遺産相続コラム

遺産相続で、財産はどう分配されるのか? 相続の基本を弁護士が解説

2022年06月09日
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遺産相続で、財産はどう分配されるのか? 相続の基本を弁護士が解説

親族が亡くなって遺産相続が発生した場合、遺産を誰の間でどのように分配するかが大きな問題となります。

民法の規定や関連する注意点を踏まえつつ、円滑に遺産相続を終えられるように対応しましょう。もし遺産相続に関する不安がある場合には、お早めに弁護士へご相談ください。

今回は遺産の分配方法について、民法のルールや注意点をベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、遺産を分配する以前にやるべきこと

実際に相続人間で遺産の分配方法を話し合う前に、前提となる以下の準備を行う必要があります。

  1. (1)遺言書の有無を確認する

    有効な遺言書があれば、原則として遺言書の内容に従って遺産を分配することになります。
    そのため、まずは遺言書が存在するかどうかを調べましょう。

    亡くなった方(被相続人)から遺言書の話を聞いていれば、その内容を手掛かりにして遺言書を探します。
    また、被相続人の遺品を調べる中で、遺言書が発見されるケースもあります。
    発見した遺言書は、公正証書遺言及び法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)により遺言書保管所に保管されている遺言書である場合を除き、家庭裁判所に提出して、検認の手続きをしましょう(民法第1004条第1項、同条第2項)。

    もし遺言書が封印されている場合には、開封せずに保管しておき、相続人又はその代理人の立会いのもと、家庭裁判所にて開封の手続きを行いましょう(民法第1004条第3項)。

    なお、検認及び開封の手続きは、後日の紛争に備えて、偽造・変造を防止し、遺言書の現状を保全する手続きですので、遺言が有効であることが確認できるわけではありません。だからといって、検認の手続きを怠ったり、家庭裁判所外で開封したりしたときは、5万円以下の過料に処せられますので(民法第1005条)、注意が必要です。

    参考:遺言書がない場合の遺産相続はどうなるの?|よくある質問

  2. (2)相続財産をすべて把握する

    公平かつ後顧の憂いなく遺産を分配するためには、現存する相続財産を漏れなく把握することが大切です。遺産には、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もありますので、幅広く調べる必要があります。
    被相続人の遺品を調べ、エンディングノートがあればその内容を確認して、相続財産の網羅的な把握に努めましょう。

    後から遺産が判明したときには、判明した遺産についての分割を再度行えばよいのですが、他にも遺産があることを隠して遺産分割をするなどということをしてしまうと、遺産分割がやり直しになってしまう可能性もあるので、慎重に相続財産を把握した後は、相続人全員が正確に相続財産を認識して、遺産分割を行う必要があります。

    参考:相続財産の調査

  3. (3)相続人を確定する

    遺産分割協議には、相続人全員の参加が必須です。
    1人でも参加が漏れていると、遺産分割協議が無効となってしまうので、事前に相続人を確定しておくことが大前提となります。

    相続人の範囲は、民法上相続人として定められている、被相続人と一定の身分関係にある者に限られます。相続人調査にあたっては、原則として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得して調査する必要があります。
    まずは、被相続人の死亡の事実が記載された謄本から、被相続人の出生までさかのぼっていきましょう。そこで判明した相続人の戸籍を取得して、相続人が現存しているかを確かめます。相続人がすでに死亡していたら、被相続人の死亡前に亡くなったのであれば、代襲相続人を調べます。被相続人の死亡後に亡くなっていたら、相続人の相続人を調べる必要があります。
    戸籍等の書類を集めた後に「相続関係図」を作成すると、相続人の把握がしやすいのでおすすめです。法定相続人となるのが誰かは、後ほど、民法上の相続順位および法定相続分とともに詳しく解説します。
    家族構成が複雑な場合は、たくさんの戸籍を取り寄せる必要があるので、弁護士にご相談ください。

  4. (4)過去の生前贈与について調べる

    被相続人が行った過去の生前贈与は、いわゆる「特別受益」として、相続分や遺留分の計算に影響を与える場合があります(民法第903条第1項、第1044条第1項、第3項)。
    「特別受益」にあたるかどうかは、生前贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断されます。具体的には、婚姻または養子縁組のための贈与、高等教育を受けるための学資、居住用の不動産の贈与またはその取得のための金銭の贈与、営業資金の贈与、借地権の贈与など、生計の基礎として役立つような財産上の給付は「特別受益」にあたると判断されることが多いでしょう。

    そのため、預貯金口座の入出金履歴や、被相続人が保管していた贈与契約書などを参照して、生前贈与の流れについてもすべて把握しておきましょう。

    ただし、別に過去のことはいい、実際に残された遺産だけを分けたいというのが法定相続人全員の考えであれば、生前贈与について踏み込まずに、今ある遺産だけを分けて終わりにすることもできます。

2、民法に基づく遺産の分配|遺産相続の基本ルールとは

遺産の分配方法を決めるにあたっては、民法のルールが基準となります。
民法では、主に相続順位と法定相続分についてのルールが定められているので、基本的なポイントを理解しておきましょう。

  1. (1)遺産相続権は誰にある?|相続順位について

    被相続人の遺産を相続する権利は、民法で定める相続順位に従い、被相続人との続柄に応じて割り当てられます。
    遺言書がある場合はその内容が優先されますが、遺言書で分配が定められていない遺産については、相続権を有する者の間で分配することになります。これが遺産分割です。

    まず、必ず相続権を取得するのが法律上の「配偶者」です(民法第890条)。
    次に、第1順位の相続人は「子」です(民法第890条、第887条第1項)。子には、実子だけでなく養子も含まれます。なお、普通養子の場合には、実方血族との親族関係は断絶しないため、養子は、養親だけでなく実親も相続することができます。
    子がいない場合には、第2順位の相続人として、「直系尊属」(両親など)が相続権を取得します(民法第889条第1項第1号)。
    さらに、子も直系尊属もいない場合には、第3順位の相続人として、「兄弟姉妹」が相続権を取得します(同項第2号)。

    したがって、相続権を取得する者の基本的なパターンは、以下の7通りです。

    • ① 配偶者のみ
    • ② 配偶者+子    または ②’ 子のみ
    • ③ 配偶者+直系尊属 または ③’ 直系尊属のみ
    • ④ 配偶者+兄弟姉妹 または ④’ 兄弟姉妹のみ

    なお、相続権を有していた子または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡・相続欠格(民法第891条)・相続廃除(民法第892条)のいずれかによって相続権を失った場合、直系卑属である当該子の子(被相続人からみれば孫)または兄弟姉妹の子(被相続人からみれば甥・姪)が相続権を取得します(民法第887条第2項、第889条第2項)。
    これを「代襲相続」といいます。
    「子」の代襲相続人である直系卑属は「子」と同じく第1順位にあたりますので、「子」および直系卑属がいない場合に限り、はじめて第2順位の相続人として「直系尊属」が相続人となります。

    (例)
    被相続人の子が死亡→孫が代襲相続(子と同じ第1順位)
    • ※孫が相続開始前に死亡した場合は、ひ孫による再代襲相続も認められる(民法第887条第3項)

    被相続人の弟が死亡→甥・姪が代襲相続
    • ※甥・姪が死亡した場合、再代襲相続は不可
  2. (2)遺産分配の基準は?|法定相続分について

    相続権を有する者が取得できる遺産の割合として、「法定相続分」が定められています(民法第900条)。
    遺産分割協議により、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配することもできますが、法定相続分を実際の相続割合の目安とするのが一般的です。

    相続人構成に応じて、法定相続分は以下のとおり決まっています。
    なお、代襲相続人の相続分は、被代襲者と同じです(民法第901条第1項)。

    配偶者のみ 配偶者:すべて
    配偶者+子(または代襲相続人) 配偶者:2分の1
    子(または代襲相続人):2分の1
    子(または代襲相続人)のみ 子(または代襲相続人):すべて
    配偶者+直系尊属 配偶者:3分の2
    直系尊属:3分の1
    直系尊属のみ 直系尊属:すべて
    配偶者+兄弟姉妹(または代襲相続人) 配偶者:4分の3
    兄弟姉妹(または代襲相続人):4分の1
    兄弟姉妹(または代襲相続人)のみ 兄弟姉妹(または代襲相続人):すべて

    また、子・直系尊属・兄弟姉妹が複数いる場合には、上記の相続分を人数割りします(民法第900条第4号)。例えば、相続人が配偶者・子2人である場合には、子の相続分はそれぞれ4分の1となります。

3、遺産分割協議による遺産の分配が必要になる場合

相続人が遺産分割協議を行い、話し合いで遺産の分配方法を決めなければならないのは、以下の場合です。

  1. (1)遺言書がない場合

    被相続人が作成した有効な遺言書が存在しない場合、遺産の分配に関する取り決めが全くない状態です。

    この場合は、すべての遺産の分配方法を、遺産分割協議で決定することになります。

  2. (2)遺言書によって分配方法が決まっていない遺産がある場合

    有効な遺言書があったとしても、すべての遺産の分け方が決められているとは限りません。

    もし遺言書の内容が一部の遺産しかカバーしておらず、分配方法が決まっていない遺産が存在する場合には、やはり遺産分割協議が必要となります。

  3. (3)相続人全員が、遺言書とは異なる方法で遺産を分配することに合意した場合

    遺言書があるケースでも、遺言書の内容に従わず、遺産分割協議によって異なる遺産の分配方法を定めることにつき、相続人全員が合意した場合、その合意は有効であると解されています。
    この場合、相続人は改めて遺産分割協議を開催し、遺産の分配方法を決定することになります。

    なお、相続人以外の者が遺贈(遺言による贈与)を受けていた場合、受遺者(遺贈を受けた人)全員の同意も必要です。
    ただし、遺言執行者が指定されている場合に、遺言執行者の同意を得ずに遺言と異なる内容の遺産分割協議をした場合には、遺言執行者との間で紛争が発生しかねませんので、遺言執行者の同意を得るようにしましょう。

  4. (4)遺言書の内容が不公平な場合は?

    一部の相続人のみを優遇するなど、遺言書の内容が偏っているケースでは、相続人間の不公平を調整するために、「遺留分侵害額請求」ができる場合があります(民法第1046条第1項)。
    遺産をあまりもらえなかった相続人は、遺留分侵害額請求を行うことで、遺産を多くもらった者から金銭を受け取れます。

    遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められており、遺留分権を有する相続人を「遺留分権利者」といいます。

    ここで、遺留分割合の計算方法について確認しましょう。
    まず、遺留分権利者全体に留保されるべき相続財産全体に対する割合(総体的遺留分の割合)が民法上決められており、直系尊属のみが相続人の場合は遺留分を算定するための財産の価額の3分の1、それ以外の場合は2分の1となります(民法第1042条第1項)。そして、遺留分権利者のそれぞれに留保された持分割合は、総体的遺留分の割合に各自の法定相続分の割合を乗じて計算します(同条第2項)。

    例えば、被相続人に配偶者と子1人がいた場合に遺留分割合がどのようになるか計算してみましょう。

    (例)
    • ① 遺留分権利者にあたる人
      配偶者と子
    • ② 総体的遺留分の割合
      配偶者:2分の1、子:2分の1
    • ③ 配偶者と子のそれぞれの遺留分割合
      配偶者:総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1=4分の1
      子:総体的遺留分2分の1×法定相続分2分の1=4分の1

    また、遺留分侵害額請求権には消滅時効があり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効により消滅しますので(民法第1048条前段)、注意しましょう。

    もし遺留分に満たない遺産しか相続できなかった場合は、遺留分侵害額請求について弁護士にご相談ください。

    参考:遺留分侵害額請求 解決の流れ

4、不動産の遺産相続は方法を要検討|4つのパターン

遺産相続において、不動産の分割方法は、もっとももめやすいポイントの一つと言えます。

不動産の遺産分割方法には、主に以下の4つのパターンがあります。
それぞれの特徴を踏まえて、適切な方法を選択しましょう。

① 現物分割
分筆などにより、不動産を物理的に分ける方法です。
不動産自体を欲しい相続人が複数いる場合には、現物分割が適切なケースもあります。
その一方で、不動産が細分化し、活用の幅が狭くなってしまうおそれがある点が難点です。

② 代償分割
一部の相続人が不動産を取得した場合に、その相続人が法定相続分を超える額の財産を取得することとなるとき、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法です。
代償分割を行うと、不動産が欲しい相続人と金銭が欲しい相続人、両方のニーズを満たすことができます。
ただし、不動産を取得する相続人は、まとまった金額の代償金を準備しなければなりませんので資力があることが要件となります。なお、遺産分割の協議や調停では、分割払いや期限の猶予を認める方法も可能とされています。

③ 換価分割
不動産を売却等で換金したうえで、その代金を分配する方法です。
現物分割が困難で、代償金支払能力の不足や取得希望者がいない等の理由で代償分割もできない場合に便利な方法です。また、換価分割の場合、1円単位で公平に不動産を分割することができます。
しかし、不動産自体は手放すことになってしまいます。

④ 共有のまま
不動産を、複数の相続人の共有のままとしておくことも考えられます。
しかし、共有状態はトラブルの原因になりやすいため、あまりおすすめできません。
遺産相続を機に、共有状態を解消しておくことが望ましいでしょう。

5、遺産相続・遺産の分配については弁護士に相談を

遺産相続の方法は、各相続人の利害関心に加えて、民法のルールも踏まえながら決定する必要があります。
遺留分をはじめとして、遺産相続に関する法律上の留意点は多岐にわたるため、早期に弁護士へご相談いただくことがおすすめです。

弁護士は、各相続人と綿密にやり取りを行い、できる限り皆が納得できる形での遺産相続を実現できるようサポートいたします。
遺留分などについても、十分に配慮した遺産相続の方法をご提案いたしますので、遺産分割後のトラブルのリスクを最小限に抑えられます。

遺産相続についてのご相談は、お早めに弁護士までご連絡ください。

6、まとめ

遺産の分配方法は、民法のルールや法律上の注意点を踏まえて決定することが大切です。
経験豊富な弁護士のサポートを受けることで、遺産相続に関するトラブルを予防できます。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続を専門的に取り扱う弁護士・スタッフが一丸となって、円満・迅速に相続手続きを完了できるように尽力いたします。
また、グループ内に所属する税理士と連携して、相続税に関するご相談にも対応可能です。

遺産相続に関するお悩みを抱えておられる方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都 港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-666-694

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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