相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務化されました。
また、遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をする義務があります。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた土地、建物、マンションなどの不動産を相続した場合に、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きのことをいいます。
不動産を所有する被相続人が亡くなったからといって、自動的に不動産の名義が変更されるわけではありません。遺言で不動産の相続人となる方が指定されていない場合、不動産の名義を変更するためには、相続人による遺産分割協議を行い、誰が不動産を相続するかを決め、それに基づいて法務局に申請することが必要です。
不動産の売買や贈与などでも名義変更しなければなりませんが、「遺産相続」を起因として不動産の名義変更を行う手続きを「相続登記」と呼んでいます。
相続登記は自分で手続きすることもできますが、初めて相続登記をする場合、必要書類や手続きの流れなどがよくわからず、「ひとりでは不安だ」と感じる方も少なくないでしょう。
書類などに不備があると相続登記を受け付けてもらえないため、手続きに不安がある方は、司法書士や弁護士に依頼すべきといえます。
相続登記には、市区町村長の署名が付された戸籍謄本や住民票などが必要となります。
書類を準備したり、手続きを進めたりするにあたって、仕事・家事・介護・育児などで忙しく、なかなか時間が取れない方もいるでしょう。自分でやるつもりが、思うように相続登記の手続きを進められずに、そのまま時間が経過していたという方も少なくありません。
このように、時間的な余裕が持てない方は、手続きをまかせることができる司法書士や弁護士に依頼しましょう。
複数の不動産を相続した場合、不動産ごとに相続登記を行わなければなりません。不動産の数が増えれば増えるほど相続登記の手続きは煩雑化しますので、登記漏れなどを引き起こすリスクが高くなります。
すべての不動産の相続登記を確実に終えたいとお考えの方は、司法書士や弁護士に依頼すべきです。
遺言で不動産の相続人となる方が指定されていない場合、相続登記の前には、誰が不動産を引き継ぐのかなどを決めるための遺産分割協議を相続人全員で行う必要があります。しかし音信不通や所在不明の相続人がいる場合は、遺産分割協議自体を進めることができません。
このような場合には、裁判所に「不在者財産管理人の選任申し立て」や「失踪宣告の申し立て」をするなどの対処法がありますが、弁護士の協力がなければ対応は難しいといえます。
疎遠になっている相続人がいる場合も、うまくコミュニケーションが取れず、遺産分割協議や相続登記の手続きを円滑に進めることが難しくなります。
このような場合、弁護士が窓口となってやり取りをすることで、スムーズに遺産分割を実現できる可能性が高くなります。相続人同士のやり取りで負担を感じるときは、弁護士に依頼して手続きを進めていくとよいでしょう。
未成年者は、原則として法定代理人である親権者の同意がなければ、有効な法律行為をすることができません。遺産分割協議でも未成年者本人ではなく、親権者が代理人として参加することになりますが、同じ相続において、親権者も相続人になるケースがあります。
この場合は、親権者と未成年者の利益が相反するため、親権者は代理人になることができません。裁判所に「特別代理人の選任申し立て」が必要になるため、弁護士に依頼して進めていくとよいでしょう。
相続登記は、これまで義務ではなく任意とされていました。そのため、遺産相続が発生し、不動産の名義変更が必要になったとしても、「手続きが面倒」「登記費用を負担したくない」といった理由で相続登記をせずに放置しているケースも少なくありませんでした。
しかし、法改正により令和6年4月1日から相続登記が義務化されたため、相続開始を知った日から3年以内に必ず相続登記を行わなければなりません。
相続登記の義務化により、新たに罰則が導入されることになりました。
正当な理由なく3年以内に相続登記の申請をしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。過料とは、行政上の罰のことで、刑事罰と異なり前科にはなりません。
なお、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で3年以内に相続登記の申請ができない場合には、「相続人申告登記」を行うことで罰則の適用を免れることができます。
相続人申告登記とは、相続登記の義務化と同時に新たに導入された制度で、遺産分割協議が成立していない場合でも、簡単に相続登記の申請義務を履行できる仕組みです。
相続登記の対象は、改正法が施行された令和6年4月1日以降の相続だけでなく、それよりも前に発生した相続も対象となります。
そのため、過去に相続した不動産が相続登記未了の状態になっている場合には、令和9年3月31日までに相続登記を済ませなければなりません。登記が未了のままだと過料の制裁を受ける可能性があります。早めに手続きを進めることが大切です。
相続登記義務化の背景には、所有者不明土地の問題があります。
所有者不明土地とは、相続登記が行われないなどの理由で不動産登記簿を確認しても所有者が判明しない、または所有者がわかってもその所在がわからない土地のことです。
このような所有者不明土地は日本全国で増加しており、不動産登記簿だけでは所有者の所在が明らかにならなかった土地の割合は、約24%にも及んでいます(令和4年度国土交通省調べ )。今後も所有者不明の土地は増加していくと予想されており、各地で深刻な社会問題となっています。
所有者不明土地が増え、土地の所有者がわからない状態が続くと、土地の管理がきちんとされず景観や治安に悪影響を及ぼし、近隣住民に不安を与えかねません。
また、土砂崩れなどの対策工事が必要になっても、工事を進められず危険な状態が続いたり、市街地開発や公共工事のために用地の取得が必要になっても、用地の買い取り交渉ができず土地の有効活用ができなかったりなどの問題も生じ得ます。
このような所有者不明土地の問題を解消するために導入されたのが、相続登記の義務化です。罰則付きで相続登記を義務化することにより、土地の相続登記が促進され、所有者不明土地の発生を抑制できると期待されています。
相続登記の手続きでは、法務局の登記官が登記簿の記録・管理・窓口での案内といった事務処理に携わっています。不動産の登記が行われているのかどうかを把握するのも、登記官の役割です。
実務上、登記官は、主に以下のようなことをきっかけとして、相続登記の申請義務違反を把握します。
登記官が相続登記の申請義務違反を把握すると、義務違反者に対して、催告書を送付し、相続登記の申請をするように催告を行います。指示に従って相続登記に応じれば、過料を科されることはありません。
催告があったにもかかわらず、正当な理由なく、催告書に記載された期限までの間に相続登記が行われない場合、登記官は、裁判所に相続登記の申請義務違反を通知します。
その後、裁判所は要件に該当するかどうかを判断し、要件該当性が認められれば過料を科す旨の裁判を行います。
なお、過料の金額については、10万円を上限として裁判所が判断します。
期限内に相続登記の申請義務を履行できない場合、以下のような事情であれば「正当な理由がある」と認められる可能性があります。
以下のような事情では、基本的には相続登記をしないことに正当な理由は認められにくいでしょう。
正当な理由なく相続登記の申請を怠っていると、10万円以下の過料が科される可能性があるため、注意が必要です。
なお、正当な理由があるかどうかの判断は非常に難しいため、原則として、相続登記を行うことを前提として、行動する必要があります。相続登記申請ができない事情があってお困りの場合は、すぐに弁護士にご相談ください。
相続登記の義務化は、改正法の施行日である令和6年4月1日よりも前に相続が発生していたケースについても適用されます。
しかし、直ちに相続登記を申請しなければならないとなると相続人の負担が大きくなるため、改正法施行日前に発生した相続に関する相続登記については、猶予期間が設けられています。
具体的には、以下のいずれか遅い日までの間に相続登記の申請を行えばよいとされています。
改正法の施行日よりも前から相続が発生していることを知っている場合には、原則として、令和9年3月31日が相続登記の期限となるため、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
相続登記を先送りにすると、相続人の死亡による代替わりが発生し、相続人の数がどんどん増えて権利関係が複雑になっていきます。
また、相続登記を先送りし、不動産を相続した相続人が高齢になると、認知症を発症することもあります。このような状態になると、簡単に遺産分割協議を行うことができなくなります。
不動産を売却するためには、実際の所有者と登記簿上の所有者が一致している必要があります。相続登記を先送りにしていると、実際の所有者と登記簿上の所有者が一致しなくなるため、いざ不動産を売ろうとしても売却することができません。
活用できない不動産を持っていても税金や管理費用の負担が掛かるだけなので、経済的な損失が生じることもあります。
相続人同士の話し合いで不動産を相続する相続人が決まっていたとしても、相続登記をしていなければ、対外的には法定相続分で共有している状態になります。
このような状態では、他の相続人の債権者である第三者が不動産を差し押さえたとしても、第三者に対して自分が権利者であることを主張できなくなってしまいます。つまり、相続登記を先送りにすることで不動産の権利を失うリスクも発生します。
相続人申告登記とは、不動産を相続した相続人が相続登記の義務をより簡単に履行することを可能とする制度です。相続人申告登記は、相続登記の義務化と同じく、令和6年4月1日から開始されました。
長年相続登記を先送りにしてきたような事案では、権利関係が複雑化しており、簡単に遺産分割協議を行うことができない状態になっていることもゼロではありません。このような状態だと相続登記の期限までに申請ができず、過料が科されてしまうリスクがあります。
相続人申告登記は、遺産分割協議がまとまっていない状態でも、以下を法務局の登記官に申し出るだけで可能な手続きです。
これで相続登記の申請義務を履行したことになるため、期限までに相続登記ができない場合には、相続人申告登記を利用するとよいでしょう。
ただし、相続人申告登記をしたからといって、相続登記をしなくてよいというわけではありません。あくまでも「不動産の相続人であること」を示すための簡易的な手続きであり、「不動産の所有者(権利者)」であることを確定させるものではないことにご注意ください。
相続人申告登記をすれば、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。期限内に相続登記ができないなどの事情があるときは、ひとまずは相続人申告登記をしておけば、過料の制裁を免れることが可能です。
相続人申告登記は、相続人が複数いる場合であっても、各相続人が単独で行うことができます。ただし、相続登記の申請義務を履行したものとみなされるのは、相続人申告登記を行った相続人だけであることに注意が必要です。
相続登記をする際には、不動産価額に応じた登録免許税という費用が発生しますが、相続人申告登記は無料で行うことができます。相続人申告登記に必要な戸籍謄本などの取得費用は必要になるものの、相続登記に比べて費用負担はほとんどないといえるでしょう。
ベリーベスト法律事務所では、相続登記の実績が多数あります。手続き期限がある相続登記の手続きにおいて、豊富な知見と経験から、スムーズに対応を進めることが可能です。
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※1 2025年3月現在 ※2 2025年4月現在
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