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遺言執行者を選任すべきか悩んだとき、知っておきたい4つのこと

2019年12月03日
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遺言執行者を選任すべきか悩んだとき、知っておきたい4つのこと

ご自身の死後、遺産の配分などをめぐってご遺族が争いにならないようにするための配慮などから、生前に遺言書を作成している人は数多くいます。

しかし、せっかく遺言書を作成していたとしても、遺言の内容の実現に反対する相続人の抵抗などにより、遺言書の内容が円滑に実現しないのであれば意味はありません。

そのような事態をできる限り軽減するための一つの方法として、生前に遺言書で「遺言執行者」を指定しておくことが考えられます。遺言執行者には、あなたが亡くなり相続が発生しても、遺言書にしたためたあなたのご遺志を実現するための役割が期待できます。

このコラムでは、遺言執行者がもつ権限や相続において果たす役割などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、遺言執行者とは?

  1. (1)遺言執行者とは?

    遺言執行者とは,遺言の内容を実現する者のことです。遺言で指定されている場合と、利害関係人からの請求により家庭裁判所が選任する場合とがあります。 利害関係人の請求により遺言執行者が選任された場合には、選任された者が遺言執行者として執行を行います。
    遺言で遺言執行者が指定されている場合というのには、遺言で直接1人または数人の遺言執行者が指定されている場合と、遺言執行者の指定が第三者に委託されている場合があります(民法第1006条第1項)。指定の委託がされている場合には、指定の委託を受けた第三者は、遅滞なく遺言執行者を指定するか、委託を辞任することを遅滞なく相続人に通知するかしなければなりません(同条第2項、第3項)。
    また、遺言で遺言執行者が指定されている場合には、指定された者が就職を承諾したときには、直ちにその任務を行わなければなりません(民法第1007条第1項)が、就職を拒むこともできます。遺言執行者が就職するかどうか解らないときには、相続人などの利害関係人は、遺言執行者として遺言で指定された者に対して、就職をするかどうか期間を定めて確答するように催告することができ、期間内に確答しない場合には、遺言で指定された者は就職を承諾したとみなされ、遺言執行者として職務を行わなければなりません(民法第1008条)。

  2. (2)遺言執行者を選任するメリットとは?

    遺言書の内容は、必ずしも相続人の利害に合致するとは限りません。そのような場合には、相続人が抵抗することで、相続が開始したあとの遺言の実現が円滑に進まないことがあります。しかし、そのような事態になってしまったとしても、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことで、遺言執行者により、第三者の立場から、遺言書の内容に忠実で、かつ公正に遺言の内容が実現化されることが期待できるのです。

  3. (3)遺言執行者が行うこと

    就職を承諾した遺言執行者は、ただちにその任務を行う義務があります(民法第1007条)。
    遺言執行者は、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知し(同条第2項)、財産目録を作成して相続人に交付します(同第1011条第1項)。もし、執行対象が特定の財産に限定されている場合は、その財産についてのみ財産目録が作成されます(同第1014条第1項)。
    財産目録の作成・交付が終わると、いよいよ遺言の執行です。遺言執行者は、相続財産の管理など遺言の執行に必要な一切の行為を行うことができ(同第1012条第1項)、相続人は遺言の執行を妨げる行為はできません(同第1013条第1項)。
    こうした権限を付与された遺言執行者は、預貯金や有価証券、不動産など相続財産の名義を被相続人から受遺者や相続人に書き換える手続きを進めます。
    不動産については所有権移転登記手続、預貯金については払い戻しや解約の請求などを行っていきます。遺言で、財産を売却して売却代金を分配するようにと定められている場合には、売却などの処分も行い、売却代金を遺言書の内容に従って分配します。

    このような遺言執行手続きを終えると、遺言執行者は相続人に報告(同第1012条第3項及び同第645)し、執行に際して受け取った物を引き渡し(同第1012条第3項、同第646条)ます。遺言執行者の報酬に関しては、遺言に定めがある場合にはそれに従って受領し、定めがない場合には、家庭裁判所に対して報酬付与の審判の申立てを行います。

2、遺言執行者の選任を考えるべき2つのケース

先述のとおり、円滑かつ適正な遺言の内容の実現について考慮すると、あらかじめ遺言執行者を指定しておくことが望ましいのですが、遺言執行者の指定は法律で義務付けられているわけではありません。ほとんどの場合には、相続人が、自分自身で遺言の内容を実現することができます。
ただし、以下の場合には、遺言の内容を実現するためには遺言執行者が必要となります。

  1. (1)遺言で子を認知するケース

    法律上の親子関係は、母と子については、母が子どもを産んだときに、分娩した母と子の間に当然に法律上の母子関係が発生します。しかし、父と子については、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されますが、法律上の婚姻をしていない男女の間に子が産まれた場合には、法律上の父子関係は、父が子を認知することにより発生するものなのです。
    認知は、遺言により行うことも可能です(民法第781条第2項)。ただし、戸籍法第64条の規定により、遺言による認知の届出を行うことができるのは遺言執行者だけであり、かつ、届出を行わないと認知の効力は発生しない(民法第781条第1項)ので、遺言で認知を行うときは必ず遺言執行者が必要です。

  2. (2)遺言で相続人を廃除する、または廃除を取り消すケース

    相続人の廃除とは、被相続人を虐待したり重大な侮辱を加えたりするなど著しい非行があった相続人について、被相続人の意思に基づいて、家庭裁判所が、その相続人の相続権を剥奪することです(民法第892条)。相続人の廃除は被相続人が家庭裁判所に申し立てますが、遺言で相続人の廃除を定めていた場合は、遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除の手続きを行わなくてはなりません(同第893条)。
    また、被相続人が生前に行っていた相続人の廃除は遺言で取り消すことができますが、この場合の手続きも遺言執行者が行うものと定められています(同第894条第2項、第893条)。

3、遺言執行者になれる者と留意すべき点

  1. (1)遺言執行者になれる者

    遺言執行者には、未成年者や破産者を除き、だれでも遺言執行者になることができます(同第1009条)。法定相続人や受遺者でも遺言執行者になれます。
    自然人だけではなく法人も遺言執行者になることが可能であり、たとえば金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)第1条1項に基づく許可を得た信託銀行などは、業務として遺言執行者になることができます。
    当然、弁護士が遺言執行者になることもできます。訴訟が予想されるような場合には、弁護士が遺言執行者であれば、訴訟対応のために弁護士を頼まなくても良いというメリットがあります。

  2. (2)遺言執行者になれない者

    民法第1009条の規定により、未成年者と破産者とは遺言執行者になれません。

4、遺言執行者の指定・選任の方法や手続きの流れ

  1. (1)遺言執行者の指定方法

    遺言執行者は、被相続人が生前に遺言執行者になってほしい人と相談し了承を得たうえで、遺言書に明記して指定することができます(了承を得ないで遺言に記載して指定しても問題はありません)。また、遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます(民法第1006条第1項)。
    ここで注意していただきたい点は、被相続人の遺言書で遺言執行者に指定されていたとしても、相続が開始したあとに指定された人が、遺言執行者に就職するかどうかは、自由に決めることができるということです。たとえば、以下のような場合には、遺言執行者への就職を辞退されてしまうことも考えられます。

    • 相続人どうしの仲が悪く利害関係が複雑であり、そのため相続人から遺言執行のための必要な協力を得ることが難しく、さらには紛争の発生が予想される場合。
    • 相続財産や相続人の状況について、遺言書の内容が実際の状況と著しく異なっている場合。
    • 相続財産があちこちに散在していたり、取り扱いに専門的な知識やコストを要する相続財産があるなど、業務遂行が難しいと考えられる場合。
  2. (2)遺言執行者を選任するための手続きの流れ

    遺言執行者として指定されていた人が就職を拒んだ場合、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合、あるいは遺言執行を開始したあとに遺言執行者が死亡した場合などには、遺言執行者が無い、あるいは無くなったという場合に該当します。
    そうしたときに、相続人、受遺者などの利害関係人が、遺言執行者の選任を希望するのであれば、民法第1010条の規定により、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。

  3. (3)遺言執行者への報酬の定め方

    被相続人が遺言書に報酬を定めてある場合は、その定めによります。遺言に定めのない場合には、家庭裁判所に対して報酬付与の審判の申立てを行います。(同第1018条第1項、家事手続法第39)。
    また、遺言執行に要した費用は相続財産の負担になります(同第1021条)ので、費用は遺留分を侵害しない程度で相続財産から支払われることになります。相続財産が負担しない部分については、遺言執行によって利益を受ける者の負担になると思われます。
    なお、民法第1018条第2項、同648条2項、3項、同648条の2の規定により、遺言執行者が報酬を請求することができるのは、執行を終了させたあとになります。

5、まとめ

相続人や相続財産の状況にもよりますが、遺言執行者を指定しておくことは遺言の内容を円滑かつ適正に実現するうえで有効です。
そして、遺言執行者には弁護士を指定することは、経験と知識にもとづく円滑な遺言の実現が期待できることはもちろんのこと、紛争など法律事件に発展した場合にもスムーズに対応することが可能になります。
ベリーベスト法律事務所では、遺言執行者だけではなく相続全般についての業務を幅広く取り扱っております。ぜひお気軽にご相談ください。

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