遺産相続コラム
相続手続きでは、戸籍謄本が必要となります。しかし、日常において戸籍謄本が必要となる場面はそれほど多くないため、戸籍謄本そのものを見たことがない方や取得したことがない方もいるかもしれません。
戸籍謄本には種類がありますが、相続手続きの内容によって必要となるものが異なります。また、戸籍謄本の収集には時間がかかるケースもあるため、大変な労力がかかる作業といえます。そのためご自身で収集するのが難しい場合などは早めに弁護士へご相談ください。
本記事では、相続手続きで必要となる戸籍謄本の種類や取得方法などを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
相続で戸籍謄本が必要となるのは、相続人が誰であるかを証明するためです。
なお、最新の電子化された戸籍(平成6年式)では、戸籍謄本は「全部事項証明書」という呼び名に変わっていますが(戸籍法120条、戸籍法施行規則73条)、ここでは便宜上、電子化されたものも含めて「戸籍謄本」と呼ぶことにします。
相続人は、被相続人(亡くなった方)との続柄によって決まります。たとえば、被相続人に配偶者と子がいれば、その配偶者と子が相続人となります。
戸籍謄本は、親族関係が記載された証明書類です。戸籍謄本を確認すれば、相続権を有する被相続人の親族が誰であるかが分かります。そのため、相続手続きを進めるにあたって戸籍謄本が必要となります。
以下に挙げるのは、戸籍謄本が必要な相続手続きの一例です。
なお、被相続人の死亡によって戸籍に誰もいなくなった場合、被相続人の戸籍は戸籍簿から除籍簿へと移されます。この場合、「除籍謄本(除籍全部事項証明書)」を取得する必要があります。
また、電子化されるより前の、紙の戸籍簿を「改製原戸籍」といいます。電子化より前の戸籍情報が必要となる場合は、「改製原戸籍謄本」の取得が必要です。
相続手続きに必要な戸籍謄本などの種類は、主に以下の2つのパターンがあります。
ただし、代襲相続や兄弟姉妹による相続の場合、必要な戸籍謄本などの部数が増えるので注意が必要です。ご自身で戸籍謄本などを集めるのが難しければ、弁護士にご依頼ください。必要な戸籍謄本などをスムーズに取得いたします。
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類について、例を挙げながら紹介します。
人は生まれてから死ぬまでの間に、結婚や離婚、養子縁組などによって戸籍を移ることがあります。そのため、被相続人の相続関係の全体像を明らかにするためには、被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍謄本(または除籍謄本・改製原戸籍謄本)の取得が必要です。
なお、相続手続きの種類によっては、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(または除籍謄本・改製原戸籍謄本)のみで足りることもあります。その場合は、死亡時の本籍地の市区町村役場で戸籍謄本などを取得可能です。
被相続人の相続権を有するのは、生存している法定相続人のみです。そのため、法定相続人の生存を確認する目的で、相続人の現在の戸籍謄本の提出を求められる場合があります。
なお、戸籍謄本の提出が必要となるのは、手続きにおいて生存を確認する必要がある相続人のみです。必ずしも相続人全員の戸籍謄本が必要になるとは限らない点にご留意ください。
相続人が相続発生前に死亡したことなどにより、その子が代わりに相続人となることを「代襲相続」といいます。
代襲相続の場合、被代襲者が死亡したこと、および被代襲者と代襲相続人の親族関係を証明しなければなりません。そのため、「被代襲者の出生から死亡までの戸籍謄本など」と「代襲相続人の現在の戸籍謄本」が追加で必要となります。
兄弟姉妹による相続の場合は、相続順位との関係で、被相続人の子(および代襲相続人)と直系尊属(被相続人の両親、祖父母など)がいないことを証明しなければなりません。
そのため、被相続人の子(および代襲相続人)と直系尊属の中ですでに死亡している人がいる場合は、その人の「出生から死亡までの戸籍謄本など」が追加で必要となります。
戸籍謄本の取得方法には、以下のパターンがあります。ご自身にとって便利な方法で取得することができます。
対象者の本籍地の市区町村役場に行けば、戸籍に関する窓口において、即日で戸籍謄本を取得できます。
戸籍に名前が記載されている本人であれば、本人確認書類を窓口に持参すれば、誰でも戸籍謄本を取得できます。また、本人の配偶者・直系尊属(両親・祖父母など)・直系卑属(子・孫など)も戸籍謄本を取得できますが、本人との続柄が確認できる資料が必要です。
市区町村役場の窓口で戸籍謄本の交付を受ける際の手数料は、1通当たり450円です。
市区町村役場の窓口では、戸籍の申請手続きについて案内を受けられるので、不慣れな方でも安心です。ただし、窓口に行くのが難しい遠方の場合には、郵送など別の方法を検討したほうがよいでしょう。
戸籍謄本は、郵送でも請求できます。対象者の本籍地が遠方である場合は、郵送請求を検討しましょう。
戸籍謄本の郵送請求に当たっては、以下を同封する必要があります。
不備があると返送されてしまうので、漏れなく同封しましょう。また、郵送請求には1週間から2週間程度の期間がかかる点にもご注意ください。
マイナンバーカード(個人番号カード)を保有していれば、本籍地にあるコンビニにおいて、即日で戸籍謄本を取得できる場合があります。
コンビニのマルチコピー機を操作して、マイナンバーカードをセットのうえ必要事項を入力し、手数料を投入すると戸籍謄本が印刷されます。
コンビニは市区町村役場よりも近いことが多いので、大変便利です。手数料は原則として450円ですが、マイナンバーカードの利用促進などの観点から、割引料金が適用されている自治体もあります。
ただし、マイナンバーカードによる戸籍謄本のコンビニ交付に対応していない自治体もあるため、確認が必要です。
戸籍謄本は、弁護士に取得を依頼することもできます。弁護士は「職務上請求」によって、事件処理に必要な戸籍謄本を取得可能です。
特に、ご自身で戸籍謄本を取得する方法が分からない方や、手続きをする時間が確保できない方などは、弁護士へのご依頼をおすすめします。
戸籍謄本などの提出を要する相続手続きが複数ある場合、各窓口に戸籍謄本などの束を何度も出し直さなければならないのが難点です。
しかし、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すれば、登記官から「法定相続情報一覧図」の写しを発行してもらえます。法定相続情報一覧図は戸籍謄本などに代用可能で、各窓口へ同時並行的に提出できるので大変便利です。
法定相続情報証明制度の利用をご希望の方は、弁護士にご相談ください。
上記のようなご事情で、ご自身で戸籍謄本を取得することが難しい方は、弁護士へのご依頼をおすすめします。必要な戸籍謄本を弁護士がスムーズに収集し、期限に間に合うように相続手続きを進めます。
また、弁護士には戸籍謄本が必要な手続きだけでなく、相続手続き全般への対応をご依頼いただくことも可能です。相続財産の調査や遺産分割協議のサポートなど、ご要望に合わせて幅広く対応いたします。
戸籍謄本の収集が難しいなど、相続手続きについてお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。
相続手続きに必要となる戸籍謄本の取得には、思いのほか時間がかかるケースがあるので、早めに着手しましょう。ご自身での対応が難しい場合は、弁護士へのご依頼をおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。戸籍謄本の取得代行や、その他の相続手続きに関するお悩みは、遺産相続事件の経験を豊富に有するベリーベスト法律事務所にご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
配偶者である妻には、亡き夫の遺産を相続する権利(=相続権)が民法で認められています。一方で、義両親にも死亡した夫の相続権が認められるケースがある点にご留意ください。
このようなケースは、妻と義両親の間で遺産分割に関する利害調整が求められることもあり、慎重な対応が必要です。
仮に「義両親に一切の遺産を渡したくない」と思っていても、義両親に相続権がある以上は、義両親の要求をすべて拒否することは難しいといえます。
本コラムでは、夫死亡後の遺産相続における義両親の相続権や相続分、姻族関係終了届が相続に影響するのか否かなどのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
両親が亡くなった後に、実家の土地や建物をどう相続するかは、多くの方にとって悩ましい問題です。
たとえば、思い入れのある実家を残したいと思っても、誰か住むのかで揉めてしまうケースや、相続後の管理に多大な労力を要するケースが少なくありません。
実家の土地や建物が相続財産にある場合は、各選択肢のメリット・デメリットを踏まえて、家族にとってどのような形が望ましいかをよく検討しましょう。
本コラムでは、実家の土地や建物を相続する際の基礎知識や手続きの流れ、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
相続人が死亡するなど、一定の理由により相続権を失った場合は、その子どもが亡くなった相続人に代わって遺産を相続するケースがあります。
これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼び、代襲相続により相続することになった方を代襲相続人といいます。また、代襲相続とは、民法で詳細に規定されている遺産相続の制度です。代襲相続は相続割合や法定相続分の計算が変わることもあり、相続争いに発展するケースもあるため、注意しましょう。
本コラムでは、具体的に代襲相続とはどういった制度なのか、代襲相続人となれる範囲や要件、相続割合などについて、代襲相続による注意点を含めて、べリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
代襲相続は複雑なために理解が難しい点もありますが、基本的なポイントをおさえることから理解を深めていきましょう。