遺産相続コラム
相続が始まり、相続人同士で遺産分割(=遺産の分け方)について話し合っていたものの、意見がまとまらず、調停での解決をお考えの方もいるでしょう。
遺産分割調停とは、当事者間で遺産の分け方について話し合っても合意できないときに、家庭裁判所で裁判官と調停委員の力を借りて話し合いを進める手続きです。裁判官と調停委員が相続人の間に入り、それぞれの意見を聞きながら、合意形成を目指します。
もっとも、遺産分割調停は、申立書を出せばすぐ始められるわけではありません。戸籍謄本や不動産の資料、預貯金に関する書類など、多くの資料を準備する必要があります。
本コラムでは、遺産分割調停を申し立てる際の必要書類やその集め方、必要書類収集にかかる費用、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
遺産分割調停では、さまざまな必要書類を家庭裁判所へ提出します。
まずは、どのような書類が必要になるのかを、「必ず作成する書類」「必ず添付する書類」「ケースによって追加で必要になる書類」に分けて確認していきましょう。
遺産分割調停を申し立てる場合、申立人が以下の書類を作成しなければなりません。
これらを作成するための書式は、裁判所のホームページから無料で入手できます。記載例なども載っていますので、下記の内容とあわせて参考にしながら作成していくとよいでしょう。
① 申立書
申立書は、遺産分割調停を始めるための基本書類です。以下のような内容を記載します。
② 当事者目録
当事者目録とは、相続人全員を一覧にした書類です。誰が相続人なのかを整理するためのもので、氏名や住所、被相続人との続柄などを記載します。
③ 遺産目録
遺産目録は、相続財産を一覧化した書類です。たとえば、下記のように整理して記載します。
遺産分割調停の対象となる遺産を明らかにする書類になりますので、漏れなく記載するようにしてください。
借金などの債務は、遺産分割の対象ではありません。しかし、協議する上で重要なものですので、債務についても記載するようにしてください。
なお、調停後に新たな遺産が見つかった場合は、その遺産についてのみ、相続人同士で分割方法を追加で話し合えば問題ありません。しかし、「相続人のうちの誰かが故意に遺産隠しを行ったために、遺産が見つけられていなかった」などの事情があれば、遺産分割がやり直しになる可能性もあります。
④ 事情説明書
事情説明書は、相続の状況や現在の争いの内容などを説明する書類です。たとえば、下記のような内容を記載します。
裁判所が事案の概要を把握するための資料になるため、できるだけ具体的に記載することが大切です。
⑤ 進行に関する照会回答書
進行に関する照会回答書とは、調停の進め方に関する希望や事情を記載する書類です。たとえば、下記のような内容について回答します。
⑥ 送達場所等届出書
送達場所等届出書とは、裁判所からの書類をどこで受け取るかを届け出る書類です。
通常は自宅住所を記載しますが、事情によっては勤務先や法律事務所を送達場所に設定するケースもあります。相手方に住所を知られたくない事情がある場合は、事前に弁護士へ相談しておくと安心です。
遺産分割調停の申し立てにあたっては、以下の書類を市区町村役場から取り寄せて、必ず添付しなければなりません。各書類の取得費用は、以下のとおりです。
| 書類名 | 取得費用 |
|---|---|
| 戸籍謄本 | 450円 |
| 除籍謄本 | 750円 |
| 改製原戸籍謄本 | 750円 |
| 住民票 | 300円 |
| 戸籍附票 | 300円 |
なお、マイナンバーカードを利用すれば、お近くのコンビニでもこれらの書類を取得することができることが多いです。
① 被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
遺産分割調停では、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を集めなければなりません。これは、「相続人が誰なのか」を確定するために必要な書類です。
市区町村役場の窓口で「○○さんが生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍をください」と伝えれば、以下のような書類が交付されます。
現在は、広域交付制度によって、被相続人の配偶者や子ども・孫、父母は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本を一括で取得できるようになりました。ただし、コンピューター化されていない戸籍など取得できないものもあります。取得できないものがある場合には、取得した戸籍謄本から以前の本籍地がどこかを読み解くなどして、該当の市区町村に請求しなければならないこともあります。
原則として、兄弟の戸籍謄本等を取得することはできませんが、相続手続きに必要であるという正当な理由がありますので、それを説明した上で取得を進めていくことになります。
また、弁護士・司法書士・行政書士などの士業に相続手続きを依頼した場合には、士業が職務上請求を利用することで戸籍等を取得することが可能です。職務上請求とは、士業が受任した事務・事件に関する業務を遂行するために必要な範囲で、依頼者の委任状なしで第三者の住民票・戸籍謄本等の交付を請求できる制度をいいます。
② 相続人全員の戸籍謄本
現在の相続人を確認するため、相続人全員分の戸籍謄本も提出します。相続人が遠方に住んでいる場合は、郵送で請求することも可能です。
③ 相続人全員の住民票または戸籍の附票
住民票や戸籍の附票は、相続人の現在の住所を確認するための書類です。なお、「戸籍の附票」とは、その戸籍に入っている人の住所の履歴を記録した書類のことをいいます。
これから紹介する書類は、相続財産の状況に応じて必要になる書類です。
以下を参考にして、状況に応じた必要書類を集めましょう。
① 遺産に不動産がある場合
土地や建物が遺産に含まれている場合は、不動産関係の資料も添付しなければなりません。主に必要になるのは、以下の書類です。取得できない場合には、その旨を説明する必要があります。
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 登記事項証明書(不動産の名義や所在地を確認するための書類) | 法務局で取得 |
| 固定資産評価証明書(不動産の評価額を確認するための書類) |
|
② 遺産に預貯金がある場合
預貯金がある場合は、以下のような資料を提出します。
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 預貯金通帳の写し | 手元の通帳をコピーして用意 |
| 預貯金の残高証明書 | 被相続人名義の口座がある金融機関に請求 |
③ 遺産に有価証券がある場合
株式や投資信託などがある場合は、以下の資料を用意しましょう。
| 書類 | 請求先 |
|---|---|
| 有価証券の写し | 手元の証券、取引報告書、証券会社の口座情報、取引残高報告書などをコピーして用意 |
| 有価証券の残高証明書 | 証券会社、信託銀行、金融機関など、証券口座・投資信託口座を管理している機関に請求 |
遺産分割調停の必要書類を集める際には、いくつか注意すべきポイントがあります。
ここでは、必要書類の取り扱いに関する注意点を説明します。
遺産分割調停の手続きは全国共通ですが、必要書類や提出ルールは、家庭裁判所ごとに細かな違いがあります。たとえば、下記のようなケースです。
また、「戸籍は何部必要か」についても運用が異なることがあります。
そのため、インターネット上の記事だけを見て準備するのではなく、申し立てる前に必ず管轄の家庭裁判所のホームページを確認し、不安がある場合は、事前に裁判所へ問い合わせてみるとよいでしょう。
原則として、戸籍謄本等について有効期限はありません。しかしながら、現在の戸籍謄本や住民票については、取得した後に長い時間がたつと、記載内容からの変動があることもあります。そのため、裁判所から再度取得するように言われることもあります。
遺産分割調停では、提出した資料を相続人全員で確認しながら話し合いを進めます。
そのため、書類は「裁判所に1通出せば終わり」ではありません。
基本的には、裁判所提出用と相手方全員分のコピーを準備する必要があります。
たとえば、相手方が5人いる場合は、裁判所用1通と相手方5人分を合わせて、合計6通が必要です。
遺産分割調停では、提出した書類の写しが相手方にも送付されます。
そのため、住所や連絡先など、相手方に知られたくない情報がある場合は、「非開示希望申出書」を提出する必要があります。
非開示を希望する資料と一緒に提出し、相手方による閲覧やコピーを認めるかどうかを裁判官が判断します。非開示が認められれば、ご自身の情報を相手方に知られずに済みます。
遺産分割調停の申し立てをお考えの方は、以下のようなメリットがありますので、弁護士に依頼するのがおすすめです。
遺産分割調停では、多くの書類を準備しなければなりません。
特に大変なのが戸籍収集です。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を集めるには、複数の役所へ請求が必要になることもあります。
また、遺産目録や当事者目録、事情説明書などは、慣れていないと作成に時間がかかるものです。記載ミスや資料不足があると、裁判所から補正を求められるケースもあります。
弁護士に依頼すれば、必要書類の収集や作成をまとめて任せられるため、ミスや精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。
遺産相続では、相続人が把握していなかった資産価値のある財産が後から見つかるケースがあります。たとえば、下記のようなものです。
逆に、借金やローンなどのマイナス財産が見つかることもあります。
十分に調査しないまま調停を進めると、本来受け取れるはずだった財産を見落としてしまうおそれがあります。
弁護士へ依頼すれば、漏れのないよう相続財産調査を行ってくれますので、相続人だけでは把握しきれなかった財産も見つかる可能性があります。財産調査には、知識や経験が必要となるため、専門家である弁護士に任せるのが安心です。
遺産分割では、「法定相続分どおり」に単純に遺産を分ければ終わるとは限りません。たとえば、下記のような事情が争点になることがあります。
このような事情がある場合、特別受益や寄与分を主張することで、法定相続分よりも多くの遺産を確保できる可能性があります。
なお、特別受益とは、一部の相続人が生前贈与などで特別な利益を受けていた場合に、その分を考慮して相続分を調整する制度です。
寄与分とは、被相続人の介護や事業の手伝いなどによって財産の維持・増加に特別に貢献した相続人について、その貢献分を考慮して相続分を増やす制度です。
もっとも、これらを適切に主張するには、法的な知識や証拠整理が必要です。
相続人の方がご自身だけで話し合いを進めると、不利な条件で合意してしまう可能性もありますので、遺産分割調停は弁護士に依頼したほうがよいでしょう。
遺産分割調停を利用して話し合うときは、長年にわたる親族間の争いが積み重なっていることが多いです。
そして、そのような事情を裁判官や調停委員にはくみ取ってもらって話し合っていきたいとお考えになるかもしれません。
弁護士に依頼すれば、遺産分割調停を申し立てて、調停の中でそのような主張を行うことができます。主張やこれまでの事実を記載した書面も提出することができます。これにより、納得できる調停手続きにおける話し合いを実現することができます。
ベリーベスト法律事務所では、これまでに多くの相続トラブルを解決に導いてきました。ここでは、当事務所が対応した遺産分割調停の解決事例を紹介します。
母親の死後、兄妹間で遺産分割をする際にトラブルとなった事案です。
依頼者のAさんは、妹の夫から「預貯金を使い込んだ」「自宅マンションを売却するべきだ」などと主張され、内容証明郵便まで届く状況でした。
もっとも、Aさんとしては、母親名義の自宅マンションに住み続けたいという希望がありました。
そこで、当事務所の弁護士は、家計簿などの客観的資料を整理しながら調停対応を進めました。その結果、下記のような方向で話し合いが進み、最終的には、Aさんが自宅マンションを相続する代わりに妹へ代償金を支払う形で解決しています。
この事例では、客観的な資料にもとづき粘り強く説得を試みたことで、依頼者の希望に沿った解決につながりました。
本事例の詳細
亡くなった母親は遺言書を作成しておらず、兄弟3人で遺産分割協議を行うことになった事案です。
遺産の中心は、5000万円相当の土地建物でした。もっとも、兄が「長男だから自分が相続する」と主張し、話し合いはまとまりませんでした。
そこで、依頼者である弟は当事務所へ相談し、遺産分割調停を申し立てました。調停では、不動産会社による査定を行い、不動産価値を整理しました。
その結果、最終的には不動産を売却し、売却代金から費用を差し引いた4800万円を、兄弟3人で1600万円ずつ分ける形で合意しています。
この事例では、不動産を売却せずに兄が相続し、代わりに兄が代償金を弟2人に支払う方法も検討されました。しかし、兄が代償金を負担することは難しいことが分かり、不動産を売却して分ける形で解決できました。
本事例の詳細
父親の死後、「すべての財産を妹に相続させる」と書かれた遺言書が見つかった事案です。
依頼者である長女のBさんは、その遺言書に対して「父の筆跡ではない」と感じ、当事務所へ相談しました。
そこで弁護士は筆跡鑑定を実施し、結果、「遺言書の筆跡が父親本人によるものである可能性は極めて低い」と判断されました。
しかし、妹側は「父親本人が書いた遺言書だ」と主張し続けたため、遺言無効確認訴訟を提起しました。
裁判では筆跡などが詳しく検討され、最終的には、「遺言書は父親本人が作成したものではなく無効」と判断されました。その後、遺産分割調停で話し合いを行い、以下の形で解決しています。
遺言書が見つかった場合でも、その内容や作成経緯によっては、効力自体が争われるケースがあります。この事例では、筆跡鑑定などの客観的資料をもとに対応したことで、納得できる解決につながりました。
本事例の詳細
ベリーベスト法律事務所では、遺産相続専門チームを編成しており、相続問題に関するご相談を受け付けています。遺産分割調停でお困りの方は、知見豊富な弁護士がサポートいたしますので、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
他の相続人が相続の話し合いに応じない場合、遺産分割協議が進まず、遺産の活用が遅れたり、相続手続きが複雑化したりするおそれがあります。
このようなときは、家庭裁判所の調停や審判なども視野に入れつつ弁護士に相談しながら適切に対応することが重要です。
本記事では、話し合いに応じない相続人がいる場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
遺産相続が始まったとき、兄弟姉妹が大学の入学資金や生活費の援助として多額の金銭を受け取っていたことから特別受益を主張しても、なかなか聞き入れてもらえないことがあるでしょう。
このように、兄弟姉妹の間で「特別受益」や「寄与分」などを巡る相続トラブルが発生するケースは少なくありません。
特別受益を考慮して協議を進めたいときは、遺産取得分がどの程度減額となるのか、またどのようにして特別受益を主張すればよいのかを知っておくことは大切です。
本コラムでは、他の相続人の特別受益を主張して遺産を公平に相続する方法について、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。
被相続人(亡くなった方)の遺産は、原則として、配偶者や子どもなど、財産を引き継ぐ権利を有する相続人に引き継がれることになります。具体的な遺産の分け方は、基本的に、相続人同士で話し合って決めなければなりません。
しかし、家族関係が不仲あるいは複雑だったり、連絡が取れない相続人がいたりすると、スムーズに遺産相続を進めることができず、家族で揉める原因となります。
本コラムでは、相続で揉める家族の特徴やトラブルの例、揉めないための対策法などについて、ベリーベスト法律事務所 遺産相続専門チームの弁護士が解説します。