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遺産相続コラム

生前にできる遺留分対策は? 特定の相続人に遺産を多く残すためには

2021年11月09日
  • 遺産を残す方
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生前にできる遺留分対策は? 特定の相続人に遺産を多く残すためには

遺言によって特定の相続人に多くの遺産を与えたとしても、遺留分対策が行われていなければ、結局「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」による相続人間の紛争を引き起こしかねません。

そのため、ご自身の意思に沿った形で相続がなされるためには、生前にできる限り遺留分対策を講じる必要があります。
今回のコラムでは、生前に行うことができる主な遺留分対策について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、生前に遺留分対策をしない場合に生じ得るリスクとは?

特定の相続人に対して多くの財産を与えたい場合には「遺留分」に気をつけなければなりません。 生前に遺留分対策をしなければ、被相続人の意思が相続の結果へ適切に反映されない可能性があるので注意が必要です。

  1. (1)遺留分とは?

    「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された一定割合の相続財産のことを意味します(民法第1042条第1項)。被相続人(遺言者)は、遺言によって自由に相続分や特定の相続人が相続する財産を指定することができます。
    しかしその一方で、推定相続人の相続に対する期待を一定程度保護するために、「遺留分」による修正が行われるのです。

    各相続人に認められる遺留分割合は、以下のとおりです。

    ① 直系尊属のみが相続人の場合
    法定相続分の3分の1

    ② ①以外の場合
    法定相続分の2分の1
  2. (2)遺留分対策をしない場合に生じ得るリスク

    遺留分対策をせずに、一部の相続人を優遇するような相続分の指定を行った場合、相続人間で「遺留分侵害額請求」(民法第1046条第1項)による紛争が発生するリスクがあります。

    遺留分侵害額請求とは、遺留分未満の遺産しか受け取れなかった相続人が、他の相続人に対して不足分の金銭を請求することをいいます。
    遺留分侵害額請求が行われた場合、相続人同士の間で訴訟に発展することが多いです。また、遺言の内容を覆すことに対する感情的な反発を引き起こし、親族関係に亀裂を生じさせてしまうことも少なくありません。

  3. (3)遺留分対策にはさまざまなパターンがある

    遺留分侵害額請求による親族間の対立を防ぐためには、生前の遺留分対策が重要になります。

    遺留分対策にはさまざまなパターンがあり、詳細な解説は省きますが、たとえば、

    • 生前贈与をして遺産を減らす( → 遺留分を減らす)
    • 遺言書の中で付言事項を記載し、遺留分侵害額請求権を行使しないように促す
    • 養子縁組をして相続人を増やし、1人当たりの遺留分を減らす
    • 信託受益権を各相続人に割り当てて、遺留分の侵害を防ぐ
    • (事業承継時)種類株式を後継者以外の相続人にも割り当てて、遺留分の侵害を防ぐ

    などが考えられます。

    上記以外に考えられる主な遺留分対策として、次の項目から3つの方法を順次紹介します。

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2、【遺留分対策①】被相続人の生前に遺留分権利者に遺留分を放棄させる

遺産を相続させたくない相続人がいる場合、その相続人が被相続人の生前に遺留分を放棄すれば、もっとも抜本的な遺留分対策になります。

  1. (1)生前の遺留分放棄には家庭裁判所の許可が必要

    遺留分権利者が、被相続人の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所にその旨申し立て、許可を受けることが必要です(民法第1049条第1項)。
    被相続人の生前の遺留分放棄に家庭裁判所の許可が必要とされているのは、他の相続人から強制されるなどして、遺留分権利者が望んでいない遺留分放棄が行われることを防ぐためです。

    したがって、被相続人の生前に遺留分放棄の許可を申し立てた場合、遺留分放棄に関する背景事情などが精査されることになります。

  2. (2)遺留分の放棄は任意|拒否される場合もある

    遺留分放棄の最大のハードルは、遺留分権利者の自由意思によることが必要である点です。
    つまり、遺産を渡したくない相続人がいたとしても、その相続人が遺留分放棄を拒否すれば、強制的に遺留分を放棄させることはできません。

    もし遺留分放棄を拒否された場合には、別の遺留分対策を講ずる必要があるでしょう。

3、【遺留分対策②】事業承継時には経営承継円滑化法の特例を活用する

会社経営者の方が、事業承継によって株式を後継者に譲渡する場合には「経営承継円滑化法※」における特例を活用することが、有効な遺留分対策となります。
※正式名称:「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」

  1. (1)経営承継円滑化法の特例が設けられた目的

    相続人に対する生前贈与は、相続開始前10年間に行われたものにつき、婚姻もしくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額が遺留分計算の基礎財産に算入されます(民法第104条第3項、第1項)。
    そして、生前贈与された財産を算入する際の評価額は、相続開始時を基準としてなされるのが原則です。

    会社株式の価値は高額になりがちなので、事業承継の目的で会社株式を生前贈与すると、遺留分侵害が発生する可能性が極めて高くなってしまいます。後継者としては、遺留分侵害額を支払うための金銭を用意するのは大変です。
    その一方で、会社株式を他の相続人に分け与えるのも、経営権が分散してしまうため好ましくありません。

    そこで経営承継円滑化法では「除外合意」と「固定合意」という、事業承継に伴う遺留分侵害の影響を抑制するための2つの特例が設けられています。

  2. (2)除外合意と固定合意について

    除外合意と固定合意の内容は、以下のとおりです。

    ① 除外合意(経営承継円滑化法第4条第1項第1号)
    後継者に対して生前贈与された会社株式を、遺留分計算の基礎財産から除外します。
    基礎財産額を下げ、結果として遺留分の金額を下げるために行います。

    ② 固定合意(同項第2号)
    後継者に対して生前贈与された会社株式を、遺留分計算の基礎財産に算入する際、その価格を合意時点に固定します。
    後継者が経営努力によって高めた企業価値を、他の相続人が横取りすることを防ぐために活用されます。

    除外合意・固定合意のいずれも、推定相続人全員の同意が必要です。
    後継者以外の相続人に対して、除外合意・固定合意に同意するためのインセンティブを与えるため、「付随合意※」を併せて行うことが認められています(同法第6条第2項)。

    ※付随合意
    後継者以外の相続人が受けた生前贈与についても遺留分計算の基礎財産から除外する旨の合意や、後継者が同族会社株式以外の財産を生前贈与された場合にその財産も遺留分の対象から除外する旨の合意
  3. (3)経営承継円滑化法の特例を利用するための条件

    経営承継円滑化法に基づく遺留分の特例に基づく「除外合意」や「固定合意」が効力を生ずるためには、経済産業大臣の確認および家庭裁判所の許可を受ける必要があります(経営承継円滑化法第9条第1項、第2項)。

    その際、主に以下の要件を満たしていることが必要です。

    ① 会社について
    • 中小企業者である。
    • 合意時点において、3年以上事業を継続している、非上場企業である。

    ② 旧経営者について
    • 過去または合意時点において、会社の代表者である。

    ③ 後継者について
    • 合意時点において、会社の代表者となっている。
    • 現経営者から贈与などで株式を取得し、会社の議決権の過半数を持っている。
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4、【遺留分対策③】生命保険を活用する

最後に、生命保険を活用した遺留分対策を紹介します。

  1. (1)保険金請求権は相続財産に含まれない|遺留分の削減につながる

    生命保険の保険金請求権は、受取人固有の財産のため、原則として相続財産に含まれません(最高裁 平成14年11月5日判決)。
    したがって、被相続人が生前から生命保険に加入し、毎月保険料を支払っていくことで、実質的に相続財産を受取人に少しずつ譲渡することができます。その結果、相続財産が減少し、各相続人の遺留分も減ることになります。

    もし特定の相続人に対して多めに遺産を渡したいと考える場合には、その相続人を受取人に指定した生命保険に加入することが、有効な遺留分対策となるでしょう。

  2. (2)生命保険には相続税の節税効果もある

    生命保険の保険料を被相続人が負担している場合、生命保険金に対しては相続税が課税されます(相続税法第3条第1項第1号)。

    しかし、生命保険金については、以下の計算式によって算定される、特別の非課税限度額が設けられています。この非課税限度額を超える分についてのみ相続税の課税対象となります。

    生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

    つまり、生命保険を活用した遺留分対策は、同時に相続税対策としても一定の効果を持つ、一石二鳥の方法といえるでしょう。

  3. (3)保険金額が大きすぎる場合には「特別受益」に注意

    前述のとおり、生命保険の保険金請求権は原則として相続財産に含まれません。しかし、金額があまりにも高額である場合などには、相続人間の不公平が著しいものとして、特別受益に準じて持ち戻しの対象となり得る点に注意が必要です(最高裁 平成16年10月29日決定)。

    生命保険金が特別受益に準じて持ち戻されるかどうかは、以下の各点を考慮したうえで判断されます。

    • 保険金の額
    • 保険金の額の、遺産の総額に対する比率
    • 保険金受取人になっている相続人や他の共同相続人と、被相続人の関係(同居しているか、被相続人の介護への貢献など)
    • 各相続人の生活実態 など

    特に、あまり関係が深くない相続人に対して、高額の生命保険金を与えようとする場合には、特別受益の持ち戻しに注意する必要があるでしょう。
    不安があれば、弁護士に相談することをおすすめいたします。

5、まとめ

生前に適切な遺留分対策を講ずることで、相続発生後に相続人間で遺留分侵害額請求が行われるリスクを小さくすることが可能となる場合があります。

ベリーベスト法律事務所では、弁護士による生前遺留分対策のアドバイスに加えて、グループ内税理士の同席により、相続税対策に関するご相談にも対応可能です。
ご相談者さまの状況に合わせた最適な方法を検討・ご提案をいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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