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相続欠格とは? 相続廃除との違いや相続手続きにおける注意点を解説します

2019年10月08日
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相続欠格とは? 相続廃除との違いや相続手続きにおける注意点を解説します

本来、法定相続人の立場であっても「相続欠格者」になると相続する資格がなくなります。どのような場合に相続欠格者となるのか、推定相続人の廃除とはどう違うのか、また相続人の中に相続欠格者がいると、どのようにして遺産相続手続を進めていけば良いのでしょうか?
以下で相続欠格について、弁護士が詳しく解説していきます。

1、相続欠格とは

まずは相続欠格とはどのようなことなのか、理解しておきましょう。

  1. (1)相続欠格とは?

    相続欠格とは、本来法定相続人であった方が一定の事情によって相続資格を失うことです。
    たとえば、子どもが親を殺した場合、親が殺されたのを知りながら告訴しなかった場合や、被相続人を脅迫して自分に有利な遺言を作成させる場合など、「相続人として認めるのが相当でない」場合に相続欠格となります。
    このような相続人にまで相続を認めると、遺産を早く、あるいは多く受け取るために被相続人や他の相続人を殺したり、遺言書を無理やり作成・撤回させたりして不正が横行する可能性が高まります。そこで、そういった非行をした相続人からは永久に相続の権利を奪い、適切な相続がなされるようにはかっています。
    相続欠格者となったら、当該相続人は、当然に、相続人としての資格を失うので遺産相続できません。遺産分割協議に参加することもできませんし、遺贈によって財産を受け取ることも許されません(なお、遺贈の場合は「受遺者」であって「相続人」ではありませんが、欠格事由について準用されています)。

  2. (2)相続欠格となるのはどのような場合か

    では、具体的にどのような場合に相続欠格者となるのでしょうか?
    民法は、相続欠格について以下のとおりに定めています(民法891条1~5号)。

    ●故意に被相続人や自分より相続順位が先又は同順位にある相続人を死亡させ、又は死亡させようとして刑に処せられたもの
    故意に被相続人や自分より相続順位が先又は同順位にある相続人を死亡させた場合や殺人未遂の場合で、刑事裁判となって有罪判決を受けて刑罰を適用されたら相続欠格者となります。実刑判決だけではなく執行猶予判決でも欠格事由です。ただし、刑事裁判で有罪にならなかったら相続欠格にはなりません。

    ●被相続人が殺害されたと知りながら、告訴、告発しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が相続人の配偶者や直系尊属(親、祖父母など)、直系卑属(子どもや孫)であった場合は、例外とする
    被相続人が殺されたと知りつつ捜査機関へ告訴・告発しなかった場合です。ただし、小さい子どもなどで分別がない場合や、加害者が相続人の配偶者や親・子どもなどの直系血族であった場合には告訴を期待できないので、相続欠格者になりません。

    ●詐欺や強迫によって、被相続人による遺言行為(作成・撤回・取消・変更)を妨げたもの
    遺言者である被相続人をだまし、あるいは脅迫して遺言書の作成、撤回や取消、内容の変更を妨害すると相続欠格事由となります。

    ●詐欺や強迫により、被相続人に遺言行為(作成・撤回・取消・変更)をさせたもの
    被相続人をだまし、あるいは脅迫して無理やり遺言書を作成させたり撤回・取り消しさせたり変更させたりした場合です。

    ●遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿したもの
    遺言書を偽造・変造したり破棄したり隠したりすると相続欠格事由となります。

  3. (3)相続欠格の効果

    相続欠格事由が発生すると、その相続人は、裁判手続きなどを要せず、当然に相続する資格を失います。相続発生前に相続欠格者となったら相続発生後に相続できませんし、相続発生後の相続欠格者となったら相続時に遡って資格を失うのでやはり財産を相続できません。遺産相続できないだけではなく遺留分も請求できません。
    ただし、相続欠格は本人にのみ効力を生じるので、代襲相続は発生します。たとえば子どもが親の遺言書を隠して相続欠格者となった場合でも、孫がいたら代襲者として祖父母の遺産を相続することが可能です。

  4. (4)相続欠格者に財産を残すことはできるのか?

    相続欠格者は受遺者にもなれないので、遺言書をもって財産を残すことも不可能です。ただし、生前贈与はできますし、生命保険金を受け取らせることも可能です。
    親として、相続欠格者となった子どもにどうしても財産を残したい場合には、こういった手段を利用できます。

  5. (5)相続欠格者がいる場合、相続手続はどうするのか?

    法定相続人が相続欠格者であるという事実は、戸籍に記載されません。したがって、相続手続き開始後に相続手続を行う場合には、不動産登記や金融機関の払い戻し手続きを行う際には、相続欠格者であることの立証がない限り、相続適格者として扱うケースが多いです。
    例えば、相続欠格者を除いて他の相続人のみで遺産分割協議を行って不動産登記手続きを行う場合には、添付書類として、相続欠格者が作成した相続欠格事由の存在することを認める書面や印鑑証明書等の添付が求められることもあります。

2、相続欠格と相続廃除との違い

相続欠格と似た制度として「推定相続人の廃除」があります。
なお、推定相続人とは「相続が開始した場合に相続人となるべき者」です。

  1. (1)推定相続人の廃除とは?

    推定相続人の廃除とは、相続人に著しい非行があるケースにおいて、被相続人が家庭裁判所に請求して相続人から相続資格を奪うことです。殺人や遺言書の破棄隠匿などの重大な違法行為まではなくても、被相続人を虐待していた場合などには相続する資格を認めるべき場面ではありません。そこで法律は、非行のある相続人については「被相続人の意思により」相続する資格を奪えることにしています。それが推定相続人廃除制度の目的です。

  2. (2)推定相続人の廃除ができるのはどのような場合か?

    推定相続人の廃除事由について、民法892条は「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」と定めています。
    まず、被相続人に暴力を振るったり精神的・経済的に虐待したり重大な侮辱を行ったりした場合には相続廃除できます。

    では、「その他の著しい非行行為」とは何なのでしょうか?一般的には、被相続人の財産を勝手に使い込んだり重大な犯罪行為をして被相続人に大きな迷惑をかけたり、多額の借金を作って被相続人に払わせたりした場合などがあてはまると考えられています。
    もっとも、これらの具体例に限らず、伝統的には、虐待、侮辱、著しい非行が相続的協同関係または家族的共同生活を破壊する程度のものであること要すると考えられています。

  3. (3)推定相続人の廃除の効果

    推定相続人の廃除をされた場合にも、相続欠格と同様その相続人は相続する資格を失います。相続発生後も一切の遺産を受け取れません。ただし、推定相続人として廃除されるのは本人だけなので、廃除された推定相続人に子どもがいたら代襲相続は発生します。代襲相続人となるものがいない場合には、次順位の推定相続人に相続する資格が移ります。たとえば、子どもが推定相続人の廃除をされた場合、孫がいなければ兄弟姉妹が相続人となって遺産分割します。
    また、推定相続人の廃除は取り消すことが可能です。この点、撤回が観念できない相続欠格とは取り扱いが異なります。

  4. (4)推定相続人の廃除の手続や注意点

    推定相続人の廃除をするための手続には「生前廃除」と「遺言廃除」があります。

    ●生前廃除
    生前廃除とは、被相続人が生前に自分で家庭裁判所に申し立てることにより、推定相続人の廃除をしてもらう方法です。自分の住所地の家庭裁判所に推定相続人の廃除の申立てをして認めてもらう必要があります。
    廃除請求が認められるには、虐待や重大な侮辱その他の非行行為を立証する必要があります。裁判所が「廃除するほどの事情ではない」と考えると廃除は認められません。
    審判で推定相続人の廃除が決定すると、裁判所から審判書が送られてきます。審判書と確定証明書を役所の戸籍係に届け出ると、廃除者の戸籍に「相続廃除」と記載してもらうことができて、手続きが完了します。

    ●遺言廃除
    遺言廃除は、遺言書によって推定相続人の廃除をすることです。
    遺言排除したいときには、まず遺言書を作成して特定の推定相続人を廃除すると定めます。また遺言排除を行うためには「遺言執行者」が必要なので、合わせて遺言執行者も定めておくのが良いでしょう。
    遺言によって推定相続人の廃除が定められていると、死亡後、遺言執行者が家庭裁判所へ推定相続人の廃除を申し立てて廃除の手続きを行います。遺言執行者が指定されていない場合、相続人などが遺言執行者の選任を申し立て、選任された遺言執行者が推定相続人の廃除を申し立てます。

    ●推定相続人の廃除の注意点
    推定相続人の廃除をするときには、注意点があります。それは、認められるための要件の判断が非常に厳しいことです。相続欠格とは違って相続人の意思によって排除が行われるので、恣意(しい)的に相続人が廃除されないよう「虐待」「侮辱」「非行」についての客観的な証明が要求されます。
    しかし、こうした家庭内の事情については、なかなか証拠を集めにくいものです。廃除を認めてもらいたいなら、計画的にしっかり証拠を集める必要があります。

    以上のように、相続欠格と推定相続人の廃除は全く異なります。大きな違いは「相続人の意思によって行うかどうか」です。相続欠格の場合、相続人の意思とは無関係に欠格者となって相続する資格を奪われますし、撤回や取り消しができません。
    推定相続人の廃除の場合には相続人の意思によって廃除できますし、後に取り消しも可能です。
    推定相続人の廃除について詳しく知りたい場合はこちらのコラムもご覧ください。

3、相続欠格者がいる場合の相続の流れや注意点とは

相続欠格者がいる場合、相続開始後にどのような流れで相続手続きを進めていけば良いのでしょうか?

  1. (1)本人が相続欠格を認めている場合

    本人が相続欠格者であると認めている場合には、まずは本人に「相続欠格の証明書(相続欠格者であることを認める書面)」を作成させて、相続欠格者であることを確定させます。その上でその相続人を外して遺産分割協議を進めます。相続欠格者に子どもがいる場合には、代襲相続によってその子どもを代わりに相続人として遺産分割協議を進めます。同順位の相続人が相続欠格者しかいない場合には、次順位の相続人に相続する資格が移るので、その方を入れて相続手続きを進めていきます。

  2. (2)本人が相続欠格を認めていない場合

    本人が相続欠格を認めていない場合には、まずは本人に相続欠格者であることを受け入れさせる必要があります。
    説得しても納得しないなら、相続欠格者であることを確認するための訴訟を起こさねばなりません。訴訟は他の相続人が原告となって、相続欠格者相手に提起します。
    訴訟内で相続欠格事由を立証できれば、裁判所が判決で相続欠格者であることの確認を認める判断をします。
    判決が確定したら、その後は他の相続人で遺産分割協議を行って遺産相続手続きを進めていくことが可能です。

4、まとめ

法定相続人の中に相続欠格者や推定相続人の廃除をされている人がいると、相続争いが起こる可能性が高くなります。被相続人を殺害して有罪になったなど明らかな欠格事由がある場合はともかく、遺言書を隠した、破棄した、被相続人を脅して遺言書を書き換えさせたなどの場合、本人は認めないケースが多数です。

トラブルをスムーズに解決するには専門家である弁護士が対応するのが効果的です。非行のある相続人がいて、相続欠格や推定相続人の廃除を考えている場合は、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。

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