遺産相続コラム
昨今の高齢化時代において、相続税対策が社会の関心を集めています。相続税は、なるべく支払いたくないし、発生するとしても低額に抑えたいと考える方も多いでしょう。節税対策は、正しい方法で計画的に行うと大きな効果が期待できます。
この記事では生前贈与や不動産、生命保険の活用といった代表的な相続税対策方法と、それぞれの注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説いたします。
まずは、相続税対策を行うときの、基本的な3つの考え方を理解しましょう。
相続税とは、相続が発生したときに遺産の評価額に応じて発生する税金です
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そこで遺産が少ないと相続税は減りますし、遺産の評価額が一定以下であれば相続税は発生しません。
また、税金には「控除」があります。控除とは、相続財産の価額や相続税額を下げることができる制度です。
そこで、遺産の評価額が高くても、控除を適用できれば相続税を下げることが可能です。
さらに、基本的に遺産の評価額が低いと相続税は下がりますが、遺産の評価方法には決まりがあります。そのルールを理解して評価額を減らしていけば、相続税を下げる対策につながります。
相続税対策方法としては、以下の3つの考え方があると考えましょう。
相続税対策として、まずは「相続財産を減らす方法」をご紹介します。相続財産を減らすとは言っても浪費すれば良いという意味ではありません。生前贈与によって、推定相続人等に先に財産を移転させておくことにより、相続財産を減らしておく対策方法です。
生前贈与とは、被相続人が生きている間に推定相続人等へと財産を贈与することです。
被相続人が生存している間に推定相続人に財産を贈与した場合は、その財産は相続財産とはならず、相続財産を減らす効果があります。ただし、相続開始前3年以内に相続人に贈与されたものは相続財産となるので注意が必要です。 相続税には基礎控除がありますが、生前贈与によって財産が基礎控除額以下になれば、相続税を0にすることも可能です。
生前贈与をすると「贈与税」がかかります。そこで、生前贈与によって相続税対策するときには、贈与税がかからないように行うことが重要です。
たとえば、贈与税の基礎控除を利用して生前贈与する「暦年贈与」という方法があります。
贈与税には、1年に110万円までの贈与であれば、贈与税がかからないという基礎控除があるので、その範囲内で毎年贈与を繰り返すのです。110万円は受贈者ごとに計算されるので、多くの子どもや孫に110万円ずつ生前贈与を繰り返していけば、多額の遺産について贈与税を課税されることなく贈与することが可能です。
生前贈与には、いろいろな方法があります。
暦年贈与だけではなく、最大2500万円までの贈与財産について贈与時に贈与税が課税されない相続時精算課税制度、親や祖父母から子どもや孫への教育資金の贈与が非課税になる教育資金贈与制度、配偶者間の居住用不動産の贈与が2000万円まで相続財産に加算されない配偶者控除制度など、さまざまです。ケースに応じた適切な方法を選択することにより、効果的に節税することが可能となります
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生前贈与による相続税対策をするときには「基本的に贈与税がかかる」ことに注意が必要です。贈与税の税率は高額なので、原則通り贈与税がかかってしまうと、相続税よりかえって高額になってしまうおそれがあるからです。生前贈与によって相続税対策をしたいなら、贈与税の控除額と税率を確認した上で贈与を行うこと必須です。自己判断で高額な贈与をすると、思ってもみなかった贈与税がかかる可能性もあります。
また、親が子ども名義で預貯金口座を作ってお金を貯めているだけでは「名義預金」とみなされて、贈与が否定されるケースもあります。生前贈与をするときには、贈与者と受贈者間で必ず贈与契約書を作成するなどして、確実な生前贈与を行うようにしましょう。
自分で行うのが不安な場合には、弁護士又は税理士にご相談ください。
次に、生命保険を活用して、相続税の控除枠を大きくする対策方法を説明します。
相続税対策として控除枠を大きくするために、生命保険を活用する方法が効果的です。生命保険の死亡保険金には、相続税の非課税の適用があるからです。
そもそも、生命保険の死亡保険金は、法律的には遺産の範囲に含まれません。ただし、税制においては、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。
死亡保険金にも、以下の通り非課税枠があります。
生きているうちに生命保険に加入して、推定相続人などを死亡保険金の受取人として指定しておくことにより、相続税を減らすことができるのです。
生命保険で相続税対策をするには、まずは高額な死亡保険金が支払われる生命保険に加入します。
契約方法としては、契約者と被保険者を被相続人、死亡保険金の受取人を推定相続人やその他の遺産を受け渡したい人を指定しておきます。
そして、生命保険の保険料を被相続人が支払い、被相続人の死亡後に死亡保険金が受取人に支払われ、相続税の申告の際に一定の額が非課税になる、 という流れになります。
生命保険を活用すると、単に相続税の非課税が適用されるだけではなく、以下のような効果が得られます。
① 遺産を減らせる
まず、生前に保険料を支払うことにより、遺産の額を減らすことができます。現金預貯金のまま持っているよりも、相続税の節税になります。
② 納税資金を準備できる
次に、死亡保険金を受け取ることにより、相続人が「納税資金」を準備できる効果があります。
相続税は基本的に現金で支払わなければならないので、相続財産に不動産が多いケースなどでは、相続人が支払えずに困ってしまうケースがあります。
高額な死亡保険金を受け取れば、それを納税に充てることができるので、スムーズに相続税を納税できます。
生命保険を活用するときには、誰を死亡保険金の受取人にするかが問題です。
死亡保険金は、基本的には遺産の範囲に入らないので、受取人の特有財産となります。すると、死亡保険金が高額な場合、他の相続人の反感を買うおそれもあります。そこで、遺言書によって、死亡保険金を受け取る相続人には他の遺産を渡さないようにするなど、なるべく相続人間の公平を保つ工夫もしておく方がトラブルを未然に防ぐという観点から有効であるといえるでしょう。
また、いったん死亡保険金受取人を指定しても、その後事情が変わって別の人に受け取らせたくなるケースも考えられます。そのようなときには、遺言書によって生命保険の受取人を変更することもできるので、覚えておくとよいでしょう。
保険商品の選び方にも注意が必要です。
養老保険や定期保険を利用すると、一定期間を経過すると死亡保険金が支払われなくなってしまうので、期間制限のない「終身保険」を選択して契約する必要があります。
相続税対策の3つ目としてお勧めできる方法が、不動産購入、賃貸や特例の活用によって相続財産の価値を下げる方法です。以下で、詳細を説明します。
不動産によって相続税対策を行う前提として、まず知識として持っていただきたいのは、不動産は現金や預金などと比べると「相続税の評価額が低い」 ということです。
相続税は「相続税評価額」を基準として計算されるので、評価額の低い遺産の方が税額は下がります。
そして、不動産は、現金や預貯金に比べると、相続税評価額が低くなります。
まず、土地を評価するときには「相続税路線価」という評価方法を使いますが、そうすると現金預貯金の8割程度の金額となります。
また、建物を評価するときには「固定資産税評価」という方法を使いますが、その場合は現金預貯金の7割程度の金額になります。
そこで、現金預貯金を持っているならば、不動産を購入するだけで相続税の節税になるのです。
また、不動産を賃貸すると、さらに相続税評価が下がります。賃貸されている不動産の場合「借地権割合」や「借家権割合」が差し引かれるからです。
さらに、宅地の場合には、一定の要件を満たせば、一定面積まで「小規模宅地の特例」という特例が適用されるので、50%または80%の大幅な評価額減となります。
このように、不動産には相続税評価額を減額する制度があるので、不動産を活用すると、かなり効果的に相続税対策を実現できるのです。
不動産によって相続税の節税対策する方法は、以下の通りです。
多額の現金や預貯金を持っているならば、まずは資産としての不動産を購入しましょう。賃貸マンションでも賃貸アパートでもかまいません。引き続いて賃貸経営すれば、それだけで相続税評価額が大きく下がって節税できます。
次に、遊休地を所有しているなら、その上に賃貸住宅やアパートなどの賃貸不動産を建てて、経営しましょう。これにより、相続税評価額から借地権割合や借家権割合が差し引かれて、土地の相続税評価を下げることができます。
不動産を購入すると、土地の場合、2割程度相続税評価額が下がりますし、建物の場合には3割程度下がります。
賃貸に出すと、一定程度相続税評価が下がる可能性があり、一定の要件を満たせば小規模宅地の特例を利用することができるため、 さらに5割や8割程度相続税評価額が下がります。
もともとの現金預貯金で持っているときと比べると、相続税評価額を抑えることができるケースもあり、大変効果的です。
現金や預貯金を不動産に代えてしまうと、換金が困難となるので、相続税の納税資金がなくなって、相続した家族が困ってしまう可能性があります。そこで、不動産を購入するにしても、納税資金は別途準備しておく必要があります。
また、賃貸マンションなどを買ったり建てたりして経営するとき、入居者が入らないと大きな損失が出て、相続税対策どころではなくなってしまいます。
効果的に相続税対策をするためには、良い物件を選定し、上手に賃貸経営するスキルが必要です。
多額の資産を有している高齢者の方などの場合、相続税対策が必須です。ただし、具体的に対策方法を検討するときには、相続人たちの遺産分割対策をも念頭に入れておくべきです。せっかく相続税対策を行っても、相続人の中で争いが生じてしまったら、意味がありません。
ベリーベストグループでは税理士のほか、相続問題に精通した弁護士も所属しておりますので、相続税対策から遺産分割を含めた相続問題についてワンストップで対応することが可能です。
初回相談料は60分無料(※ご相談内容によっては一部有料)となっておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
被相続人(亡くなった方)に配偶者がいる場合、不動産などは、とりあえず配偶者名義にする遺言書を作成したり、または遺産分割協議を行ったりするということは少なくありません。
しかし、被相続人の配偶者が高齢である場合を考えてみましょう。万が一その配偶者が亡くなると、次の相続人がすぐに二次相続をすることになります。二次相続とは、一次相続で相続人になった人が亡くなったときに発生する相続のことです。
法定相続人が子どもの場合、子どもには配偶者特別控除のような大きな控除が認められません。そのため、たとえば相続税上の不動産評価額が高い場合、多額の相続税が発生することがあります。
このような事態を防ぐためにも、あらかじめ二次相続の対策を行っておくことが大切です。
本コラムでは、二次相続対策をするべき理由や二次相続で損をしないための対策方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
生前贈与による相続対策を行う場合、贈与税や相続税の課税を検討することが必要です。
贈与税と相続税の課税を考える際、生前贈与への課税方式を「暦年課税」と「相続時精算課税」のいずれかから選択することになります。まとまった金額の贈与を行う場合などには、相続時精算課税制度を利用する方が有利になりやすいので、税理士に相談してシミュレーションをしてみましょう。
この記事では、相続時精算課税制度のメリット、注意点および必要な手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
遺産を相続したとき、財産総額が一定以上になっていると相続人は「相続税」を申告・納付しなければなりません。税額が大きくなると手元に残る遺産が減ってしまいますが、相続税は控除などを利用して節税できる可能性があります。
今回は、相続税の基本的な計算方法と控除の制度を、税理士法人ベリーベストの税理士が解説します。