遺産相続コラム
遺産相続において、遺産分割調停が不成立となった場合には、自動的に遺産分割審判へと移行することになります(家事事件手続法 第272条第4項)。
遺産分割審判では、遺産分割調停とは異なる流れで手続きが行われます。ご自身にとって有利な審判結果を得るためには、審判手続きの特徴をふまえつつ、弁護士と協力して対応することが重要です。
本コラムでは、遺産分割調停が不成立となる場合の例や、その後に行われる遺産分割審判の手続きなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
「遺産分割調停」とは、相続人同士の遺産分割協議がまとまらない場合に、裁判官および調停委員の仲介によって遺産分割の合意を目指す手続きです。
調停は、家庭裁判所において、おおむね1か月から1か月半に1回程度の頻度で「調停期日」が開催されることで進行します。
各調停期日では、調停委員が各相続人の主張を公平に聴き取りながら、全相続人が納得できるような遺産分割の落としどころを探ります。
最終的に、調停案に全相続人が同意することができれば、遺産分割調停成立となり、その内容が調停調書に記載されることになります。
遺産分割調停の申立人、費用または申立書類等については、裁判所のWebページをご参照ください。
調停成立の見込みが立たなくなった場合には、遺産分割調停は不成立として打ち切られ、自動的に遺産分割審判へと移行します(家事事件手続法第272条第4項)。
遺産分割調停が不成立となる場合としては、主に以下のようなケースが挙げられます。
遺産分割に関して相続人同士のトラブルが特に起きやすいポイントが、不動産の分割方法です。
生まれ育った生家の物件や収益性の高い投資物件等を複数の相続人が取り合った結果、遺産分割協議や調停が不成立となってしまう事例は多々あります。
特に、相続財産の大半が不動産である場合には、不動産の分割方法を巡って相続人同士の対立が激化してしまうことが多いです。
遺産分割調停を成立させるためには、相続人全員の同意が必須となります。
もし相続人の一部が他の相続人の権利を無視して強硬な主張を行っている場合には、遺産分割調停は不成立となる可能性が高いでしょう。
遺産分割調停が成立するためには相続人全員が同意する必要がありますから、どんなに根拠のない主張をしているとしても、反対する相続人が1人でもいる限りは、遺産分割調停は成立しないためです。
あまりにも強硬な主張を頑固に維持している相続人がいる場合には、遺産分割審判へ移行することを予測しておきましょう。
遺産分割調停に全く参加しない相続人がいる状態では、遺産分割調停を成立させるための要件となる、相続人全員の同意を得ることはできません。
複数回にわたって調停期日の欠席が続くようであれば、遺産分割調停は早々に不成立として打ち切られて、遺産分割審判へと移行することになります。
遺産分割調停が不成立となった後に行われる「遺産分割審判」の手続きは、遺産分割調停とは全く異なる流れで進行します。
遺産分割審判は、遺産分割調停が不成立となり、結論が出ていない遺産分割問題について、裁判所が結論を出す手続きです。
遺産分割調停が不成立となった後、相続人同士の協議に差し戻してしまうと、遺産分割問題は一向に解決しません。
いつまでたっても遺産を活用できないとなると、当事者である相続人はもちろんのこと、社会にとっても不利益な状態になってしまいます。
そのため、遺産分割調停が不成立となった場合には、家庭裁判所が審判によって結論を示して、遺産分割問題を解決へと導くことになっているのです。
遺産分割調停は、相続人全員の同意が成立要件となっています。
これに対して、遺産分割審判の場合、相続人の同意は不要です。家庭裁判所が、客観的な立場から強制的に判断を行います。
遺産分割審判は、遺産分割問題を解決するための「最後のとりで」であるため、家庭裁判所による強制的な解決が図られるのです。
遺産分割審判は、大まかに以下の流れで進行します。
遺産分割調停から遺産分割審判へと移行する際には、審判手続きに特有の注意点として、次に挙げるポイントを理解しておきましょう。
相続人間の合意によって自由に遺産の分割方法を決められる遺産分割協議または遺産分割調停とは異なり、遺産分割審判では、家庭裁判所が客観的な立場から、公平に遺産分割方法を決定します。
審判の内容は基本的に法定相続分に依拠することになるため、法定相続分を超えて遺産を要求することは困難です。
特に、遺産額の大半を不動産が占めている場合、不動産を売却して代金を分割する「換価分割」が行われたり、共有になったりする場合があることにも注意しましょう。
遺産分割審判に対しては、訴訟の判決について認められている「控訴」や「上告」はできず、「即時抗告」のみが不服申立ての手段となります(家事事件手続法第85条第1項)。
即時抗告の期間は、審判が告知された日から2週間です(家事事件手続法第86条)。
審判の内容に不服がある場合には、審判の告知を受けた後、速やかに即時抗告を行いましょう。
即時抗告期間を経て遺産分割審判が確定した場合、審判の内容は相続人全員を拘束します。
もし、一部の相続人が審判の内容に従わずに名義変更や財産の引渡し等に応じない場合には、審判書を債務名義として、裁判所に強制執行を申し立てることができます(家事事件手続法第75条、民事執行法第22条第7号)。
強制執行の申立方法については、弁護士にご相談ください。
遺産分割審判で有利な結果を得られるかどうかは、家庭裁判所に対して、効果的な主張を行って、ご自身に有利な主張を認めてもらえるかにかかっています。
特別受益や寄与分等、ご自身の相続分を増やせるような事情が存在する場合には、その内容を書面にまとめて裁判所に提出しましょう。
その際、過去のお金の流れなどを丁寧に調査して、ご自身に有利な事情を漏れなく拾い上げることが重要になります。
家庭裁判所が審判内容を決定する際には、各相続人の主張について、客観的な証拠資料が存在するかどうかが重視されます。
特に、特別受益や寄与分、不動産の評価方法等について何らかの主張を行う際には、その主張を裏付ける証拠資料を十分にそろえた上で、家庭裁判所に提出しましょう。
遺産分割審判を有利に進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、状況に合わせて依頼者に有利な主張構成を検討するとともに、必要な証拠の収集等についてアドバイスすることができます。
審判期日における対応も、全面的に弁護士が代行できます。
そのため、依頼された方は、遺産分割手続きを安心して進めていくことができるでしょう。
遺産分割協議または遺産分割調停の不成立が懸念される状況であり、遺産分割審判を見据えた対応が必要となる場合には、まずは弁護士に連絡ください。
遺産分割調停が不成立となった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します(家事事件手続法第272第4項)。
遺産分割審判では、それ以前の手続とは異なり、家庭裁判所が客観的な立場から、遺産分割の方法を強制的に決定します。
ほとんどの場合、審判の内容を覆すことはできません。そのため、審判手続への対応は慎重に行うことが大切です。
ベリーベスト法律事務所では、遺産分割トラブルを解決するため、遺産相続に関する経験豊富な弁護士が親身になってサポートいたします。
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