遺産相続コラム
相続が発生し、相続財産を調べていたところ、多額の借金があったというケースは決して珍しいことではありません。
被相続人に借金がある場合は、遺産分割においてどのように分けることになるのでしょうか。また、相続人が借金を負担せずに済む方法はあるのでしょうか。
遺産分割における相続債務の取り扱われ方や、相続債務がある場合の注意点について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
相続において借金はどのように扱われるのでしょうか。まずは、相続債務の基本について解説します。
民法では、相続の効果を次のように規定しています。
【民法第896条】
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない
同条のいう「被相続人の財産に属した一切の権利義務」とは、被相続人の不動産や預貯金などの積極財産(プラスの財産)に限らず、借金や保証債務などの消極財産(マイナスの財産)も含まれます。
したがって、被相続人に借金がある場合には、相続人が借金返済の義務を負うことになります。なお葬儀費用については、相続開始後に発生するので、相続債務には含まれません。
相続される債務は、基本的に2つに分類されます。
● 可分債務
可分債務とは、数人の債務者がいる場合において、別段の意思表示がないときは、各債務者がそれぞれ等しい割合で履行する義務のことをいいます(民法第427条)。
たとえば、100万円の借金について債務者が二人いる場合には、債務者はそれぞれ50万円の返済義務を債権者に対して負うことになります。
● 不可分債務
不可分債務とは、数人の債務者がいる場合において、債務の目的がその性質上不可分である場合には、各債務者がそれぞれ債務の全てを履行する義務のことをいいます。
たとえば、数人の共有者がその共有物を譲渡した場合における所有権移転登記をする義務や目的物を引き渡す義務などがあります。
では、可分債務と不可分債務は、相続においてどのように分割することになるのでしょうか。
借金のような可分債務については、相続開始と同時に、法定相続分に従い各相続人に承継されます。相続開始とともに当然に分割されるため、遺産分割の対象にはならないと考えられています(最二小判昭和34年6月19日参照)。
積極財産は、遺産分割協議において合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分割することも可能です。しかし、消極財産である可分債務については、相続人らの合意によって勝手に分割されてしまうと、債権者に不利益が及ぶ可能性があります。
そのため、遺産分割協議において負担割合を相続分とは異なる内容で合意したとしても、債権者に主張することはできず、債権者から請求された場合には法定相続分の限りで支払わなければなりません。
不可分債務については、相続開始と同時に共同相続人の全員に帰属するため、各相続人が当該債務の全部について責任を負います。
債権者は、共同相続人の誰に対しても債務全体の履行を請求することができ、請求を受けた相続人は、債務全体について履行の責任を負うことになります。
なお、可分債務と同様に、不可分債務についても債権者の合意なく不可分債務の履行者を決めたとしても、債権者に対しては主張することはできません。
借金については、法定相続分に応じて各相続人に当然に分割されるとしても、そのままでは相続人間で不公平な結果となる場合もあります。
前述したように、債務は遺産分割協議の対象にならないとすれば、借金の割合を変更することも、相続しない方法もないのでしょうか。
遺産分割協議では、相続した債務を特定の相続人が引き継ぐことや割合を変えるといったことは、相続人全員が合意して、それらを決めた場合は、債務引受が成立し、相続人間では合意した内容が有効となります。
ただし、相続人間の合意に対外的な効力はありません。したがって、債権者から弁済を請求された場合は、本来の相続分に応じた債務を弁済する必要が生じます。
他方、債権者の合意を得た場合には、免責的債務引受がなされたといえるので、債権者との関係においても合意した内容が有効となり、特定の相続人は債務を免れることができます。
債権者が合意してくれるとは限りませんが、特定の相続人にのみ債務を負うことにする(債務引受をする)場合は、銀行などの債権者とも話し合いをしてみるとよいでしょう。
相続放棄とは、被相続人の積極財産と消極財産を含めた一切の権利義務を相続せずに、最初から相続人でなかったものとみなされる制度のことをいいます。
相続放棄をすることで、被相続人の債務を相続する必要はなくなりますので、被相続人の消極財産が積極財産を上回っている場合には、非常に有効な手段となります。ただし、相続放棄をしてしまうと、原則として取り消すことはできませんので、相続放棄するかどうかは慎重に判断するようにしてください。
相続放棄については、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。相続放棄できる期間が短いので、注意が必要です。
なお、被相続人の債務がどの程度あるかわからない場合には、限定承認をする方法もあります。限定承認とは、一切の権利義務を放棄するのではなく、相続人が相続によって得た財産を限度に、被相続人の債務を引き継ぐという制度です。限定承認の場合には、相続人単独ではできず、相続人全員が共同して行う必要があります。
相続人間で遺産の分割方法などの話し合いをすると、様々な理由から感情的になってしまい冷静な話し合いができない場合があります。財産に債務が含まれるようなケースでは、話し合いが複雑化するおそれがあるでしょう。
そのため、遺産相続にまつわるトラブルが発生しそうな場合や、話し合いがまとまらない場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
まず、弁護士は代理人として、他の相続人と交渉をすることができます。親族間だからこそ、立場や関係性によって、主張しづらいというケースも少なくありません。その点、弁護士が代理人となることで、権利を明確に主張することが可能になります。
また、遺産分割をするためには、遺産の調査と正確な遺産の評価は必要不可欠です。債務以外の財産についても把握できなければ、相続放棄をするべきなのかといったことも判断することはできません。これらを漏れなく行うためには、相続手続全般に関する知識と経験がなければ適切に行うことは非常に難しいでしょう。
弁護士に依頼すれば、これらの対応をすべて任せることができるほか、裁判所の手続を利用する場合には、全面的なサポートを得られる点も大きなメリットといえるでしょう。
相続財産は、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産も含まれています。安易に借金を相続してしまい後悔することのないように、相続財産に債務が含まれている場合は、早期に弁護士に相談するようにしましょう。
ベリーベスト法律事務所では、遺産相続の専門チームが中心となり、しっかりとお話を伺ったうえで解決までサポートします。遺産相続に関する初回のご相談は、基本的に60分まで無料(※)で承っておりますので、遺産相続に関するお悩みやトラブルを抱えている場合は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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参考:相続に関する弁護士費用
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被相続人(亡くなった方)が相続人の一部を優遇しており、生前贈与などをしていた場合、その相続人は「特別受益」が認められる可能性があります。
他の相続人に特別受益が認められた場合、ご自身の相続分が増える可能性があるため、生前贈与があったのかどうかなど、背景事情をきちんと調査することが大切です。
調べないままに遺産分割を進めてしまっても、後のトラブルを招くことになってしまうため、ご注意ください。
本コラムでは、生前贈与が特別受益に該当するための要件や、相続分の計算方法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
父親が亡くなると「母の面倒は僕が全部みるから」などと言い出して、実家の不動産や現金・預金など、すべての遺産を長男が独り占めにしようとするケースがあります。
あるいは、面倒を見ていなかったのに「長男だから」という理由で、不公平な分配を主張してくるケースもあるでしょう。
このようなとき、「特定の相続人が遺産を独占する主張は、法的に通用するのだろうか」「親の遺産相続で財産を独り占めされたくない」などと考える方は少なくないはずです。
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交通事故や自然災害などにより家族を同時に複数名失ってしまった場合、亡くなった方(被相続人)の遺産はどのように相続すればよいのでしょうか。
交通事故などで誰が先に亡くなったのかがわからない場合には、「同時死亡の推定」が働き、同時に死亡したものと推定されます。同時死亡と推定されるか否かによって、遺産相続や相続税に大きな違いが生じますので、しっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、同時死亡の推定の考え方や具体的なケースについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。