遺産相続コラム
相続が発生したとき、遺言書が残されていた場合には基本的にはそれに沿って分けられることになりますが、遺言書がなかった場合や、相続人の数が多い場合、遺産が多く残されていた場合等には、「誰が、何を、どのように相続するのか」という遺産分割の方法について決めなければなりません。
具体的にどのような手続きがあるのか、手続きを進める上での留意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士がご紹介いたしますので、相続の際には参考にしていただければ幸いです。
遺産分割は、遺言書があればその内容に従い遺産を分割することになります。遺言書がない場合には、まずは相続人全員で「(1)遺産分割協議」を行い、分割方法を任意に決定することが考えられます。任意の協議でまとまらない場合には、家庭裁判所において「(2)遺産分割の調停」を行い、それでもまとまらなかった場合には「(3)遺産分割の審判」を受けることとなります。
遺言書がない、あるいは遺言書において相続分の指定しかしていない場合や、遺言書から洩れている財産がある場合などには、相続人間において遺産分割の協議を行わなければなりません。相続人全員が参加していない協議は無効となりますので、注意が必要です。
協議がまとまらなかった場合には、各相続人は、家庭裁判所に対し、遺産分割調停または審判の申立てをすることができます。遺産分割調停においては、相続人の間に家事審判官(裁判官)及び調停委員が入って、話合いにより分割内容を決めることになります。
話合いがまとまらず、調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続きが開始されます。審判手続きでは、裁判官が様々な事情を考慮して判断を下すことになります。
遺産分割調停が不成立となった場合には、審判に自動的に移行します。別途審判の申立てをする必要はありません。
審判手続きにおいては、裁判官が様々な事情を考慮して、判決のような形で審判を下すということになります。審判が出ると、その事件は審判内容に従って一旦終結しますが、納得のいかない当事者は、控訴に似た「即時抗告」という不服申立て手続きを行うことができます。
これが認められなかった場合には、「許可抗告」や「特別抗告」という手続きもありますが、これらが認められるケースは非常に限られています。なお、当事者は、調停ではなくいきなり審判を申し立てることも認められていますが、まずは調停を申し立てるよう、裁判所から促される可能性が高いです。
不動産など、現金や預金と違って容易に分割できない遺産を具体的に分割する方法は、(1)現物分割、(2)換価分割、(3)代償分割、(4)共有分割の4種類あります。
これらの遺産分割方法のどれを選択するかは、当事者の選択あるいは裁判所の広い裁量に委ねられます。
現物分割とは、個々の相続財産の形状や性質に変更を加えることなくそのままの状態で分ける方法をいいます。相続人の間で取得格差が大きい場合には、下記に紹介する他の分割方法を用いたり、併用したりする方がスムーズに分割できることもあります。
代償分割とは、一部の相続人が法定相続分を超える価値のある相続財産を取得した場合に、その相続人が相続分以上の財産を取得する代償として、他の相続人に対して債務を負担する方法をいいます。
なお、当事者の合意ではなく、裁判所が代償分割をさせる場合には、現物分割が不可能又は不適当であるなどの「特別の事情」があり、債務を負担することとなる相続人に資力があることが要件になります。
換価分割とは、相続財産を売却して、その代金を分割する方法をいいます。
この方法は、現物分割が困難で財産の取得希望者がいない場合や、資力がないなどの理由で代償分割によることができない場合に用いられます。換価分割には、当事者の合意に基づき任意売却する場合と、裁判所の命令により競売にかける場合等があります。
共有分割とは、相続財産の一部又は全部を共同で取得する方法をいいます。
共有分割は、当事者が共有による遺産分割を希望しており、かつ、それが不当ではない場合や、上に述べたいずれの方法でも分割が困難である場合という限定的な場面に用いられるべきとされています。共有状態の解消が比較的容易であるときには、共有分割以外の方法が望ましいと考えられています。
遺産分割に決まった順番などはありません。しかし、一般的な流れを追っていくことで無用な争いを防ぎ、無駄なく遺産分割協議を行うことができますので、参考にご紹介します。
遺言書の有無の確認方法は、作成された遺言書の種類によります。公証人が関与して作成した「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」については、全国の公証役場にデータベースがありますので、問い合わせれば遺言書の存否を確認することが可能です。「自筆証書遺言」の場合には、自身でお探しになるほかありません。心当たりがありそうな関係者に訊ねてみたり、被相続人が保管しておきそうな場所を探してみましょう。
次にすべきは、相続人を確定させることです。遺産分割協議を行った後に、相続人が他にもいたことが判明してしまうと、協議をやり直す必要があります。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本を集めることにより、相続人が誰であるかを確定させることになります。 代襲相続や二次相続が発生していないか確認するために、被相続人以外の関係者の戸籍謄本を調査した方がよい場合もあります。
次に、遺産相続の対象となる財産がどの程度あるのかを知る必要があります。個別の動産・不動産などの権利、債権や債務などプラスもマイナスも全てを含めた財産を洗い出し、財産の一覧表である財産目録を作成することが望ましいです。不動産や株式など評価額に争いがある場合には、その財産の評価額についても合意をしなければなりません。
実際に遺産を分割するに当たり、まずは相続人全員で分割方法について話合いを行うことが望ましいでしょう。ここで全ての相続人が納得できる話合いができれば、円満解決となります。
遠方や関係の疎遠等の理由で分割協議への参加を渋る相続人がいる場合は、書面でのやりとりをお願いした上、調停・審判を申し立てることも視野に入れるのが良いでしょう。
相続人同士で話し合って決めた内容は、「遺産分割協議書」として書面を残しておくと、言った言わないなどの紛争を未然に防ぐことができますので、必ず作成しておきましょう。また、「不動産の相続」においては、登記関係手続き上、遺産分割協議書が必要不可欠となります。なお、協議書作成には気をつけるべきポイントがいくつかありますので、専門家に相談した方が安心でしょう。
遺産分割協議で話がまとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てることになります。申立てに必要な書類や費用、手順に関しては、裁判所のホームページに掲載されていますので参照してみてください。
いきなり審判を申立てることも可能ですが、調停の申立てから始めるよう、すすめられることが多いです。
有効な遺産分割協議がある場合、相続人全員の合意がない限り再協議はできません。
しかし、遺産分割協議が終わった後に新たに相続財産が発見されたり、協議では指定のなかった財産が発覚したり、一部隠されていた財産が見つかったりするなど、遺産分割の前提を揺るがすようなケースでは、遺産分割協議の無効を主張することが考えられます。
遺産分割協議の効力を争う場合には、遺産分割調停や審判手続きの中で争うことはできず、地方裁判所に対して、別途「遺産分割協議無効確認」などの民事訴訟を起こす必要があります。
この場合、原則としては遺言者の意思が優先されますので、遺言内容と違う割合で分割したり、相続人が遺言と違う遺産を相続したりするなどの行為があれば、その部分は無効となってしまいます。
ただし、相続人全員がその遺言内容と異なる分割方法をすることに合意すれば、その合意により、遺言書発見前の遺産分割の効力を維持することができます。しかし、相続人の1人でも異議が出た場合は、遺言内容に沿った形で再分割をする必要があると考えられます。
遺産分割というものは、被相続人の生前の頃から感情的対立がある場合や、遺産が多額である場合には、骨肉の争いとなることが往々にしてあります。適当に分割手続きを進めてしまうと、場合によっては裁判問題に発展しかねません。
上記のとおり、遺産分割にあたっては注意すべきポイントがいくつかありますから、相続が発生した場合には一度、弁護士など法律の専門家に相談してみることをおすすめします。
遺産相続のことでお悩みがある際は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にお問い合わせください。知見を有する弁護士が親身になってサポートいたします。
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