遺産相続コラム
不動産を相続したら、不動産の「相続登記(名義変更)」をしなければなりません。
相続登記には特に期限はもうけられていませんが、いつまでも登記をせずに放置していると、多くのデメリットやリスクが発生してしまいます。
今回は、不動産を相続した場合の流れや相続登記の方法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
不動産の相続登記(名義変更)とは、被相続人から相続人へと不動産の所有者の名義を変えることです。不動産の所有者は、登記事項証明書(登記簿謄本)の「権利者」欄に記載されています。
被相続人の存命中は、被相続人の所有不動産は被相続人を「所有者」として登記されています。しかし相続が起きると、被相続人ではなく相続人が所有者となるので、正しい権利関係を反映するために所有権移転登記が必要になるのです。
この登記手続きを一般的に「相続登記(名義変更)」と言います。
以下で、不動産の相続登記の手順をご説明します。
土地や建物などの不動産の相続登記をするためには、まずはどの相続人が不動産を取得するかを決めなければなりません。そのためには、相続人全員が参加して「遺産分割協議」をする必要があります。遺産分割協議とは、相続人全員による話し合いのことです。
遺産分割協議により、すべての相続財産の分割方法について合意ができたら「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書には、相続人らが話し合った結果の遺産分割方法を記載して、相続人全員が署名押印をします。後に不動産の相続登記を予定しているため、実印で押印しましょう。
遺産分割協議書ができたら、不動産を管轄する法務局に行って登記申請をします。
必要書類と登記申請書を提出すると、名義の書き換えができます。
登記簿の書き換えが完了すると、新たな所有者(不動産を取得した相続人)には「登記識別情報(いわゆる不動産の権利書)」が発行されます。
なお、これは基本的な相続(相続人が複数)のケースを前提としており、遺言書や死因贈与によって指定された不動産の取得者がいたら、遺言書や死因贈与の契約書を使って名義変更をします。
また、不動産を法定相続人全員の共有名義(法定相続の登記)にする場合にも遺産分割協議は不要です。
不動産を相続したとき、相続登記を必ずしないといけないわけではありません。
しかし、相続登記をせずに放置していると、さまざまな問題が発生します。以下で、どのようなデメリットが発生するのかみてみましょう。
相続登記をせずに放置していると、不動産の所有名義が既に死亡している被相続人のままとなり、登記簿上は誰が真実の権利者かわからない状態となります。
そうなると、今の相続人が続いて死亡して再び相続が起こったとき、いったいその不動産は誰の所有なのかを調べることになり、混乱が生じます。
また、前の相続と新たな相続の2回の相続についての対応が必要になり、相続登記手続きが非常に面倒になり、そのときの相続人の負担が重くなります。
きちんと相続登記をしておかないと、不動産の売却や担保設定の際にも問題が発生します。
不動産の売却をするためには、きちんと真正な権利者の所有名義になっている必要があるためです。
いざというときに不動産を売却できなかったり抵当権設定ができなかったりして、必要なお金を得られずに不利益を受けてしまうケースもあります。
登記をしないと、第三者には所有権を主張することができません。
そこで、たとえば他の相続人が借金返済を遅滞して債権者から督促を受けている場合、債権者がその相続人の法定相続分に相当する持分を差押さえてしまう可能性があります。
そうしたら、差押さえられた持分が競売にかかり、第三者に競落されて、競落人と共有状態となる可能性があります。
不動産の相続登記をせずに放置していると、不動産が誰のものなのかが明らかになりません。すると、無権利者が「自分の土地です」と言って、勝手に第三者に売却してしまう可能性がありします。
また、他の法定相続人が、自分の法定相続分に相当する持分を第三者に売却するトラブルも考えられます。その場合、購入した第三者に先に登記されてしまったら、その第三者に対して不動産の所有権を主張できなくなってしまうので、見知らぬ第三者との共有状態となってしまいます。買い取った相手が共有持分買取業者である場合などには、持分を安値で売るように迫られるケースもあるので注意が必要です。
不動産を相続したらどのような税金が発生するのか、みてみましょう。
まず、不動産を所有しているとそ毎年、固定資産税がかかります。
固定資産税の税額は、基本的に固定資産税評価額の1.4%の金額です。
不動産を売却して利益が出たら「譲渡所得税」がかかります。譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。
居住用の不動産を売却した場合、譲渡所得に対し3000万円まで特別控除の対象になります。
相続時には発生しませんが、相続人以外の者が売買や贈与などによって不動産を取得したときには「不動産取得税」がかかります。
また、不動産を賃貸して収益を得ると、得られた収益額に応じて所得税が発生します。
不動産を相続すると、「相続税」が課税される可能性があります。ただ、相続税には基礎控除があるので、相続対象の財産評価額が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。
相続税の税率は、遺産の評価額が大きければ大きいほど高くなります。
相続が発生したら、遺産分割協議が成立していなくても必ず相続発生後10ヶ月以内に相続税の申告と納税をしないといけないので、注意しましょう。
相続登記をするときにはどのような書類が必要になるのか、みてみましょう。
遺産分割協議書によって相続登記をするときには、以下の書類が必要です。
また、以下の書類を作成して提出する必要があります。
登記申請書は、法務局に書式があるので記入して提出すると良いでしょう。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人などの関係者の関係を一覧で示した図面です。
それぞれの人の氏名と生年月日、死亡年月日などを記載して、家系図のように線でつないで作成します。
相続関係説明図を作成すると、法務局に提出した戸籍謄本類の還付を受けられます。戸籍謄本類は、銀行預金の解約払戻や株式の名義変更などでも必要になるので、還付を受けておくと使い回しができて便利です。還付してもらわないと、再度同じ書類を取り寄せないといけないので、かなり煩雑になってしまいます。
不動産の相続登記をするときには「登録免許税」という費用が発生します。
税率は固定資産税評価額の0.4%です。これを計算するために、固定資産税評価証明書を取得します。
また、戸籍謄本類を取得するときに450円又は750円、住民票や固定資産評価証明書、印鑑証明書を取得するのにそれぞれ数百円(自治体ごとに手数料が定められています)、不動産の全部事項証明書を取得するのには600円が必要となります。
不動産の相続登記を自分でしようとする方も多いですが、そもそも自分で登記手続をすることはできるのでしょうか?
結論として、相続登記を自分ですることは可能です。ただし、必要書類が非常に多いので、すべて漏れなく集めるのがかなり大変です。
たとえば被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を集めなければなりませんが、初めて取り組むと、抜け漏れが発生することが非常に多いです。
また、他の相続人との連絡を、自分一人で行わねばならないこともストレスになりますし、平日の昼間に仕事を休んで市町村役場に行くとなると労力もかかります。
自分で相続登記をするのが難しい場合には、弁護士や司法書士などの専門家に手続きを依頼しましょう。
こうした専門家に依頼すると、書類集めから遺産分割協議書の作成、申請書の作成、法務局への申請など、すべて代行してくれるので、依頼者はほとんど何もする必要がなく、非常に楽です。
仕事を休んで作業をする必要もありません。
また、書類集めで抜けや漏れが発生することもなく、確実に相続登記の手続を終わらせることができます。他の相続人への連絡なども行ってくれるので、ストレスがかかりません。
確かに費用はかかりますが、それによって削減できる労力や時間を考えると、決して高額な金額ではありません。
不動産の相続登記をするとき、自分で対応しようとすると面倒になって放置してしまう方がおられます。しかしそのようなことをすると、後に大きなトラブルにつながるものです。
そのときになって後悔しても、時間を取り戻すことはできません。
ベリーベストグループには、弁護士のみならず司法書士や税理士も所属しており、相続問題をワンストップで解決することが可能です。不動産を相続して対応に迷われているなら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
配偶者である妻には、亡き夫の遺産を相続する権利(=相続権)が民法で認められています。一方で、義両親にも死亡した夫の相続権が認められるケースがある点にご留意ください。
このようなケースは、妻と義両親の間で遺産分割に関する利害調整が求められることもあり、慎重な対応が必要です。
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これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼び、代襲相続により相続することになった方を代襲相続人といいます。また、代襲相続とは、民法で詳細に規定されている遺産相続の制度です。代襲相続は相続割合や法定相続分の計算が変わることもあり、相続争いに発展するケースもあるため、注意しましょう。
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代襲相続は複雑なために理解が難しい点もありますが、基本的なポイントをおさえることから理解を深めていきましょう。