遺産相続コラム

養子縁組の相続はどうなる? トラブルの事例や対処法を弁護士が解説

2024年04月22日
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養子縁組の相続はどうなる? トラブルの事例や対処法を弁護士が解説

養子縁組により養親と養子との間には、法律上の親子関係が生じますので、養子は、養親の遺産を相続する権利があります。

しかし、養子が遺産相続に参加する養子縁組の相続では、一般的な相続に比べてトラブルが生じるケースが多いといえます。このようなトラブルに対処するには、養子縁組の相続に関する基本事項を押さえておくことが大切です。

今回は、養子縁組の相続に関するトラブル事例やその対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、養子縁組による相続トラブルの事例

養子縁組をした後の相続では、どのようなトラブルが起こるのでしょうか。まずはその事例を紹介します。

  1. (1)実子の相続分が減ることで遺産分割協議がまとまらなくなった

    養子と実子との間では、お互いの相続分を分け合うことになりますので、養子が法定相続人になると実子の相続分が減ります。相続分が減ることに不満を持った実子から養子に対して嫌がらせをするなどのトラブルが生じることがあります。

  2. (2)実子の配偶者を養子縁組した後に実子が離婚した

    家業を継がせるなどの理由で、実子の配偶者と養子縁組をすることがあります。

    しかし、養子縁組をした後で、実子とその配偶者が離婚しても、養子縁組関係は自動的に解消されません。そのままにしておくと、元配偶者が相続人となり、トラブルが生じる可能性があります。

  3. (3)再婚相手の連れ子との養子縁組後に離婚した

    再婚相手に子どもがいた場合、再婚相手の連れ子との間で養子縁組をするケースが多いです。夫婦関係が円満であれば問題ありませんが、その後離婚をした場合に、養子縁組関係は自動的に解消されないため、その後の相続でトラブルが生じることがあります。

  4. (4)孫と養子縁組して相続税の2割加算が適用された

    養子縁組では、孫を養子にすることも可能です。しかし、孫を養子にする場合には、相続税の2割加算が適用されます。また、節税目的で行った養子縁組が、相続人の人数を減少させる結果となり、かえって相続税の負担を増やしてしまう可能性もあります。

  5. (5)養子縁組が節税のためであると判断されて養子の相続権が認められない

    養子縁組は、節税対策の手段としても用いられており、節税目的だったからといって養子縁組が直ちに無効になるわけではありません。

    しかし、養子縁組をするには、実質的な親子関係を創設する意思が必要になりますので、そのような意思がなくもっぱら節税目的しかない場合には、養子縁組が無効と判断されるおそれもあります。

2、養子縁組のケース別|法律で定められている相続割合を解説

1章では、養子縁組の相続でありうるトラブルをご紹介しました。では、そもそも養子縁組で相続した場合、法律では基本的にどのような割合で分ける、と定められているのでしょうか。

この章では、いくつか代表的な養子縁組の相続のケースで、誰が相続人になり、どのような割合で遺産を相続することになるのか、基本を解説します。

  1. (1)そもそも、法定相続人と法定相続分とは何か? 相続の基本

    法定相続人とは、民法で定められている、被相続人の財産を相続できる人のことです。
    法定相続分とは、民法で定められている、各相続人の相続割合のことです。

    被相続人が遺言書を残して亡くなった場合には、その遺言書に従って、遺産が分けられます。遺言書を残さずに亡くなった場合には、相続人が誰であるかを確定し、法定相続分に従って遺産を分けるのが、基本的な相続方法です。

    また、相続には遺留分というものが法律上定められています。相続時、法定相続人はいくばくか遺産がもらえるだろうという期待を持つことが多いと考えられています。しかし、遺言書に「1円も渡さない」と書かれていた場合には、法定相続人の期待は裏切られることになります。そこで民法は、法定相続人の遺産への期待を保護するため、仮に「遺言に1円も渡さない」と書かれていたとしても、最低限の割合は法定相続人にわたるよう、その割合を定めています。これが遺留分です。

    遺言により遺留分が侵害されていた場合には、遺留分侵害額請求権という権利を行使することで、侵害された遺留分を取り戻すことができます。

  2. (2)ケース別養子縁組の相続

    以下のケースで養子縁組の相続があった場合、各相続人の法定相続分はどのような割合になるのでしょうか。

    ① 被相続人に実子と養子のどちらもいる場合
    被相続人に実子と養子の両方がいる場合、実子および養子は、どちらも第1順位の相続人になります。実子と養子で法定相続分には差はありませんので、実子1人、養子1人という場合には、以下のような相続分になります。

    【被相続人の配偶者が存命の場合】
    ・被相続人の配偶者……2分の1
    ・実子(1人の場合)……4分の1
    ・養子(1人の場合)……4分の1

    【被相続人の配偶者なし・または既に死亡の場合】
    ・実子(1人の場合)……2分の1
    ・養子(1人の場合)……2分の1

    ② 被相続人の子が養子しかいない場合
    被相続人の子が養子しかいない場合には、養子が第1順位の相続人になります。養子が1人だった場合、その養子が被相続人のすべての遺産を相続します。

    【被相続人の配偶者が存命の場合】
    ・被相続人の配偶者……2分の1
    ・養子(1人の場合)……2分の1

    【被相続人の配偶者なし・または既に死亡の場合】
    ・養子(1人の場合)……すべて

    ③ 子どもの配偶者と養子縁組している場合
    被相続人が、被相続人の子どもの配偶者と養子縁組をしている場合には、被相続人の子どもとその配偶者が相続人になります。被相続人の子どもが離婚をしたとしても、離縁をしない限り養子縁組の効力には影響はありません

    【被相続人の配偶者が存命の場合】
    ・被相続人の配偶者……2分の1
    ・実子(1人の場合)……4分の1
    ・養子(実子の配偶者)……4分の1

    【被相続人の配偶者なし・または既に死亡の場合】
    ・実子(1人の場合)……2分の1
    ・養子(実子の配偶者)……2分の1

    ④ 孫と養子縁組している場合
    孫は、法定相続人ではありませんので、そのままでは被相続人が死亡したとしても遺産を相続することはできません。しかし、被相続人が孫と養子縁組をしている場合、孫は、実子と同様に第1順位の相続人になりますので、遺産を相続することができます。

    被相続人に子どもが複数いる場合には、子どもの人数で相続分を按分します。子ども2人、孫(養子)1人の相続における相続分は、以下のようになります。

    【被相続人の配偶者が存命の場合】
    ・被相続人の配偶者……2分の1
    ・実子A……6分の1
    ・実子B……6分の1
    ・養子(孫)……6分の1

    【被相続人の配偶者なし・または既に死亡の場合】
    ・実子A……3分の1
    ・実子B……3分の1
    ・養子(孫)……3分の1

    ⑤ 連れ子と養子縁組している場合
    再婚相手に子どもがいたとしても、再婚という事実だけでは、連れ子には相続権は認められません。しかし、再婚相手の連れ子と養子縁組をしている場合、連れ子は、実子と同様に第1順位の相続人になりますので、遺産を相続することができます。

    被相続人に前妻との間の子どもがいたとしても、養子と実子との間の相続分には変わりはありません。

3、養子縁組後の相続は、普通の相続とどこが違う?

2章では相続の基本を紹介しました。それでは、養子縁組後の相続は、普通の相続とは何が違うのでしょうか?

  1. (1)養子縁組でも、他の法定相続人と同様に相続人になれるところは、通常相続と変わらない

    養子縁組により、養親と養子との間には、法律上の親子関係が発生します。これにより養子は、養親の遺産を相続する権利を得るため、他の相続人と同様に養親(被相続人)が死亡した場合には、被相続人の遺産を相続することができます。

    また、実子と養子との間には、相続権および法定相続分に関して差はありませんので、実子と同様に第1順位の相続人になり、等しい割合で法定相続分を按分することになります。

  2. (2)普通養子縁組と特別養子縁組による相続の違い

    養子縁組には、
    ・普通養子縁組
    ・特別養子縁組
    の2種類の枠組みがあります。

    一般的に利用されているのは普通養子縁組であり、養親と養子との間で親子関係が生じるとともに実親との間の親子関係も維持されます。

    普通養子縁組

    ・普通養子縁組
    養親と養子との間に法律上の親子関係を成立させる制度
    • 年齢制限なし(養親より養子が年下であることが必須)
    • 養親は20歳以上でなければならない
    • 実親との親子関係を維持したまま、養親との親子関係が成立
    • 養親・実親が死亡したとき、いずれも相続人となる
    • 養親子の離縁可能

    これに対して、特別養子縁組では、実親との親子関係が解消されますので、養子は、生みの親が亡くなったときの相続人になることはできません。

    特別養子縁組

    ・特別養子縁組
    家庭に恵まれない子どもに、新たな養親子関係を築き、温かい家庭環境の中で健全な養育を図ることを目的とした制度
    • 養子となれるのは原則15歳未満
    • 養子縁組で養親との親子関係が成立し、実親との親子関係は終了
    • 養親が死亡したとき、相続人となる
    • 実親が死亡したとき、相続人とならない
    • 原則、養親子の離縁不可

    このように、普通養子縁組と特別養子縁組とでは、実親が亡くなった場合の相続権の有無に関して違いが生じます。

  3. (3)法定相続人に含めることができる養子には上限がある?

    実は、法定相続人に含めることができる養子には、上限が設けられていません。法律上は、何人でも養子にできます。

    しかし、相続税法上では、法定相続人となれる養子の人数に以下のような上限が設けられていますので注意が必要です。

    • 養親に実子がいる場合……1人まで
    • 養親に実子がいない場合……2人まで

4、養子縁組の相続トラブルに関する予防法・対処法

ここまで養子縁組の相続に関する基本知識をお伝えしました。しかし、どうしてもトラブルになってしまうこともあるでしょう。その場合、どうすればいいのでしょうか?本章では、予防法と解決方法を解説します。

  1. (1)養子縁組の解消を検討する

    養子縁組の相続トラブルを回避する方法のひとつとして、相続開始前に養子縁組を解消するという方法があります。

    相続税対策や養子との関係が円満である場合には、養子縁組の解消をする必要はありませんが、以下のようなケースでは、養子縁組の解消を検討することはあるでしょう。もっとも、離縁が可能かどうかは、事案によりますので、離縁するかどうか揉めた場合は弁護士にご相談されることをおすすめします。

    • 子どもの配偶者と養子縁組をしたものの、子どもが離婚した場合
    • 再婚相手との連れ子と養子縁組をしたものの、その後離婚した場合
    • 養子との関係が悪化した場合
  2. (2)家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

    養子縁組の相続でトラブルが生じてしまい、当事者同士の話し合いでは解決できないという場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てを行います。

    調停は、基本的には話し合いの手続きになりますが、裁判所の調停委員が当事者の間に入ってくれます。当事者同士で直接顔を合わせて話し合いをする必要はありません。そのため、養子縁組の相続トラブルであっても、スムーズに解決できる可能性があります。

  3. (3)弁護士に相談する

    養子縁組を解消するには、離縁という手続きをとることになります。お互いの合意があれば離縁届の記入・届け出をするだけで離縁は成立しますので、そこまで難しい手続きではありません。しかし、養子が離縁に応じてくれない場合には、調停や審判といった手続きが必要になりますので、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

    また、弁護士に依頼をすれば、遺産分割調停や審判になったとしても、話し合いの日に同行してもらうことができますので、安心して話し合いの場に臨むことができます。
    養子縁組の相続で少しでも不安がある場合には、相続開始前からできる対策もありますので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

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5、まとめ

養子は、実子と同様に法定相続人となる権利があります。また、養子縁組をしている場合の法定相続人や法定相続分は状況によって異なりますので、養子が相続人に含まれている場合には、弁護士に相談するのがおすすめです。

養子縁組による相続トラブルに巻き込まれてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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