遺産相続コラム

遺産相続の手続きに期限はある? 注意が必要な手続きを弁護士が解説

2018年06月12日
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遺産相続の手続きに期限はある? 注意が必要な手続きを弁護士が解説

遺産相続をするときに必要な手続きの中には、期限が定められているものが多くあります。
期限を過ぎてしまうと、得られるはずの財産を取得できなくなったり、相続税について延滞税を支払わなければならなくなる場合もありますので、注意が必要です。

今回は、相続の流れと期限付きの手続きについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説していきます。

1、相続開始から相続税申告までの簡単な流れ

期限がある手続きについての検討をするにあたり、まずは全体の相続に関する流れを簡単に確認します。全体像を把握し、期限がある手続きがどの時点で出てくるかという点を意識することが大事です。

①被相続人の死亡
②死亡届、火葬、埋葬
③年金・健康保険の手続き
④遺言書の有無確認
⑤相続人調査
⑥相続財産調査
⑦相続放棄・限定承認申述 ※期限あり
⑧準確定申告 ※期限あり
⑨遺産分割協議(調停・審判)
⑩相続税申告および納付 ※期限あり
⑪相続財産の名義変更
⑫遺留分侵害額請求 ※期限あり

参考:遺産相続の流れに関する基礎知識

2、死亡届の提出から年金・健康保険の手続き(7日~14日以内)

死亡届は、亡くなったことを知った日から7日以内に、市区町村役場(本籍地か死亡地または届出人の住所地)に提出しなければなりません(国外で亡くなられた場合はその事実を知った日から3か月以内です)。
年金受給者が死亡した場合、年金事務所などにおいて受給停止の手続きを行います。手続き期限は、国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内です

届出が遅れ、亡くなられた日の翌日以降に年金を受け取った場合には、その分を後日返金しなければなりませんので注意しましょう。他方、国民年金・厚生年金を納めている方が亡くなった場合、遺族年金を受け取れる可能性もありますので、条件に該当するかどうかについての確認が必要です。

国民健康保険・社会保険においては、葬祭費などの名目で葬儀費用に関する給付金が支給されますので、被相続人が加入していた各保険の窓口に問い合わせ、健康保険証の返納手続を行うと共に確認してみましょう。国民健康保険証の返還は、死亡日から14日以内となっています。

3、マイナス財産が多い場合は相続放棄を検討(3か月以内)

遺産相続の際、期限がある手続きの中で代表的なものとして相続放棄手続があります。相続財産調査の結果、マイナス財産(借金など)が大きい場合には、相続放棄をすることができます。相続放棄とは、プラス財産とマイナス財産をあわせた一切の相続財産を受け継がないということです
たとえば、相続財産の中に借金があり債務超過(マイナス財産がプラス財産を上回っている状態)になっている場合、そのまま相続すると、相続人は自らの財産から被相続人の借金を返済しなければなりません。

このような結果を望まない場合には、相続放棄をして一切の財産を相続しないことが可能です。また、遺産分割協議のトラブルに巻き込まれたくない場合にも、相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所(被相続人の最終住所地の管轄)にその旨の申述をしなければなりません。この手続きに関する期限は、自己のために相続開始があったこと(被相続人が死亡したことおよび自己が法律上相続人となったこと)を知ったときから3か月以内とされています。この期間のことを「熟慮期間」といいます。この熟慮期間は、相続人ごとに別々に進行します。
相続財産の存在を全く知らなかったとしても、知らないことに過失がある場合には熟慮期間のカウントは開始してしまうため、注意しましょう。たとえば、被相続人宛に送られてきた郵便物の中に、債権者からの請求書が届いていることもあるので、しっかりと確認することが必要です。

また、原則としては、熟慮期間内に手続きを行わなければなりませんが、期間延長が認められる場合もあります。たとえば、相続財産が多岐にわたり全体を把握するまでに時間がかかる場合、熟慮期間伸長の申し立てをすることもできます。申し立てが認められれば、一定期間(事案により様々です)の熟慮期間延長が可能となります。
この延長は、各相続人について個別に認められるものですので、相続人のうち1人について期間延長が認められたとしても、他の相続人の熟慮期間には影響しませんので注意しましょう。

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4、相続財産がプラスかマイナスか不明な場合は限定承認を検討(3か月以内)

債務がどの程度あるかが不明なためプラス財産が残る可能性もある場合などには、「限定承認」という手続きを行うことがあります。
限定承認を行うと、相続人は相続したプラス財産の範囲内に限定して、マイナス財産である借金などの責任を負えばよいこととなります。そのため、相続財産の範囲内で被相続人の借金などを返済し、余りがあれば、プラス財産を相続することができます

ただ、限定承認の手続きは、相続人全員で行うことが必要とされている点において、上記3で紹介した相続放棄と異なります。相続人全員の足並みをそろえることが難しい場合も多いため、限定承認は相続放棄ほど利用されてはいませんが、このような手続きがあることは頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
限定承認手続についても、上記3の相続放棄手続と同様に自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月の熟慮期間の間にしなければなりませんので注意しましょう。

5、被相続人の所得税の準確定申告を行う(4か月以内)

被相続人の所得税についての確定申告については、被相続人に代わって相続人が行います。この場合の確定申告を「準確定申告」といいます。申告期限は、相続開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。申告だけではなく納付義務が生じることもあるので忘れないようにしましょう。
準確定申告は、必要な方とそうでない方がいますので、確認してもれのないように気をつけましょう。

6、遺産の分割を行う

遺産分割自体には、期限はありません。
ただ、後述7のとおり相続税の申告期限(10か月以内)内に遺産分割内容が決まらない場合には、一旦、法定相続分に基づいた申告をしなければならず、遺産分割後に修正申告が必要となるなどの手間がかかります。
また、遺産分割をせずに放置したまま、相続人が亡くなってさらに相続が開始してしまうと相続人が増えるなど、状況が複雑になります。そのため、相続開始後速やかに遺産分割を行うことが重要です。

速やかに遺産分割を行うために、まずは、遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書がある場合、公正証書以外の遺言書については、勝手に開封せず、家庭裁判所において遺言書の「検認」手続きを受けることが必要です。

遺言書がない場合(または、遺言書があっても相続人全員の協議で遺産分割をする合意ができた場合には)、相続人全員で話し合いをして、遺産をどのように分割するかについて決めなければなりません。これを「遺産分割協議」といいます。
話し合いがうまくいかないときには、裁判所の調停や審判を利用して進めていくことになります。遺産分割協議をした結果決まったことについては、必ず書面(遺産分割協議書)を作成しましょう

7、相続税の申告を行う(10か月以内)

相続税申告は、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内にしなければなりません。「申告期限=納税期限」ですので、その点も注意が必要です。

遺産分割協議が成立していない場合でも、相続税の申告は行う必要があります。その場合、法定相続分に基づいて相続したものとして税額を計算して、申告と納付をおこないます。そして、遺産分割後に実際に分割した額に基づいて、修正申告や更生の請求を行うこととなります。

相続税の申告を行わなかったり、申告していても誤りがあったりなどすると、延滞税や加算税などが課されます。ケースにより加算される率は異なりますが、期限内に申告および納付を済ませれば払わなくてもよかった税金を支払うことになってしまいますので、十分注意したいものです。

8、遺留分侵害額請求

●遺留分
遺留分とは、兄弟姉妹(とその代襲者)を除く法定相続人に認められる最低限の相続財産の取得割合のことをいいます。
被相続人が行った贈与や遺贈などにより遺留分が侵害された相続人は、受遺者、受贈者およびその包括承継人に対し、遺留分侵害額請求をすることで、その贈与や遺贈の効力を奪うことができます。たとえば、遺言で、『全ての相続財産を特定の相続人に相続させる』などと書かれていると、他の相続人が受け取れるはずであった法定相続分に応じた財産を受け取ることができなくなってしまいますので、他の相続人を保護するために遺留分が認められています。この遺留分の請求をすることを「遺留分侵害額請求」といいます。

●期限
遺留分侵害額請求は、相続開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内、相続開始から10年以内に行わなければなりません。

請求期限が迫っており、ご自身で期限内の請求をすることに不安がある場合には、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします

参考:遺留分侵害額請求についてもっと知りたい方はこちら

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9、手続きが遅れることによるデメリット

以上のとおり、遺産相続の場面においては、期限を意識することが重要となります。期限を過ぎてしまうことにより、大きな不利益が生じかねません。
相続放棄手続の期限を過ぎてしまうことで多額の借金を負うことになることがありますし、準確定申告・納付などが遅れると延滞税などが課税されることがあります。また、遺留分減殺請求期限を過ぎると、得られたはずの遺産を取得できなくなる場合があります。

10、まとめ

遺産分割手続は、早目にもれなく進めることが重要ですので、ご自身で手続きを進めることに不安がある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、様々なケースに応じた対応をしてくれるので安心です。

ベリーベスト法律事務所では、同グループの税理士と弁護士がチームとなってご依頼人をサポートするワンストップサービスを提供しています。
ご依頼人の方のご要望にあわせて、初回の無料相談の段階から税理士が同席するなど、ご負担を軽減しながら有利な解決に向けてサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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