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遺産相続コラム

遺言書を撤回する方法は? 3種の遺言について正しい手続きを解説

2023年07月04日
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遺言書を撤回する方法は? 3種の遺言について正しい手続きを解説

遺言書を過去に作成しているけれど、その後家族とけんかするなどして関係性が変わった場合、その遺言書の内容を撤回したいと思うこともあるはずです。そのような場合、正しい方法で手続きを行わないと、遺言書の撤回が無効となってしまう可能性があります。

遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれ手続きも異なるので、遺言の形式にしたがった処理が必要です。

本コラムでは、遺言撤回の方法に関して、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言といった遺言方式による違いや、他の形式に変えるときの注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、作成した遺言書の撤回方法

民法1022条では、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と規定しています。遺言を撤回することは自由ですが、遺言は厳格な方式に従って作成されなければならないものなので、撤回するときにも、その方式に従うことが必要とされるのです。生存中であれば、いつでも、遺言の方式に従って、遺言を撤回することができます。

  1. (1)自筆証書遺言

    自筆証書遺言とは、遺言者が全て自筆で作成する遺言書です(平成30年の相続法改正で、財産目録についてはワープロなどによる作成も認められるようになりました)。誰に知られることもなく、家などで簡単に作成できるため、もっとも利用しやすい遺言方法といえます。
    この自筆証書遺言を撤回するためには、自筆証書遺言の方式に従い、「○○年○○月○○日付自筆証書遺言を撤回する」ことを明記した部分を含む全文と、日付、署名を自書して印を押した書面を作成することになります。

    ただし、遺言の撤回は、遺言の方式に従ってさえいればよいので、自筆証書遺言を撤回するときには、必ず自筆証書遺言の方式によらなければならないということはありません。自筆証書遺言を、公正証書遺言の方式で撤回したり、秘密証書遺言の方式により撤回することも可能です。

    なお、自筆証書遺言については、部分的に加除を行うなどの変更をすることもできます。その場合には、変更したい箇所に加筆または削除を行い、変更した箇所に押印する必要があります。その上で、変更したところの欄外や遺言書末尾に、「○○頁○○行目○○字削除○○字加筆」などと記載して、署名することが必要です。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言とは、二人の証人が立ち会いの下、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成する遺言書です。作成された遺言書は、公証人役場で保管されます。公証人という法律実務の経験豊かな公務員(検察官や裁判官のOBの方がほとんどです。国から俸給を受けるのではなく、作成者から手数料を徴収しますが、公務員として公正・中立な立場から公正証書を作成します)が作成するので、もっとも信頼性が高い遺言形式になります。

    この場合にも、撤回するときには遺言の方式に従ってさえいればよいので、公正証書遺言の方式に従って、作成した公正証書遺言を撤回することが可能なのはもちろんですが、自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言の方式により撤回することも可能です。ただし、公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、紛失等の危険性がありますから、公正証書遺言を撤回するときには、公正証書遺言の方式によるのが無難です。
    なお、公正証書遺言については、すでに作成された公正証書を変更する手続はありません。内容を変えたいときには、新たに遺言書を作り直す必要があります。

  3. (3)秘密証書遺言

    秘密証書遺言とは、遺言者が自分で作成した遺言書を封入し、遺言書作成に用いた印章で封印したものを、公証役場において、二人以上の証人と公証人に提出し、自己の遺言書である旨と氏名・住所を申述するものです。そうすると、公証人が封紙に日付と申述を記載し、公証人・遺言者・証人が封紙に署名をします。署名以外はパソコンで作成しても構わないため、代筆してもらうことも可能です(ただし、遺言書への自署と捺印は必要です)。また、証人と公証人は遺言の内容は見ないので、遺言書があるという事実だけを確実にしつつ内容を秘密にすることができます。

    この場合も、同じ秘密証書遺言の方式で撤回することも、自筆証書遺言あるいは公正証書遺言の方式で撤回することも可能です。

    なお、秘密証書遺言についても、すでに作成された秘密証書遺言は封印されているわけですから、これを変更することはできません。この場合にも、どのような方式でも構いませんので作り直す必要があります。ただし、封を切ったうえで変更を加えたものが、自筆証書遺言としての方式をすべて充たしていれば、民法971条により自筆証書遺言としての効力を認められる可能性はあります。

    参考:遺言の基礎知識

  4. (4)撤回したとみなされる場合

    遺言の撤回についてご説明しましたが、実は、わざわざ撤回しなくても撤回したとみなされる場合があります。

    たとえば、2019年1月1日に、東京の不動産はAに相続させるという遺言書を作成し、2020年1月1日に、北海道の不動産はBに相続させるという遺言書を作成したとします。この2通の遺言書の内容は、全く抵触しませんから、遺言書は2通とも効力が認められ、Aは2019年の遺言書により東京の不動産を相続し、Bは2020年の遺言書により北海道の不動産を相続することになります。

    しかし、これが、2通の遺言書が対象としている不動産が同一のものだったとしたら、話は違います。2019年の遺言書である不動産をAに相続させるとしたのに、2020年の遺言書ではそれをBに相続させるとしたのであれば、明らかに2通の遺言書の内容は抵触します。
    このような場合には、民法1023条1項により、後の遺言で前の遺言が撤回されたとみなされるので、2019年の遺言は2020年の遺言により撤回されたとみなされ、Bが2020年の遺言により不動産を取得することになるのです。

    2019年に、ある不動産をAに相続させるという遺言書を作成したのに、2020年にその不動産をBに譲渡してしまった場合も全く同じです。

    民法1023条2項で、遺言と抵触する生前処分がなされた場合にも、遺言は撤回されたとみなされるので、Bにその不動産を譲渡するという生前処分が行われたときに、Aにその不動産を相続させるという2019年の遺言は撤回されたとみなされてしまいます。

2、撤回の際に別の遺言の形式に変えることはできる?

すでにご説明したとおり、遺言の方式を具備してさえいれば、どの形式の遺言によっても前の遺言を撤回することはできます。前の遺言と抵触する遺言をしたので、抵触する部分については撤回したとみなされる場合にも、それぞれの遺言の方式はどのようなものであっても構いません。

ただし、後に作成した遺言が、遺言の方式を充たさないときには、そもそも遺言としての効力が認められないため、撤回も認められないことになってしまいます。そうすると、前の遺言の効力が認められてしまいますので、遺言書を作成した後に、再び遺言書を自筆証書遺言の方式で作成するときには特に注意が必要です。

前に遺言を作成していたが、内容を変更した遺言書を作りたいというときには、前に作成した遺言書を持参のうえで、事情をよく話して公正証書遺言を公証人に作成してもらうか、専門家に相談したうえで、自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成するのがよいでしょう。

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3、遺言書を破棄したらどうなるか?

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、民法1024条により、破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます。ですから、遺言書を全部破棄したときには、全部撤回したものとみなされるので、撤回したという内容の遺言を作成する必要はありません。
逆に、遺言書がすでに受遺者の手許にあり、返してくれと言っても返してくれないようなときには、遺言者が遺言書を破棄することができないので、このときには前の遺言を撤回するという遺言を作成しなければなりません。
遺言の破棄方法は、次のとおりです。

  1. (1)自筆証書遺言の場合

    自筆証書遺言の場合、遺言書を確実に廃棄すれば完了です。シュレッダーにかけたり、燃やすなどして完全に復元できないようにするべきです。

    令和2年7月10日より開始された遺言書保管制度を利用する場合は、遺言者は遺言書が保管されている法務局に対して、いつでもその保管の撤回を申し出ることが可能です。その場合、本人が自ら法務局に出頭して行うことになります。保管の撤回を申し出ると、法務局から遺言書が遺言者本人に返還されます。返還されたら、その遺言書は確実に廃棄してください。

    なお、自筆証書遺言の場合には、書き換えがあってもなくても、相続人に見つけてもらわなければ意味がないので、遺言書がある旨は家族に伝えておくか、発見されやすいところに遺言書の場所を示すメモを残す、または前述した遺言書保管制度を利用するなどの対策をしておくことが重要です。

  2. (2)秘密証書遺言の場合

    秘密証書遺言の場合も同様です。完全に廃棄してしまえば完了です。保管者が返還に応じてくれないような場合には、その遺言は撤回するという内容の遺言書を作成する必要があります。

  3. (3)公正証書遺言の場合

    公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場で保管されます。手元にある遺言書は謄本にすぎないので、破棄しても遺言の効力には影響がありません。
    公正証書遺言を徹回するためには、新しい遺言を作成して撤回する必要があります。古い遺言の謄本を残しておくと、その古い遺言だけが唯一の遺言だと思われてしまう可能性があるので、破棄しておく方がよいでしょう。

    遺言書の原本は、公証役場に保管されているので、遺言者が廃棄することはできません。たとえ公証役場に依頼しても削除はされず一定期間保存されます。ちなみに、公正証書遺言の保存期間は原則として20年間とされていますが、公正証書遺言については遺言者が120歳くらいになるまで保存するという運用がなされているようです。

4、遺言の正しい撤回には、弁護士にチェックしてもらうことも重要

  1. (1)遺言の有効性

    遺言は、形式ごとに決められた要件があり、要件を満たさないと遺言の効力は認められません。また、遺言を書けば全て被相続人の意思通りになるかというと、必ずしもそうとは限りません。というのも、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」があり、遺留分を侵害するような遺言を書いた場合には、「遺留分侵害額請求」がなされる可能性があるからです。

    遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです。たとえば、父親が第三者に全財産を遺贈してしまうなどで、妻や子どもが1円も相続できないという事態にならないよう、最低限の相続分を保障したものです。妻や子どもは法定相続分の2分の1が遺留分として認められています。

    遺留分侵害額請求とは、遺留分権利者が、侵害された遺留分を受遺者から金銭的に取り戻すためにする請求です。先ほどの例のように第三者に全額遺贈されてしまった場合、妻や子どもはその半分の額について、金銭の支払いを求めることができます。

  2. (2)弁護士の活用

    遺言書には厳格な要件が課されているため、たったひとつ要件を欠いたために、遺言書全体が無効になってしまうこともあります。このようなことを避けるためには、弁護士に遺言書をチェックしてもらうことが有効です。
    弁護士に遺言書のチェックを依頼することで、要件の不備によって遺言書が無効になることを避け、真に遺言者が望んだ遺言を実現することができます。

    また、遺言書で財産の分け方について記載する場合、その財産にどれだけの価値があるのかを調査し、財産目録を作成する必要がありますが、それらの一切を弁護士へ依頼することも可能です。法定相続分にしたがって分けるのか、遺留分をどう考慮していくか、分けにくい不動産がある場合の対処法なども弁護士に相談すると良いでしょう。

    弁護士に依頼するとなると費用が心配になる方も多いと思いますが、相続人間で争いになれば、膨大な時間と費用がかかることになります。安心して相続させるための必要経費と考えてみれば決して高いものではないと思います。

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5、まとめ

本コラムでは、遺言書の撤回について解説しました。
遺言書は簡単に作成できるものと考えている方も多いと思いますが、実際には日付がないなどのささいなミスによって無効になるケースも少なくありません。

たとえ遺言を撤回するために、再度遺言書を作成したとしても、無効であれば意思に沿わない内容で相続されてしまう可能性があるのです。遺言の撤回を確実なものにするためには、公正証書遺言を作成するか、弁護士に相談して有効な遺言書を作成することが得策といえます。

ベリーベスト法律事務所では、遺言の作成や相続に関する相談を積極的に受付けております。遺言についてお悩みの方は、お気軽にご連絡ください。
遺産相続に関して知見のある弁護士が、親身になってサポートいたします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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