遺産相続コラム
被相続人の遺産に土地や建物といった不動産が含まれている場合には、相続登記の手続きをすることが大切です。令和4年時点では、相続登記は義務ではありませんが、法律が改正され、令和6年からは相続登記が義務化されます。以降は、法定の期限内に相続登記をしなければ罰則が適用されますので注意が必要です。
相続登記をすることなく放置をすると罰則以外にもさまざまなデメリットが生じますので、相続が発生した場合には、早めに手続きを行いましょう。
今回は、土地の遺産相続に関して、相続登記の期限や放置した場合のデメリットなどについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
遺産に不動産が含まれている場合には、相続登記が重要です。相続登記とはどのような手続きなのでしょうか。以下でわかりやすく説明します。
土地や建物といった不動産を所有している方が亡くなった場合には、当該不動産は相続財産として遺産分割の対象になります。相続人は遺産分割協議を行い、遺産分割の方法を決めることになりますが、遺産分割協議によって不動産を取得する相続人が決まった場合には、被相続人名義から相続人名義へと不動産登記の名義を変更する必要があります。これを「相続登記」といいます。
遺産分割協議を行っていない場合や合意ができていない場合には、相続人全員での共有となっていますので、法定相続分(自らの持分)について名義の変更(相続登記)を行うこともできます。
このように、相続登記とは、不動産を所有する被相続人が亡くなった場合に、不動産の登記名義を変更する手続きです。
相続登記をする場合には、主に以下のような方法が挙げられます。
① 遺言による相続登記
被相続人が遺言をのこして亡くなった場合には、遺言の内容に従って相続人は遺産を相続します。遺言によって不動産を相続することになった相続人は、単独で登記申請をすることが可能です。
② 遺産分割による相続登記
被相続人の遺言がなかった場合には、被相続人の遺産は、相続人全員による遺産分割協議によって分割することになります。遺産分割協議によって遺産の分割方法が決まった後、遺産分割協議書を作成したうえで、相続登記の申請を行います。
なお、相続人となるはずだった人の一部が相続放棄をした場合は、それ以外の相続人で遺産分割協議を行うことになります。そして、相続登記を申請する際には、相続放棄をした人がいるということを明らかにするために、相続放棄をした方の「相続放棄申述受理証明書」を提出する必要があります。この相続放棄申述受理証明書は、相続放棄を行った方のほか、共同相続人や被相続人の債権者等の利害関係人が家庭裁判所に申請することによって取得することができます。
③ 法定相続分による共同相続登記
被相続人の死亡によって、被相続人の遺産は、相続人全員の共有となります。通常、遺産分割協議を行い、共有状態を解消して不動産を相続人のうち一人の単独所有にしたり、当該不動産を売却してその代金を分けたりというような分割方法がとられることが多いですが、どうしても話し合いがまとまらない場合には、共有のまま法定相続分に応じて相続登記を行うという方法もあります。これを「共同相続登記」といいます。
相続登記には、いつまでにしなければならないという期限があるのでしょうか。
令和4年時点では相続登記は義務ではありませんので、期限も設けられていません。そのため、相続が発生したとしても、相続登記を行うことなく放置することもできてしまいます。
しかし、相続登記を先延ばしにしていると、後述するようなさまざまな不利益が生じますので、早めに相続登記を済ませるのがよいでしょう。
相続登記に期限がないというのは、あくまでも令和4年時点の話です。
近年、空き家問題が深刻化するなど相続登記を行わずに放置することによって所有者が不明となる不動産が増えていることが社会問題となってきました。所有者不明の土地・建物が増えることによって、不動産の円滑・適正な利用に支障が生じることから、政府は、法改正によって相続登記を義務化することにしました。
相続登記の義務化は、令和6年4月1日から施行されます。相続登記の義務化によって、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、相続財産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならなくなります。
上述のとおり、令和6年4月1日から相続登記が義務化されますが、令和4年時点でも相続登記をせずに放置することによって、不利益が生じる可能性があります。
具体的には、相続登記を放置することによって、以下のようなデメリットが生じます。
ご説明のとおり、令和6年4月1日から相続登記が義務化され、期限内に相続登記の申請を行わない場合には10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
相続登記の義務化は、令和6年4月1日から施行されますが、施行日前に相続の開始があったケースについてもさかのぼって適用されます。すなわち、例えば令和4年4月1日に被相続人が亡くなって相続が開始し、その相続財産の中に不動産がある場合でも、その不動産について相続登記をせずに放置し続けて令和6年4月1日を迎えると、相続登記をする義務が課され、申請期限の適用を受けることになります。相続登記の申請は、以下のいずれか遅い日から3年以内に行う必要があります。
相続登記を行っていない方は、早めに専門家に相談して相続登記を行いましょう。
相続登記をしないと当該不動産の登記名義は、亡くなった被相続人名義のままですので、登記を見ても当該不動産の現在の所有者が誰なのか一見して明らかではありません。相続登記をすることなくそのまま放置しているうちに、当該不動産を相続した人が亡くなり、さらにその相続人が相続登記をしないままに亡くなるなど次々と相続が発生していく結果、現在の所有者が誰であるのか一見して明らかではなく、後の世代が相続する際や相続登記をする際に戸籍をたどっていくことも非常に大変な作業になってしまいます。将来相続登記を行うと思っても、連絡先のわからない人や行方不明の人がいるなどして相続登記を行う際の作業も非常に複雑化することもあります。
相続登記をしなくても遺産である土地・建物については、相続人が相続によって所有権ないし持分権を取得しますので、所有権ないし持分権に基づいて当該土地建物を使用し、収益しまたは処分することができます。そのため、自らが使用するのであれば、相続登記をしていなくても基本的には問題は生じません。しかしながら、売買を行うとする場合には、不動産の取引相手は登記簿で権利者を確認したうえで取引を行いますし、売買の際に移転登記(登記の名義変更)を行うことが求められますので、相続登記をしていない権利者が当該土地建物を売買することは現実的に困難です。
土地の遺産相続でお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。
相続登記をするためには、その前提として相続人間で遺産分割協議を成立させる必要があります。しかし、土地や建物など不動産が遺産に含まれる場合には、それをどのように評価するのか、どのように分割するのかをめぐって相続人同士で争いになることも珍しくありません。特に、土地のような高価な財産は、相続人の利害対立が深刻化して、当事者同士で遺産分割協議を進めるのは難しいこともあります。
弁護士であれば相続人の代理人として遺産分割協議に参加して話し合いを行うことができますので、最適な評価方法や分割方法によってベストな遺産分割を実現するお手伝いをします。当事者同士では遺産分割協議がなかなか進まないという場合には、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
すでに相続登記を放置しているうえに新たな相続が発生したというケースでは、前回の相続人の特定を行ったうえで、相続が開始した際の所有者、そして今回の相続の相続人の特定を行う必要がありますが、その特定や連絡が困難であるということも珍しくありません。相続人を調査する場合には、戸籍謄本をたどっていきますが、過去の相続人を調査しなければならないとなると非常に複雑な作業となります。相続に関する知識がないと、相続人を調査するだけで膨大な時間と労力を要することになり、相当な負担となります。
この調査について弁護士に依頼すれば、戸籍謄本等の取得から相続人の特定まで弁護士が行いますので、ご自身で労力や時間をかける必要がなくなります。また、相続人を調査した結果、所在不明の相続人がいるという場合には、不在者財産管理人の選任などによって、相続手続きを進めることを可能にすることができます。
相続登記を放置しているケースは、複雑な手続きを要するケースも少なくありません。相続人が不明などの理由で相続登記を進められない事情がある方は、お早めに弁護士にご相談ください。
現時点では、相続登記は義務ではありませんので、期限や罰則の適用はありません。しかし、相続登記を放置することによってさまざまな不利益が生じることになりますし、令和6年からは罰則も適用されることになります。そのため、相続が発生した場合には、早めに遺産分割協議を進め、相続登記を行うことをおすすめします。
土地に関する遺産分割協議は難航することが予想されます。遺産分割協議や相続登記についてトラブルや不利益がすでに生じている方やそれらのトラブルや不利益が生じそうな方は、ベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
配偶者である妻には、亡き夫の遺産を相続する権利(=相続権)が民法で認められています。一方で、義両親にも死亡した夫の相続権が認められるケースがある点にご留意ください。
このようなケースは、妻と義両親の間で遺産分割に関する利害調整が求められることもあり、慎重な対応が必要です。
仮に「義両親に一切の遺産を渡したくない」と思っていても、義両親に相続権がある以上は、義両親の要求をすべて拒否することは難しいといえます。
本コラムでは、夫死亡後の遺産相続における義両親の相続権や相続分、姻族関係終了届が相続に影響するのか否かなどのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
両親が亡くなった後に、実家の土地や建物をどう相続するかは、多くの方にとって悩ましい問題です。
たとえば、思い入れのある実家を残したいと思っても、誰か住むのかで揉めてしまうケースや、相続後の管理に多大な労力を要するケースが少なくありません。
実家の土地や建物が相続財産にある場合は、各選択肢のメリット・デメリットを踏まえて、家族にとってどのような形が望ましいかをよく検討しましょう。
本コラムでは、実家の土地や建物を相続する際の基礎知識や手続きの流れ、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
相続人が死亡するなど、一定の理由により相続権を失った場合は、その子どもが亡くなった相続人に代わって遺産を相続するケースがあります。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼び、代襲相続により相続することになった方を代襲相続人といいます。また、代襲相続とは、民法で詳細に規定されている遺産相続の制度です。代襲相続は相続割合や法定相続分の計算が変わることもあり、相続争いに発展するケースもあるため、注意しましょう。
本コラムでは、具体的に代襲相続とはどういった制度なのか、代襲相続人となれる範囲や要件、相続割合などについて、代襲相続による注意点を含めて、べリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
代襲相続は複雑なために理解が難しい点もありますが、基本的なポイントをおさえることから理解を深めていきましょう。