遺産相続コラム

土地を相続するとどうなる? 管理責任や問題になりうることを解説

2019年12月10日
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土地を相続するとどうなる? 管理責任や問題になりうることを解説

数多くの相続事例を振り返りますと、土地などの不動産が相続財産評価額に占める割合は高い傾向があります。

土地は現預金や有価証券などの金融資産と異なり個別性が強く、土地の種類や相続人の状況に応じて相続手続きに時間がかかりやすい資産です。また、土地を相続したあとは固定資産税や管理責任が発生するため、場合によってはコストだけかかる「負動産」を抱え込むリスクもあります。

したがって、土地を相続するときは相続後の利用方法をどうするか、そもそも相続するべきか、さまざまな検討が必要になってきます。

そこで、相続財産に土地が含まれている方が今後のために知っておくべきポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、土地を相続するにはどんな方法がある?

  1. (1)法律上、不動産と土地に違いはあるの? 

    不動産とは「土地およびその定着物」と定義されています(民法第86条)。
    ここでいう土地とは、「地表を境界点と境界線で区分した部分」と定義することができます。つまり、法律上誰かの「土地」とされるためには、隣接する所有者どうしで合意した境界点と境界線が明確にされている必要があります。

    土地の「定着物」とは「建物」と「立木」のように、継続的に土地に付着しているもののことをいいます。
    建物とは、「屋根があって壁で囲まれているもの」のことです。したがって、柱と屋根だけで構成されており壁がないガレージなどは建物ではなく「構築物」とされ、独立した不動産ということはできません。また、立木とは単純に土地に生えている樹木を指すわけではありません。将来的に建築材などとして取引することを目的に植林されており、立木に関する法律の規定に基づき登記または明認方法がなされているものをいいます。ただし、明認方法のなされた立木は土地とは別個に取引の対象となります。

    なお、土地の上に作られた庭や池、擁壁など土地からの分離が困難な物は土地に付属する構築物や工作物とされ、土地にも定着物にも該当しません。これらは、土地と一体として取引の対象となります。
    このように、土地とは定着物とともに不動産を構成する要素のひとつなのです。

  2. (2)相続の方法

    不動産を相続する方法には、共有相続、単独相続があります。ここでは、主に共有相続と単独相続の違いについてご説明します。

    ①共有相続
    共有相続とは、ひとつの土地や建物を相続人の数とそれぞれの相続割合に応じて、それぞれの持ち分で共同所有することです。一見すると円満かつ公平な相続の方法に思えますが、相続人の間でもっともトラブルになりやすいのが共有相続なのです。それゆえ、共有の土地及び土地の共有部分については売買等の取引の対象となることが困難で、取引価格が低くなる傾向があります。

    まず、民法では共有する土地や建物の売却や建て替えなどを行う場合、原則としてその土地や建物の共有者全員の合意が必要と定められています。相続税納税資金が不足していた際に物納する場合も同様で、共有者全員が物納要件を満たしたうえで共有者全員で物納しなければなりません。これらの取り決めについて共有者間で意見の食い違いが生じた場合、訴訟にまで発展する可能性があります。

    土地や建物の共有者が配偶者や子どもなど近しい家族なら、このような心配は少ないと考えるかもしれません。しかし、時が流れて相続発生時の共有者が死亡してその相続人が新たな共有者となり、共有による相続を繰り返すと、権利関係は複雑となっていきます。
    たとえば、叔父・叔母が甥・姪と不動産を共有するようなケースや、見知らぬ人が共有者になっていたということも想定されるのです。このようになると、所有権などをめぐってトラブルが生じる可能性は一層高くなります。
    さらに、共有相続は社会問題化している「所有者不明土地」の原因のひとつにもなっています。

    ②単独相続
    後々の子孫に生じる可能性があるトラブルを考慮すれば、少なくとも土地の共有相続は避け、単独相続とすることがおすすめです。複数の相続人がひとつの土地を単独相続し、単独所有権とするために分割することを、現物分割ともいいます。

    ただし、仮に均等の面積で分割するとしても、分割後のそれぞれの土地に道路への接面状況や高低差、日照状況などに違いが出ると、財産価値の観点から不平等な遺産分割になる可能性があります。このような場合は一般的に面積割合や金銭の償還で調整することになりますが、そもそも土地は強い個別性や周辺環境などの要因から、価額的に均等に分けることが難しい資産です。仮に面積割合で調整しようとしても、その過程で相続人それぞれに主張の食い違いが生じ、トラブルに発展してしまう可能性があるのです。

    また、周辺の環境から特定区画の土地を分割することで1坪当たりの価額が低くなる(面少減価)場合、あるいは分割したあとの土地の面積が建物を建築することすら不可能なほど極端に狭くなってしまうこともあり得ます。このような場合は、現物分割による単独相続をあきらめ、その土地を売却のうえ現金化し、相続人それぞれの相続割合で受け取ること(換価分割)を検討する必要があります。
    土地と異なり現金は客観性が高く公平に分けやすいことから、もっとも透明性が高い相続の方法といえます。

2、土地を相続したらしなければいけないこと

相続が発生すると、土地については以下のような一連の相続手続きを行わなければなりません。作成すべき書類についても、かなりの量になります。

  • 相続人および相続財産の調査・確定
  • 準確定申告(被相続人の所得税申告)
  • 相続人間で遺産分割協議(誰が、どの資産を、どの割合で相続するか決めること)
  • 遺産分割協議書の作成(相続登記をする場合には必要)
  • 遺産分割の諸手続き
  • 土地や建物の相続登記申請
  • 相続税の申告・納付(相続が発生したことを知った日の翌日から10か月以内)


ここでは、この一連の手続きのうち、土地を相続することが決まったあとに必要な固定資産税や相続税などの支払い、および相続登記による土地の名義変更についてご説明します。

  1. (1)固定資産税、相続税などの支払い

    固定資産税とは、土地などのような固定資産を所有している人に対して課される地方税です。地方税法第343条によりますと、固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)現在で市町村の固定資産課税台帳に土地や建物の所有者として登録されている人に対して課税されます。また、同条の規定に基づき登録されている人が賦課期日以前に死亡している場合は、その土地の現所有者に対して課税されることになります。つまり、被相続人が所有していた土地の固定資産税は、その土地を相続した人が支払う必要があるのです。

    また、相続税とは、被相続人から相続または遺贈(遺言の指定により財産の贈与を受けること)によって土地などの遺産を取得した人に対し、その取得した遺産の額に応じて課される国税です。相続税の納税義務者は、被相続人が死亡し相続が発生した日あるいは相続が発生したことを知った日の翌日から起算して10か月以内に税務署へ相続税を申告・納付する必要があります。

  2. (2)名義変更について

    相続を登記原因として土地の名義を被相続人から相続人に変更する手続きのことを、相続登記といいます。相続にかぎらず、土地や建物の登記申請は法務局に登記申請書など所定の書類を提出することで行います。
    令和元年現在、相続登記は法的に義務付けられているものではなく、相続登記をせず登記事項証明書の名義を被相続人のままで放置しておいたとしても、罰則などが科されるわけではありません(ただし、早ければ令和2年から義務化されます)。しかし、相続登記をせず被相続人の名義のままで放置しておくことは、以下のような問題につながる可能性があります。

    • 売却したいときに売れず、担保に入れることができない
    • 後年、所有者不明の土地になる
    • 代替わりが続くことで、共有している相続人が膨大な数になる
    • 地面師のような詐欺事件に巻き込まれる


    このような事態を防ぐためにも、土地の相続登記は確実に行っておくことをおすすめします。

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3、土地を手に入れたらどんな責任が生じる?

相続で土地を手に入れるということは、同時に所有者としてその土地に対する責任を負うことを意味します。固定資産税のような租税公課はもちろんのこと、第三者に対する損害賠償責任が生じることもあり得るのです。
たとえば、相続した土地ががけ地やのり面のように隣地と高低差がある土地であるにもかかわらず、擁壁の設置などがけ崩れ対策を十分に行っていなかったためがけ崩れが生じ隣地に損害が生じた場合、民法第717条の規定により土地所有者は被害者に対して損害賠償する責任を負うことになるのです。土地に池や井戸があり、転落防止のための対策を行っていない状態で誰かが落ちてケガをした場合も同様です。なお、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じた場合の土地所有者の責任は無過失責任とされています(民法第717条第1項)。

4、土地は一度相続したら、所有権を放棄できない

土地を相続したとしても、自身で住むわけでもなく何も収益を生み出さない土地であれば、固定資産税や管理費用の負担が生じるだけです。このような土地について、「負動産」という呼び方が定着しています。相続した土地がこのような負動産であれば、できるだけ早く第三者に売却したいところですが、負動産とよばれるような土地はなかなか買い手が付きにくいものです。無償で寄付する場合も受け手を見つけるのが困難でしょう。

売却も寄付もできないのであれば、土地の所有権を放棄すればよいという考え方もあるかもしれません。しかし、残念ながら現行の日本の法律では土地の所有権を放棄することができません。もっとも、土地そのものが消滅してしまえば所有権もなくなりますが、海に沈んだりするような、現実では考えにくい場合に限定されるでしょう。

したがって、相続により負動産のような土地を抱え込まないためには、遺産分割協議の段階で相続する可能性のある土地は負動産ではないか、ということを慎重に見極めておく必要があります。もし相続財産に負動産というべき土地があれば、最初から相続しなければよいだけです。この場合、相続放棄という手段も考えられます。しかし、相続放棄は民法第939条の規定にあるとおり最初から相続人そのものに該当しないことになるため、現預金など他の遺産も相続できなくなることに注意が必要です。

土地を相続するか、相続放棄をするかなどについて迷った場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。弁護士であれば、個々のケースにおける相続するメリット・デメリット、相続放棄をすることのメリット・デメリットなどについて、適切なアドバイスをすることが可能です。遺産分割などで他の相続人とトラブルになった際にも、あなたの代理人として対応ができます。弁護士に相談する場合、可能であれば、その土地の登記簿謄本や路線価に関する資料などの基本的な資料を持参すれば、効率的な相談ができるはずです。

参考:相続放棄と限定承認

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5、まとめ

上記の通り、土地は、相続することで固定資産税の支払いやその土地を管理する責任などが発生しますが、一度相続してしまうと土地を放棄することは現行法ではできません(なお、本年7月から、相続に関する民法の改正法が施行されていることから、改正法に対して注意することが必要な場合も生じてきます)。

これまでの説明を踏まえ、土地を相続するうえで悩み事がある場合は、まず弁護士に相談してみることをおすすめします。
相続問題に詳しい弁護士であれば、土地にかぎらず相続全般のアドバイスはもちろんのこと、トラブルが発生したときはあなたの代理人として解決に向けた交渉も依頼できます。
ベリーベスト法律事務所は、相続全般についてのご相談を承っております。
土地の相続についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考:相続法改正いつからどのように変わる? 7つのポイントを弁護士が解説

この記事の監修
ベリーベスト法律事務所 Verybest Law Offices
所在地
〒 106-0032 東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階 (東京オフィス)
設立
2010年12月16日
連絡先
[代表電話] 03-6234-1585
[ご相談窓口] 0120-152-063

※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。

URL
https://www.vbest.jp

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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