遺産相続コラム
異母兄弟・異父兄弟がいるとき、相手との面識がない・不仲であるなど、何かしらの問題を抱えている方は少なくありません。そのため、異母兄弟・異父兄弟がいる場合の遺産相続は、トラブル発生のリスクが高まります。
そもそも、亡くなった方(被相続人)の遺産について、異母兄弟や異父兄弟とどのように分け合えばよいのか、相続順位や相続分はどうなるのか、慣れない対応を進めるのに多くの疑問点もあるでしょう。
本コラムでは、異母兄弟・異父兄弟の相続に関して、民法のルールやトラブル例、注意点など、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
異母兄弟・異父兄弟が法定相続人になり得るのは、主に以下の2つのケースが考えられます。
まずは、それぞれのケースにおける、民法に従った相続権の有無と相続順位について解説します。
親が亡くなった場合、異母兄弟・異父兄弟は「子ども」として相続権を取得します(民法第887条第1項)。したがって、親の相続における異母兄弟・異父兄弟の相続順位は、第一順位となります。
ただし、異母兄弟・異父兄弟が被相続人の非嫡出子(=婚姻外で生まれた子ども)である場合、法律上の「子ども」としての身分を取得するためには、認知が必要です(民法第779条)。
認知の効力は、以下のいずれかの手続きによって発生します。
認知されていない異母兄弟・異父兄弟は、法律上、被相続人の子どもとしての身分がないため、相続権を一切有しません。
異母兄弟・異父兄弟のひとりが亡くなった場合、「兄弟姉妹」という立場で相続権を有します。この場合の相続順位は、第三順位です。
したがって、第一順位や第二順位である被相続人の子どもや直系尊属が存命中であれば、その相続人の相続権が優先され、兄弟は相続人にはなりません。
また、異母兄弟・異父兄弟が兄弟姉妹として相続権を得るためには、法律上の親を共通にしていることが必要です。
よって、被相続人の異母兄弟・異父兄弟が非嫡出子の場合、被相続人の親から認知を受けなければ、相続権を得ることができません。
異母兄弟・異父兄弟の相続分は、親の相続か兄弟姉妹の相続かで異なります。異母兄弟・異父兄弟の相続分がどのように計算されるのか、設例を見ていきましょう。
なお設例では、非嫡出子は認知がされているものとして計算します。
親が亡くなった場合の相続では、嫡出子・非嫡出子の区別を問わず、異母兄弟・異父兄弟の相続分は同等です。以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされていましたが、平成25年の法改正によって同等と改められました。
兄弟姉妹の相続では、被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹に比べて、異母兄弟・異父兄弟の相続分は半分(2分の1)になります(民法第900条第4号ただし書き)。
異母兄弟・異父兄弟がいる遺産相続では、以下のようなトラブルが発生することがあります。
被相続人の再婚の経緯などにより、異母兄弟・異父兄弟同士がお互いを快く思っていない場合、相続をきっかけにして、対立がより深刻化するケースがあります。また、不仲まではいかなくても単純に関係性が疎遠である場合においても、遺産分割協議を行うにあたり、対立が深刻化するリスクが高いと言えるでしょう。
できる限り深刻な対立を避け、スムーズかつ円満に遺産分割を行うためには、弁護士を通じて話し合うことをおすすめします。
どうしても対立が解消できない場合には、弁護士を代理人として遺産分割調停を申し立てましょう。
疎遠な異母兄弟・異父兄弟については、そもそも連絡先がわからないというケースもあります。しかし、遺産分割協議は、相続人全員が参加の上で行わなければなりません。
ひとりでも不参加の相続人がいると、遺産分割協議で取り決めた内容は無効となります。そのため、相続人である異母兄弟・異父兄弟の連絡先は、どうにかして突き止めることが必要です。
異母兄弟・異父兄弟の連絡先は、戸籍の附票を確認するとわかる場合があります。戸籍の附票には住所の変遷が記録されているので、最新の住所に連絡を取ってみましょう。
どうしても連絡が付かない場合には、不在者財産管理人の選任や失踪宣告を申し立てることが考えられます(民法第25条、第30条)。手続きの詳細については、「相続人と連絡が取れない場合、相続手続きはどのように進めればよい?」の記事をご参照ください。
異母兄弟・異父兄弟が非嫡出子で、親が認知をしないまま死亡した場合には、認知の訴えを提起する場合があります。認知の訴えが認められれば、異母兄弟・異父兄弟は相続権を得られるためです。
認知の訴えでは、嫡出子側と非嫡出子側の対立構造が鮮明化するため、慎重な対応が求められます。もし非嫡出子として認知の訴えを提起したい、異母兄弟・異父兄弟から認知の訴えを提起されたという場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
異母兄弟・異父兄弟に遺産を与えたくないとお考えの場合には、遺言書の作成をおすすめいたします。
遺言書の作成では、相続方法を具体的に指定することが可能です。相続人全員による別段の合意がない限り、相続人は原則として、遺言書のとおりに遺産を分けなければなりません。
嫡出子に与える遺産を増やす一方で、非嫡出子である異母兄弟・異父兄弟に与える遺産を減らすなど、遺言書では自由に相続分を指定することができます。ご自身の意思を相続へ反映するため、早い段階で遺言書の作成をご検討ください。
遺言書を作成するにあたっては、以下の2つのリスクに注意が必要です。
特に、異母兄弟、異父兄弟の相続分をゼロまたは極端に少なく指定する場合は、遺言の内容が遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求によるトラブルが発生する可能性が高くなります。
遺留分に関するトラブルのリスクを減らすためにも、遺言書の内容について、作成される際に弁護士へ相談することをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所には、相続トラブルの予防に長けた弁護士が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。
異母兄弟・異父兄弟がいる場合の遺産相続は、相続財産の分け方や死後認知などを巡って、トラブルが発生するリスクがあります。これらのリスクを予防・解決し、スムーズに相続手続きを完了するためには、弁護士に相談することがおすすめです。
ベリーベストグループには、遺産相続に関する知見・経験豊富な弁護士だけでなく、税理士や司法書士といった専門家も在籍しております。異父兄弟・異母兄弟との相続トラブルが心配な方は、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
当事務所の遺産相続専門チームの弁護士が親身になりながら、最適な形で相続が進むようにサポートいたします。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
被相続人(亡くなった方)が相続人の一部を優遇しており、生前贈与などをしていた場合、その相続人は「特別受益」が認められる可能性があります。
他の相続人に特別受益が認められた場合、ご自身の相続分が増える可能性があるため、生前贈与があったのかどうかなど、背景事情をきちんと調査することが大切です。
調べないままに遺産分割を進めてしまっても、後のトラブルを招くことになってしまうため、ご注意ください。
本コラムでは、生前贈与が特別受益に該当するための要件や、相続分の計算方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
父親が亡くなると「母の面倒は僕が全部みるから」などと言い出して、実家の不動産や現金・預金など、すべての遺産を長男が独り占めにしようとするケースがあります。
あるいは、面倒を見ていなかったのに「長男だから」という理由で、不公平な分配を主張してくるケースもあるでしょう。
このようなとき、「特定の相続人が遺産を独占する主張は、法的に通用するのだろうか」「親の遺産相続で財産を独り占めされたくない」などと考える方は少なくないはずです。
本コラムでは、親の遺産相続で長男が財産をすべて独り占めしようとするとき、将来的に想定されるリスクや注意点、相続トラブルの対処方法などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
交通事故や自然災害などにより家族を同時に複数名失ってしまった場合、亡くなった方(被相続人)の遺産はどのように相続すればよいのでしょうか。
交通事故などで誰が先に亡くなったのかがわからない場合には、「同時死亡の推定」が働き、同時に死亡したものと推定されます。同時死亡と推定されるか否かによって、遺産相続や相続税に大きな違いが生じますので、しっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、同時死亡の推定の考え方や具体的なケースについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。