遺産相続コラム
他の相続人が相続の話し合いに応じない場合、遺産分割協議が進まず、遺産の活用が遅れたり、相続手続きが複雑化したりするおそれがあります。
このようなときは、家庭裁判所の調停や審判なども視野に入れつつ弁護士に相談しながら適切に対応することが重要です。
本記事では、話し合いに応じない相続人がいる場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
相続の話し合いに応じない理由には、以下に挙げるようにさまざまなパターンが考えられます。
他の相続人が相続の話し合いに応じない場合は、まずは相手の事情を把握し、そのうえで適切な対応策を講じることが重要です。
相続の話し合いに応じない相続人がいると、以下のようなデメリットやリスクが生じてしまいます。
相続財産の分け方を話し合って決める「遺産分割協議」は、相続人全員が参加して行う必要があります。参加していない相続人が一人でもいると、遺産分割協議を進めることができません。
遺産分割が終わっていない段階では、亡くなった被相続人の遺産は相続人全員の共有財産です。
共有状態の遺産を処分するには、原則として相続人全員の同意が必要です。いずれかの相続人が単独で処分することはできません。
特に不動産については、売却や賃貸活用などをスムーズに行うことができず、固定資産税の負担だけが続くといった事態も起こり得ます。
亡くなった被相続人の預貯金を引き出すためには、原則として口座のある金融機関で相続手続きを申請する必要があります。
金融機関で相続手続きをして解約・払い戻しを受けるのは、遺産分割が完了してからでなければ行うことができません。
そのため、相続の話し合いに応じない相続人がいる状態では、被相続人の預貯金を引き出せません。特に被相続人の預貯金を生活費に充てていた人がいる場合は、日々の暮らしに困ってしまうおそれがあります。
ただし例外的に、一つの口座につき以下の金額までは、各相続人が単独で払い戻しを請求できます(民法第909条の2)。
相続手続きの中には、相続税申告(10か月以内)や不動産の相続登記(3年以内)など、期限が設けられているものもあります。話し合いに応じない相続人がいるために遺産分割が終わらないと、これらの相続手続きの期限に遅れてしまうおそれがあるので要注意です。
相続税申告が期限に遅れると、延滞税や加算税が課されたり、特例の適用を受けられなくなったりすることがあります。また、相続登記の期限に遅れると、過料の制裁を受けることがあります。
後述するように、相続税申告の期限が迫っているときは暫定的な申告、相続登記の期限が迫っているときは、相続人申告登記の申請などを検討する必要があります。
遺産分割ができないまま放置していると、遺産を管理している相続人が無断で預金を引き出したり、不動産を勝手に使用したりするかもしれません。
いわゆる「遺産隠し」や「使い込み」が発生すると、後から証拠を押さえるのが難しくなり、他の相続人は大きな不利益を被るおそれがあります。早期の対応が重要です。
不動産が遺産に含まれる場合、引き継ぐ人がいつまでも決まらないと、その不動産は管理されずに老朽化するおそれがあります。
不動産の老朽化が進めば、修繕費や管理費の負担が増えるうえに、建物の倒壊などによって近隣トラブルが発生するリスクも高まってしまいます。
他の相続人が生前贈与を受けていた場合は「特別受益」、自分が事業への協力や介護などによって被相続人の遺産の維持・増加に貢献した場合は「寄与分」として相続分の増加を主張できることがあります。
しかし、遺産分割を行わないまま時間がたつと、特別受益や寄与分に関する証拠が失われてしまうリスクが高まり、主張の裏付けが難しくなる点に注意が必要です。また、相続の発生から10年が経過すると、特別受益と寄与分は主張できなくなってしまいます。
遺産分割が終わらないうちに、相続人が死亡して次の相続(=二次相続)が発生するケースもあります。二次相続が発生すると、関係する人数が増えることで話し合いがさらに複雑化し、相続財産の分配や登記手続きも一層困難になります。
こうした連鎖的な相続トラブルを防ぐためにも、早期の遺産分割が望ましいでしょう。
他の相続人が相続の話し合いに応じないときは、その理由に応じて柔軟に対応する必要があります。話し合いに応じない相続人への対応や、各種申請期限に間に合わない場合の対処法についてご紹介します。
相手が「遺産の分け方に納得できない」などと言っているときは、その理由や背景に耳を傾け、相手の言い分にも配慮した解決策を提案して説得を試みましょう。
たとえば、相手が希望する不動産を取得できるよう配慮したり、他の財産と調整して実質的な取り分を多くしたりするなどの方法があります。一部譲歩することで協議に応じてもらえる可能性があります。
「相続に関わりたくない」「借金を相続したくない」などの理由で話し合いを拒んでいる場合には、相続放棄を提案してみましょう。
相続放棄をすれば、その相続人は相続人としての地位を失うため、遺産分割協議への参加が不要となるほか、借金も相続せずに済みます。
ただし、相続放棄をする場合は、原則として被相続人が亡くなったことを知ったときから3か月以内に、家庭裁判所に申述書などを提出しなければなりません(民法第915条1項本文)。早めに準備を進める必要があります。
当事者同士のやり取りでは感情的になってしまい、話し合いが進まないケースも少なくありません。
こうした場合には、弁護士を介して冷静かつ法的な観点から話し合いを行うことも有力な選択肢です。弁護士に依頼して代理人になってもらい、弁護士を通じて調整を行えば、遺産分割協議がまとまる可能性が高まります。
また、相手方にとっても「法的な対応に移るかもしれない」という心理的なプレッシャーとなり、態度が変わることも期待できます。
遺産分割協議がどうしてもまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。調停では、裁判所から選任された中立の調停委員が相続人同士の話し合いを仲介してくれます。
調停でも合意が得られないときは、家庭裁判所が遺産分割審判によって遺産の配分を決定し、トラブルを解決することができます。
一部の相続人が長期間行方不明で連絡が付かない場合は、家庭裁判所に対する以下の申し立てが可能です。
認知症や精神疾患などで判断能力が不十分な相続人がいるときは、家庭裁判所に成年後見の開始を申し立てましょう。
家庭裁判所は、相続人が常に判断能力を欠いている状態であると判断した場合は、成年後見人を選任します。成年後見人が遺産分割協議に本人の代理として参加することにより、相続手続きを適切に進められるようになります。
相続税申告の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から起算して10か月以内です。この期間内に遺産分割が完了しない場合は、法定相続分に従って暫定的に相続税申告を行う必要があります。これにより、延滞税や加算税といったペナルティーを回避できます。
「配偶者の税額の軽減」や「小規模宅地等の特例」についても、法定相続分に従って期限内に申告を行いつつ、所定の手続きをとれば適用を受けられることがあります。
不動産を相続したときは、被相続人が亡くなったことを知った日から3年以内に、法務局に相続登記を申請する必要があります。遺産分割が3年以内に完了しない場合は、法定相続人全員に相続登記を行う義務が課されます。
遺産分割が完了していない状態で、相続登記の義務を果たすためには、以下の二つの方法があります。
相続人申告登記の手続きは比較的簡単で、各相続人が単独で申請できます。登記の申請を怠ると10万円以下の過料(行政上の罰金)を科される可能性もあるため、遺産分割協議が長引く場合には、早めに暫定対応を検討しましょう。
相続の話し合いに応じない相続人がいる場合は、早期に弁護士へ相談することで、円滑かつ適切に遺産分割協議を進めやすくなります。弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。
遺産分割のトラブルは、時間がたつほど解決が困難になる傾向があります。お困りの方は、できるだけ早い段階で弁護士へご相談されることをおすすめします。
参考:遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人全員が参加して行わなければなりません。一部の相続人が話し合いに応じない場合は、その原因に応じた対処法を検討する必要があります。
話し合いが難航したまま放置すると、相続税申告や登記の期限を過ぎてしまうなど、トラブルが深刻化するおそれがあります。
早い段階で弁護士に相談して、家庭裁判所の調停・審判といった法的手続きも検討しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。弁護士が税理士や司法書士などと連携しながら、総合的に相続手続きや相続トラブルの解決をサポートいたします。
「相続の話し合いに応じない相続人がいて困っている」「協議が進まないまま時間だけが経過している」といったことでお悩みの方は、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
※代表電話からは法律相談の受付は行っておりません。ご相談窓口よりお問い合わせください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。
他の相続人が相続の話し合いに応じない場合、遺産分割協議が進まず、遺産の活用が遅れたり、相続手続きが複雑化したりするおそれがあります。
このようなときは、家庭裁判所の調停や審判なども視野に入れつつ弁護士に相談しながら適切に対応することが重要です。
本記事では、話し合いに応じない相続人がいる場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
親が亡くなったあとに、知らされていなかった「隠し子」の存在が明らかになることがあります。こうしたケースで「隠し子にも相続権があるのか」と戸惑うご家族も少なくありません。
結論から言うと、被相続人(亡くなった方)から認知されている場合、隠し子であっても相続人です。ただし、血縁上は親子であっても相続人とならない例外も存在し、個別の状況によって対応が異なります。
今回は、隠し子がいた場合の相続について、例外となるケースや、具体的な相続手続きの流れを、ベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。
法定相続人が相続の承認、または相続放棄の意思表示をすることなく熟慮期間中に亡くなった場合、再転相続が発生します。
再転相続は、遺産分割が完了する前に次の相続が発生する数次相続とは異なり、まず当初の相続についての承認または相続放棄を検討しなければなりません。また、再転相続の状況によっては、熟慮期間中であっても相続放棄が認められないケースもありますので、注意が必要です。
今回は、再転相続とは何か、再転相続が発生する具体的なケースや熟慮期間の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。