遺産相続コラム

遺産相続トラブルは資産の多い家庭だけじゃない! よくある8つのトラブルと対処方法

2019年06月13日
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遺産相続トラブルは資産の多い家庭だけじゃない! よくある8つのトラブルと対処方法

遺産相続トラブルは一部の富裕層や資産家の家庭だけではなく、一般の家庭や資産がさほど多くない家庭でも頻繁に発生しています。どのような争いごとが多いのかを知り、適切な対策をとっておきましょう。

本コラムでは、よくある遺産相続トラブルと対処方法、弁護士に依頼するメリットや費用などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。

1、遺産相続のトラブルはどこの家庭でも起こりうる

「遺産相続トラブル」というと、資産が何億円もある家で起こるもの、社長や資産家が亡くなったときに発生するもの、というイメージがあるかもしれません。
しかし現実には一般の中流家庭で遺産相続トラブルが発生するケースが非常に多いので注意が必要です。

遺産相続トラブルが深刻になったら家庭裁判所で遺産分割調停しなければなりませんが、調停に持ち込まれる案件の77%程度が、資産額5000万円以下の家庭における遺産相続トラブルです(令和2年度は遺産分割調停の全件数が5846件、1000万円以下が2017件、5000万円以下が2492件)。[引用元:最高裁判所 司法統計情報]

このように、遺産相続トラブルは資産が決して多くはない家庭でも頻繁に起こっているのです。

2、遺産相続のよくある8つのトラブルと対処方法

遺産相続トラブルでは、以下のようなパターンのものが多くなっています。

  1. (1)遺言内容に納得がいかない

    遺言書が残されていて、特定の相続人に多くの遺産を遺贈する内容になっていたら、自身が相続する遺産を減らされた法定相続人は納得できないこともあるでしょう。遺言書が「偽造ではないか?」と疑われるケースもあります。
    遺言書が偽造されたものだと考えられる場合には、「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」を行って遺言書の効力を争わなければなりません。

    一方、遺言書が本物であれば、基本的に遺言の内容に従って遺産分割を進める必要があります。ただし法定相続人の「遺留分」が侵害されていたら、受遺者や受贈者、多めに相続した相続人に対し「遺留分侵害額請求」(2019年7月1日から施行。それ以前は、遺留分減殺請求)を行うことによって、侵害された遺留分を取り戻すことが可能です

    参考:【無料計算ツール】 法定相続分・遺留分、あなたはいくら受け取れる?

  2. (2)親の面倒をみていた相続人がいる

    親の存命中、献身的に介護をしていた相続人がいる場合「寄与分」を主張されるケースがあります。寄与分とは、相続財産の維持や形成に貢献した相続人の相続分を修正して、その相続人の取得する財産の額を増加させる制度です。誰かが寄与分を主張すると、他の相続人が納得せず遺産相続トラブルになりやすいのです。
    寄与分に関するトラブルが発生してしまい、相続人間の遺産分割協議では解決できない場合には、家庭裁判所で「遺産分割調停」を行い、調停委員に間に入ってもらって解決を目指しましょう。調停でも解決できなければ審判に移行することになります。

  3. (3)特定の相続人が遺産を独占している

    長男など特定の相続人が遺産を独占している場合にも、遺産相続トラブルが発生します。もしも相手が使いこみをしているなら、不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求などを行って取り戻す必要があります。
    まずは相手に対し、預貯金通帳などの遺産内容を確認できる資料の開示を求め、使いこみがあるようなら任意で返還を求めましょう。
    話し合いでは返してもらえないようであれば、訴訟提起を検討します。

  4. (4)自分以外の相続人に生前贈与が行われている

    親が亡くなって子どもたちが相続したとき、一部の子どもが親から生前贈与を受けていた、というケースも多々あります。その場合、贈与を受けた相続人が受ける遺産の割合を減らすことによって、公平に遺産分割することができます。これを「特別受益の持ち戻し」と言います。
    しかし、贈与を受けた相続人が特別受益を否定する場合、話し合いで解決できないのであれば家庭裁判所で遺産分割調停や審判を行う必要があります。

    なお、被相続人が遺言書で「特別受益の持ち戻し免除」をしている場合には、特別受益の持ち戻し計算は行われません。

  5. (5)兄弟姉妹、相続人同士の仲が悪い

    相続人となっている兄弟姉妹の仲が悪い場合や、夫が亡くなって配偶者である妻と仲の悪い義母が相続人になった場合など、相続人同士の折り合いが悪いケースでも遺産相続トラブルが発生しやすいです。
    自分たちで遺産分割方法を決められないのであれば、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を利用して解決しましょう

  6. (6)一部の相続人と連絡が取れない

    相続が発生したときに、連絡が取れない相続人がいるケースもあります。その場合、遺産分割協議をしたくてもできません。
    相手が行方不明になっているならば「不在者財産管理人」を選任し、その人に代理で遺産分割協議を進めてもらう必要があります。まずは、家庭裁判所で不在者財産管理人選任の申し立てを行い、選任後に遺産分割協議を進めましょう。
    一方、相手が単純に無視しているだけであれば、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、裁判所から呼び出しをしてもらいましょう。

  7. (7)不動産(土地や建物)など分けにくい資産がある

    遺産によっては相続トラブルが発生しやすいものがあります。
    特に土地や建物などの不動産が相続財産に含まれていると、争いに発展しやすい傾向にあります。土地や建物は、預貯金などと違って相続割合通りに分割できないケースが多いからです。

    不動産の遺産分割には3種類の解決方法があります。誰かが当該不動産全体をそのまま相続する「現物分割」、相続した人が他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、不動産を売却してその代金を分ける「換価分割」です。
    まずは相続人同士で話し合い、どうしても自分たちで決められないなら家庭裁判所の調停を利用しましょう。

  8. (8)愛人や隠し子などのトラブルがある

    被相続人に家族の知らない愛人や隠し子がいたことが発覚し、トラブルとなる事例もあります。
    愛人には相続権がありませんが、有効な遺言によって遺贈を受けていれば、遺産を渡さなければなりません。隠し子の場合、遺言がなくても嫡出子と同等の相続分が認められます

    対処方法として、愛人に遺贈する旨の遺言書があるなら、遺言書の真正を確かめて、偽物ならば遺贈の効力を争い、本物であれば遺留分減殺請求などを検討しましょう。

    隠し子が現れた場合には、遺産を分け与えないわけにはいかないので、遺産分割協議に参加させて粛々と分割手続きを進めていきましょう。隠し子を参加させずに遺産分割協議を行っても、その協議は無効となってしまいますから、注意が必要です

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3、遺産相続に関してトラブルが発生したら行うべき「遺産分割調停」とは

相続が発生して当事者間で遺産分割協議をしてもまとまらないなら遺産分割調停などの家庭裁判所での手続きをして解決を目指すことが多いです(効力の争いのある遺言が存在するケースや遺産の範囲・相続人の確定で争いのあるケースなどでは別の法的手続をとることもあります)。

遺産分割調停では、家庭裁判所の「調停委員」2名を間に挟んでトラブルの当事者が話し合いを続けていきます。調停委員による調整でお互いが合意できたら調停が成立し、遺産分割方法を決定することができます。
一方、調停でも遺産分割方法を決められない場合には、調停は不成立となって手続が「審判」に移行します。審判に移行すると、審判官(裁判官)がそれぞれのケースに応じた遺産分割方法を決定します。(なお、事案によっては、審判に移行しないケースもあります。)

ただし、審判結果は、必ずしも当事者の希望通りになるとは限りません。時には、相続人が居住している不動産の売却命令が出てしまうケースもあります。そのようなリスクを避けるためには、早期に遺産分割調停や審判の手続きを弁護士に依頼することをおすすめします

4、トラブルが発生したら弁護士に依頼すべき?かかる費用は?

遺産相続トラブルが発生したときは、自分たちだけで解決を図るより弁護士に依頼した方が効果的に解決できるケースが多く存在します。以下に、弁護士に依頼するメリットと費用をご説明します。

  1. (1)弁護士に依頼するメリット

    ●法的に適切な方法で遺産分割を進められる
    弁護士に依頼すると、法律に則った正しい方法で遺産分割手続を進められます。遺産の相続にはさまざまなルールがあります。たとえば、各相続人には法定相続分がありますが、寄与分や特別受益によって修正される可能性がありますし、有効な遺言があればその内容が優先されます。遺産の範囲が明らかになっていない場合、遺産分割協議に先立って財産調査をしなければなりません。
    正しい知識がないままに進めていくと解決の糸口をつかめないまま、泥沼の相続トラブルに発展してしまいます。
    弁護士に相談することで、法律的な考え方を前提に適切な対応を取ることができるため、スムーズな解決につなげることが可能です。

    ●相手との交渉や調停を依頼することができる
    遺産相続トラブルが発生したら、トラブルの相手方と遺産分割協議(交渉)をしたり、遺産分割調停をしなければなりません。自分で交渉すると相手から言いくるめられるおそれがありますし、自分の権利を守るために必要な主張もうまくできないケースがあります。
    弁護士に依頼すれば、交渉や裁判手続のプロとして万全の対策をとることができるので安心です。

    ●ストレスが軽減される
    遺産相続トラブルは、当事者にとって非常にストレスのかかるものです。しかも長期化するケースが多いため、ストレスが2年3年とかかり続けることとなってしまいます。
    弁護士に相談・依頼すると、弁護士が問題を引き受けて全面的に対応してくれるので、当事者の精神状態は非常に良くなります。ストレスが軽減されて、日常生活を穏やかに送れるようになることも大きなメリットと言えるでしょう。

    ●相続前の対策も可能
    将来遺産相続トラブルを起こさないためには、相続発生前の対策が重要です。被相続人が生きている間に弁護士に相談をして、公正証書遺言を作成するなど事前にしっかり相続対策をしておけば多くのトラブルを避けられます
    弁護士から遺言内容についてアドバイスを受けられますし、遺言書作成の手続や遺言執行者に就任してもらうことなどもあらかじめ依頼しておくことができます。
    将来のトラブルが心配な方も、一度弁護士に相談するのが良いでしょう

  2. (2)弁護士費用

    遺産相続トラブルの解決や対策を弁護士に相談・依頼するとどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
    一般的には、「弁護士費用は高い」というイメージがありますが、必ずしも正しいとは言えません。初回相談料が無料の法律事務所も多数ありますし、具体的な金額は依頼内容や事務所によっても大きく異なります。

    遺産相続トラブルの解決を弁護士に依頼しようか迷ったら、まずは法律事務所で相談を受けて費用を確認し、依頼を検討してみるのが良いでしょう。
    ベリーベスト法律事務所における遺産相続関係の弁護士費用はこちらに掲載されていますので、よろしければご参照ください。

    参考:相続に関する弁護士費用

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5、まとめ

遺産相続トラブルを抱えると精神的に追い詰められてしまいますし、不適切な対応をして不利な解決内容となってしまった場合の不利益は甚大です。後悔しない相続を進めるために、早期の段階から弁護士に相談しましょう。

家族関係がうまくいっていない場合、相続財産が複雑な場合、家族信託を利用したい場合など、ベリーベスト法律事務所はどのようなケースにも対応可能です。お気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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