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遺産相続コラム

会社経営者の相続には遺言書が重要! その理由と作成のポイント

2022年02月15日
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会社経営者の相続には遺言書が重要! その理由と作成のポイント

オーナー経営者にとって、後継者への事業承継が視野に入ってくると、気になるのは後継者や家族にどうすれば円満に財産を引き継げるかということではないでしょうか。

事業承継が絡む相続は、家族だけの問題ではなく、会社の取引先や従業員にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、慎重に準備を進める必要があります。そこで、本コラムではオーナー経営者の相続について弁護士が解説します。

1、会社経営者にとって遺言書の作成は重要

事業承継が絡むオーナー経営者の相続では、後継者への株式の集中と家族にとって公平な相続を両立させるため、遺言書の作成が必須ともいえます。

もしも遺言書がないと、相続人が協議して遺産分割を行うことになりますが、その場合は経営に重大な影響を及ぼすリスクがあります。遺産分割のデメリットや遺言書作成によるメリットについて解説します。

  1. (1)遺産分割のデメリット

    遺言書が存在しない場合、民法の規定を基礎に相続人全員で遺産分割協議をして、誰が何を相続するのかを決定することになります。遺産分割は公平な相続を実現することに主眼が置かれており、相続人全員の合意がなければ成立しません。

    そのため、事業を継承した経営者の意思が反映されにくくなるおそれや、相続人同士で対立して解決まで年単位の争いが続くなど、会社の経営に支障が生じるリスクがあります

  2. (2)遺産分割の流れ

    遺産分割を行うこととなった場合、相続人は次のようなことを行わなければなりません。

    ① 相続人の確定
    民法において、相続人は配偶者及び血縁関係にある親族(第1順位は子や孫、第2順位は親や祖父母、第3順位は兄弟姉妹)であると規定されています。

    認知した婚外子や養子、前妻との間の子も相続人となるため、亡くなった方の戸籍を出生にさかのぼって調査し、相続人を確定する必要があります。

    ② 相続財産の調査・確定
    財産目録などで、どのような相続財産があるかを残しておかなければ、相続人は残された契約書や通帳などを手掛かりに財産の調査をしなければなりません。

    ③ 遺産分割協議
    すべての相続人が参加して協議を行います。協議を成立させる期限などはなく、全員が合意するまで協議を続けるか、家庭裁判所の遺産分割調停や審判手続きにより解決を図ることになります。

    最高裁判所の統計によれば、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割の審理期間は以下の通りです。

    • 総数……11303件
    • 6か月以内……3394件(30.0%)
    • 6か月超1年以内……3849件(34.1%)
    • 1年超2年以内……3016件(26.7%)
    • 2年超……1044件(9.2%)

    約70%の事案で、解決まで6か月以上を要しています。

    なお、遺産分割が成立するまでの間、相続財産は全相続人が共有する状態となり、全相続人の合意がなければ処分はできません。

    ただし、株式の場合、持ち分(法定相続分)にして過半数の合意により代表者を選定して、株式の権利行使が可能です(会社法106条)。

    しかし、相続人が対立している場合は代表者の選定もままならず、会社の重要事項に関する意思決定もままならない事態となる可能性があります。

    ④ 相続財産の名義換え
    遺産分割協議においてそれぞれの相続財産を誰が承継するかが決まったら、遺産分割協議に基づき、各相続人が取得する財産について名義変更の手続きをすることにより、独立して預貯金の払い戻しや株主としての権利行使が可能になります。

  3. (3)遺言書作成によるメリット

    遺言書が存在する場合、遺言者の意思が尊重されます。

    そのため、遺産分割の流れで解説した手続きのうち「(2)③ 遺産分割協議」を行う必要がなくなります。また「(2)④ 相続財産の名義換え」は、遺言書により遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者が行うのが一般的です。

    つまり、遺産分割による不確実性や長期間にわたる紛糾といったリスクは、遺言書を作成することで大きく回避できることが期待できます。

    参考:遺言についてもっと詳しく知りたい方はこちら

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2、会社経営者が遺言書を残さない場合の具体的リスク

事業承継における遺産分割のデメリットを、次の具体例により解説します。

被相続人:先代経営者
相続人:妻、長男(後継者)、次男


  1. (1)事業用資産や株式が分散する

    経営者が所有していた会社の株式や事業用の資産は、後継者に集中して取得させるのが望ましいのはいうまでもありません。
    しかし、法定相続分に沿って遺産分割をすると、後継者の長男は4分の1を取得するにとどまり、会社の支配権を得ることはできません

    株式以外に潤沢な遺産がある場合はともかく、後継者が遺産の大半を占める株式を取得しようとすると遺産の配分がアンバランスになることが多く、遺産分割協議が難航する可能性もあるでしょう。

  2. (2)遺留分に配慮が必要

    遺留分とは、民法において規定されている、法定相続人が最低限受け取ることができる遺産のことです。

    相続には法定相続人の生活保障の意味合いがあり、配偶者や親子関係にある相続人には最低限の遺産を受け取る権利が保障されています。この遺留分は遺言によっても減らすことはできません
    配偶者や子の遺留分は、法定相続分の2分の1とされており、本事例では、配偶者の遺留分は4分の1、長男と次男はそれぞれ8分の1です。

    たとえば、遺産の内訳が、会社の株式(評価額1億円)、その他の資産が4000万円である場合、妻の遺留分は3500万円、長男と次男の遺留分は1750万円ずつとなります。

    つまり、長男が1億円相当の株式を取得しようとすると、妻や次男の遺留分を侵害することになってしまいます。遺留分を侵害しても遺言が無効になるわけではありませんが、遺留分権利者は遺留分に満たない部分を金銭で請求する権利(遺留分侵害額請求権)が発生します。そのため、仮に遺言によって長男が1億円相当の株式を取得した場合には、長男は妻や次男から、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

    参考:遺留分・遺留分侵害額請求とは

3、会社経営者の遺言におけるポイント

後継者以外の家族にも十分な財産を残したい場合、事業承継は長期的な目線で計画的に進めることをおすすめします。以下に、遺言書の作成と併せて検討したい事項を解説します。

  1. (1)個人資産の整理

    事業承継を検討する際には、まず、会社資産と個人資産の区別を明確化し、相続の対象となる個人資産を整理しましょう。

    不動産を所有している場合は、登記情報を参照して抵当権などの有無や、事業用に使用している不動産の所有名義が誰になっているのかを確認します。個人所有の不動産を事業用に使用している場合、契約関係が明確になっていないことも少なくないため、契約書で権利関係を明らかにしておくことも重要です。

    また、会社への貸付金も財産として相続の対象となり、相続税の重石となることもあります。すぐに現金化することが難しいケースもありますが、長期的に消滅させる方向で検討したほうがよいでしょう。

    なお、経営者が会社の債務を保証するなど、保証人としての義務を負っている場合、その義務は法定相続分に応じて各相続人に引き継がれます。経営者による個人保証は見直される動きもありますが、会社資産と個人資産の分離や財務状況の適時開示などが条件となります。

    事業承継を機に、金融機関と相談しながら保証契約の解消を目指すことも検討したいところです。

  2. (2)遺言書作成と事業承継計画はセットで検討する

    後継者への事業承継を相続のみで行うと、遺留分がネックになったり相続税の納税が困難になったりすることも少なくありません。

    そこで、経営者が現役のうちに

    • 生前贈与により株式を後継者に移譲する
    • 定款を整備して議決権に制限のある種類株式の発行を可能にする
    • 生命保険契約により相続税の納税資金を確保する

    など、事業承継に向けたスキームを策定し実行することも有効です。

    これらの事業承継計画を実行することにより、遺言の選択肢が増えることになります。たとえば、後継者以外の親族には議決権のない株式を相続させて事業の継続に支障のないかたちで遺留分をケアすることなどが考えられます。

  3. (3)事業承継や遺言の作成は弁護士のサポートを受ける

    事業承継計画の策定や実行に当たっては、経営承継円滑化法や会社法などの法律知識が欠かせません。また、相続や遺言は民法の法律知識が必要です。また、遺言書を作成しても、相続人や後継者が相続税や贈与税の負担に苦しむことになるのは、遺言者としても本意ではないでしょう。

    そのため、事業承継は弁護士や税理士のサポートを受けながら進めることが不可欠といえます。

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4、遺言書作成の流れ

遺言書を作成する方法は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、事業承継が絡む遺言は、確実性と迅速性に優れた公正証書遺言がおすすめです。

以下、公正証書遺言のメリットとその作成方法について解説します。

  1. (1)公正証書遺言のメリット

    遺言は遺言者が亡くなると同時に効力が生じるものですが、遺言者の真意は遺言書だけが手掛かりとなります。

    そのため、遺言書の形式について細かいルールがあり、捺印がひとつ欠けただけでも無効となる場合があります。また、遺言内容が不明瞭でどちらとも解釈できるような言い回しがあると、裁判で長期間争われることもあり、遺言自体が紛争の火種となることもあるのです。

    円滑な事業承継を実現するためには、できるだけ空白期間が生じないように後継者に株式などを引き継ぐことが肝心です。
    自筆証書や秘密証書による遺言書は、手軽に作成できるというメリットはありますが、遺言内容を実現する段階になって相続人同士の争いが起きる不安が残ります。公正証書遺言は作成の段階では費用や手間が掛かるというデメリットはありますが、相続開始後直ちに遺言の執行が可能で、事業承継には最適といえます。

  2. (2)公正証書遺言作成の流れ

    公正証書遺言の作成の流れを解説します。

    ① 必要書類の収集
    公正証書の作成には次のような書類が必要です。

    • 遺言者の出生からの戸籍謄本、印鑑証明書
    • 遺産の範囲と額に関する資料(株式の評価に関する資料、固定資産評価証明書、金融機関の通帳など)
    • 相続人以外に遺贈する場合は受遺者の住民票


    ② 遺言内容の検討
    事業承継やご家族の生活に加えて、相続人が負担する相続税など検討すべき点は多岐にわたります。また、必要書類のうち「遺産の範囲と額に関する資料」は各相続人の遺留分や相続税を算定するためにも必要です。

    そのため、遺言内容を詰めながら公証人と事前の協議を行いますが、弁護士に依頼している場合、事前の調整は弁護士に任せることができます。

    ③ 証人2名、遺言執行者の選定
    公正証書遺言の作成には証人2名の立ち会いが必要です。法定相続人になる親族、受遺者(これらの配偶者や親や子も含む)や未成年者でなければ誰でも証人になることができます。弁護士のサポートを受けている場合は、その弁護士や弁護士事務所のスタッフに依頼することも可能です。

    遺言執行者とは、遺言内容の実現のための事務を行う人で、遺言書の中で指定しておくのが一般的です。弁護士や相続人の中のひとりを指名することも可能です。

    ④ 公証人役場において遺言作成
    証人2名とともに公証人役場へ出向いて公証人が読み上げる遺言内容を確認します(事前の協議で遺言内容はほぼ完成しています)。内容に問題がなければ、公正証書に証人とともに署名、押印して手続きは終わります。

    なお、公正証書遺言の原本は公証人役場で保存され、交付される正本と謄本を自身で保管することになります。

5、まとめ

オーナー企業において円滑な事業承継を実現するためには、遺言書の作成と並行して事業承継計画を策定、実行することが肝要です。また、事業承継や遺言書の作成は、法律知識がある弁護士、税務の専門家である税理士など専門家のサポートが不可欠といえるでしょう。

ベリーベストグループでは、在籍している弁護士、税理士、司法書士が連携し、ひとつの窓口で円滑な事業承継をサポートするワンストップサービスを提供しています。会社のための円満な相続をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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