遺産相続コラム
マンションを相続する際には、多くのステップを踏んで手続きを行う必要があります。相続税の納税義務が生じる可能性も高いでしょう。
適切に対応するためにも、弁護士や税理士のサポートを受けながら手続きを進めることをおすすめします。
本記事では、マンションの相続における期限や相続税の目安、遺産分割する際の手段などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
マンションを相続すると、いくつかの手続きが必要になります。まずは、手続きの大まかな流れと、各種手続きの期限を把握しましょう。そのうえで、相続したマンションの主な活用例を確認していきます。
マンションを相続した場合の手続きの流れと、手続きを行う期限や時期の目安は、おおむね以下のとおりです。なお、相続発生とは、被相続人が亡くなったタイミングを指します。
| 概要 | 期限・時期の目安 | |
|---|---|---|
| 遺言書の確認 | 被相続人(亡くなった方)が遺言書を残しているかどうかを確認します。 遺品のほか、公証役場や法務局でも探します。 |
被相続人が亡くなった後、速やかに |
| 相続人と相続財産の調査 | 相続人と相続財産を調べて確定します。 相続人は戸籍謄本など、相続財産は預貯金・有価証券・不動産などに関する資料を確認して調べます。 |
相続発生後2~3か月以内 |
| 遺産分割協議(+調停・審判) | マンションを含めた遺産の分け方を、相続人全員で話し合います。 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用します。 |
相続発生後3~10か月以内 ※調停や審判に発展した場合は、長引く場合あり |
| 相続登記 | 遺産分割の内容に従って、マンションなど不動産の名義変更(登記)を申請します。 | 遺産分割の完了後、速やかに ※期限は遺産分割の成立後3年以内 |
| 相続税の申告・納付 | 税務署に対して相続税の申告を行い、その内容に従って相続税を納付します。 | 期限は相続の開始(被相続人が亡くなった日)を知った日の翌日から10か月以内 ※遺産分割が完了していない場合は、暫定的に法定相続分に従って相続税の申告・納付をする |
相続したマンションは、主に以下のように活用できます。
売却や賃貸をする場合は、その前に相続登記を行う必要があります。また、遺産分割が済んでいない場合、売却も賃貸も相続人全員の同意を得なければなりません。
相続人のうち誰かが新たに住む場合も、ほかの相続人の同意を得る必要があります。いずれにしても、早い段階で相続人同士での話し合いの機会を持つべきと言えます。
なお、マンションなどの遺産を相続したくない場合や、被相続人が多額の借金を負っていた場合には「相続放棄」をすることも考えられます。相続放棄をすれば、財産と債務(借金等)のいずれも相続しないことになり、遺産分割協議への参加が不要になります。
相続放棄をする場合は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述書などを提出する必要があるため、早期に動く必要があります。
令和6年4月1日から、不動産を相続した人に対して相続登記が義務づけられました。
原則として、不動産の所有権を取得したことを知った日(相続開始日)または遺産分割が成立した日から3年以内に、法務局に相続登記を申請しなければなりません。
売却や賃貸をする際には「所有権移転登記」が必要となります。遺産分割が完了したら、速やかに所有権移転登記を申請しましょう。なお、比較的簡易な「相続人申告登記」を先に利用することで、遺産分割協議が長引いても期限内に申請義務を履行できます。協議が長引きそうなときは利用を検討しましょう。
不動産の相続登記については、司法書士が専門家です。弁護士を通じて司法書士の紹介を受けることも可能です。相続登記の手順に不安がある方は、司法書士や弁護士に相談しましょう。
マンションを遺産分割する方法には、主に以下の4つがあります。
| 概要 | メリット | デメリット | |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産を物理的に分割します。マンションを取り壊したうえで、敷地だった土地を分筆する場合などが考えられます。 |
|
|
| 代償分割 | 一部の相続人が不動産を取得し、その代わりほかの相続人に対して代償金を支払います。 |
|
|
| 換価分割 | 不動産を売却し、その代金を相続人で分けます。 |
|
|
| 共有分割 | 不動産を複数の相続人が共有した状態のままとします。 |
|
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いずれの分割方法についても、原則としてあらかじめ遺産分割協議を成立させなければなりません。相続人同士の話し合いがスムーズにまとまらないときは、弁護士に相談してサポートを受けましょう。
資産価値が高いマンションを相続した場合は、相続税がかかる可能性があります。かかる相続税の目安について確認していきましょう。また、相続税以外にもマンション相続で発生する費用があるのかどうかについても、併せてご紹介します。
相続税は、課税対象財産の総額が基礎控除額を超えた場合に、その超過部分に対して課されます。相続税が課される場合は、税務署に相続税の申告を行う必要があります。
以下で相続税の課税対象となる財産を確認しましょう。
| 相続税の課税対象財産 |
|---|
| ① 被相続人が亡くなったときに所有していた財産(=相続財産) ※ただし、被相続人が亡くなったときに負担していた債務は、相続財産の額から控除されます。 ② 遺贈または死因贈与によって取得した財産 ③ みなし相続財産 ※被相続人の死亡をきっかけに支払われる死亡保険金や死亡退職金など ④ 以下の期間に受けた贈与
⑤ 相続時精算課税が適用される贈与 |
次に、相続税の基礎控除額を確認します。
| 相続税の基礎控除額 |
|---|
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
|
相続税の対象となる財産と基礎控除を確認できたら、相続税を計算します。
マンションを含めた課税対象財産額と、法定相続人の構成に応じた相続税の目安は以下のとおりです。
| (課税対象財産額が)5000万円 | 1億円 | 2億円 | |
|---|---|---|---|
| (相続人が) 配偶者のみ | 0円 ※配偶者の税額の軽減により免除 |
0円 ※配偶者の税額の軽減により免除 |
0円 ※配偶者の税額の軽減により免除 |
| 配偶者+子一人 | 80万円 | 770万円 | 3340万円 |
| 配偶者+子二人 | 20万円 | 630万円 | 2700万円 |
| 子一人のみ | 210万円 | 1220万円 | 4860万円 |
| 子二人のみ | 80万円 | 770万円 | 3340万円 |
※「配偶者+子一人」および「配偶者+子二人」については、配偶者の税額の軽減により配偶者分の相続税は免除
なお、相続税の計算方法は複雑ですので、正確な計算を行うためには税理士に依頼することをおすすめします。
マンションを相続する際には、相続税について「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」を利用できることがあります。それぞれの概要を紹介します。
| 概要 | |
|---|---|
| 配偶者の税額の軽減 | 配偶者が相続した課税対象財産のうち、以下のいずれか多い額までは非課税となります。
|
| 小規模宅地等の特例 | 被相続人が事業や居住のために使用していた土地について、相続税評価額を最大80%減額できます。 マンション敷地の共有持分にも適用できます。 |
これらの特例を活用して、相続税の軽減を図りましょう。
マンションを相続した場合は、相続税以外にも以下の費用がかかります。これらの費用がかかることも踏まえて、マンションを相続するか判断しましょう。
| 概要 | |
|---|---|
| 固定資産税 | マンションの1月1日時点での所有者に対して毎年課されます。税率は原則として、固定資産税評価額の1.4%です。 |
| 都市計画税 | マンションが都市計画区域内にある場合に、1月1日時点での所有者に対して毎年課されます。税率は原則として、固定資産税評価額の0.3%です。 |
| 管理費 | マンションの管理に必要な費用として、管理会社に対して支払います。 |
| 修繕積立金 | 定期的または臨時的な修繕に充てる費用として、管理会社に対して支払います。 |
相続税は、原則現金で一括納付しなければなりません。まとまったお金がなく、相続税の納税資金が準備できないときは、以下の方法を参考に対応しましょう。
| 概要 | |
|---|---|
| 金融機関からの借り入れ | 銀行や信用金庫などからお金を借りて相続税を支払います。融資審査に通ることが必要です。 |
| 延納 | 担保を提供したうえで、数年間に分けて年払いで相続税を納付します。利子税がかかります。 |
| 物納 | 延納も難しい場合に、金銭に代えてマンションなどの財産を相続税の納付に充てます。 |
相続税を納めること以外にも、マンション相続を行ううえで確認しておきたいことがあります。以下で4つの注意点をまとめました。
遺産分割が完了したら、自分が相続したマンションをいつでも売却したり、賃貸に出したりすることができます。ただし、売却や賃貸に出すには、先述のとおり相続登記(所有権移転登記)を完了しなければなりません。
なお、遺産分割が完了していない段階でも、相続人全員が同意すれば売却や賃貸に出すことは可能です
先述のとおり、相続税が発生する場合にはその申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から起算して10か月以内に完了する必要があります。期限に間に合うように申告・納付を行うため、税理士のサポートを受けることも検討しましょう。
10か月以内に遺産分割が終わらないときは、暫定的に法定相続分に従って相続税の申告・納付を行い、遺産分割が終わってから更正の請求や修正申告によって税額を修正することになります。
マンションを売却する際に利益(=譲渡所得)が発生した場合は、所得税(+復興特別所得税)と住民税が課されます。
譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
マンションの譲渡にかかる所得税と住民税の税率は、以下のとおりです。
| 所得税 | 住民税 | |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 ※譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年超 |
15% | 5% |
| 短期譲渡所得 ※譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下 |
30% | 9% |
※上記に加えて、基準所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税が課されます。
なおマンションを相続した場合は、譲渡所得の金額から最大3000万円を控除できる「空き家特例」は利用できない点にご注意ください。
マンションの相続には、手続きや活用方法、税金などについて幅広く専門的な知識が欠かせません。対応に迷ったら、適切な専門家に相談しましょう。
ベリーベストグループには、弁護士・税理士・司法書士などの士業が在籍しています。相続登記の手続きや相続税の計算、遺産分割協議のトラブル対応など、マンションの相続についてのお悩みに幅広く対応が可能です。マンションの相続に不安がある方は、お早めにベリーベスト法律事務所までご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
マンションを相続する際には、多くのステップを踏んで手続きを行う必要があります。相続税の納税義務が生じる可能性も高いでしょう。
適切に対応するためにも、弁護士や税理士のサポートを受けながら手続きを進めることをおすすめします。
本記事では、マンションの相続における期限や相続税の目安、遺産分割する際の手段などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
被相続人とは、法律上「亡くなった人」を指す言葉です。そして、亡くなった人(被相続人)の財産や権利を受け継ぐ立場の人を「相続人」といいます。
相続手続きでは、この「被相続人」と「相続人」の関係性や相続順位によって、誰がどのくらいの財産を受け取れるのかが決まります。遺産分割の際に、相続人同士でもめることも少なくありませんので、相続に関する基礎知識を身につけておくことが大切です。
今回は、被相続人や相続順位など、相続に関する基礎知識から、遺産相続を弁護士に相談するメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。
顔も知らない親族や弁護士から、思いがけず相続手続きへの協力を求められ、戸惑っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。長年連絡を取っていなかった親の相続であれば、なおさら驚きや不安を感じるのも当然です。
子どもである以上、たとえ親が離婚していたとしても、法律上は被相続人(亡くなった方)の相続人となるのが原則であるため、基本的に相続手続きの対象になります。ただし、亡くなった親の遺産がプラスの財産ばかりとは限らず、借金などのマイナスの財産を背負ってしまうリスクもあるため、相続するかどうかの判断は慎重に行うようにしましょう。
今回は、離婚した親でも子どもに相続権があるのか、相続分はどのくらいかといった基礎知識から、相続したくない場合の「相続放棄」の方法や期限などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。