遺産相続コラム
任意後見人は、判断能力が不十分になった方の代理人として、本人の財産を管理するなどの役割を担います。
しかし実際には、任意後見人を監督する「任意後見監督人」の選任が行われない、任意後見契約内容の認識に食い違いがある、親族と対立するなど、トラブルが生じるケースが少なくありません。
本記事では、任意後見人について起こりがちな6つのトラブル事例や、トラブルの解決方法・予防策などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「任意後見人」とは、あらかじめ自分自身で選んでおき、実際に認知症などで判断能力が低下した本人のために財産の管理などを行う代理人のことを指します。
本人が自身の将来の判断能力低下に備えて、信頼できる人とあらかじめ「任意後見契約」を締結することで、将来、判断能力が不十分になった場合に、信頼できる人が任意後見人となり、自身の意思が尊重される仕組みとして、広く利用されています。
任意後見人の役割は本人の利益を守ることですが、中にはその役割が十分に機能せず、以下のようなトラブルが発生してしまうケースも見られます。
「任意後見監督人」は、任意後見人が正しく職務を行っているかチェックする役割を担います。任意後見人の就任には「任意後見監督人」の選任が必須です。
任意後見監督人の選任は、以下のいずれかの者が家庭裁判所に申し立てます。
特に本人の判断能力が大きく衰え、②③の親族もいない場合は、任意後見監督人選任の申立てを④の任意後見受任者が速やかに行うことが求められます。
しかし実際には、本人の判断能力が低下しても、任意後見監督人選任の申立てが行われないケースが散見されます。その場合、任意後見人が就任できず、本人の利益が害されてしまうおそれがあります。
任意後見監督人は3か月に1回程度の頻度で、任意後見人に対し事務処理状況についての報告を求めるほか、必要に応じて随時報告を求めます。任意後見監督人自身も、1年に1回は家庭裁判所に対し成年後見人の働き等について報告書を提出する必要があります。
しかし、任意後見人が任意後見監督人への報告を怠るケースも見られます。適切な報告がなされないと、任意後見監督人や家庭裁判所は、任意後見人が役割を果たしているかどうか確認することができません。
特に、親族などの一般の方が任意後見人となった場合、正確な財産目録や収支状況報告書の作成が大きな負担となり、悪意なく遅滞してしまうケースもあるでしょう。
任意後見人の権限の内容は、任意後見契約の定めによって決まります。しかし、任意後見契約に定められた権限の内容が不明確なケースも見受けられます。
契約内容が不明確だと本人と任意後見人の間で認識の食い違いが生じたり、運用上の不都合が生じたりする可能性があるため、「定期預金の解約」「有価証券の売却」など具体的に契約内容や範囲を明確に記載しておくことが必要です。
トラブル回避のためには、弁護士などによる契約内容のリーガルチェックが有効です。
任意後見人は、任意後見契約に定められた権限の範囲内で裁量を持ち、本人の利益になると思われる行動をとります。
その際、任意後見人の判断が、本人の親族の意見と対立するケースも少なくありません。
たとえば、バリアフリー改修や福祉用具の購入などの「本人の生活の質を上げるための財産の積極活用」か「財産の温存」かで、親族と意見が割れてしまい、トラブルに発展することがあります。
任意後見人は本人のために財産を管理する義務を負いますが、任意後見人自身や第三者のために財産を使い込んでしまうケースがまれに見られます。
任意後見人による財産の使い込みは、その義務に反して本人の利益を害する悪質な行為であり、「業務上横領罪」に該当し処罰の対象になる可能性があります。
任意後見監督人と任意後見人が互いに不信感を持っている状態では、任意後見人の職務が滞ってしまうおそれがあります。
特に、任意後見人が本人の親族・近親者の中から選ばれている場合は、個人的な感情が絡んで任意後見監督人に反発するケースがしばしば見られます。
不信感が高まり信頼関係が築けないと、適切な財産管理に支障をきたすおそれがあるので要注意です。
任意後見人に関するトラブルが発生したら、以下の方法などによって解決を図りましょう。
本人の判断能力が低下しているのに、まだ任意後見人が就任していない(任意後見監督人が選任されていない)場合は、速やかに任意後見監督人の選任を申し立てましょう。
本人の配偶者や四親等内の親族は、本人のために自ら任意後見監督人の選任を申し立てることができます。本人や任意後見受任者による申立てが期待できなくても、配偶者や四親等内の親族は申立権者として任意後見監督人の選任申立てをすることができますので、本人の周囲の方が申立権者に対応をご依頼ください。
任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は以下の者の請求により、任意後見人を解任することができます(任意後見契約に関する法律第8条)。
特に、
・任意後見人と親族が対立している場合
・任意後見人による財産の使い込みが疑われる場合
などは、任意後見監督人ともコミュニケーションをとりながら、任意後見人の解任申立てを検討しましょう。
任意後見人による財産の使い込みや、その他の不適切な行為によって本人が損害(損失)を被った場合には、任意後見人に対して不法行為に基づく損害賠償請求や不当利得に基づく返還請求を行うことができます。
任意後見人が損害賠償や不当利得返還に応じないときは、本人または代理人が裁判所に訴訟を提起して解決を図りましょう。
訴訟の提起に当たっては、相続トラブルの実績が豊富な弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
本人と任意後見人の間でトラブルが生じるリスクをできる限り防ぐためには、以下のような対策を講じておくとよいでしょう。
任意後見契約では、任意後見人の代理権の範囲を明確に定めることが大切です。
任意後見契約書を作成する際は、弁護士に案文の作成またはリーガルチェックを依頼することで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
任意後見制度は、以下の方法を併用すると、本人の利益をより効果的に守ることができます。
| 見守り契約 | 受任者(本人と見守り契約を結んだ人)が本人に対して定期的に面談や連絡を行い、生活状況や健康状態を確認しながら見守ります。 受任者が任意後見契約の開始時期を適切に見極められるため、任意後見監督人の選任申立てが行われない、任意後見人が不適切な行動をしているといったトラブルを防ぐことにつながります。 |
|---|---|
| 家族信託 | 信頼できる家族などに財産の管理を任せます。財産の所有権は、委託者(本人)から受託者(契約により本人から財産管理を任された人)へと移ります。 生前から利用可能で、特に重要な財産の活用方法をあらかじめ決められる点などが大きな特徴です。 |
| 財産管理等委任契約 | 信頼できる人に財産の管理を任せます。家族信託と似ていますが、財産の所有権は本人に残ります。 |
任意後見人の職務は任意後見監督人が監督しますが、それとは別に本人の側でも定期的に監査を実施すれば、任意後見人に対する監督を強化することができます。
定期的な監査を行うことが、不正を未然に防ぎ、将来的なトラブルの抑止につながります。
任意後見人には、本人の利益を守るための高い倫理観と適正な職務遂行能力が求められます。その役割と責務を担うのは、法律の知識と高度な職業倫理を持つ弁護士が適任です。
相続問題の実績が豊富な弁護士を任意後見受任者とすれば、将来本人の判断能力が低下した際にも、財産管理や親族間におけるトラブルを未然に防げる可能性が高くなるでしょう。
任意後見人に関するトラブルを防ぐためには、弁護士のアドバイスを受けながら準備や手続きを進めることをおすすめします。
弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
将来の認知症などに備えて任意後見制度を利用したい方や、任意後見人との間でトラブルが生じている方は、弁護士にご相談ください。
任意後見制度は、判断能力が低下した本人の利益を守るためのものです。しかし、任意後見人が適切に職務を行わない、任意後見人と親族の意見が対立するなどのトラブルが生じるケースもあります。
もし任意後見人との間でトラブルが生じたときは、任意後見人の解任や訴訟の提起などを検討しましょう。問題の深刻化を防ぐためには、早期に弁護士へ相談して対応を検討することが大切です。
ベリーベスト法律事務所は、任意後見制度に関するご相談を随時受け付けております。任意後見制度の利用を考えている方や、任意後見に関して発生したトラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
任意後見人は、判断能力が不十分になった方の代理人として、本人の財産を管理するなどの役割を担います。
しかし実際には、任意後見人を監督する「任意後見監督人」の選任が行われない、任意後見契約内容の認識に食い違いがある、親族と対立するなど、トラブルが生じるケースが少なくありません。
本記事では、任意後見人について起こりがちな6つのトラブル事例や、トラブルの解決方法・予防策などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
マンションを相続する際には、多くのステップを踏んで手続きを行う必要があります。相続税の納税義務が生じる可能性も高いでしょう。
適切に対応するためにも、弁護士や税理士のサポートを受けながら手続きを進めることをおすすめします。
本記事では、マンションの相続における期限や相続税の目安、遺産分割する際の手段などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
被相続人とは、法律上「亡くなった人」を指す言葉です。そして、亡くなった人(被相続人)の財産や権利を受け継ぐ立場の人を「相続人」といいます。
相続手続きでは、この「被相続人」と「相続人」の関係性や相続順位によって、誰がどのくらいの財産を受け取れるのかが決まります。遺産分割の際に、相続人同士でもめることも少なくありませんので、相続に関する基礎知識を身につけておくことが大切です。
今回は、被相続人や相続順位など、相続に関する基礎知識から、遺産相続を弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。