遺産相続コラム

特別縁故者の要件とは│認められないケースや財産分与を受ける流れ

2023年11月02日
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特別縁故者の要件とは│認められないケースや財産分与を受ける流れ

亡くなった方(被相続人)に相続人が誰もいない場合、その方の遺産はどうなってしまうのだろうかと疑問に思っている方もいるでしょう。ひとりも相続人がいない方の遺産は、最終的に国のものになります。

しかし、特別縁故者と認められれば、遺産の全部または一部をもらうことが可能です。相続人には含まれない内縁の配偶者、いとこ、介護人なども、特別縁故者として財産分与を受けられる可能性があります。

本コラムでは、特別縁故者の要件や財産分与を受けるときの流れなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、特別縁故者とは

まず、特別縁故者とはどのようなものなのか、その概要を解説します。

  1. (1)特別縁故者とはどういうものか

    特別縁故者とは、相続人がいない場合に、被相続人と一定の関係にあったことを理由として、特別に被相続人の財産を取得できる人のことです。

    被相続人の遺言があれば遺言で指定された人が、遺言がなければ法定相続人が、遺産を相続します。しかし、遺言がなく、法定相続人もいない場合、遺産を相続する人が誰もいない状態になってしまいます。

    このようなケースは、最終的に国庫に財産が帰属することになりますが、「被相続人の財産は、被相続人と特別に親しかった人などによって取得されるのが望ましい」という考えから認められているものが、特別縁故者の制度です。

  2. (2)特別縁故者として財産分与を受ける際には相続税に注意!

    特別縁故者が被相続人の財産を受け取るとき、「遺贈」により取得されるものとみなされます。そのため、引き継いだ財産は相続税の課税対象となり、財産分与があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行わなければなりません。

    また、通常の遺産相続であれば適用される控除などは適用外となり、相続税額の負担が増える可能性があります。注意点の詳細は、以下をご確認ください。

    ① 相続税の基礎控除が限られている
    相続税は「3000万円+600万円×相続人の数」が基礎控除として認められていますが、特別縁故者への財産分与がなされるケースでは、相続人は誰もいない状態となります。
    そのため、特別縁故者は、3000万円の基礎控除を受けられるのみです。

    ② 各種控除の適用外
    特別縁故者が財産を取得するとき、法定相続人に対して適用される各種控除が適用されません。適用対象外となる控除には、小規模宅地等の特例・配偶者控除・未成年者控除・障害者控除が挙げられます。

    ③ 相続税の2割加算が適用される
    特別縁故者として財産分与を受けるとき、相続税が課税される場合は、相続税の2割加算が適用されます。

2、特別縁故者と認められる要件と認められないケース

ここからは、特別縁故者と認められる要件と認められないケースを説明します。

  1. (1)特別縁故者と認められるための3要件

    特別縁故者と認められるためには、以下の3要件のいずれかを満たさなければなりません。

    ① 被相続人と生計を同じくしていた者
    被相続人と生計を同じくしていた人は、特別縁故者として認められます。たとえば、被相続人と籍は入れていないものの、事実上夫婦として生活していた内縁の配偶者、同一の世帯に属して生活行動をしていた「いとこ」などです。

    ② 被相続人の療養看護に努めた者
    被相続人の療養看護に努めた人も、特別縁故者として認められます。具体的には、被相続人と一緒に生活はしていないものの、被相続人の生活の世話や療養看護をしていた人がこれにあたります。
    ただし、介護士、看護師、家政婦などは業務として療養看護を行っているため、報酬に見合ったサービスを提供していただけでは、特別縁故者と認められません。

    ③ その他被相続人と特別の縁故があった者
    ①および②と同程度に、被相続人と密接な交流があり、被相続人としても「当該人物に財産を分け与えたい」と考えられるような特別な関係にあったといえる人は、特別縁故者にあたります。
    地方公共団体、宗教団体、学校法人、福祉法人なども特別縁故者になれる可能性があります。たとえば、被相続人が経営者として設立から深くかかわっていた団体や法人などがこれにあたります。

    上記いずれの要件も満たさない人は、特別縁故者とは認められません

  2. (2)特別縁故者とは認められないケース

    特別縁故者として認められる要件のいずれかに該当していたとしても、以下のケースでは特別縁故者としての財産分与を受けることはできません。被相続人の財産は、相続債権者および受遺者への弁済にあてられた後、最終的に国庫に帰属することになります。

    ① 相続人の存在が明らかになった
    特別縁故者への財産分与は、被相続人に相続人が誰もいない場合に認められる制度です。相続人が誰もいないと思って相続財産清算人(旧名称:相続財産管理人)の選任申し立てを行ったところ、後から相続人の存在が判明するケースもあります。
    そのような場合、当該相続人が相続放棄をしない限り、特別縁故者には財産分与を求める権利はありません

    ② 相続債権者・受遺者への弁済により相続財産がなくなった
    特別縁故者への財産分与は、相続債権者および受遺者への弁済を行った後で、なお相続財産に余りがあるときに認められます。相続債権者および受遺者への弁済により相続財産がなくなってしまった場合、特別縁故者が財産分与を求めることはできません。

    ③ 裁判所が財産分与を認めなかった
    特別縁故者への財産分与の審判の申し立てをすると、裁判所が財産分与を認めるかどうかを判断します。特別縁故者であると認められても、被相続人との関係性によっては、全相続財産の分与までは認められず、一部だけしか認められないこともあるケースにご留意ください。

3、特別縁故者が財産分与を受けるための流れ

特別縁故者が財産分与を受けるためには、どのような手続きが必要になるのか、特別縁故者が財産分与を受けるための流れについて説明します。

  1. (1)相続財産清算人の選任申し立て

    特別縁故者が財産分与を受けるためには、まずは家庭裁判所に相続財産清算人の選任申し立てをしなければなりません。特別縁故者は、申し立て権者である利害関係人に含まれますので、自ら申し立てをすることができます。

  2. (2)相続財産清算人の選任および相続人捜索の公告

    相続財産清算人の選任申し立て後、裁判所は、相続財産清算人を選任します。そして、家庭裁判所が相続財産清算人を選任した場合、家庭裁判所が遅滞なく、選任した旨および相続人であることを主張するように公告をします。この公告期間は6か月です。
    相続財産清算人は、法定相続人の捜索、相続財産の調査・管理、相続債権者・受遺者への弁済などの役割を担う立場にある人です。裁判所の管轄内に法律事務所を有する弁護士の中から選任されるのが一般的です。

  3. (3)債権者・受遺者に対する申し出の公告

    相続財産清算人の選任後、相続財産清算人は、相続債権者および受遺者に対して一定期間内に請求の申し出(債権の届け出)をするように、官報に公告を出します。公告期間は2か月以上の期間とされています。

  4. (4)相続財産の清算・債務の弁済

    相続財産清算人は、申し出のあった債権者および受遺者に対して、被相続人の相続財産の中から弁済を行います。
    弁済に必要な現金がないときは、不動産などの資産を売却するなどして、資金を捻出します。

  5. (5)相続人不存在の確定

    相続人捜索の公告期間内に、相続人であることの申し出がない場合は、相続人不存在(相続人が誰もいないこと)が確定します。

  6. (6)特別縁故者への財産分与審判の申し立て

    相続人の不存在確定から3か月以内に、特別縁故者は、家庭裁判所に対して、財産分与の申し立てをすることができます。裁判所の審理の結果、特別縁故者であると認められれば、相続財産の全部または一部の分与を受けることが可能です。

  7. (7)相続財産の国庫帰属

    特別縁故者への財産分与を行っても、まだ相続財産に余りがある場合には、最終的に相続財産清算人により国庫に帰属させる手続きがとられます。

4、特別縁故者の財産分与に関する裁判例

特別縁故者への財産分与が認められた裁判例と、認められなかった裁判例をひとつずつ紹介します。

  1. (1)特別縁故者への財産分与が認められた裁判例(東京高裁平成26年5月21日決定)

    この事案は、被相続人のいとこから特別縁故者への財産分与の申し立てがなされたというものです。

    被相続人といとことの間には、以下のような関係性があったとされています。

    • 引きこもり状態になった被相続人を気にかけていた
    • 被相続人の父の葬儀を執り行った
    • 被相続人の安否確認のために、被相続人の自宅を訪問していた
    • 被相続人の自宅の修理や害虫駆除などを行った
    • 被相続人が亡くなった際の遺体発見に立ち会い、遺体の引き取りや葬儀も実施した

    裁判所は、いとこが上記のような関係性にあったことから特別縁故者であると認定して、いとこへの財産分与を認めました。

    ただし、被相続人といとこの関係は円滑な親族関係ではなく、訪問回数も多くはないことから、縁故の程度は濃密なものとはいえなかったとして、相続財産の一部(3億7000万円超の相続財産のうち300万円)の分与にとどまっています。

  2. (2)特別縁故者への財産分与が認められなかった裁判例(東京高裁平成25年4月8日決定)

    この事案は、生計を同じくしていた被相続人の内縁の夫から特別縁故者への財産分与の申し立てがなされたというものです。

    原審では、申立人が被相続人の遺言書を偽造して、すべての財産を自身に遺贈する内容の遺言書を作成しようとしたことを認定しました。同居して生計を同じくしていたとしても、相続財産を不法に奪取しようとするものは特別縁故者とは認められないとして、申立人からの申し立てを却下しています。

    申立人は、遺言書を偽造したとしても、被相続人には申立人に全部または相当額の遺産を遺贈する意思があったとして、抗告を行いました。

    裁判所は、申立人が遺言書を偽造したということは、被相続人には申立人に財産を遺贈する意思がなかったことを推認させるものだとして、申立人への財産分与を否定しました。

5、特別縁故者の申し立てで弁護士に相談するべき理由

特別縁故者としての財産分与をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)裁判所への申し立て手続きを任せることができる

    特別縁故者として財産分与を受けるには、家庭裁判所への相続財産清算人選任申し立てと特別縁故者への財産分与の申し立てが必要です。

    初めての方では、どのような書類を準備して、どのような流れで手続きを進めればよいかわからないことも多いと思います。そのような不安を抱えている方は、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。

    弁護士に相談することで、必要な手続きや流れについてのアドバイスを受けることができるだけでなく、依頼をすればすべての手続きを弁護士に任せることも可能です。
    特に、特別縁故者として財産分与を受けるには、ご自身が「特別縁故者」であることを裁判所に認めてもらわなければなりません。そのためには、弁護士のサポートが不可欠といえます。

  2. (2)ベリーベスト法律事務所では初回法律相談料が無料

    弁護士に相談したいと思っても、経済的な不安から弁護士への依頼をためらってしまう方も少なくありません。ベリーベスト法律事務所では、そのような不安を少しでも解消したいという思いから、初回法律相談60分を無料で対応しています(ご相談内容によっては一部有料となる場合があります)。

    相談したからといって、その場で依頼する必要はありません。少しでも手続きに不安や疑問がある場合には、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

    実際に弁護士に依頼した場合の費用については、ケース・バイ・ケースですが、相談時に詳しくご説明しますので、お気軽にご相談にお越しください。

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6、まとめ

特別縁故者であると認められれば、相続人以外の人であっても、被相続人の財産の全部または一部を譲り受けることが可能です。もしくは、遺言書で指定があれば、特別縁故者や相続人でなくとも、遺産を受け取れるケースもあります。

特別縁故者と認められる要件に該当するのかとお悩みの方や、遺産相続でお困りごとがある際には、弁護士にご相談ください。

ベリーベストグループには、弁護士だけでなく、税理士などの士業も在籍しています。特別縁故者に関する問題は相続税などの税金も関わってきますので、税理士とも密に連携し、遺産相続に関するワンストップサービスを提供しているベリーベストグループまでお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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