遺産相続コラム

一人っ子の相続で気を付けるべきことは? 得する対策を弁護士が解説

2025年03月12日
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一人っ子の相続で気を付けるべきことは? 得する対策を弁護士が解説

両親の子どもが自分だけ(一人っ子)の場合、遺産相続のことで相談できる兄弟姉妹もおらず、不安に思う方は少なくありません。なかには、子ども一人だけなら遺産分割をする必要もなく、特に懸念点もないと考えている方もいるでしょう。

しかし実際のところ、相続税の計算においては、相続人の数が少ないほど不利になるケースがあります。また、親に借金がある場合には相続放棄をしない限り、その借金を背負うことになるなど、知らないと損する事柄もあることには注意が必要です。

本コラムでは、何かと不安な一人っ子の遺産相続について、注意点や今のうちから準備しておくべき相続対策などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。

1、一人っ子と兄弟姉妹がいる場合の相続の違い

  1. (1)一人っ子の相続

    一人っ子と兄弟姉妹がいる場合の相続の違いは、相続税の計算において基礎控除額が少ないということです。相続税の課税対象となるのは、相続財産とみなし相続財産(相続開始前3年以内の贈与財産や死亡保険金など、本来相続財産ではないが相続税法上相続財産とみなされるもの)の合計額から基礎控除額を差し引いた部分です。それがマイナスになる場合には、相続税は発生しません。

    基礎控除の額は、法定相続人の人数によって異なります。法定相続人の人数が多いほど基礎控除額も大きくなって有利になりますので、相続税額の面だけを見ると一人っ子の方が不利になります。

    もっとも、一人っ子の場合、最初に片方の親が亡くなったときに、相続財産をめぐって、親の配偶者ともめることはあっても、兄弟姉妹間で争いが生じることはなく、最終的にはご両親からの相続財産を全て独り占めできるというメリットがあるので、納税額が高くても、兄弟姉妹ともめたり、兄弟姉妹と相続財産を分ける必要はないという利点はあります。

    ここで注意すべきなのは、相続財産が不動産だけの場合です。
    両親が死亡して最終的に不動産を一人っ子が1人で取得したとしても、基礎控除が少ない分、相続税を負担しなればならなくなる確率は高くなります。そして、相続税は原則として現金で納付する必要があるので、相続対象となっている実家の土地や建物に住み続けたい場合、相続税を納付するための現金を調達する必要に迫られる場合があります。
    納付する現金が調達できなければ、相続税を不動産で物納するなり、相続した不動産を売却するしかありません。しかし、物納は優良物件しか認めてくれず、それだったら売った方がいいということになり、慌てて不動産を売却して安値で買いたたかれてしまうといったリスクもあります。

    ただ、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人の事業の用または居住の用に供されていた宅地等は、そのうち一定の面積までの部分について、相続財産の額として算入すべき価額を計算上減額する特例があります。これが「小規模宅地等の評価減の特例」です。この特例の適用を受ける場合には、相続税の申告をしなければなりません。

    今回、適用される要件のご説明は省略しますが、たとえば「居住用」としての要件を満たす宅地であれば、自宅の敷地の評価額を減額して相続税を計算することが可能です。

  2. (2)相続人がいないと財産は国庫帰属になる

    両親の財産を最終的にすべて相続した一人っ子が、結婚しておらず子どももいない、祖父母ももう亡くなっている状況では、まったく相続人がいないということになります。まったく相続人がいない場合、遺言によって誰かに贈与することもできますが、そういった遺言もなく、「特別縁故者」もいないというときには、遺産は国庫に帰属することになります。

    内閣府こども家庭庁が公表する「令和6年版 こども白書」のデータによると、50歳時の未婚割合(生涯未婚率)について、令和2年(2020年)は男性が28.25%、女性が17.81%となっています。つまり、男性の約4人に1人、女性の約6人に1人は独身ということです。

    生涯未婚率は今後も上昇すると見込まれており、未婚の人が増えることによって、相続人(子ども)がいないというケースが増えていくと予想されます。

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2、一人っ子が遺産を相続するときにするべきこと

  1. (1)相続人を調査する(相続人の確定)

    親の相続人となる子どもは、自分以外にはいないと思っていても、被相続人(亡くなった方)の前婚の子どもや隠し子(婚外子)がいる可能性があります。そのため、本当に自分以外に相続人がいないかを確認することが必要です。

    前婚の子どもや認知されている婚外子がいる場合、他の相続人がその存在を知らなかったとしても、その子どもは相続人になります。また、被相続人が養子縁組をしていた場合、養子にも実子と同様に相続権があります。

    本当に一人っ子かどうかを確認するには、被相続人の戸籍をたどっていくしかありません。被相続人の死亡時から出生時まで遡って全ての戸籍を調べることで、他の子や養子の有無を確認することが可能です。

    他の子どもが見つかったときには、その子どもも法定相続人となるため、その子ども含めて遺産分割をする必要があります。

    参考:法定相続人の範囲について詳しく知りたい方はこちら

  2. (2)遺言書の調査・検認

    一人っ子であっても常に親の財産を相続できるわけではありません。
    被相続人が、「第三者に全部の財産を遺贈する」という遺言を残していたら、一人っ子でも遺留分侵害額の請求しかできません。そのため、遺言書が存在していないか、調査・確認をすることが必要です。

    遺言書には、通常の作成方式として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言とは、遺言者が手書きで作成する遺言のことです。公正証書遺言とは、公証人の前で遺言者が遺言書の内容を説明し、公証人が遺言書を作成するものになっています。秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書を封印して公証人に提出し、公証人が作成日などを記録する方式です。

    この3種類のうち、公正証書遺言を探すのは容易となっています。平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、全国どこの公証役場からでもデータベースで検索することができるからです。したがって、相続人の方がご自宅の近くの公証役場に行けば、簡単に調べることができます。

    自筆証書遺言と秘密証書遺言にはそのような検索システムがないので、被相続人が使っていたタンスや金庫、書斎の引き出しなどを探すしかありません。これらの場所から見つからなかった場合でも、銀行の貸金庫や弁護士などに預けている可能性があります。

    ただし、令和2年(2020年)7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が開始されました。こちらの制度を利用した場合、遺言書保管法11条が適用されるので検認も不要になります。この制度を遺言者が利用していれば、遺言者が亡くなった後、遺言書が保管されているか否かを相続人等が確認できることになります。

    封印された遺言書が発見された場合、これを家庭裁判所において、相続人またはその代理人の立ち会いのもと開封する必要があります。封印された遺言書は家庭裁判所で開封して検認が行われることになります。開封や検認の手続きに違反すると5万円以下の過料に処せられます。
    検認が終わると、裁判所で、遺言書の「検認済証明書」を発行してもらうことが可能です。相続に関する手続きで遺言書を使用する際には、この検認済証明書が必要となります。なお、公正証書遺言の場合は、開封手続きも検認も必要ありません。

  3. (3)故人の財産調査

    相続の手続きを始めるためには、相続税の申告に向けて、故人がどのような財産を持っていたかを調べる必要があります。また、故人に借金があり、相続放棄や限定承認をする場合は手続き期限があるため、すみやかに調査を行わなければなりません。

    必ず調査すべきものは、預貯金、有価証券、不動産、借金、保証についてです。預貯金や株などの有価証券は、故人宛ての郵便物なども手掛かりにしながら、取引がありそうな金融機関(銀行、証券会社など)に問い合わせます。不動産は、権利証や固定資産税の通知書から法務局や市町村に確認することになります。

    借金や保証の有無は、契約書など関連する書類がないか故人の自宅などを探してみましょう。特に、被相続人が連帯保証人になっていた場合、相続人の方が債権者から返済を請求される可能性があるので、注意が必要です。督促の郵便物はないか、預金から定期的に引き落とされているものはないかなどということにも注意しましょう。このほか、信用情報機関(JICC、CIC、KSC)に照会するという方法もあります。

    また、仕事の都合などで、相続人がご自分で調査するのは難しいという場合には、弁護士などに財産調査を依頼されることをおすすめいたします。専門家であれば、財産調査のノウハウを持っているため、正確な調査を期待できます。
    まずは遺産相続専門チームを編成しているベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  4. (4)一人っ子に遺産分割協議書は必要か?

    遺産分割協議書が必要かについては、一人っ子かどうかではなく、相続人が複数いるかどうかによります。つまり、一人っ子が親の不動産の相続登記をする場合であっても、相続人が2名(たとえば、死亡した親に配偶者がいる場合など)以上いる場合には、遺産分割協議書が必要になります。

    他方、相続人がひとりしかいない場合は、遺産分割協議書を作らなくても、相続する不動産について自分の名義に相続登記することができます。ただ、親の出生からの戸籍謄本を取って、相続人が自分ひとりであることを法務局に示す必要があります。

    参考:遺産分割協議とは

3、一人っ子が相続する場合に注意すべき「二次相続」とは

相続をする場合、「一次相続」だけでなく「二次相続」にも注意する必要があります。一次相続とは、両親のどちらかが亡くなった場合の1回目の相続のことです。二次相続とは、一次相続が終わった後にもうひとりの親が亡くなった場合の、2回目の相続のことです。

二次相続を考える必要がある理由は、一次相続で配偶者の相続分が大きいなどという事情がある場合、配偶者には配偶者控除などがあるので一時相続では相続税の負担は少ないのですが、二次相続で子どもに大きな負担が掛かる可能性があるからです。特に一人っ子の場合、最終的に両親の遺産をその一人っ子が全て相続することになってくるので、二次相続において、多額の相続税を賦課される可能性があります。


また、親子の仲が悪い場合は、相続で揉める可能性もあります。親が仲の悪い一人っ子に財産を残さないように、友人や団体に遺贈したりすることも考えられます。ただしその場合でも、相続人となる子どもには「遺留分」という、相続財産について最低限の取り分を主張できる権利があります。もし、遺留分を侵害するような遺贈がなされた場合などには、遺留分侵害額請求をすれば、その侵害された分のお金を取り戻すことができます。

ただ、遺留分侵害額請求権は金銭債権、すなわち、侵害された遺留分額の金銭の支払いを請求できるにすぎません。したがって、相続財産に不動産が含まれる場合に、その不動産の共有持分を取得するということはできません。

かつては、遺留分減殺請求という制度で、遺留分減殺請求権を行使すると、贈与・遺贈等がなされた財産すべてが共有状態になり、解決が困難なケースがよくありましたが、令和元年7月1日以降に発生した相続からは、遺留分侵害額の請求という制度になり、侵害された遺留分相当額の金銭を請求できるだけという、すっきりした制度に代わりました。

参考:遺留分とは

4、一人っ子の相続でするべき相続税対策

相続税対策にはいろいろなものがありますが、代表的なものとして、生前贈与があげられます。

生前贈与とは、文字通り、生前に財産を贈与することです。生前に財産を贈与することで、相続財産を減らすことができます。
税率自体は、相続税より贈与税のほうが高く設定されていますが、贈与の場合、年間110万円までは非課税なので、毎年110万円以内で贈与していければ、最終的にかなり税金を減らすことが可能です。

たとえば、相続人となるべき人に対してあらかじめ毎年100万円を10年間贈与しておけば、相続財産を1000万円減らすことができ、相続税の節税が期待できます。ただし、相続前3年間の贈与はみなし相続財産とされ、相続税がかかる点にはご留意ください。

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5、まとめ

兄弟姉妹がいない一人っ子の遺産相続でも、損をしないために知っておくべき事柄があります。遺産相続はいつ発生するかわからないものですが、事前に対策を講じることでトラブルを回避できる可能性が高まるため、親が生前のうちに話をしておくとよいでしょう。

遺産相続に関してお困りごとがある際には、遺産相続専門チームを編成するベリーベストまでお気軽にご相談ください

ベリーベストグループには弁護士だけでなく税理士も所属しておりますので、必要に応じて士業同士が連携し、法律問題はもちろん、相続税などの税金に関する対策も行うことが可能です。遺産相続に詳しい各士業がお客さまのご要望を伺いながら、最適な解決方法をご提案いたします。

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この記事の監修
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設立
2010年12月16日
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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