相続手続きのなかでも、特に問題となりやすいものが「未登記建物」です。未登記建物を相続する場合、遺産分割協議書の作成には、十分に注意しましょう。
本コラムでは、未登記建物の相続に関わる問題点や遺産分割協議書の作成方法など、一連の相続手続きにおける未登記建物の取り扱いについて、相続業務を幅広く取り扱っているベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
なお、表題部の記載のみで、所有権保存登記などの権利部の記載がない建物は、多数存在しているのが実情です。そして、そのような建物も未登記建物と呼ばれることもありますが、本コラムでは、表題部すらない未登記建物に限定して説明します。