遺産相続コラム
被相続人(亡くなった方)の相続財産の分け方について、話が平行線のままで解決しそうになく、どうするべきか困っているという方は少なくありません。
遺産相続に関する話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停によって遺産の分け方を決めることになります。弁護士のサポートを受けながら、遺産分割調停を有利に進めましょう。
本コラムでは、遺産分割調停の流れや有利に進めるためのポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
相続人同士の遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を図ります。まずは遺産分割調停に関する基礎知識と、必要になる事前準備の内容を確認しましょう。
遺産分割調停とは、家庭裁判所において遺産分割の内容を話し合う手続きです。
民間の有識者から選任される調停委員が、各相続人の言い分を公平に聴き取ったうえで、必要に応じて歩み寄りを促して解決を図ります。
遺産分割調停では、調停委員が仲介を行うことにより、客観的事実に基づいた冷静な話し合いの実現が期待できます。
相続人同士での遺産分割協議がまとまらないときは、遺産分割調停を申し立てましょう。
遺産分割調停に先立ち、相続人は下記のような準備を整えておく必要があります。
遺産相続では、相続財産や相続人となる対象に漏れがあることも多いものです。
なお、遺産分割に関する期限として、相続税の申告に関する10か月の期限や相続放棄の3か月の期限、遺産分割協議において特別受益と寄与分の主張をする場合の期限が相続開始の時から10年と定められることになったこと、3年以内の相続登記の義務化など、法律の改正がされている分野でもあります。
「これで大丈夫だろうか」と不安になることなく期限内に手続きを完了させるためにも、これらの準備を進める際は、弁護士のサポートがあるとよいでしょう。
遺産分割調停は、以下の流れで進行します。
それぞれ具体的に何をするのか、解説していきます。
まずは、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てます。
必要書類は相続財産の内容や相続人の構成などによって異なるので、弁護士のアドバイスを受けながら対応を進めることがおすすめです。
遺産分割調停の申し立てを受理した家庭裁判所は、申立人との初回の日程調整を経て、調停期日を指定します。申立書や答弁書等を申立人以外の相続人全員に対して郵送します。すべての相続人は、調停期日に出頭しなければなりません。
調停期日では、各相続人が調停委員を介在する形で他の相続人との間で協議を行います。
調停委員は相続人に対して、遺産相続に関する事実関係や遺産分割に関する希望などを質問します。
調停委員は、他の相続人の希望を伝えたり、他の相続人の主張を踏まえたりしたうえで、解決のために何らかの譲歩を提案してくることがあります。他の相続人の希望や、調停委員の提案を受け入れるかどうかは、ご自身の遺産相続に関する権利の内容や事実関係、早期解決のメリットなどを考慮したうえで、弁護士のアドバイスを受けながら総合的に判断しましょう。
遺産分割の内容について、相続人全員の間で合意が調った場合は、調停成立となります。そして、家庭裁判所書記官がその内容を記載した調停調書を作成します。
各相続人は調停調書の記載に従い、その内容のとおりに遺産分割を行うことができるようになります。たとえば、不動産は相続登記の手続きができるようになり、預貯金は金融機関の相続手続きができるようになります。
相続人全員の間で合意が成立する見込みがない場合には、遺産分割調停は不成立となり、自動的に遺産分割審判へ移行します。
遺産分割審判では、家庭裁判所が遺産分割の方法を決定することになります。各相続人は、遺産分割調停で提出した資料に加えて、新たに証拠資料を提出することも可能です。
遺産分割の方法を決める手続きの中では、遺産分割審判が最終段階に位置します。訴訟によって、遺産分割の方法を決めることはありません。
遺産分割調停を有利に進めるためには、以下の事項に留意したうえで対応することが重要です。
これらの4つのポイントを、ひとつひとつ見ていきましょう。
公正に遺産分割を行うためには、相続財産の内容を漏れなく把握することが大切です。特に、相続財産を直接管理していない相続人の方は、弁護士に調査を依頼してできる限り相続財産の内容を把握しましょう。
また、不動産や未公開株式などについては、その価値を適切に評価することも重要になります。弁護士などのサポートを受けながら、不動産や株式の評価を適切に行いましょう。
ほかの相続人が被相続人から生前贈与を受けていた場合には、その相続人に特別受益(民法第903条)が認められる可能性があります。
被相続人の預貯金口座からお金の流れを確認するなどして、ほかの相続人に対して生前贈与が行われていないかどうかを事前に調査しましょう。
被相続人の事業の手伝いや介護などを通じて、無償で、相続財産の維持・増加に貢献した相続人には寄与分が認められます(民法第904条の2)。
寄与分のある相続人の相続分は増えるため、寄与分があると主張される方は、遺産分割調停においてその事実主張の準備をしましょう。
事業の手伝いや介護などを無償で行ったことや被相続人の財産の維持・増加に貢献したことがわかる証拠を確保したうえで、家庭裁判所に提出します。その証拠をもって、他の相続人を説得できるかどうかが重要です。
調停委員を介した形で、他の相続人に対し、ご自身の主張が合理的であることを説得的に伝えるためには、弁護士を代理人として同伴することをおすすめします。
弁護士が法的な観点から主張を整理し、論理的に伝えることによって、他の相続人に主張を理解してもらえる可能性が高まります。
ほかの相続人との間で遺産分割について揉めてしまった場合は、早い段階で弁護士に相談しましょう。
弁護士は相続争いを解決へと導くため、各相続人とコミュニケーションをとりながら、遺産の分割についての調整に尽力します。また、遺産分割調停や審判における代理人として、相続人の権利を正しく実現するため、あらゆる手段を尽くして対応します。
弁護士に相談・依頼することにより、公正な遺産分割が実現しやすくなることに加えて、精神的な負担や労力も大幅に軽減されるでしょう。
相続争いでお悩みの方は、お早めに弁護士へご相談ください。
遺産分割調停を有利に進めるためには、事前準備をきちんと整えたうえで、他の相続人に対して説得的に主張することが大切です。
弁護士は、遺産分割調停の事前準備や期日対応などを不備なく適切に行います。公正な遺産分割が期待できるほか、対応の労力も大幅に軽減されますので、遺産分割調停を申し立てる際には弁護士へのご依頼をご検討ください。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。相続争いの解決に加えて、グループ内に在籍する税理士と連携し、相続税に関するご相談についても対応することが可能です。
ほかの相続人と揉めて相続争いとなっている方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。知見が深く経験豊富な遺産相続専門チームの弁護士が、徹底したサポートを行います。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
不動産に関する相続手続きのなかでも、特に問題となりやすいものが「未登記建物」です。未登記建物を相続する場合、遺産分割協議書の作成には、十分に注意しましょう。
本コラムでは、未登記建物の相続に関わる問題点や遺産分割協議書の作成方法など、一連の相続手続きにおける未登記建物の取り扱いについて、相続業務を幅広く取り扱っているベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
なお、表題部の記載のみで、所有権保存登記などの権利部の記載がない建物は、多数存在しているのが実情です。そして、そのような建物も未登記建物と呼ばれることもありますが、本コラムでは、表題部すらない未登記建物に限定して説明します。
民法改正により令和元年(2019年)7月1日から新たに特別寄与料の制度がスタートしています。この制度により、夫の親が亡くなった際、夫の親の介護に尽力した妻などもその苦労が報われる可能性があることをご存じでしょうか。
これまでは、被相続人(亡くなった方)の介護などに尽力した人がいたとしても、相続人でなければ寄与分を請求することができませんでした。しかし、特別寄与料は、相続人以外の親族が請求できるものになります。
本コラムは、特別寄与料の制度概要や特別寄与料を請求する方法などについて、ベリーベスト法律事務所の遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
父親が亡くなり、遺産相続が始まった際は、遺産(相続財産)の分割について相続人間で話し合う必要があります。
しかし、母親が高齢で認知症にかかっているケースでは、そのまま遺産分割協議を進めることはできません。協議を進行するためには成年後見制度の利用を申し立てなければなりませんが、後見人等による横領のリスクには十分注意が必要です。
本コラムでは、父親が死亡し、母親が認知症にかかっている場合における相続手続きの注意点について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。