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遺贈とは? 法定相続人以外に財産を残すために知っておきたい4つのこと

2019年05月29日
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遺贈とは? 法定相続人以外に財産を残すために知っておきたい4つのこと

人が亡くなって相続開始したとき、遺産を相続するのは基本的に「法定相続人」です。内縁関係の相手や血のつながりのない長男の嫁などが遺産を相続することはできません。
しかし、「死亡した後、内縁の妻に家や預貯金を残したい」「献身的に介護をしてくれている息子のお嫁さんに財産を残したい」と考える方もおられるでしょう。

そのようなときには「遺贈」を活用すれば、あなたの希望通りに財産を渡せます。
今回は「遺贈」について、弁護士が解説していきます。

1、遺贈とは、遺言によって受遺者に財産を残すこと

  1. (1)遺贈とは?

    「遺贈(いぞう)」とは遺贈者が遺言によって財産の全部または一部を受遺者に無償で与えることです。遺言をせずに亡くなると、遺産相続する権利を認められるのは「法定相続人」です。死亡後、法定相続人全員が遺産分割協議を行って、遺産の相続方法を決定します。法定相続人がいない場合は、遺産は最終的に国庫に帰属します。
    一方、遺言によって「遺贈」しておけば、亡くなった後自分の指定した方に遺産を残せます。遺贈の相手は誰でもよく、長男の嫁や内縁の妻、お世話になった介助者やその他の親族以外の方でもかまいません。

  2. (2)法定相続人とは?

    法定相続人は、民法の定める相続人です。
    法律婚の配偶者は常に法定相続人ですが、内縁関係にある相手は法定相続人になりません。
    配偶者以外の法定相続人については順位があります。第1順位が子ども(代襲相続人は孫、ひ孫など)、第2順位が親、祖父母など直系尊属、第3順位が兄弟姉妹(代襲相続人はおいめい。おいめいの子どもはおいめいを代襲相続しません。)となっています。

  3. (3)法定相続人ではない家族とは?

    法定相続人ではない、以下のような家族には遺産相続権がありません。

    • 内縁の妻、夫
    • 息子の嫁、娘の夫
    • 子どもがいる場合の孫
    • 子どもや親がいる場合の兄弟姉妹、おいめい
    • いとこ
    • 叔父や叔母


    上記のような方に遺産を受け継がせるには、遺言によって「遺贈」しておく必要があります。

2、遺贈のやり方と、それぞれの特徴や注意点

遺贈にはいくつかの種類があります。

  1. (1)包括遺贈

    包括遺贈とは、受け渡す遺産の「割合」のみを指定する遺贈方法です。たとえば「遺産の2分の1を遺贈する」「遺産を全部遺贈する」などと書き残し、特定の財産については言及しません。包括遺贈を受けた人を「包括受遺者」と言います。

    ●メリット
    包括遺贈の場合、遺産を特定しないので遺言書作成後に財産に変動があった場合にも対応可能です。

    ●デメリット
    しかし遺贈を受けた人は負債もその割合で受け継ぐこととなってしまう点がデメリットです。また遺贈の割合しか決まらないので、具体的にどの遺産を受け継ぐのかについて、他の相続人と話し合いをして決めなければなりません。そのときにトラブルが発生する可能性もあります。

  2. (2)特定遺贈

    特定遺贈とは、遺言者が受け渡す遺産を特定する遺贈方法です。たとえば「○○の預貯金を遺贈する」「○○の不動産を遺贈する」などとします。特定遺贈を受けた人を「特定受遺者」と言います。

    ●メリット
    この場合、受遺者は負債を受け継ぎません。他の相続人と話し合う必要もなく、すぐに指定された遺産を受け継いで自分のものとすることが可能です。たとえば不動産を特定遺贈したら、受贈者は速やかに相続登記の手続きをすることができます。(ただし、単独で移転登記手続を行うことはできず、相続人全員または遺言執行者との共同申請になります。)

    ●デメリット
    一方、遺言時に特定した遺産(たとえば不動産)が死亡時までに失われていたら、遺贈の意味がなくなってしまう点がデメリットです。

  3. (3)負担付遺贈

    包括遺贈でも特定遺贈でも、受遺者に何らかの義務を課すことと引き換えに遺贈することが可能です。たとえば不動産の管理を行っていくことを前提に不動産を遺贈するケースなどです。また、負担の内容は、遺贈される対象とは関係が無くても大丈夫です。負担を課されたくない相続人は、遺贈を放棄することも可能です。

    ●メリット
    負担付遺贈のメリットとしては、遺贈と引き換えに、遺言者のさまざまな希望をかなえられる点があげられます。

    ●デメリット
    デメリットしては、受遺者は遺贈を放棄することができるため、負担が割に合わないと感じた場合には放棄してしまえば良く、その場合は負担付遺贈の意味が無くなる点があげられます。

    また、受遺者が遺贈を受けた後、前提となっている負担を履行しないときには、相続人が履行の請求をしたり、請求をしても結局履行されなかった時には、負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求しなければならないなど、相続人の負担になる場合もあります。

  4. (4)死因贈与について

    遺贈に似た方法に「死因贈与」があります。これは、死亡によって効力を生ずる与契約です。遺言によって財産を受け渡すのではなく、贈与者と受贈者間の「契約」によって財産が移転されるので、遺言者による一方的な行為である「遺贈」とは違います。遺言によりなされる遺贈とは異なり、贈与者と受遺者との契約なので、必ずしも書面の作成は必要なく、当事者双方の合意により成立しますが、効力が生じるときには贈与者が死亡していることを考えると、後々のトラブルを避けるためにも、書面を作成しておくべきでしょう。書面を作成する場合には、遺言書ではなく「贈与契約書」を作成することになります。

    また死因贈与にも「負担付死因贈与」があります。これは義務を課すのと引き換えに死因贈与をすることです。死因贈与の場合には契約時に受贈者の承諾を取っているので、負担付であっても死後に「放棄」されません。

    遺贈や死因贈与にはいろいろな方法があり、状況に応じて使い分ける必要があります。誰にも知られずに遺言者の意思ひとつで解決したければ、遺言書で遺贈するのが良いでしょう。

3、税金(相続税、贈与税、不動産取得税)はどうなる?

遺贈するとき相続税や贈与税などの税金関係がどのような取り扱いになるのか、確認しておく必要があります。

  1. (1)遺贈には贈与税ではなく、相続税がかかる

    遺贈は贈与と似ているので「贈与税」がかかると思われていることがありますが、実際にかかってくるのは「相続税」です。計算方法も、法定相続人が相続するケースと同じです。
    死因贈与の場合にも、贈与契約ではあっても遺贈とほとんど同じ効果であることなどから「相続税」がかかります。

    ●相続税がかかるケース
    相続税は、基礎控除を超える相続財産がある場合にかかります。
    基礎控除=3000万円+法定相続人数×600万円

    ●相続税の計算方法
    まずは相続財産から基礎控除を引いた価額を法定相続人の法定相続分に応じて分けます。そしてそれぞれに対応する相続税率をかけ算してそれぞれの相続税を算出します。
    次に相続税の金額をすべて合計します。
    その合計額を具体的な相続分や受贈分に応じて、それぞれの相続人や受贈者に割り振っていきます。

    このようにして、最終的に受贈者が受けついだ相続財産の評価額に相当する相続税の金額を計算できます。

    【相続税率の表】

    法定相続分に応じた金額 税率 控除額
    1000万円以下 10% なし
    3000万円以下 15% 50万円
    5000万円以下 20% 200万円
    1億円以下 30% 700万円
    2億円以下 40% 1700万円
    3億円以下 45% 2700万円
    6億円以下 50% 4200万円
    6億円超 55% 7200万円
  2. (2)不動産を遺贈する場合の注意点

    不動産を遺贈によって受け継ぐと「不動産取得税」がかかります。
    不動産取得税は不動産を取得したときにかかる税金です。法定相続人への相続の場合にはかかりませんが、相続人以外のものへの遺贈のケースでは土地と家屋(住宅)場合に3%、家屋(非住宅)の場合に4%の不動産取得税がかかります。
    また登録免許税の税率も異なってきます。法定相続人の場合には軽減税率が適用されて0.4%となりますが、それ以外の受贈者の場合には2%です。
    遺贈によって不動産を相続人以外の人に受け継がせると、法定相続人のケースよりも税金が上がるケースが多いので、注意してください。

4、遺贈にありがちなトラブル

遺贈するときには、いろいろなトラブルも起こりやすいので、事前に検討と対処をしておく必要があります。

  1. (1)遺留分侵害について

    遺贈トラブルで非常に多いのが「遺留分侵害」です。

    兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の遺産取得分である「遺留分」という権利が認められます。相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書を作成したら、相続人が受遺者に対して「遺留分減殺請求」(令和元年7月1日以降に発生した相続については、改正法が適用され、「遺留分侵害額」に相当する金銭の支払請求)を行い、受遺者と相続人との間でトラブルが起こります。

    もめごとがひどくなった場合、裁判所における調停や訴訟にもつれ込むケースもあるので注意が必要です。遺言をするときには相続人の遺留分を侵害しないよう配慮すべきと言えます。

  2. (2)包括遺贈の場合の遺産の分け方

    包括遺贈をした場合、受遺者の取得分について割合しか決まらないので、どの遺産を取得するのかを他の相続人と話し合って決めなければなりません。そのとき意見が合わず相続トラブルにつながりやすいです。効果的に相続トラブルを防止したいなら、特定遺贈の方がおすすめです。

  3. (3)負債の問題

    負債のある方が遺贈をするときにも注意が必要です。「財産を全て遺贈する」などとして包括遺贈をすると、受遺者に負債も引き継がせてしまいます。受遺者が借金支払いを逃れるには遺贈を放棄するしかなく、遺贈した意味がなくなります。負債があって確実に財産を残したいなら特定遺贈すべきです。

  4. (4)遺言書の方式ミス

    遺言書を作成するときには、要式を誤って無効にしてしまう方が非常に多いので注意が必要です。特に自筆証書遺言では、一部をパソコンで作成してしまったり署名押印が抜けたり加除訂正の方法を誤ったりして無効になるケースがあります(平成31年1月13日から施行された改正法では、目録部分についてはパソコンなどによる作成が認められるようになりましたが、本文やパソコン等で作成した部分への署名などは自書が必要です。)。遺贈によって不利益を受ける相続人が遺言書を発見して、破棄したり隠したりする可能性もあります。

    確実に遺贈を実現させたいなら公正証書遺言を選択しましょう。
    なお、令和2年7月10日からは遺言書保管法が施行されるので、それ以降は、自筆証書遺言書を法務局で預かってもらうことができるようになりますが、施行前は、破棄や隠匿のリスクを避けるためには公正証書遺言を作成することになります。

  5. (5)遺贈寄付について

    お一人で親族のおられない方は、内縁の配偶者や長男の嫁などの親族ではなく公的な機関や慈善団体に自分の財産を残したい方もおられるのではないでしょうか?

    その場合「遺贈寄付」をおすすめします。

    遺贈寄付とは遺言によって財産を寄付することです。寄付の相手は会社や財団法人などの法人でもかまいませんし、国境なき医師団や国連児童基金(ユニセフ)などでもかまいません。

    こうした慈善団体では経費が足りずに常時遺贈寄付を募っているので、関心のある方は調べてみましょう。

    ただし子どもなどの相続人がいる場合、慈善団体に多額の寄付を行う遺言が発見されると心情的にもいろいろ問題があるので、できれば生前に「寄付をしたいと考えている」という思いを伝えておくと良いでしょう。生前に言いにくければ、遺言にその思いをしたためておきましょう。

  6. (6)弁護士に相談するメリット

    遺贈をお考えであれば、一度弁護士に相談してみてください。

    弁護士であれば、ケースに応じてトラブルにつながりにくい遺贈方法をアドバイスしますし、公正証書遺言の作成をサポートできます。
    遺贈によって受贈者と相続人がトラブルにならないよう、また確実に相続手続きが行われるよう、弁護士を遺言執行者として指定することも可能です。弁護士が遺言執行者になっていたら、相続開始後の所有権移転登記などもスムーズに行えます。

5、まとめ

遺贈を利用すると今あなたが所有者となっている財産について、希望通りに親族やその他の方、団体に受け継がせることが可能となります。
ベリーベストグループには弁護士も税理士も在籍しており、あなたの望む遺贈や死因贈与などの方法をアドバイスし、サポートいたします。遺贈に関心をお持ちであれば、ぜひとも一度、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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