遺産相続コラム

相続するのは誰? 正しいお墓の相続方法と手続きを弁護士が解説

2021年11月02日
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相続するのは誰? 正しいお墓の相続方法と手続きを弁護士が解説

親が亡くなったらお墓を相続しなければならないのでしょうか。お墓の維持管理が大変で相続したくない場合、放棄はできるのでしょうか。

お墓の相続は一般の財産相続とは異なる方法で進める必要があります。
今回はお墓の相続問題でよくあるお悩みや「祭祀(さいし)承継者」となったときのお墓の管理方法、かかる費用、相続に必要な手続きなどについて、弁護士が解説します。

1、お墓の相続とは

お墓は一般の預金や不動産などの相続財産とは異なり、遺産分割の対象になりません
確かにお墓には経済的な価値もありますが、もともと家督相続(かとくそうぞく)の特権に属するものとして位置づけられていたことから、現在でも一般の相続財産ではなく「祭祀(さいし)財産」として扱われています。祭祀財産とは、先祖をまつるための資産です。

お墓以外では、たとえば、家系図、仏壇仏具、神棚、位牌などが典型的な祭祀財産です。ただし、純金製の仏具や骨董的仏像等が祭祀と無関係の資産として保有されていた場合には、相続財産として遺産分割の対象となる場合もあります。

また、お墓を維持するために必要とする土地の所有権や墓地使用権はお墓に準じて祭祀財産に含まれ、被相続人のご遺体やご遺骨は祭祀財産に準じて扱われるのが一般的です。

祭祀財産の継承人は、原則として遺産分割協議で決めるのではなく「祭祀承継者」を定めて引き継がせることになります
そのため、お墓などの祭祀財産を引き継ぐ場合、「相続」するのではなく「承継」するという表現が正しい表現になりますが、本コラムでは、便宜上、お墓を承継することを「お墓を相続する」という表現で解説いたします。

2、お墓は誰がどのように相続する?

  1. (1)祭祀承継者の決め方

    お墓を相続すべき「祭祀承継者」は、どのようにして決まるのでしょうか。
    祭祀承継者の選び方については、民法897条に定めがあります。祭祀承継者は、必ずしも被相続人と親族関係を有し、氏を同じくする者である必要はありません。

    民法897条
    • 1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
    • 2項 前項の本文において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

    ① 被相続人が指定する
    被相続人が遺言や生前行為によって祭祀承継者を指定していた場合、その指定内容は有効となります。生前行為によって指定する場合には、遺言のように書面で行う必要はなく、口頭による指定や黙示の意思表示でもよいと解されています。
    このように、一般の法定相続人の順位によっては決まらないので注意が必要です。

    ② 指定がない場合には慣習によって定める
    被相続人による祭祀承継者の指定がない場合、原則として被相続人の住所がある地域やその家族の慣習によって祭祀承継者を決め、お墓を相続させます。

    ③ 慣習でも決まらない場合、家庭裁判所が定める
    慣習によっても祭祀承継者を決められない場合には、家庭裁判所が調停又は審判によって祭祀承継者を指定します。
    家庭裁判所では、被相続人との血縁関係、親族関係、共同生活関係、祭祀承継の意思及び能力、職業、生活状況その他一切の事情を考慮しつつ、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情を最も強く持ち、他方、被相続人が生存していたのであれば、おそらく指定したであろう者を定めるべきとされています。
    また、祭祀承継者は原則として1人とすべきと考えられていますが、特別の事情がある場合には、2人以上の者が分割承継したり、共同承継したりすることも認められる場合があります。

  2. (2)お墓の相続に必要な手続き

    次にお墓の承継方法をみてみましょう。

    お墓を相続するには、墓地の管理者に対し承継の手続きを行う必要があります。
    祭祀承継者が決まったら、承継者となった人が墓地の管理者に連絡を入れて名義人の変更をする必要があります。その際、一般的に以下のような書類が必要ですが、墓地の管理者によって詳細な手続き方法が異なるので、個別の確認が必要です。

    • 名義変更の申請書
    • 墓地使用許可証、永代使用権承諾証などの書類
    • 承継原因(現在の名義人の死亡)がわかる資料(戸籍謄本等)
    • 承継者(名義変更申請者)の戸籍謄本や住民票
    • 承継者の印鑑登録証明書
    • 遺言書、親族による同意書など祭祀承継者であることを証明する書類

    また、お墓の承継の際には費用も発生しますので、金額等については、墓地の管理者に個別に確認しましょう。

    さらにお墓を相続すると管理費の支払いが必要となります。管理費の金額や支払い方法にはさまざまなパターンがあるので、相続するお墓でどのような支払い方法となっているのか確認が必要です。

  3. (3)お墓の相続にあたって、相続税はかかる?

    お墓を相続する際、相続税がかかるのではないかと心配になる方もおられますが、お墓には相続税がかかりません。
    相続税法12条2号には「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」が相続税の非課税財産となることが規定されています。そのため、仏壇仏具も含めて祭祀財産には基本的に相続税が課税されません。

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3、お墓を相続する祭祀承継者の役割、メリットやデメリットについて

祭祀承継者となってお墓を相続すると、どのようなことをしなければならないのでしょうか?祭祀承継者の役割やお墓を相続するメリットやデメリットについても確認しておきましょう。

  1. (1)祭祀承継者の主な役割

    祭祀承継者の主な役割は、以下の通りです。

    ① お墓や仏壇等の管理
    祭祀承継者は、祭祀を行う法的な義務を課されるわけではありませんが、実際には、お墓の維持管理を行う必要が生じることが多いでしょう。墓地の管理者に支払う管理費も負担する必要があります。

    ② ご遺骨の管理処分方法の決定、お墓の購入など
    祭祀承継者は、ご遺骨をどのように管理処分するか、どういったお墓を購入し、どこに建立するのか、既にあるお墓を移転するかどうかなどについて決めることができます。

    ③ 忌日法要等の実施
    四十九日などの忌日法要やお盆の法要などの行事は、祭祀承継者が主催して実施することが多いです。ただし、法律上、法要等をしなければならない義務はありません。
  2. (2)お墓を相続するメリット

    祭祀承継者となってお墓を相続すると、お墓や仏壇の管理方法などを自分の裁量で決定できるメリットがあります。
    親を大切に供養したい、仏壇を自宅に引き取りたい、お墓を自宅の近くに建てたいなどの希望があれば、自らが祭祀承継者となるメリットは大きくなるでしょう。

  3. (3)お墓を相続するデメリット

    お墓を相続すると、どうしても維持管理する手間と費用がかかります。法要は行わないとしても、最低限お墓の管理費を支払わねばならず、全く関与しないというわけにもいかないことが多いでしょう。
    また、お墓で災害や倒壊などのトラブルが発生したときには、祭祀承継者に連絡がくるため、対応を求められることになります。さらに、毎年管理費が発生する場合には、きちんと支払わないと債務不履行となり、督促を受ける可能性もあります。

4、お墓は相続放棄できる?

お墓を相続すると管理の手間や費用がかかるので、できれば相続したくないと思われる方もいるでしょう。その場合に、お墓を「相続放棄」することはできるのでしょうか?

  1. (1)お墓は「相続放棄」できない

    実はお墓は「相続放棄」の対象になりません。一般の不動産や負債などの相続財産については、家庭裁判所で相続放棄の申述をすれば、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことができます。しかし、お墓などの祭祀財産はそもそも相続財産とは異なるものと理解されているため、相続放棄の対象に含まれていないのです。

  2. (2)相続したくない場合の対処法

    お墓を相続したくない場合、以下のように対応することができます。

    ● 祭祀承継者が決まらない場合
    相続人同士でもめてしまい、誰を祭祀承継者とするべきか決まらないときには家庭裁判所に対して、祭祀承継者指定の調停又は審判を申し立てます。なお、家庭裁判所の手続きの中には最初に必ず調停をしなければならないものもありますが、祭祀承継者の指定の場合は、調停をせずに審判を申し立てることもできます。
    調停で話し合うことで祭祀承継者を決められる可能性がありますが、もし調停が不成立になった場合には家庭裁判所が審判により祭祀承継者を指定することになります。

    ● 今のお墓が不便な場合
    祭祀承継者となってもよいけれど、今のお墓の場所が遠くて不便だったり、古くなりすぎたりしているなどの事情があれば「改葬」を検討することもひとつの方法です。
    改葬とは、埋葬したご遺体を他のお墓に移したり、埋蔵又は収蔵した焼骨を他のお墓や納骨堂に移したりすることをいいます。自宅近くの便利な場所にお墓を移すことなどが可能です。

    ● 誰も相続したくない場合
    誰も相続したくない場合には、墓石を撤去し墓所を更地にして使用権を墓地の管理者に返還して「墓じまい」をする方法もあります。墓じまいの後は、永代供養や散骨を検討してみるとよいでしょう。

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5、相続トラブルは、弁護士に相談を

お墓を相続する際には、次のようなさまざまなトラブルが発生するものです。

  1. (1)誰がお墓を相続するかでもめてしまう

    複数の相続人がいる場合、誰が親のお墓を相続するかでもめるケースがよくあります。長男と二男がそれぞれ「自分がお墓を承継する。」と言って譲らず、祭祀承継者が決まらないと、墓地の管理者を困らせることになります。

  2. (2)誰もお墓を相続したくなくてもめてしまう

    相続人が都会に住んでいる場合など、田舎にあるお墓を相続したくないと考え、全員「お墓を引き継ぎたくない。」と言ってもめるケースもあります。
    相続人が互いにお墓の押し付け合いをして、いつまでも祭祀承継者が決まらないと、お墓の管理費が滞納状態となり、墓地の管理者との関係でもトラブルに発展してしまうことも少なくありません。

  3. (3)お墓の承継方法がきっかけで遺産分割トラブルが発生する

    当初は誰がお墓を相続するかということについてもめていたのに、それが遺産分割トラブルにまで発展してしまうケースもあります。
    たとえば、相続人の一人が「お墓を相続するから遺産分割において寄与分を認めてほしい。」、「お墓にも経済的な価値があるので、お墓を承継する相続人の遺産相続割合を減らすべきだ。」、「お墓を承継すると費用がかかるので、遺産から先取りさせてほしい。」などと言いだして、遺産分割協議もまとまらなくなってしまうのです。

  4. (4)相続トラブルを未然に防ぐなら弁護士に相談を

    将来、お墓の相続関係でトラブルを起こさないためには、被相続人が生きているうちに遺言書を作成してもらうことは有効な方法といえます。遺言書で祭祀承継者を指定してもらえれば、誰がお墓を引き継ぐかということでトラブルになることはありません。
    また、祭祀財産でない相続財産についても、遺言書できちんと財産の分け方が指定されていれば、遺産分割協議でもめるリスクも低減できます。

    遺言書を作成するなら、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。どのようなトラブルが予想されるのかという観点からトラブルの発生するリスクを最小限に抑えられる遺言書の作成に向けてアドバイスを得られますので、形式的にも内容的にも万全な遺言書を作成できるでしょう。

6、まとめ

ベリーベスト法律事務所では、遺産相続トラブル全般のご相談をお受けしています。
お墓の問題をきっかけとして、遺産相続に関するトラブルが生じてお困りの場合は、当事務所までご相談ください。弁護士が親身になってご事情をうかがい、解決に向けてサポートします。

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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