遺産相続コラム
親子がともに相続人となる場合など、遺産分割に当たって特別代理人の選任が必要となるケースがあります。
特別代理人の選任が必要かどうか分からない場合や、選任申し立ての手続きについて不安な点がある場合は、弁護士のアドバイスを受けましょう。
本記事では特別代理人について、遺産相続の場面における役割や必要となるケース、選任申し立ての手続きなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「特別代理人」とは、例えば、遺産分割において法定相続人と本人(未成年者、被後見人等)がどちらも相続人である場合など、法定代理人と本人の利益が相反する場合等に選任されるものです。本来の代理人がその代理権を行使できない事情や代理権を行使することが不適切な事情等がある場合に、家庭裁判所によって選任されます。
ここでは特別代理人の役割と、特別代理人と成年後見人の違いについて解説します。
特別代理人の役割は、未成年者や成年被後見人といった被代理者と法定代理人との間に利益相反がある場合に、本来の代理人に代わって、特定の法律行為を代理することです。
原則として、未成年者や成年被後見人のための法律行為は法定代理人が行いますが、法定代理人自身の利益と、未成年者や成年被後見人の利益が対立する場面があります(=利益相反)。このような利益相反が生じ得る場面では、特別代理人を選任することが義務付けられています(民法第826条、第860条)。
なお、特別代理人は、法定代理人から独立した立場で、未成年者や成年被後見人の利益を守るために法律行為を行います。
成年後見人は、成年被後見人のために財産の管理や身上の監護などを行う人のことをいいます。成年被後見人は、精神上の障害により判断能力が低下し、一人で法律行為をすることが困難なため、成年後見人が代理で、預貯金などの財産管理や介護福祉サービスや医療などの契約等を行う身上監護を行います。解任等により終了されない限り続きます。
一方で、特別代理人は、遺産相続など特定の手続きに関して、成年後見人と成年被後見人の利益が相反する場合に、特別に裁判所から選任される代理人のことです。そのため、特別代理人が必要となった手続きが終わると、特別代理人の任務も終了します。
先述のとおり、親や成年後見人などの法定代理人が、利益相反のために代理権を行使するのが適切でないと思われる場合に、特別代理人を選任することが義務付けられています。
遺産相続では、具体的には以下に挙げるようなケースにおいて特別代理人の選任が必要です。
未成年者である子どもと、その親などの親権者がともに相続人となるケースはよくあります。
未成年者と親権者がともに相続人となる場合は、それぞれの利益が相反するため、未成年者のために特別代理人の選任が必要となります(民法第826条第1項)。
成年被後見人と成年後見人がともに相続人となるケースもあります。
成年被後見人と成年後見人がともに相続人となる場合、それぞれの利益が相反するため、原則、成年被後見人のために特別代理人の選任が必要です(民法第860条本文、第826条第1項)。
ただし例外的に、後見監督人がある場合は特別代理人の選任が不要となります(民法第860条但し書き)。この場合は、後見監督人が成年被後見人を代理して遺産分割に参加します(民法第851条第4号)。
未成年者である複数の子どもがともに相続人となる一方で、その親が同じであるケースも見られます。
この場合、子二人の法定代理人自身は相続人になりませんので、法定代理人と子らの間では利益相反はありません。しかしながら、複数の子どもの間で利益が相反します。この場合、うち一人の子については法定代理人がそのまま法定代理人として遺産分割できますが、その他の子どもについては特別代理人の選任が必要です(民法第826条第2項)。
では、特別代理人になれるのはどのような人なのでしょうか。ここでは特別代理人になれる人と選任方法について解説します。
特別代理人の要件として、特別な資格は設けられていません。そのため、基本的には誰でもなることができます。
実際には、本人(未成年者または成年被後見人)の親族や弁護士などの専門家が特別代理人に選任されるケースが多いです。
特別代理人を選任するのは家庭裁判所です。
家庭裁判所は、法定代理人の影響を受けにくく、本人の利益を守るために独立して行動できると思われる人を特別代理人に選任します。候補者を推薦することもできますが、推薦した人が必ず選任されるというわけではありません。
特別代理人を選任して遺産分割を行う際の手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。
家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる際には、以下の書類を準備する必要があります。
特別代理人選任の申立ては、本人(未成年者または成年被後見人)の住所地の家庭裁判所に対して行います。前掲の必要書類を家庭裁判所に提出しましょう。
申立てに当たっては、申立書に本人一人につき800円分の収入印紙を貼る必要があるほか、連絡用の郵便切手が数百円分程度、必要となります。
申し立てを受けた家庭裁判所において、特別代理人の選任の要否や、誰を特別代理人に選任するかについての審理が行われます。
家庭裁判所は、書面による照会や参与員による聴き取り、審問などの手続きを経て判断を行います。
家庭裁判所は、特別代理人の選任に関する判断および決定を「審判」という方式で行います。
審判の内容は、家庭裁判所から送達される審判書に記載されています。審判書は、特別代理人の資格を証明する書面として利用可能です。
裁判所から選任された特別代理人が参加して、遺産分割協議を進めます。相続人および特別代理人の間で合意がまとまったら、その内容を記載した遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を通じて遺産分割の方法を決めます。遺産分割調停・審判にも、特別代理人が参加することになります。
遺産分割をしようとする際に、特別代理人の選任が必要になりそうなときは、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士にご相談いただければ、特別代理人の選任の要否について確認するとともに、申立ての手続きを全面的に代行しますので、手続きの手間が大きく減ります。また、弁護士を特別代理人候補者としてご推薦いただくことも可能です。
特別代理人に関するご相談のほか、相続手続き全般についても、弁護士ならアドバイスすることができます。ご家庭の状況やご希望を踏まえながら、スムーズかつ適切な条件で遺産分割が完了できるように、親身になってサポートいたします。
特別代理人の選任申立てや、遺産分割に関するその他のお悩みについては、お早めに弁護士へご相談ください。
遺産分割など本人と法定代理人などの利益が相反する場合には、特別代理人の選任申立てが必要です。
特別代理人の選任は、家庭裁判所に対して申し立てますが、手続きについて分からないことがある方は、弁護士のサポートを受けましょう。弁護士には、遺産分割に関するその他の問題についても相談することができます。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。特別代理人について分からないことがある方や、遺産分割トラブルにお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
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しかし、他の相続人が「自分は長男だから」とすべての相続財産を得るような発言をした際に、「家督相続の制度は廃止されている」と訴えても、決着がつかないケースもあるでしょう。
本コラムでは、家督相続を主張してくる相続人への対処法や、現在の遺産相続の基本的なルールなどについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。